俺、男の娘から脱却したいです。   作:yosshy3304

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スパイダーギルディの華麗なる暗躍な日々。

「侵攻が始まったか、これは急がなくてはいけないな。」

「では…」

「ああ、緊急会議だ。皆を集めておいてくれ。」

 

テレビに映った見事なツインテールを披露したあの少女。テイルレッドと言われていたあの少女の後ろに映った小さな怪人の影。

 

「先遣部隊のリザドギルディが現れたのだ。そう時間はあるまい。」

 

スパイダーギルディの小さな呟きは誰も居ない長い廊下に溶けて消えていった。

 

「さて、皆に集まって貰ったのは他でもない。昨日未明にこの世界へとアルティメギルの侵攻が始まっていた。」

 

ホッパーギルディが進行役を務めている。部屋は暗く目を悪くしそうな物であったが、我々には関係のない事だ。むしろ光が良く見える様になる事から、集中して考え事をしたい時はこのようにしている。

 

今まで恐れていた事が現実となっていたと知れ、ざわざわと騒がしい。

 

「静まれぃ。そもそもこの事態は何れ来ると分かっていた筈だっ!!」

「し、しかし、いささか早すぎではございませんか?我々の計算では後数年の猶予があった筈…」

「予定は未定と言う言葉をお前は知らんのか。今はそのような事を論じている暇はない。

 

それを無理やり封じて、だが侵攻が何れあると言うのは此処にいる皆が分かっていた事。それが早まろうとも、必要な事は姫やそのご家族の身の安全が最優先事項。

 

「…我々の目的は侵攻させない事では無い。姫を悲しませない事だ。その事を努々各自忘れない事だ。」

「スパイダーギルディ様の言うとおりだ。各自その事を心して発言せよ。」

 

普段なら落ち着いているこいつも興奮しているようで、仕方なしに口を開いて場を落ち着かせる。

 

「まずは私からだ。」

 

流石にホッパーギルディも落ち着いたようで、だが重要事項を任せていた事もあり、本来ならまとめ役に徹するホッパーギルディが最初に口を開く。

 

「やはり隊長とスタッグギルディは難しいと言わざるをえません。」

「…だろうな。だが決別の時と考えるのならば好都合かもしれん。」

 

本来ならもっとざわつく筈なのだが、誰もが分かっていると言わんばかりに黙っている。

 

我ら美の四心(ビー・ティフル・ハート)の隊長は純粋な男の娘属性とは良いずらい。あの人は、一定以上の知性を持つ生物ならば誰でも持っている愛情の属性力、恋愛属性なのだから。

 

何処にでもある上、一度奪ってもまた芽生えてくるもの。それは無限の属性力と似ているが、たの属性力と違いとても弱い。

 

だがそれゆえ数が膨大で、だからこそ強いと言わざるをえんが、魅力を感じずらいのもまた確か。

 

義兄弟であり、ビートルギルディ隊長を尊敬しているスタッグギルディもまた恋愛属性であり、隊長以外の者に仕えると言う事を知らん。

 

「それ以外であれば、今の所はパピヨンギルディの懐柔に成功しました。」

「えー、私パピヨンギルディは、姫様に絶対の忠誠を誓う所存でして…」

「よい、姫様の優しさを裏切る事が無ければな。」

「それは、ありがとうございます。」

 

こいつは裏切る心配はない。唇属性であり、属性力を持たずとも見事な唇に出会えば型を取ってコレクションしてしまう。

 

いや、見事と断じられるほどになれば、それは須らく属性力を宿している物だが。

 

「いやー、姫様は寛大ですね、はい。まさか保存用と観賞用、それに予備と三枚も取らせていただけるとは…、今までの物が霞んでますね、はい。」

 

姫様の無限の属性力、更には御家族から受け継がれた神の如き遺伝子が成せる技だろう。

 

このパピヨンギルディの御眼鏡にかなった唇拓の中でも一層の輝きを放っている。

 

お父上の作品に出られるだけあって、サインを求められる事もあり、その時にキスマークを入れられる事もある。その為か、近付けるだけで勝手にスキャンする鱗粉で出来た銅版へと平気で近づきになられた。

 

結構嫌がる者が多い中で、何でも無い事の様に何度も型を取らせて貰った事に感動しているからな。

 

「次の報告は私から。」

 

次に前へと出て来たのは先遣部隊を探らせていたキャタピラーギルディである。

 

「会議はどのようにしてテイルレッドから属性力を奪うかと言う議題から始まりました。」

「何っ!?」

 

だがその内容に驚きを禁じ得ない。主に属性力の回収は態と属性力を世界に蔓延させ、育ちきった後に刈り取るのが通常のやり方。

 

テイルレッドの属性力は画面越しでもビンビンに伝わってくるほどのもので。映像に属性力が乗る事で拡散するのはそれだけ速い筈。

 

お父上の撮る作品にも属性力はあり、だからこそ監督として大成したとも言える。

 

「先遣部隊はこのやり方を知らないのでしょうか?」

「いや、あそこは五大究極試練の一つを乗り越えたドラグギルディが隊長を務めていた筈だ。」

 

キャタピラーギルディの言葉を事実でもって否定すると、俄かに騒がしくなる。

 

それもそのはずで、ドラグギルディの性格上仲間を態々犠牲にするような事も無く、またアルティメギル様を裏切るような事も無い筈。だからこそ調略は仕掛けていないのだから。

 

