白い体をふよふよさせて、青唇の大きな口をニカッとさせたナニカ、ウィスパーと名乗る妖怪に対してオレたちは目をぱちくりさせた。
「な、なんなのこれ……?」
オレよりナニカに触れてきたフミちゃんが呆けている。無理もない。あんな恐ろしいものの正体がこんなポップな見た目をした幽霊なんて誰が予想できるかよ。オレもすっかり毒気が抜かれてしまった。
「なんなのこれとは失礼ですね!私の名はウィスパー!歴とした妖怪でうぃす!」
「いや、それはもう聞いたよ……。」
でも現状これが唯一、フミちゃんの悩みを解決できる手札を知っているかもしれないんだよな。
「しっかしお二方は中々お熱い関係でうぃすね。」
ん?今こいつなんていった?
「勇気を半分出すから、勇気を半分頂戴でうぃすか。まるで結婚式の共同作業、そのお陰で190年の封印から解かれたんで感謝でうぃす!」
とてつもない褒め言葉だった。てかガシャ玉に外の声が聞こえてたというわけで、どうしよう。くっそ恥ずかしくなってきたんだけど?!ああ、フミちゃんもゆでダコみたいになっている!
「ですが封印されてた私がいうにはあれですが、ただのガシャにどうしてそんなに本気だったんでうぃす?」
その事を聞いたとき顔の熱が引いた。そうだ。オレたちは妖怪の事を知るためにガシャを回したんだ。
「ねぇウィスパー。妖怪ってどんな存在なの?」
よくぞ聞いてくれました!といわんばかりにウィスパーはウキウキで話し始めた。
「妖怪とは、この世における不可思議な現象を起こす不思議な存在。世界中のありとあらゆる存在しており、人間にイタズラを仕掛けては、妖怪不祥事案件という常人では決して原因を特定できない様々な事を引き起こしてきたのでうぃす。」
同じだ。フミちゃんが言ってたナニカと同じ。ナニカとは妖怪で妖怪はナニカだったんだ。
「しかし、進んで妖怪の事を知りたいとは、何か理由がおありで?」
ウィスパーがそう言うとフミちゃんが手を上げて事情を説明する。フミちゃんは不完全ながらも妖怪を認識することができたこと、不完全な状態で妖怪と喋ろうとしたこと、それが理由で何度も妖怪不祥事案件に巻き込まれたこと、その度にオレが助けてくれたことを話した。
「なるほど、そちらのお嬢さんは俗にいう霊感がある状態でうぃすね。しかもその状態で妖怪とコンタクトを取ったゆえに妖怪に好かれやすくなるという霊媒体質が暴走している感じでうぃす。」
ウィスパーがどこからかパッドを取り出すとフミちゃんの状態を説明した。
「ある意味藁に縋る思いだったんだ。フミちゃんの悩みを解決したかったから。その原因に整理がついたからとても安心している。」
ウィスパーに感謝を伝えると、お役に立てて何よりでうぃすと礼をした。
「後は認識力か霊媒体質のどちらかを何とかできればいいんだけど……」
そう言うとウィスパーが暗い顔をした。
「お言葉ですが、霊感や霊媒体質は生まれつきの力に左右されるもの。訓練したからそう変わるものはございません。半世紀は修行して変わるか変わらないかというレベルでうぃす。」
ウィスパーから絶望的な事が飛び出した。フミちゃんは両手で口を抑え、泣きそうな顔をしている。
「ですが、あなた方2人はスンバらしいラッキーボーイ&ラッキーガール!妖怪執事であるこの私が、快適で、ハートフルで、時にスパイシーなWith妖怪ライフをサポートしましょう!」
どこからか出た紙吹雪がオレたちに降り注ぐ。紙吹雪が降り終わった時、オレの左腕とフミちゃんの胸が光を放った!光が収まると、オレの腕にに白い腕時計が、フミちゃんにはピンク色の首にかける懐中時計が現れていた。
「そちらの時計は[妖怪ウォッチ]。人と妖怪を繋ぐコミュニケーションツールでうぃす!」
封印解放の返礼でうぃすとプレゼントされたそれは、オレたちがとても欲しかったものだった。これがあれば、フミちゃんがもう二度と妖怪関係で苦しまなくて済む。そう考えた時、オレの口からするりとある言葉がでた。
「ありがとうウィスパー。本当にありがとう。」
積年の思いを込めたそれはウィスパーに響いたようで、
「……お熱いのも考えものでうぃすね……。」
そう呆れたようにオレたちを眺めるのだった。
◇◆◇
あのくそったれな坊さんによってガシャ玉に封印されて190年ついにその封印を解いてくれる人が現れました。天野景太くんと木霊文花さん。さくら第一小学校5年生で同じクラスの子。しかもどうやら保育園から恋人関係であるそうで。その関係に至ったエピソードがわれわれ妖怪が関わっているというのですから鼻が高いというものでうぃす。でもですね、1つ問題がありまして、
「ケータくんはワタシの体を何とかするために図書館に行ってまで勉強してくれたの!学んだことは全部ダメだったけど、それでもワタシの事を考えてくれているようで嬉しかった。」
