ガンダムビルドファイターズ-Sailing to the Sunshine!!- 作:陽@曜花推し
前回は、果南との久しぶりの再会、そして千歌・曜・梨子と一緒に「海の声」を聴くという少し不思議なお話でした。
休日をのんびり過ごすはずだった千咲ですが、最後に待っていたのは、
『至急OGLに来られたし。』
という、あまりにも急な呼び出し。
一体何事なのか。
デザイン画の催促なのか。
それとも、別の用事なのか。
そして今回、ついに千咲のガンプラ開発が本格的に動き始めます。
何より、千咲にとっては、これまで何度戦っても勝てなかった、とある人物との再会も待っています。
しかも今度は敵ではありません。
同じチームの仲間です。
果たして、千咲は天敵と仲良くできるのでしょうか。
それでは、第6話です。
前回の-Sailing to the Sunshine!!-
千歌、曜、梨子の3人は、いよいよスクールアイドルを始めようとしていた。
その一方で、千咲は内浦の海で幼馴染の松浦果南と再会する。
昔と変わらない果南との時間を過ごす中、千咲は彼女が今も自分にとって大切な存在であることを再確認する。
そしてその頃、千咲のもとへガンプラバトルに関する一つの呼び出しが入る。
千咲のもう一つの物語が、ついに大きく動き始める――。
「……至急OGLに来られたし」
ホテルのロビーで、千咲は先ほど受け取った伝言をもう一度読み返していた。
紙切れ一枚。
そこに書かれているのは、それだけ。
「……何なんだろうねぇ」
千咲は首を傾げる。
昨日までは普通の休日だった。
海へ行って。
果南と話して。
千歌たちが海へ潜るのを眺めて。
海の声が聞こえるとか、聞こえないとか。
そしてホテルへ戻ってきたら、いきなりこれである。
「もしかして、デザイン画の催促かなぁ……」
それが一番ありそうだった。
OGLから与えられている、千咲専用ガンプラのデザイン。
すでに開発は動き始めている。
しかし、肝心の千咲はというと。
「……まだ終わってないんだよねぇ」
机の上に広げた紙を思い出す。
ラフだけなら、かなり描いている。
頭部。
胸部。
肩。
腰。
脚部。
バックパック。
武装。
いろいろ描いた。
描いてはいる。
ただ。
「何か……決まらないんだよねぇ」
どこかで見たような形。
好きな要素を詰め込んだだけの形。
格好良いけれど、自分が本当に欲しいものとは少し違う。
そういう状態がずっと続いていた。
「……まあ、行ってみれば分かるか」
千咲はため息をついた。
「せっかくの休みだったのになぁ」
◆
淡島の船着き場にはには、小原家が手配した臨時船がすでに待機していた。
どうやら本気で「至急」らしい。
「……そんなに急ぐ?」
千咲が尋ねると、スタッフが少し困ったように笑う。
「OGLからの要請ですので」
「そうですかぁ……」
船へ乗り込む。
港を離れる。
淡島を出る。
そこから車へ乗り換え、伊豆の国市へ向かう。
千咲は車の窓から景色を眺めながら、ずっとぼんやりしていた。
「OGLかぁ……」
新しい専用機の開発。
OGLのスタッフ。
そして、その先にある、自分のガンプラ。
「……どんなのになるんだろう」
それだけは少し楽しみだった。
◆
伊豆の国市。
OGLの拠点へ到着した千咲は、スタッフに案内されながら廊下を歩く。
何度か来たことのある場所だ。
ただ、今日はいつもより人の気配が多い。
「……何かあるのかなぁ」
「はい。少しお待ちください」
スタッフが扉の前で立ち止まる。
「こちらです」
扉が開く。
千咲は中へ入って。
そして、止まった。
「……」
そこにいたのは。
3人。
1人目。
茶色い髪。
背が高い。
17歳。
見覚えがある。
いや。
見覚えなんてものじゃない。
何度も。
