ゾンビものの世界で、モブがこの先生きのこれるわけwww   作:KNa\

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第6話

 

外は昼を過ぎたころになった。港の倉庫から歩いて数十分進めばあの男性の拠点に使っている家を含む、いくつかの民家の連なる住宅街まで辿り着ける。殆どの家は鍵が開いており、中は空っぽであることが多い。

 

ただ、中の見えないように扉や窓に目張りと封がされている家が一つあった。男性の拠点から五件ほど離れたこじんまりとした一軒家だ。

 

フジオはその封がされた扉を外から無理やりこじ開け入り込み、おそらくリビングであったであろう部屋の中にいた。座り込んだ窓際のソファーは身動ぎするたびに埃が舞って露出した目が痒みを訴えてくる。フジオはマフラーに深く鼻を埋めてヘルメットのつばを前に下げた。

あぁ……うぅ……

フジオの手元にはスマホが握られている。スマホの尻から生えたコードが窓の目張りへと伸びていた。どうやらソーラーパネルを目張りの一部に張っていたようだ。スマホの画面にはあと01:22という文字で操作受付不可時間が示されている。適当な八桁のコードをフジオでは突破できなかった。

 

「……一縷にかけるか」

      あぁ……うぅ……

ボソ、と音になるかどうか程度の音量で呟いてフジオはゆっくり立ち上がる。ズボンにスマホを仕舞い、ソファのひじ掛けに乗せておいた電灯を左手に逆手で握った。そして先ほどから耳に届いているうめき声を目指し、廊下へと足を向ける。

あぁ……うぅ……

スイッチを入れると。白い光が廊下を照らす。破損した扉から辛うじて差し込む光はこれでお役御免となった。視界を確保したのちに、フジオは右の腰から得物を一本引き抜いた。今回はアイスピック、狭い室内では突く動きのほうが早い。脳天へ突き刺すのにた(・)め(・)ら(・)い(・)がなければゾンビにも有効である……逆に躊躇えば差し出した手がご飯代わりになるのだが。

 

「指紋なら開けられるが、はてさて」

 

フローリングの床を前足を僅かに浮かせて滑るように移動する。足の裏全体、つま先と母指球含める前足底と踵の部位全てに均等に体重をかければ靴音は薄くなる。逆手に握りこんだ電灯は小指側が前に向くようにして構え、右手のピックはいつでも突き出せるように脇腹の横へ溜めて構えた。

        あぁ……うぅ……

床の塵埃を擦る僅かな音。フジオ自身の鼓動と呼吸の音。そして目の前にある薄く開いた扉から聞こえる音と……僅かにのこるすえたに(・)お(・)い(・)。

 

キィ。廊下に膨らんだ扉を左手の甲で押し開ききってから光を先に部屋中へ入れた。

 

あ、ぁ……ぅ

 

フジオがそこで見たのは、この世界ではある程度ありふれた光景だった。拘束されて身動きの取れない状態のゾンビの姿。死して他人を襲うために徘徊することを嫌がる人間がよくやる事。もとは年若い少年であったであろうゾンビは、カラビナと布を利用したロープでその両手足を貼り付けにするようにベッドの上に固く固定していた。

 

フジオは慎重にゾンビに近づき拘束の具合を確認する。同様のシチュエーションで油断して部屋の探索を始めた元同僚が頭皮とともに瞼を食い千切られた瞬間を覚えている。もう一年以上前のことだ。しかし幸いにも少年の最後の人としての抵抗は頑強であったようだ。拘束にほつれや緩みは見当たらなかった。

 

すかさずフジオはピックを床に置いて少年ゾンビの手を取ると人差し指をへし折り、取り出したスマホの画面にあてた。わずかに震えてロックは解除。フジオは間も置かずに設定画面を開いてPWの変更を行った。へし折った指によってこれもスムーズに行うことに成功。一度閉じた画面をフジオ自身の手で開けることを確認できた。

 

「コレは借りてく」

 

スマホを床に置いたフジオは即座にピックを取り上げ、その切っ先を少年ゾンビの額へ叩きつけた。づぶ。という感触の後、ピックを握る拳を大きく時計回りに回せば、右手の下に敷かれたソレはすぐさま死体へ成り果てた。

 

ご愁傷様。それだけを言ってフジオはピックを引き抜き、地面のスマホと取り換えた。

 

開きなおしたスマホの中にアプリケーションは数多かったが、フジオが見たいのは利用できる目途の皆無なモノではない。グローブから露出している薬指を小器用に滑らせて使用履歴をさっさと呼び出す。

