ゾンビものの世界で、モブがこの先生きのこれるわけwww 作:KNa\
フジオの考えていた計画を伝える機会が訪れたのは意外にも、その日の夕飯後直ぐにやってきた。
警戒心の高まった少女と、計画を練っているフジオと、心境の不明な男性の三人での会話の途切れまくった気まずい食事の最中に、男性から少女へフジオがここを去ることを聞かせたからだ。
その際に少女が一人で出て行くのか?とフジオに質問をして、それに対してフジオが面倒だから後でな。と答えた流れから食卓を片付けて歯磨きを終えた後に二人で会話する機会を得たのだった。男性はフジオのスマホに入れるディッパー対策用の機能を試作してみると言って、先に機械とモニターで埋まった男性の自室に戻っている。
「……」
「……」
時刻は22時を回ったところ。二人きりになったリビングの机の上で、フジオと少女は互いに無言で向き合っていた。少女のほうは顔には出さないようにしているがフジオを警戒していたからだ。助けてくれた事や目覚めてすぐの時に背中を支えていたことは覚えているが、現在のところ少女の視点ではフジオはあの男性の仲間である。食事の際にフジオが出ていくと聞いて質問したのも、逃走の難易度が変わるかもしれないと考えたからだ。そうして話を聞く機会を得たものの少女は話を切り出せずにいた。
対するフジオは少女の様子の変化に気づいていた。港倉庫で男性が多少おかしな人間だと確信していた時こそ、何も知らない少女に選択肢を与えてやろうと考えていたが、今の様子を見るにどうやら男性がヘマでもしたのか、騙されていることに気付いているように思える。ともすればフジオの助けなしでもそのうち逃げ出すのではないか?といった考えが頭に浮かんでいた。少女が自力救済に
しかし、そこで思考を咎めるように胸のあたりがズキリと痛んだ。無言の時間を断ち切るようにフジオはポケットからメモ帳とペンを取り出し始める。
「あー……まず、俺は明後日にはここを出る。アイツのおかげで海に出る手配がついたからな」
フジオは少女にも見えるようにメモ帳を開いて机に置き、手に持ったペンでページをコツコツと叩く。それを受けてようやく少女も動く準備が出来たようだ。警戒は解かないまま首をかしげて口を開いた。
「……海にでて、なにするの?」
少女の様子を見てフジオは聞く気はあると判断。メモ帳を捲って何も書かれてないページを開いてから、するすると口とペンを動かす。
「ここの港から上の方に有るらしい海上拠点に行く。デカい客船らしいが詳しくは知らん」
「……知らないって、それ危ないでしょ絶対」
呆れた声で少女は首を横に振った。それを見てフジオは片眉を上げて鼻を一つ鳴らし、ずい。と少女に見やすいようにメモ帳を机の中央側へ寄せた。
「仕方ないだろ、奴さんら定期的にやってたラジオ放送の呼びかけを二か月ほど前からやめたんだから」
「……それ船がどこにあるのかわからなくない?」
フジオの答えを聞いて机に頬杖をつく少女。二か月も間が空けば船は移動してしまっている可能性は確かにあるだろう。フジオはその問いに対してスラスラとペンを走らせつつ会話を続ける。
「いやここの港をスタートとして書くとこう上がっていって……この辺りにあるはずだ。放送を何度か聞いた限りゾンビの来れない沖合に錨を下ろして停泊してるらしいからな」
「……ふーん?」
「移動可能な船はもう用意が出来てる、あとは明日食料や道具の厳選を終わらせてから船を使ってそこへ向かうだけだ」
ぺらり。フジオがまた一枚メモ帳のページを捲り白紙の上にペン先を置いた。フジオが行き当たりばったりとも言える計画を語る様子を見て、少女は自身の中に沸いた疑問をフジオに指をさしながらぶつけた。
「……なんでそこまでして?」
「あ?……そうだな……単に気になったからだ。毎週毎週呼びかけてたのが突然止まったからな、だから確かめてみるのさ」
「……本気?あんたも危ないでしょそれ」
「ああ本気だ。俺が決めたからそうする。どうせこんな世の中なんだ、やりたいようにやった方が結果はどうあれ気分がいいぞ」
「……確かに、その通りかも」
つらつらと淀みなく綴られるペン先の黒とフジオの言葉を受けて、少女は本当に呆れたようなあるいは何かに安堵したかのような声を出した。