何度も。
何度も戦った。
私立ガンプラ学園。
全日本ガンプラ選手権・中高生の部。
4年連続チャンピオン。
デスティニーガンダムシグムント。
新堂陽哉。
そして、その隣。
180cmという長身。
落ち着いた雰囲気。
一見すれば寡黙そうに見える少年。
志木城隆利。
そして。
「……あ」
明るい髪。
ギャルっぽい雰囲気。
千咲の父方の従姉。
「えり姉……」
神代恵里菜。
千咲は、露骨に嫌そうな顔をした。
「……うわぁ」
「ちょっと!」
恵里菜が即座に反応する。
「何よその顔!」
「天敵……」
「私まで!?」
「だってぇ」
千咲は陽哉を見る。
「この人、勝てないんだもん」
「……」
陽哉が苦笑する。
「第一声がそれかよ」
「だって事実だよぉ」
「まあ、それはそうだけど」
隆利が小さく笑う。
ただ、すぐに口元を手で隠した。
「あ……」
千咲が見る。
「今、笑ったよねぇ」
「……いや」
「笑ったじゃん」
「……少し」
「やっぱり」
隆利は気まずそうに視線を逸らした。
恵里菜はそんな2人を見て肩をすくめる。
「まあまあ。千咲もそんなに警戒しなくていいって」
「だってぇ」
「これから肩を並べて戦うんだから」
陽哉が千咲の方へ歩いてくる。
そして。
「まあ、これから肩を並べて戦うんだから、仲良くやろうや」
ぽん。
千咲の頭に手を置く。
「……」
千咲は固まった。
「……」
「……?」
「……子供扱いしてない?」
「いや?」
「撫でたよねぇ」
「撫でただけだ」
「それが子供扱いなんだよぉ」
陽哉が笑う。
「まあ、嫌われるよりいいだろ」
「……」
千咲は複雑そうな顔をした。
敵だった時とは違う。
何となく調子が狂う。
「……まあ、いいけどぉ」
「素直でよろしい」
その時。
部屋の奥から声がした。
「そろそろいいか?」
千咲が振り返る。
そこには、OGD沼津の監督兼リーダー。
羽嶋恭一が立っていた。
「千咲」
「なぁに?」
「紹介しよう」
恭一は3人の方へ手を向ける。
「彼らが2030-2031シーズンを戦う追加メンバーだ」
千咲は黙って見る。
「新堂陽哉」
「よろしく」
「志木城隆利」
「……よろしく、お願いします」
少し緊張している。
「神代恵里菜」
「よろ!」
恵里菜だけテンションが違う。
「これで、レギュレーションで定められたMAX8人になった」
恭一が続ける。
「今シーズンはこの8人で戦い抜く」
一瞬だけ、部屋の空気が変わった。
それまでの和やかな雰囲気が、少しだけ締まる。
「今季、現在OGDはGBL-1で14位だ。このまま勝ち続ければ降格は免れる。」
千咲は知っていた。
OGDは強豪。
それでも。
あと届かなかった。
原因は人数不足。
1月のウインターブレーク中に4人が移籍。追加人員の追加にも失敗。4人で何とかやりくりして頑張ったが、失速。14位まで後退。すでに順位も確定している。何とか降格は免れたが。
規定で千咲達は来季からの参戦になる。
恭一は拳を握る。
「来季は違う」
その目は真剣だった。
「この8人で、王者に輝く」
そして。
「今季の雪辱を晴らすぞ」
「はい!」
陽哉が答える。
隆利も頷く。
「うん」
恵里菜も笑う。
「もちろん!」
千咲は少し遅れて。
「……うん」
小さく頷いた。
その瞬間。
千咲は初めて。
ここに自分の居場所ができつつあるのだと、少しだけ感じた。
◆
顔合わせが終わる。
恭一たちが今シーズンのチーム運用について話している一方。
千咲はOGLのスタッフに呼ばれていた。
「千咲さん」
「なぁに?」
「先日お願いしたデザインの進捗なのですが」
「……」
来た。
やっぱりこれだった。
「芳しくないねぇ」
「……ですよね」
スタッフは困ったように笑う。
机の上には、千咲が今まで描いてきたデザイン画。
