【リメイク】僕はげきからマホイップと世界を巡る 作:三笠みくら
「アマネさん…いやアマネくん、男の子だったんだ…」
「うん……分かりにくかった?」
「分かりにくいっていうか、分かるわけないっていうか……こんなかわいい男の子、存在するんだ…」
確かにお母さんとか周囲にはかわいいかわいいと言われて育ってきたけど、正直自分のことをかわいいと思ったことないんだよな。だって今まで容姿に関わらず褒められたことがないんだもの。まあ主におじいちゃんとルセちゃんのせいなんだけど。
「でもそっか、男の子……」
「どうしたの?」
「ううん、なんでもない!」
ロトロトロト……
『……もしもし、アマネくん?』
「あ、ユウリさん!こんにちは、どうしました?」
「その……手紙読んだよ。力になれなくてごめんね」
「いえ、気にしないでください。ユウリさんは何も悪くありませんから」
『それでもアマネくんが苦しんでるのに何もできなかったのは事実だから…今はパルデアにいるんだよね?』
「はい、パルデアでゆっくりしてます」
『よかった、それでね?そのこと聞いて少しでも力になりたくて……』
そんな、いいのに。ユウリさんはチャンピオンなのに庶民派で優しいんだよな。やっぱり人情も捨てたもんじゃないな。
『アマネくんの口座に100万円振り込んどいたから!』
「………ん?」
はじめましての人ははじめまして、そうじゃない人はこんにちは。ガラルチャンプ・ユウリです。突然ですが皆さん、推しはいますか?推しは、人生に潤いを与えてくれる生きる糧。ポケモンだったり芸能人だったり、色々いると思うんです。そんなわたしの推しは……
「あ、いらっしゃいませ!」
このカワイイ男の子、アマネくんでーーす!!はあぁ今日も笑顔がかわいいアマネくん!!わたしの癒し、げんきのかたまり!!
アマネくんと出会ったのは、わたしがチャンピオンになったばかりの頃。ブラッシータウンでの撮影が終わって、ヘロヘロの時。今すぐ帰りたかったけど、ある看板が目に入った。
「大盛りハンバーグカレー……?」
カレー大好きなわたしは、引き寄せられるようにお店の中に入っていった。そこで明るく出迎えてくれたのが。
「いらっしゃいませ、こちらの席にどうぞ!」
アマネくん!!今思い出してもかわいい。初めてやってきたわたしにも優しくメニューについて説明をしてくれて。夜も遅かったからお客さんがわたしだけなのもあって、色々お話をした。
「へぇ、辛いもの好きなんだ」
「はい、大好きです!」
「だったらあげるよ、辛いきのみいっぱいあるから」
「ええ、いいんですか!?」
露骨に目をキラキラさせて喜ぶアマネくん。辛いものが好きで料理の開発も手伝ってるって聞いた。それからわたしは癒しを求めて、お忍びで通うようになった。
美味しい料理を食べられるところなら他にもいっぱいあるんだけど、アマネくんちの程よい狭さと優しい雰囲気がちょうど良くって通うことにしたの。
「アマネくんはさ…チャンピオンのことどう思う?」
「チャンピオンって…ユウリさんのことですか?」
「うん。ほら、最近なったばかりでしょ、どうなのかなーって」
ちなみにわたしはちゃんと変装して通ってるから別人のテイね。アマネくんにこのことを聞いたのは……単純に気になってたの。メディアはわたしをもてはやすけど、実際はどうなんだろうって。
「すごいけど……大変そうだなって思いますね」
「大変そう?」
「はい、ごはんちゃんと食べてるのかなって。忙しそうだし」
「ふふ、アマネくんは優しいね。そんなこと言うのママくらいだよ」
「何言ってるんですか、ごはんは大事ですよ!」
「うん、そうだね」
わたしはすごくびっくりした。てっきり褒めるか否定するかだと思ってたから、心配されるとは思わなかった。でもその答えがすごくアマネくんらしいというか。優しくて、とにかく嬉しかった。
もっとアマネくんとお話したいな。ただ想定外だったのが。
「……僕、バトル苦手なんです。ポケモンが傷つくのがどうしても怖くって」
そう、アマネくんはバトルが苦手!!これはまずい。だってわたしが話せる話題といえばバトルとカレーぐらいだから。とはいえ何か繋がりが欲しい。そこでわたしがやったことが。
「アマネくん、辛いきのみあげる!」
「アマネくん、お金困ってない?」
……貢ぐこと。別に変な意味はないよ?わたしが贈ったものでアマネくんの生活が少しでも良くなったらなーって。お金は断られたけど。