「なんだ突然素直になったな。船旅に興味でも出たのか?それなら見送りに―――」
「いいよ、見送りくらいしてあげる」
フジオが何か言うより早く、少女はペンを奪って言葉を差し込んだ。一瞬面くらった様子のフジオだったが、はン。と一つ鼻を鳴らして机に転がされたペンとメモ帳を取り上げて立ち上がり、机を離れた。
「―――なら子供はとっとと寝ろ。明後日に引きずって寝坊しても起こさねぇからな」
「言われなくても。もう眠いし」
少女は大きなあくびを一つして机を立った。
パチリ。最後に部屋を出るときに少女が電気を消して出て行って、二人はそのまま各々が寝る部屋と戻っていった。
「……フジオさんが彼女に変な入れ知恵でもしないかと思いましたが、杞憂でしたか」
リビングから少し離れた男性の部屋中。モニターの明かりに照らされていた男性はヘッドホンを取り外して、食事終わりにリビングに取り付けておいた盗聴器との接続を切った。二人を置いて自室に戻っていた男性だったが、実は会話の一部始終を聞いていたのだった。
「突然出立を言い出したからと、穿って見すぎたかもしれないですね」
男性はそう言って古くなってきたチェアに背をもたれさせた。男性のデスクの端にはフジオに頼まれたスマートフォン端末が汚れなどが拭われた状態で置かれている。スマホ端末の中身はフジオの申告通り初期化されていることをすでに確認済。会話の中にも可笑しなワードは無かったはずだ。フジオは元々海に出るためここに立ち寄った話は聞いているので、言い出すタイミングが今日だっただけなのだろう。男性はそう結論付けて自作PC端末をスリープさせ、明日の準備に備えてベッドへ潜り込んだ。
/////
次の日は、特段何も起こらずに終わる。
フジオは出立の準備のためにディッパー除けを持ったまま周囲を探索し、男性はスマホ端末に追加した機能を試させながら余裕のある物資を融通し、少女は大人たちの邪魔にならない程度に手伝いをしながら質問をして記憶がないなりの情報収集を行った。
それらは特段問題なく終了した。フジオは一人なら四日は生き抜ける物資を用意しリュックに纏めた。男性は開発したスマホ用のディッパー除けの動作を確認、以前まで利用していた発信器と同じく動くことを確認した。少女はこの世界におけるゾンビや変異種についての知識をある程度獲得することに成功。三者三様に目的を満たした日となった。
/////
あくる日、早朝。上りかけた太陽が空と雲を染めている時間。拠点の玄関へと男性とフジオ、そして少女の三人が出てきていた。
フジオはフル装備+電動自転車。残る二人もゾンビ対策には十分な丈の長い衣服を身に着けている。ついに今日がフジオの出立の日である。現在は家を離れる前に、ディッパー除けとしてスマホ端末が今日も機能しているかの最後の確認をしていたところだった。
「よし、昨日の通りスマホでも電波は出せてますね。まぁ発信器ほどじゃないですが半径4、5mくらいは効果はあるでしょう」
男性はそう言って信号受信用の機械を仕舞った。これならばフジオが一人で海へ出ても、ディッパーに襲われることはないだろう。これでも男性からフジオへの感謝は本物だった。少女に出会えたのもフジオのおかげである為、調整は本気で行ってある。
「そうか、助かる」
「ええ、ただ充電の残量にはお気をつけて。切れてしまえば効果もなくなりますからね、フジオさん」
男性は注意点を伝えながら、片手に残したスマホ端末の画面を落とし、くるりと半回転させてフジオに差し出した。充電や取り扱いについては昨日の時点で共有済なので割愛している。あとは彼が問題なく海へ出られれば良い。男性は新しく始まる少女との日々を前にご機嫌であった。次こそは絶対に逃がさず、死なせない。
「……?、どうしましたフジオさん?もう受け取ってもらって大丈夫ですよ?」
「あぁ、いや。ちょっと申し訳ないと思ってな」
「いえいえ、あの子を見つけてくれたお礼ですから。さぁ、なにも遠慮なさらずに」
なぜかスマホを受け取らず、じぃ。とみてくるフジオに向かって男性はそう言って、ずい。とフジオの前にスマホ端末を差し出す。というか遠慮せず受け取ってもらわないとフジオがここから立ち去らないのだ。男性にとってはそっちのほうが困る事態である。
「なら遠慮なく
「はい、どう――― ドゴグッ!!
