【リメイク】僕はげきからマホイップと世界を巡る 作:三笠みくら
「アマネさん、どこか行きたいところある?」
「だったら……チャンプルタウンに行きたいな!!」
「確かに!ちょうどお昼時だよね!」
チャンプルタウン。パルデア随一のグルメな街で、スマホロトムで美味しいごはんのお店を調べたらチャンプルタウンのお店ばっかり出てきたから気になってたんだよね。
「チャンプルタウンは美味しいごはんがいっぱいあるんだよ!わたしもよく食べに行ってるんだ!」
「本当に?うふふ、楽しみ!」
チャンプルタウンにそらとぶタクシーで移動すると……右も左も美味しそうな看板や屋台だらけ!単純に食べることが好きな僕からすればユートピアだ。とはいえ行くべき場所は決まっている。
「らっしゃいやせー!!」
そう、来来来軒だ。このお店自体はハッコウシティやカラフシティにもあるんだけど、チャンプルタウンが元祖と聞いてここに決めた。あと単純にカラフシティは砂嵐がね。
ああ、タイル張りの床にパイプの丸いす、それにどんどん増えていったのが察せられるギチギチの手書きメニュー!!そして何より熱気あふれる若干汚れた厨房!!やっぱりごはんを楽しむときはシチュエーションが大事だよね。
「あいよ、これがお品書きね!」
「うわあ、いっぱいあるなぁ〜」
「来来来軒はラーメンが美味しいんだよね、わたし醤油ラーメンで!」
「それじゃあ麻婆炒飯と、辛味噌ラーメンお願いします」
「おっ、嬢ちゃん結構行くねえ!」
「ここのは辛いよ?大丈夫?」
お客さんたちがガヤを飛ばしてくるが、僕の辛いもの好きを舐めないでいただきたい。そこらの辛いもの好きとは一線を画している自覚はあるぞ。
「アマネさんはさ、辛いの好きなの?」
「もちろん。辛い刺激も好きだし、辛味の中にある旨みも大好きだよ」
「そうなんだ……わたしあんまり辛いの苦手だから尊敬するなあ」
さて。注文を済ませてやることといえば。待つ、ただそれのみ。スマホを見るなどもってのほか、ただひたすらに料理が運ばれてくるのを待つのが僕の流儀だ。もちろん強要するつもりはないから安心してほしい。
ああ、厨房で中華鍋を振っているのが見える!ラーメンを湯ぎりしているのが聞こえる!!これこそが“待ち”の幸福!!
「あいよ、麻婆炒飯と辛味噌ラーメンね!」
はああ……素晴らしい、なんて美しいんだ。麻婆豆腐はてらてらと輝いて、炒飯も見事なまでの茶色。辛味噌ラーメンは暴力的なまでに赤い!!これこそが人類の編み出した珠玉の発明、叡智の極地!!
「いただきます!!」
まずは麻婆炒飯。ぐああ、なんて素晴らしいんだ!!口の中でホロっと崩れる辛くも優しい麻婆豆腐、油のコーティングによってお米がパラッパラになっている炒飯!!その両方が仲良く同居している!!まるでマンタインとテッポウオの関係のようだ……まさに理想郷、完璧なバランス……
「美味しい、素敵すぎる……!!」
ここでお冷を一杯。あー、“効く”わぁ……
さあさ、お次は辛味噌ラーメンだよ!!まずはスープをひと口……!!これは…バター!!なるほど、濃厚な味噌と辛い味付け、それらをまろやかにすると同時に奥行きを出すための…まさにバイプレイヤー、縁の下の力持ち!!
そして麺も…あぁ、このちぢれ麺…最高か??ちぢれ麺によって作り出される隙間に入り込む濃厚スープ、そしてスープを吸ってさらに濃く、豊かになった麺の味!!さらに添えられたコーンがその甘みを分かりやすくしてくれている…これぞバランス、これぞ足し算!!
両方完璧で両方美味しいすぎる…!!ああ、どんどん食べられちゃう……!!
「………(ごくり」
「ふう、ごちそうさまでした」
お礼を言ってお会計に進もうとすると、目の前に杏仁豆腐がスッと差し出された。え、さっきハイになってる間に頼んでた?己が怖い!!
「お嬢ちゃん、すごく美味しそうに食べてくれてたね。これはお礼だよ、辛いもん食ったら今度は冷たくて甘いもの!」
「わ、ありがとうございます!いただきます!」
ガラスのお皿にちょこんと乗った杏仁豆腐。僕はきちんと甘いものもいけますよ。みかんが乗ってるのもいいね…そそられる。ひと口食べると…口の中、浄化!!いや別に悪かった訳ではなくてね。辛さと熱に支配されていた口の中が、みるみるうちに冷たく、優しくなっていく……この緩急もいいですね……
「それじゃあ今度こそ、ごちそうさまでした!」
食べ終わってふと前を見ると、アオイちゃんがものすごくこちらを見ている。どうしたのだろう。
「アマネさん、すっごく美味しそうに食べてたね。わたしもおなか空いていっぱい食べちゃったよ」
「いやぁ、美味しいものはちゃんと食べないとだからね……」
「それじゃあお会計しよっか!大丈夫、わたしお金いっぱい持ってるから!」
「いやいや、自分の分は自分で払うから……」
お会計を済ませて、外の風を浴びる。この食べ終わった空気も好きだなあ。はあ、幸せだった……
少女は、キッチンに立っていた。お砂糖、小麦粉、卵、バター。それらを使って、手際よくハート型のクッキーを作り上げていく。おまじないをかけてかわいい袋に入れたら、あっという間に乙女の贈り物の出来上がり。
「待っててねアマネ、私が元気にしてあげるわ」
アマネ
辛いのが好きだけど食べること自体も好き。
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