「ただ、テイルレッドの戦闘シーンを見て研究をしようとし…」

「そのツインテールに見惚れて無為に時間を潰したのだな。」

「…はい。」

 

それは仕方ない事だろう。このツインテールは良い物だと断じることが出来る。姫の存在が無ければ我々も見惚れてしまう所だ。

 

「次は私が。」

 

次に発言したのはアントギルディ。この場唯一の女性体であり、彼女の奉仕属性は、こと主人と認めた相手に対しては絶対である。

 

そしてその力はほぼ無限大と言えるだろう。

 

吸収した属性力を分け無数に分身体を作れるのだから。姫様を主人と仰いだアントギルディは今、この場の誰よりも力を有していたりする。

 

様々な部隊に加勢し、情報を盗み取っているのだから。

 

「各隊、またアルティメギル様に感付かれた様子はございませんでした。」

「そうか。」

「はい、姫様の膨大な男の娘属性の献上と、この場に留まり続ける事に対しても、効率的な属性力の拡散と言う名目である程度の情報は流出させましたが…」

「構わん。下手に隠して疑われる方が厄介だ。」

「ありがとうございます。」

 

日々、姫様に許可を取って属性力を取らせて貰っているのが良い方向に向かった。姫様の場合、一度属性力を取っても、すぐに復活してしまう。それどころか、取らない日々があると、その身から溢れ出してしまう程巨大な物だ。

 

だからこそ、何だかんだと言いながら、皆が姫様から属性力を奪っている。そうしないと姫様を狙って幹部級の戦闘員が送り込まれてくるだろう。

 

強烈な属性力はそれだけで目印になるのだから。

 

「今報告出来る事はこのぐらいです。」

「で、あろうな。前の定時会議からそれ程時間も開いていない事もある……、っ!?」

 

ホッパーギルディの言葉で考えを纏めようとした瞬間の事だった。強烈な波動が発せられた事に気付く。これは宣戦布告用の全世界通信かっ!?

 

慌てて暗幕を掃い、窓を開けて空を見る。

 

『この世界に住まう全ての人類に告ぐ! 我らは異世界より参った選ばれし神の徒、アルティメギル!!』

 

『我らは諸君等に危害を加えるつもりはない! ただ、各々の持つ心の輝きを欲しているだけなのだ! 抵抗は無駄である! そして抵抗をしなければ命は保証する。』

 

『だが、どうやら我らに弓引く者がいるようだ……抵抗は無駄である! それでも敢えてするならば……思う様受けて立とう! 存分に挑んでくるがよい!!』

 

空に映し出されるドラグギルディの姿。だがやはり何処かおかしい。無駄に垂れ流される覇気もそうなのだが、まるで何かを耐えるかのようなあの瞳の奥の輝きは、一体何だと言うのだ。

 

それに態々宣戦布告をするのならば、それこそリザドギルディが倒される前に行えばいいのだ。

 

リザドギルディに属性力拡散用の偶像を探させた事は有り得ても、覚醒したばかりの戦士に倒させる等、あのドラグギルディらしくない。

 

「皆よ、私は…姫とその御家族に詳しく話そうと思う。」

「なっ、何故ですか。その様な事をすれば下手をすれば…」

「この放送は何処からでも見れる代物。姫様も見ておられるはずだ。」

 

本来なら姫様やその御家族には詳しく話す事はしない筈であった。アルティメギルの侵攻が終わるまで、その存在を秘蔵し、切り抜ける予定であったのだが。

 

私が告げた言葉に、数人だが驚く気配を感じた。だが残りは目を閉じて思考していた。

 

驚いた一人が問いかけて来るが、本心は隠し、失礼だが姫様を理由にさせて貰った。

 

本心は今のアルティメギルが何をしてくるか分からないと言うもの。それ故に姫様の守護を万全にしておかなければならない。

 

ならば姫様にも心構えをしていてもらわなければ、守り通す事など到底不可能であるからだ。

 

「バッグワームギルディ…」

「はっ!!」

「作って貰いたいものがある。」

「はっ!!如何様な物でもお任せあれ。」

 

我がアルティメギルが誇る開発者。機械少女属性を持つバッグワームギルディならと、姫様に出会った当初から考えていた装備の原案を手渡した。

 

「これは…」

「我らの害となろうと、姫様だけは守り抜かなければならないのだ。…頼む。」

「なっ、スパイダーギルディ様、頭をお上げください。…分かりました。姫様の為ならこのバッグワームギルディ、一肌脱ぎましょう。」

「おお、やってくれるか。すまん…」

 

それは下手をすれば我々エレメリアンを殺してしまえるほどの物。しかも構造は単純であり、ましてやバッグワームギルディなら難なく作ってしまえる程度の物。

 

だからこそ、頭を下げる。姫様の為なら痛くも痒くもない。

 

慌てるバッグワームギルディの言葉を聞いてから、やっと頭を上げた。

 

再び窓を閉め、暗幕を戻した所でドタバタと駆けてくる音が響く。

 

「スパイダーギルディっ!!」

 

どうやら姫様がご帰宅なさった様なのだが、やはり先の放送の所為だろうか。普段の御淑やかさは何処へやら。随分と慌てているようだ。

 

「活発に動き汗に濡れる太もも…」

 

誰かがポツリと溢した言葉に、全員がゴクリと喉を鳴らした瞬間。

 

「俺の部屋で何やってんだーっ!!しかも撮影用の暗幕まで持ち出してっ!?」

 

姫様がお部屋へと飛び込んできたのだった。




ギルディ側でした。
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