顎と胸元を襲った突然の痛み。男性の視界が大きく揺れて、肺と気管の間で空気が詰まった。頭が情報を処理できず、耳から入る音にキィ―ンと強い金属音が混じっていく。
「よし、漁って縛ってとんずらだ」
「うわ、容赦な……」
「素手だ。手加減もしてる。いいから急げよ、時間との勝負だぞ」
「わかってるけど……はぁ、信じるの早まったかも」
誰かが喋っている。それだけを最後に認識して、男性の意識は真っ黒に染まって落ちていった。
「う……ここ、は……っ!?」
体の冷える感覚を覚醒の合図にして、冷たい床の上で男性は目を覚ました。立ち上がろうとして体を動かしたが、足がうまく広がらない。両手を支えにして体を返して見れば、細長い布タオルで足首や膝が縛られている。
あたりを見回してそこが拠点の中、玄関前の廊下であると男性は気が付いた。目覚めたばかりで力の入りにくい指を何とか動かし拘束をほどくと、服装が乱れている。男性はそのまま服のポケットなどの収納の中を確かめた。
「っ、無い……くそっ!」
男性は思わず悪態を吐いた。ディッパー除けの発信機も、信号を受け取る受信機も、万が一の為のスチール警棒も消えていた。朝、フジオの見送り前に用意していた道具は全て持ち去られている。残っているものといえばかけられたままの眼鏡くらいか。
「ふっ……ふふふ、ふふっ……」
思わず。といった風に男性の口から笑いが漏れた。吐息が漏れるたびに肩が上下に小刻みに揺れた。
ふら。と頼りない足取りで男性は廊下の奥へ足を進めた。ふら、ふら。普段なら五秒もかけない自室への道のりを、十数秒かけて辿っていく。部屋の前に立ってノブを回し、電気もつけずにモニターを立ち上げた。
「あぁ、フジオさん。信じていたのに……信じて持たなかったのに。本当に、なんて酷い人だ」
ぶつぶつと呪詛のように呟きながら、男性はモニターの一枚に張り付くように顔を近づけた。そこには等間隔で点滅する赤い光点が映っている。その光点は点滅を繰り返しながら画面の中を不規則に移動していた。
「でも、じゃあ仕方ないですよね?やったことに、覚悟もしてるんですよね?」
武器まで取り上げたんですもんね?そうやって男性は一人で空中に語り掛ける。返事を期待などしていない。すでに男性はどうするかを決めている。
「受信機はね、持ち運ぶために機能を絞ってるんです。このモニターでなら信号の全てを確認できる。距離も、動きも。色分けも……フジオさん、スマホは赤にしてるんですよ」
既に男性はスマホの位置を把握していた。場所は港の海側近くの倉庫になっている。いまだにそこにいるのなら走って向かえば間に合う筈。男性はそう判断してデスクの引き出しを開いた。
「……信じてたから、今日は仕舞っておいたのに。あぁ、本当に残念です」
ぬら。と男性の手に握られたソレはモニターの光を反射して青黒く輝いた。正体は拳銃。一年近く前にとある事情で入手することが出来た警察用のモノをカスタムした代物だ。
試射も行っており、男性は24m以内であれば動いていても六割程度当てられる。普段は虎の子としてズボンベルトの内側に忍ばせているが、今日は警棒だけを携帯していた。本当に男性はフジオを信頼していたからだ。実際はこうなってしまったわけだが、コレを奪われずに済んだだけ怪我の功名といえるかもしれない。
「ああ、待っててくださいね。すぐに邪魔者は消して、迎えに行きます……今度はもっと厳重に、部屋からも出られないようにしないと!」
男性は拳銃を片手に握って全速力で走り出した。
家を出て十分弱。目当ての倉庫に到着した男性は勢いのまま倉庫の扉を開いて中へ飛び込んだ。拳銃を両手に構えて目線を走らせ、動くものを探そうとする。