明るくて優しいアマネくん。彼と話すのが幸せで、楽しくて。でもある日を境に、笑顔が減っていった。ものすごく心配になって、理由を聞いてみた。
「実はその……トレーナーズスクールでいじめられてて」
顔が熱くなるのを感じた。アマネくんをいじめる子がいるなんて!!正体を明かして、アマネくんの力になろうとしたけれど。
「いいんです。話が通じないので……きっと、ユウリさんが言っても無駄だと思います」
顔を伏せて、悲しい笑顔でそう言った。本当に諦めてるんだろう。だったらわたしが、もっと頼れるようになろう。そう決意した矢先だった。
仕事が忙しくなって、アマネくんに会えなくなった。今まで脱出に協力してくれてたダンデさんも、これは無理かもなって苦笑いしてた。
癒しがなくなって疲れたけど、アマネくんも頑張ってるんだって思えば頑張れた。そんな折に、マホイップの新種発見を知った。発見したのはアマネくん!!すごい、辛いのもマホイップも好きなアマネくんが、マホイップの新種発見なんて。
でもアマネくんは苦しかったみたい。ポプラさんから話を聞かされた。
「メディアどもが騒いでね。うるさいったらありゃしないよ」
「そうなんですね……」
それからもアマネくんには会えなかった。メディアが押しかけるせいで、料理店も閉めざるを得なくなった。心配でたまらない。
「ピンクの坊やかい?ほとぼりが冷めるまでパルデアに行かせたよ。気分転換にどうかと思ってね」
愕然とした。いつ帰ってくるかも分からないって。放心状態で歩いていると、いつの間にかアマネくんのお家…料理店にたどり着いていた。アマネくんはいないけど、ここの料理は食べようかな。
「あら、あなた……チャンピオンのユウリちゃんじゃない!」
「はい、こんにちは」
「そういえば、アマネがユウリちゃんにお手紙書いたって言ってたのよ。今度来たら渡してって言われてたんだけど……本当に来てくれるなんて!」
「え、アマネくんからお手紙!?」
アマネくんのママさんにお手紙をもらう。マホイップデザインのかわいいお手紙。中を開くと、アマネくんからのメッセージが綴られていた。
『ユウリさんへ いつも料理店に来てくれてありがとうございます 変装してるつもりだったんでしょうけどサングラスだけはバレバレなのでやめた方がいいと思います ユウリさんがいつも話してくれて嬉しかったです 落ち着いたらまた来てくれると嬉しいです アマネ』
「ぅ、うぅ……」
涙が溢れてくる。わたしは何もできなかったのに。アマネくんがいじめられてても、マスコミに追い詰められても何もできなかったのに。
「あの……アマネくん、旅費ってどうしてますか?」
「ポプラさんがある程度融通してくれてるけど……」
「でもいつ帰ってくるか分からないんですよね?だったら……」
「……というわけなの!」
意気揚々と語るユウリさん。今口座残高を確認したら、確かに100万円が追加されていた。桁が違う。今までお年玉しか貯めてこなかったこの口座にひゃ、ひゃくまんえん……いくら気遣いと言っても、流石にすぎないか?
「いや、流石にこれは……」
「いいの!!わたしが振り込みたくて振り込んだから!!それでアマネくんが少しでも落ち着いて過ごせるならそれが1番だから!!」
「ユウリさん……ありがとうございます、大事に使います」
「足りなくなったら言ってね?すぐ振り込むから!」
「…………」
まあ、ありがたく受け取るか。ユウリさんって割と感覚ズレてるんだよなぁ。前も貴重なきのみをポンポン渡してきたし。
『そろそろ戻らないと!じゃあまたね!』
「はい、また」
「アマネくん、今電話してたの誰?」
「ユウリさんっていう……うちの常連さん」
「ふーん、そうなんだぁ……」
「?」
エリアゼロで、アマネに庇われたとき。なんとなく、時が止まったように思えた。自分を助けようと必死な顔と、自分を助けて安堵した顔。その両方が、どうしようもなく心に残る。思い出すと、ドキドキする。
(……かっこよかった)
いやいや、女の子同士なのにそれはいかがなものか。そう自分を律した瞬間。
「僕、男なんだけど……」
なんて言われたものだから。
(じゃあ……いいのかな?)
アオイは、恋というものを知ってしまった。
ユウリ
推しには貢ぐ派。相棒はインテレオン。
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