 

「三か月前のオフラインで使えるポケットメモが最後……その前の写真フォルダは―――二年前。関係ないな」

 

最終履歴からアプリを呼び出し、中身を見る。久しぶりに開くとアタマまで飛ぶ作りのようだった。読み返しにはありがたい機能だ。日記として使うものではないらしく日付はついていなかった。

 

 

 

 

 

にっき

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

スマホに日記をつけることにした。ソーラー充電付きの充電器があるからしばらくはもつとおもう。今日は加奈と明人と、明人のお父さんと一緒に探索した。野菜の種を見つけて褒められた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

今日は加奈と加奈のお父さんと探索した。お金になりそうなものを見つけたけど怒られた。必要なもの以外はだめらしい。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

今日は愛ちゃんと明人と、明人のお父さんと探索した。変なお菓子を見つけた。ついでにラジコンがあったからこっそり持って帰った。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

今日は飯島と隆と三人で探索。あいつらマジで何もしないでやんの、探したフリで済ます気らしい。チクるのは怖くてできないから書くだけ。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

今日も探索。夏樹と明人のお父さんと。何も見つからなかった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

探索。明人と飯島と。見つからない。俺まで怒られた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

今日は休み。ラジコンが充電式だったから、試しにソーラー充電器につないでたら動いた。家の中じゃ狭い。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

探索。人が減ったから二人ずつになるらしい。加奈と一緒に探して健康サプリ見つけた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

必要のない情報がいくつかあるなと。フジオはそう判断してスライドを早めて気になる部分だけを流し読む。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

新しい人が見つかった。大人。海近くの一軒家で、機械修理とかしてた男の人。優しそうだった。色々作ってくれるみたい。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

大人たちで話し合いしてたらしくてお休み。加奈のお父さんと機械の人が代表になった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

探索の前に発信機をもらった。子供は全員。加奈と探索して、ペットボトルの水を見つけた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

夏樹と。やつれててからかい返したり出来なかった。励ましたら泣いて謝ったから許すことにする。子供の探索は今日で終わりになるらしい。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

探索ないから、書くことなくなった。ずっと畑とか水溜め。一日中だから終わったら眠くて遊べないしつまらない。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

明人と隆と飯島がいなくなった。みんなで近くの家を探してるけど見つからなかった。別に見つからなくていい。発信機は三つとも道に捨てられてたみたい。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

港の方に化け物がでた。虫みたいな、肉の塊みたいなの。服っぽいのがくっついてたからアレもゾンビらしい。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

加奈のお父さんが死んだ。加奈がすごく泣いてた。機械の人が引き取ったらしい。俺も慰めたけど、ずっと泣いてた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

休みの日に遊びに誘っても加奈は出てこなかった。ごめんってだけ言われた。明日も誘う。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

最近、大人が返ってこない。港の方で車とかだけ見つかってる。最近機械の人が厳しくなった。仕方ないかもだけど殴られると痛い。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

愛ちゃんのお母さんとお父さんが死んだ。死んだのに気づいてない。俺が悲しくなった。加奈は出てこない。気づいたら残ってる人が十三人になってる。数えなおしても同じだった。最近港の化け物が増えてる気がする。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

今日は加奈を無理やり連れだした。少しだけ元気になった気がする。よかった。機械の人にはすごい怒られた。ちゃんと言うことを聞くようにだって。痛かったけど平気だ。加奈のためなら。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

加奈がいなくなった。みんなで探した。愛ちゃんだけは笑ってた。何もわかってないのはわかるから怒れない。機械の人は、見てわかるくらい取り乱してた。ずっとなんでなんでって言って、見守りが甘かったって。俺が外に連れ出したからかもしれない。探さないと。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

見つからない。また怒られる。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「そういえば勝手にこっちが何かやるのを嫌がってた気がすんな」

 

フジオは初日の男性の様子を思い出す。至れり尽くせりで献身的。やること全部を世話してくるが、こちらから何かしようとするとやけに強く断ってくる。持っていた薬などの物資の提供などの申し出。食洗器のボタンを押すことすら。

 

「焚きつけて対等に巻き込んだのは正解だったか」

 