「……え?」
耳に、次いで目に。全く予想していなかったものが飛び込んできた男性は声を漏らした。倉庫の中にはフジオや少女の姿形はおろか影すらも残っていない。あったのは、倉庫の床を走り回る
「ふっ……ふざけ……ふざけないでくださいよ……?」
男性の震えた声が倉庫に響いてラジコンカーの走行音に消されていく。走り続けるラジコンカーが、カコンっ。と倉庫に残された廃材や残骸にぶつかるたびにその進路が変わる。
カコンッ。何かにぶつかったラジコンカーがまた進路を変えて、男性の方へまっすぐに向かってくる。
「ふざけるなっ」
男性が大声をあげてラジコンカーを踏みつけた。メギッ。ラジコンカーは呆気なくその動きを止めたが、なおも男性は踏みつけることをやめない。ダン。ダンダン。と何度も、何度もラジコンカーとその上のスマホ端末を踏む。しかし、近年まで多くの人々のインフラとなっていたスマホ端末は頑丈だった。男性が足を除けたその下で、土埃で薄汚れ、画面に罅が広がっても画面に光を灯し続けていた。
「あああああっ!!!」
堪え切れなかったのは男性の方であった。その手に握っていた拳銃を床の上のソレに向け、人差し指で三度引き金を引いた。竹を踏み割るような音が鳴り響けば、男性の望んだ通りの結果が足元に残骸として転がっていた。
「……はぁ……はは、見事に騙されましたね」
そう力なく吐き捨てた男性だったが、その顔は無表情だった。衝動を発散して多少冷静さを取り戻していたのだ。男性は体を倉庫の入り口に向けて進めていく。すでに頭の中ではどうやってフジオに追いつき、少女を取り返すかについて考えていた。
「でも、甘いです。乗っていったであろう船も自転車も、整備したのが誰だと思っているのでしょうか。発信機はなくてもスペックは知っています……子供を連れてるのなら進める距離はたかが知れている」
男性はフジオの目的地を知っている。勿論ブラフの可能性がゼロではないが、わざわざ船を求めてこの海沿いまで来ているのだ。まるっきり嘘である可能性のほうが低いと推測していた。推測がたてば道筋が出来る。ならば追えばよいだけのこと。男性はそうして頭の中に道程を描きながら倉庫の入り口を出て
……カサ…カサ
男性は忘れていた。いや、正確に言うなら知識としては覚えているが失念していた。
……カサ…カサ ……カサ…カサ
男性は生きていく中で一度もディッパーの恐ろしさを経験したことが無かった。それは幸運なことだったが、今ここに至っては不運であったともいえる。
……カサ…カサ ……カサ…カサ ……カサ…カサ ……カサ…カサ ……カサ…カサ ……カサ…カサ ……カサ…カサ ……カサ…カサ ……カサ…カサ ……カサ…カサ ……カサ…カサ ……カサ…カサ ……カサ…カサ ……カサ…カサ ……カサ…カサ ……カサ…カサ ……カサ
無意識下でその程度の認識しかしていなかったから、拠点の外に
「おや」
だから、男性が音に気付いて倉庫を振り返ろうとした時には既に。
音に集まったディッパー達の18本の口吻は男性の体に突き刺さっていた。
「お゜ひ゛ゅ!」
Tips
男性のせいぞんるーと
①フジオを助けない。※そのうち無気力になって死ぬ
②少女を見つけたときにフジオを撃ち殺しておく。※少女はストレスで早死にする
③スマホを壊さない。※ホーム画面に「俺は海上拠点に向かっている」とメッセージが残っている
④少女を諦める。※旅を始めて生存者の子供を攫うようになる
やぁっと当初の予定通りにころせたのではっぴー
話は変わるんだけどもしかしてスマホだと特殊タグで白色ルビ振ったやつ見えなかったりする?
今回のルビ遊び見えないとフジオと少女の筆談見えないことになるんだけど。