ゾンビものの世界で、モブがこの先生きのこれるわけwww 作:KNa\
「あー、そうだな、俺は……」
「……彼は、貴女を探すのを手伝ってくれたんですよ」
じぃ、と少女に見つめられながらフジオが言葉を濁しているところで、傍らから声がかかった。ふい、と少女とフジオが目を向ければ、そこには先ほどまでの取り乱しようが嘘のように、黒縁の眼鏡越しでもわかるほど穏やかな瞳を浮かべた男性がいた。薄く閉じられた唇の両端は少しだけ上に持ち上がっている。
「手伝い……なら、おじさんがアタシを探してたの?」
「ええ、そうです」
「……なんで?」
「簡単です、なぜなら貴女のお父さんだからです」
「おじさんがアタシの……?」
「ええ……本当に何も、覚えていないのですね」
「……うん、覚えてない……なんにも思い出せない……」
ぽつ、ぽつ。男性と少女は互いに短く受け答えをいくつか繰り返す。フジオはそれに口を挟まず、途中から意識して聞き流し始めた。他人の事情に首を突っ込む気は無いからだ。場違いな雰囲気がひしひしと肌を刺す感覚を、フジオは空気に徹してやり過ごすことにした。
言葉を交わすうちに距離をゆっくり近づけた男性が、少女に目線を合わせるようにしゃがみこみ、真剣な声色で言葉を告げた。
「いいんです。直ぐで無くて。ただこれだけは伝えさせてください」
「……なに?」
「貴女が生きていてくれて、本当に良かった……!」
男性はそう言ってゆっくりと両手を広げた。少女はその行為の意味を理解出来ていた。まだ自身の境遇を完全には飲み込めてはいないようだが、おずおずと男性の方へと近寄ってその首の後ろを抱えるように両腕を回す。ソレを受けて男性も優しく両腕を少女の背に回す。
「大丈夫です。時間をかけてゆっくり……やり直していきましょう」
「……ぅん」
「次こそは、こんな目に合わせたりしませんから……今度こそ、絶対に……」
「…………うん」
ぎゅう、と抱擁を交わしながら男性は何かを誓うように少女に言葉を伝える。少女の方もまた、戸惑いながらもそれを受け入れていた。
「あー……良いところで悪いが。続きは家でやれ。ソイツをきちんと休ませるのが先だろ」
そこへフジオが口を挟んだ。嫌がらせや空気に耐えかねたというわけで無く、それなりに少女と男性を慮っての言葉だった。電波によってディッパーの対策はしているとはいえ、ゾンビの危険が無くなったわけではないのだ。休ませるしろ打ち解けるにしろ外でやる理由は皆無である。
「おっと、すいませんフジオさんの言う通りですね。では、一度家へ戻りましょう……歩けますか?」
「多分……?走ったりしないなら」
「そうですか、でも一応支えますからゆっくり行きましょう。フジオさんは先に戻って……?、フジオさん?」
動き始めた二人と違い、その場で何かを考えているフジオ。それに気づいた男性が声をかけると、フジオはこう告げる。
「……先に二人で戻ってくれ。俺の自転車を使ってくれてかまわないから」
「それは……ディッパー対策と帰りの経路はあるので、こちらは問題ないですけど、フジオさんは大丈夫なんですか?……それに確認とは、何を?」
「アンタが見てくれた船とか、他の倉庫にも使えそうなモンがあるか見てみたい。ロクに探索出来てない箇所らしいからな」
男性の問いかけにフジオはそう答えて直ぐに話を切って男性へ背を向けた。意見を変える気がないことを感じてかあっさりと男性は提案を了承する。
その後、男性はフジオに改良した船の場所と使い方を説明し、戻った時は家の前で信号を三度押すように言って少女と二人で倉庫を去っていった。
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男性と少女が去ってから数分。フジオは宣言していた通り倉庫の中を探索していた。右手は空けて、左手に充電式のライトを握っている。このライトは普通の懐中電灯とブラックライトと呼ばれる特殊な光を切り替えることの出来るものである。現在倉庫の床や壁を照らしているのは普通の懐中電灯の方だ。
「寝てても襲われて無かったって事は有る筈だ」
口の中で含めるように、自身の耳骨でだけ震えるように独り言ちながら光を動かしていると、チカ、と光を反射するものがあった。近づいてみればソレはボタンが一つだけついている子供の握り拳大の機械だ。表面の一部が汚れているソレをフジオは拾い上げる。