「2月のバレンタインのチョコはオレと一緒に作ったんだ。その時どの型にチョコを流すのかはオレが選んだんだんだけど、流すのは1つだけ。全部はダメだよ?って釘を差すフミちゃん可愛かったなぁ。」
くっそ甘い!!!10秒に1回は惚気エピソードが出てくる出てくる!もうこの2人に好きという言葉が軽すぎて通じねぇ!おしどり夫婦のそれじゃねぇか!依存関係って言葉知らねぇだろ!このピンクマシンガンを至近距離で受ける被害を考えろお前らぁ!人をときめかせるというトキメキビが取り憑いている?HAHAHA糖度が上がって爆発するぞおい!これをもろに受け続けた人間は今どうなってんだ!?恋愛の基準が狂っていたらどうするんだよ!─────────
フゥー。ちょっと取り乱しました。しっかし話を聞く限り、妖怪としては文花さんに目が行きますがケータくんにも素晴らしい人ですね。
愛する文花さんの為に頑張るのは普通のこと、妖怪が起こした事件に巻き込まれたとき身を挺して守ったり一緒に逃げたりすることは普通のこと、日常生活でも心から笑える時に笑ったり、心が悲しいときはちゃんと悲しんだり、怒ることがあればしっかり怒れる事が普通のことと言い体現する姿は、どれ程普通じゃない存在にとって眩しく見えるのでしょうか。
普通じゃない時であっても普通でいられることも1つの才能、妖怪ウォッチに選ばれた2人はどのような経験をするか見物でうぃす。
「あれ?フミちゃんの家族も来ている。」
いつの間にたどり着いたケータくんの家にはちょっとした非日常がそこにありました。
「何で最後のヤツを買って行ったのよ!アレは娘も食べたかったのに!」
「こういうのは早い者勝ちだろ!それをいうなら俺の息子だって食べたいって言ってたんだ!」
どうやら早速、1つ大きくなりますね。
◇◆◇
御神木を観察している一人の妖怪がいた。彼はセミまる。おおもり山に住む妖怪である。彼はある妖怪の依頼で御神木の周りを観察していた。仕事の内容は、おおもり山の御神木周辺を観察し、成果を報告するだけ。その期限というのが、
「資料にある2人の人間は今日来るでミンか。」
セミまるは仕事を受け、依頼主はこの2人の人間に御執心だと察した。
「この2人がここにきたら元の給金に加算チャンス、ドリームがあるミンね。」
そうセミまるが張っていると、天野景太と木霊文花が来た。
(マジかよマジかよマジで今日ミンか!?加算加算、報酬加算!!)
セミまるは資料を広げ追加報酬を再度確認する。
(ガシャを回したら……一万加算ミンか。生活が苦しいんだ回せ回せ回せ。)
人間2人は一妖怪の俗な願いを知らずにガシャを回す。
(来た!次が最後の加算チャンス!)
セミまるは血走った目で2人と白い妖怪を見ていた。セミまるの頭には目の前の情報と最後の加算額とその内容で占めていた。
そして2人は妖怪ウォッチを手にする。ちゃんと1人ずつ、計2つの妖怪ウォッチが人間の手に渡った。
セミまるは記録媒体にその光景を納める。ちゃんと撮れている事を確認すると、再度報酬の資料を読む。
(妖怪ウォッチが1つだけ渡ったなら10万、2つ渡ったなら……50万!!!!)
資料にはその光景を納めたら今すぐ報告して本日の業務は終了、その場で現金が手渡されるとあった。セミまるは機材の機能を使って依頼主に送信、それから数分後通信が入り、
『よくやった。報酬を転送する。』
そう言うと通信機材以外の機器が消え、パンパンの封筒が現れた。セミまるは沢山金の入った封筒を大切に抱き締めると、通信機材から声が聞こえる。
『今すこぶる気分がいい。
「主の待望がかなってよかったミン。これで例の計画が動かせるミンね。」
『あそこまで仲良くなっていたのは想定外だが、それもまた一興。
機械越しの声は一息つくと、
『今日はもう帰れ。計画の中心に加えられるよう頑張れよ。』
そう言うと通信機材が消滅し、セミまるもこの場から去ったのだった……。
天野景太
実は学校等でフミちゃんとやっているイチャイチャの過半数は妖怪に怯えるフミちゃんを慰めている&それに対する警戒である。原作と違って最初から妖怪との交流に前向き。
木霊文花
妖怪を認識して、恐怖を感じたときケータくんが構ってくれたためケータくんに対してものすごく甘えている。イチャイチャの約半数は自発的にケータくんに甘えたくなった時のもの。妖怪と関わるのは恐いけど園児の時に出た疑問を晴らすべくケータくんと共に行くことを決意する。
ウィスパー
なんか覚悟ガンギマリでガシャを回したからどうしたと思ったら、経緯を聞いてそらそうなるわと思った。因みにガシャ妖怪全員があのやり取りを聞いており、何割かはファンになっている。
通信の主
1話に出たオリジナル妖怪。2人のことを知っているようだが……?
セミまる
通信の主の下っ端の個体。この後豪遊し、すぐ金が底をついた。
次回
妖怪ウォッチ1第2章