メモをスクロールするたびに、男性の中身が見えてくるようだった。爽やかな笑みの裏、あの黒縁眼鏡の下は随分歪んでいたらしい。ス(・)タ(・)ン(・)ス(・)違(・)い(・)の(・)相(・)手(・)に(・)恩(・)が(・)出(・)来(・)て(・)し(・)ま(・)っ(・)た(・)と思っていたあの日の自身に笑ってしまいそうだ。秩序も倫理も我欲の下に敷いている。どう考えてもアンモラル側の人間である。わずかに瞳を細めながらフジオは画面の文字を追う。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

加奈は見つからない。次は夏樹がいなくなった。名前を知ってるのは愛ちゃんだけになった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

今日も人が消えた。大人がもうあと三人しかいない。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

風邪を引いた愛ちゃんを機械の人が引き取った。目が怖かった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

今日も人がいなくなった。もう俺と、機械の人と、愛ちゃんしか残ってない。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

アイツが犯人だった。スタンガンと、いなくなった人の道具持ってた。加奈のお父さんの拳銃もあった。勝手に入ったのがばれてる。家をふさいだ。玄関も窓も全部。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

外からアイツが呼び掛けてくる。声は優しいのに怖い。出てきなさい。いうことを聞きなさい。そうすればいつも通り助けてあげる。だから出てこいって、愛ちゃんはあんなにいい子なのにって。普通みたいな声で言ってくる。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

アイツがいない夜の間に、倉庫に行ったら加奈に噛まれた。謝りたかったのに、ゾンビになってた。驚いて倉庫に閉じ込めて逃げた。最低だ。噛まれたところが痛い。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

愛ちゃんを助けようにも、アイツの家は全部が頑丈になってた。傷が治らない。力が出ない。

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最近がめか(^おかしい、おなかもへんた。体まっすぐきならない。。ねなたい目がおかしい。お腹も変だ。体はまっすぐにならないし、眠たい

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

。おれは。そわひなてふ なわ あくつた俺がゾンビになってる 縄を作った

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

いやた(^∀しにたかなあ けど ぞ、、ひ おふわなあよあに嫌だ。死にたくない けどゾンビ 襲わないように

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――――――――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――

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――――――――

――――

 

 

 

「……指が動かない状態でよくもまあ」

 

メモを読み終えてフジオは立ち上がった。スマホは仕舞い込み床のピックを取り上げて、電灯を片手にその場での手持ちを確かはじめた。フジオはこれからどうするかの試算を頭の中で弾き続けている。正直に言ってあの男性を相手にするという面倒な可能性が出てきたからだ。

 

港倉庫で少女を発見した後、男性の言動に違和感を覚えて調べた結果あの少女が男性とは全くの他人であろう事は判明している。その時点では明日にでも少女に「男性と暮らしていくか」それとも「男性から離れたいか」の二択を聞いて、選んだほうを尊重してやろうと考えていた……のであるが。

 

「拳銃は厄介なんだよなぁ」

 

メモの中に男性が銃火器を持っている可能性を見つけてしまっていた。銃は普通にゾンビ以上の脅威である。

 

フジオの持つ武器は全てが近接用。クラブハンマー・アイスピック・サバイバルナイフの三種を左右の腰に一本ずつ、計六本を提げている。殴る・刺す・斬るの三種類がフジオの手札だ。銃に関しては射撃センスが皆無な事と発生する音の大きさを理由に携帯していない。

 

つまり敵対すればかなり不利だ。敵対しない可能性もあるが、メモまで見たフジオの分析によれば男性はかなり自己優先(アンモラル)側で、自身の優先を妨げる相手なら殺しを躊躇わないタイプ。少女が手元から居なくなるとなれば唆すフジオを排そうとするだろう。

 

「……小細工するか、使えそうなものはここにありそうだ」

 

フジオは部屋の中を見回して使える手を見繕う。家主は既に死んでいて男性に恨みもありそうだ。使ってやるほうが供養になるだろ。勝手に頭の中でそう結論付けてフジオは背負ったリュックを開いて家探しを始めた。

 

 

 

 

 

Tips

 

ゾンビ世界になる前まで、男性は自作の人工知能を開発して溺愛していた。

自身で調教し、会話し、成長を見届けるというコンテンツは男性の「自分自身の好きに育て上げたい」という嗜好によく合っていたが、世界崩壊後人工知能を維持できるほどの余裕は当然消えた。生きるためにインフラを整えた後にはかつてのAIは残っておらず、調教し直す程の余裕も戻っていない。

調教と躾と教育するだけなら拳と言葉を使える人間相手でもいいと気付いてしまった模様。

 




投稿ボタン押せてなくてぇ
男性も殺せてなくてぇ

つぎはころします
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