「……きったね」
フジオの見つけたそれは発信機であった。黒と茶色の混じった何かが一部の表面に乾いてこびりついているが、見た目は男性策の迷子防止発信機と同じに見える。
次にフジオは光をブラックライトに切り替えて発信器へあてる。すると汚れの一部が薄ぼんやりと白く光っているのが確認出来た。ブラックライトの光は一部の動植物等を照らすと白や青く蛍光して見える特徴がある。この汚れにもそういった蛍光反応が起きているということだ。
フジオの頭に浮かんだのは倒れていた少女の姿だった。体は衰弱し、肌は乾燥し、髪や服に塩が付着していたが……傷や血痕は見られなかった。少なくとも掌等の目に映る範囲には、であるが。
「面倒だな、どうも」
フジオはそう言ってブラックライトで発信機が落ちていた周囲を照らす。埃やチリがわずかに発光し、それに目もいかないほどに床の汚れが白く光っていた。大きい光が一つ。飛び散る光が複数。そしてそこから点々と光が倉庫の外へと伸びている。
フジオはそれを慎重に辿っていく。外では太陽の光によってブラックライトの効果はあまり出せなかったが問題もなかった。堤防近くの道を転々と続く黒く乾いた液体の痕跡は多少薄いが、肉眼でも見えていた。そのまま素直に歩を進めれば、痕は少し離れた位置の別の倉庫へと続いている。
「……」
そのまま倉庫の入り口へ立ったフジオは顔を歪めた。嗅ぎなれた臭いが鼻を突いたからだ。口元を覆う厚手のマフラーを鼻の上まで持ち上げて、フジオは倉庫の中へ懐中電灯の光を入れる。
倉庫の入り口にほど近い場所に臭気の
「ここで諸共、か」
倉庫の中へ入ろうと打ちっぱなしのコンクリートの床を進むと、靴底に擦れる砂や塵の中に粘性がほんの少しだけ混じった音がする。鼻に届く
「おそらくこっちが、本当の……」
床に散っている残骸の正体は死体であった。人の死体。バラバラに食い散らかされまともな形はほとんど残っていないが、残留物の中の二色の髪の毛や太さ長さの不揃いなパーツ、複数あるはずのない骨や状態の異なる肉片等から、ソレが大人の女性と
内臓や目玉、細かい骨が見当たらないのはこれを作ったのが、この倉庫を根城にしているディッパー達だからであろう。捕らえた獲物の体に吻をねじ込んで啜り喰らうアレらに襲われた死体はこうなりやすい。
「……あっちの倉庫で噛まれた後、子供から引き離すためにこっちの倉庫まで移動して……発信機の電波範囲から離れたせいであの変異種に襲われた。ってとこか」
そこまで推測出来たところでフジオは立ち上がり、足早に倉庫の外へと動き始めた。改良された船を確認する為である。男性に伝えた理由がべつに方便というわけでもない、確認と探索は行うつもりでいる。ただ、探索する場所を港倉庫から変更するだけだ。
「船に問題が無ければ、気になってた家を見に行くか」
船の確認に移動しながらフジオが頭に浮かべたのは、ディッパー除けの検証のために拠点周囲を調査した時に見た家の一つだった。男性が拠点としている家以外は、その殆どが窓や扉は開きっぱなしだったのだが、とある一つの家だけは中から目張りと封がされていた。
昨日時点ではディッパー除けの検証に関係がないため触れなかったが、その家を通り過ぎる際に男性は露骨に不機嫌そうに眼をそらしていた。何かあると言っているようなものである。フジオは頭の中で疑念と疑惑を組み立てながらその歩を進める「記憶が無くても選択肢くらいは必要だからな」と、そう零して。
Tips
フジオは人を疑うという行為が嫌いである。それは何も他人を信じたいという高尚な理由からではない。ただ単に
疑いを持つ事は酷く面倒で煩わしい。フジオが基本ソロで生きてきた理由の三割程度はこれであった。疑いは一度生まれれば自然に消えない。疑念を潰せるまで調べて暴いてしまえばいいのだが、それをすると今度は逆に探られた相手の方がフジオを怪しむ。堂々巡りである。
ので、一度信頼できないと思った相手からは三日以内に距離を取るようにしている。
フジオは自分に害がなければ末法仕草も気にしない。ただ機会の平等を重視するタイプなのでリーダーシップをとる生存者とかが薄っすら嫌い。
じかいに男性を、ころす
追記長くなりすぎてころせませんでした、つぎのつぎにころす