追放ニート侍~もしもパーティーを追放されたのが本当に最低の屑だったら~   作:RYUZEN(孔明)

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第42話  エッチなお姉さんは好きですか?

 ルチアーノから魔法使いの宛てが見つかったと言われ待っていると、目の覚めるような佳人が現れた。男であるジャックどころか、幽霊で女のキクコまで幼さと妖艶さの同居した蠱惑的な美しさに目を奪われている。

 

「初めまして。三級で渡りの冒険者をしているルサルカ・レインワースさ」

 

 透き通るような声で女魔法使いのルサルカは名乗った。

 いつものヘイザなら美女を見れば反射的にナンパするところだが、彼女からは漠然と嫌な予感がしたので、露骨に探るような目を向けながら言う。

 

「三級冒険者で魔法使いと聞くが、なにができるんでござるか?」

 

「なんでもさ。僕は規格外の天才だからね」

 

「じ、自分で規格外なんて言う人、初めて見た」

 

「謙遜は美徳と言うが、僕に言わせれば単なる予防線だよ。失敗したら笑いものになるから自分を低く見積もるのさ。僕は悪い女の子だから、自分の評価に正直なんだよ」

 

 ジャックに対してルサルカはコロコロと笑いながら言った。

 自分で自分を規格外だと評するその顔には、なんの誇らしさも尊大さもない。空は青い、という当たり前の事を当たり前に言っているような調子だった。

 

「ええと、それじゃあどれくらい規格外なんですか?」

 

 キクコが率直な疑問をぶつける。

 

「元素四属性の魔法使いは、鍛えれば生来の属性以外の魔法も修得できるが、それも三属性が限界なのは知っているかい?」

 

「ああ。反対属性の魔法は修得できないんだろ? 火に対する水、土に対する風って具合で。糞オヤジは風属性だったから、火と水は使えたけど土属性の魔法だけは使えなかったし」

 

「ところがどっこい! 僕は反対属性も含めて、全四属性制覇しちゃったんだな、これが!」

 

「「えええええええええええええええええ!?」」

 

 ジャックとキクコが二人揃って引っ繰り返るほど仰天する。もしそれならとんでもない大偉業だ。

 

「三属性制覇まではそこそこいるけど、四属性制覇は僕で二人目だそうだよ」

 

「そんな天才がなぜ冒険者なんてやっているでござるか? 本国のフォーマルハウト魔法学園なり新大陸のガーフィールド魔法大学にでも行けば、一生安泰であろうに」

 

「別に僕は安泰に安穏と暮らしたいわけじゃないからね」

 

「なら、なにが欲しいんでござるか?」

 

 ルサルカは妖艶に微笑むと、

 

「肉欲さ! 僕は男の人とエッチするのが大好きなんだ!」

 

「は?」

 

 とんでもない爆弾発言をした。

 これにはヘイザも呆気にとられ、ジャックとキクコは顔を真っ赤にして仰天する。

 

「つ、つまり冒険者として稼いで男娼を買う金が欲しいと、そういうことでござるか?」

 

「おっと、言葉が足りなかったね。僕は”好きな”男の人とエッチするのが大好きなんだ。生憎と男娼は僕のタイプじゃないよ」

 

「じゃあどういう人が好きなんです?」

 

 キクコの質問にルサルカはよくぞ聞いてくれました、とばかりに艶めかしい表情で語り始めた。

 

「英雄さ。高望みするなら天下を統べる天下人がいい。国の頂点に立つ男にお姫様抱っこでベッドに運ばれるとか考えるだけでゾクゾクしないかい? 首輪つけられてペット扱いされるのも興奮するし、攻守逆転で自分が上に乗るっていうのそそられる。……あ、ごめん想像して興奮してきたから、ちょっとトイレ行っていいかな?」

 

「使い終わったら水魔法で浄化しておけよ。念入りにな」

 

 ヘイザは硬い表情で言った。

 

「つれないね。エッチなお姉さんは嫌いかい?」

 

「拙者は酒好きだが、嫌いな酒もある」

 

「冷たい声だね。ゾクゾクするよ」

 

「…………」

 

 美しい女性に明確な好意を向けられて、ここまで嬉しくなかったのは生まれて初めてだった。ヘイザは決して尻軽で、好色な女性が嫌いではない。寧ろ気楽に付き合えるので、好きな相手である。しかしどうにもルサルカの事は受け入れられなかった。

 

「ルサルカさん。お願いですからルチアーノさんに手を出して、いらぬ騒動を引き起こさないでくださいね? 既婚者なんですから」

 

「大丈夫だよ。もうフラれたから」

 

「判断が早ぇ!」

 

「ルチアーノはいいね! 独立戦争での汚れが、逆に彼の秘めた英雄性を高めている! 見ててムラムラしたよ! だけど……ゴドリックのほうは駄目だったね。汚れることで英雄性が陰ってしまった。この国を背負ってたてるカリスマ性が、台無しだよ」

 

 ルサルカはルチアーノを褒め称える一方で、ゴドリックを貶めるような発言をする。けれどヘイザは発言の裏を感じ取った。

 英雄性は往々にして政治家や官僚の気質とは相反するものである。なので英雄性のあるルチアーノは、英雄性を失ったゴドリックにその点においては劣っていると評してもいるのだ。

 

「英雄ならヴァルゴ・ハルファスとかはどうです? 地元じゃ英雄扱いでしたよ」

 

 キクコが以前関わった拉致監禁したストーカー冒険者の名前をあげる。恋愛のやり方に多大な問題はあったが、確かに彼が英雄であったことに疑いようはない。

 

「ああ、彼も臭い立つ色気がむんむんしてたね。一緒に臨時でパーティー組んだ時に誘ったら、恐い目で見られたけど。ま、今現在の私の興味は、そこで無頼を気取ってる――――」

 

「無駄話はここまででござる。そろそろ鬼ヶ島の攻略について話し合うでござるよ」

 

 ルサルカの熱っぽい視線を断ち切る様に、ヘイザは話を切って捨てた。

 

 

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