線は多い。
アイデアもある。
でも。
どれも一つの形になっていない。
「武装案はかなり出ています」
「うん」
「シルエットも複数案あります」
「うん」
「ですが、全体像が固まらない」
「そうなんだよねぇ」
千咲は頬杖をつく。
「何か……違うんだよぉ」
「違う?」
「カッコいいのは描けるんだけどぉ」
紙を指差す。
「これがボクの欲しいガンプラかって言われると、そうじゃないんだよねぇ」
スタッフも黙る。
そこへ。
「なら」
声がした。
「俺が相談に乗ってやろうか?」
陽哉だった。
千咲は顔を上げる。
「新堂くん?」
「陽哉でいいって」
「……」
千咲は少し考えた。
この男。
自分が何度も勝てなかった。
でも。
4年間。
全国のトップに立ってきた。
自分の戦闘データを、これ以上ないほど積み上げてきた人間だ。
それに。
今の陽哉は敵ではない。
仲間だ。
「……いいよぉ」
陽哉は椅子を引いた。
「じゃ、見せて」
千咲は紙を広げる。
◆
「まず、この肩」
陽哉が指差す。
「今の形だと、千咲の動き方じゃちょっと邪魔になる」
「……そう?」
「うん」
「じゃあ、こう?」
千咲が線を引く。
「いや、それだと今度は軽すぎる」
「じゃあ、ここを厚くしてぇ……」
「そうそう」
一本。
二本。
線が増えていく。
「……」
OGLのスタッフが少し驚いた顔をする。
さっきまで。
何時間かけても決まらなかった。
それが。
どんどん進んでいる。
「この辺に武装を持ってきたら?」
陽哉が言う。
「でも、それだと射撃武器が多くなりすぎるよぉ」
「じゃあ、射撃と格闘の両方に使える武装にする」
「……なるほど」
千咲は描く。
「じゃあ、これ」
「お」
「腕に付ける」
「それなら格闘中でも使える」
「でしょぉ」
千咲の目が少し輝いた。
「じゃあ背中」
「背中は広げる?」
「うん」
「でも大きすぎると取り回しが――」
「だから分割する」
「なるほど」
「翼そのものを武装にするのもあり」
「……」
「どう?」
陽哉が聞く。
千咲はしばらく紙を見る。
「……いいねぇ」
さらに線が増える。
「でも翼はもっと欲しい」
「どんな?」
「デスティニーみたいな光の翼」
「ヴォワチュール・リュミエール?」
「そう」
「じゃあ発生機構を翼に仕込もう」
「いいねぇ」
また描く。
「武装も2本」
「二刀流?」
「うん」
陽哉が笑う。
「俺の影響?」
「ちょっとだけぇ」
「なるほどな」
千咲は次々と描いていく。
腕。
翼。
腰。
頭部。
肩。
武装。
そして。
「……これ」
千咲が紙を見せる。
「いいじゃん」
陽哉が言った。
「かなりそれっぽくなってきた」
「ほんと?」
「うん」
千咲の手が止まらない。
「じゃあ、この形をこうしてぇ」
「それなら脚部も合わせよう」
「で、腰は――」
「ちょっと待って」
陽哉が別の紙を取る。
「ここ、こうするといい」
「……!」
千咲の目が輝く。
「それだよぉ!」
そこから。
ほとんど止まらなかった。
アイデアを出す。
否定する。
組み替える。
もう一度描く。
二人で笑う。
時々言い合う。
でも、それが楽しい。
これまで千咲は、ほとんど一人で描いていた。
自分の頭の中だけで。
だから。
どこかで詰まっていた。
けれど、戦いを知っている人間と一緒に考えることで、頭の中にあった「ぼんやりしたイメージ」が次々と形になっていく。
◆
「……ねえ」
恵里菜が後ろから覗き込む。
「何それ?」
「千咲の新しい機体」
「……おお」
恵里菜の目が輝く。
「めっちゃいいじゃん」
「そう?」
「うん」
恵里菜はデザイン画を見る。
そして。
「……あ」
「なにぃ?」
「これ、名前決めてないの?」
「まだだよぉ」
恵里菜が腕を組む。
「ふーん……」
しばらく考える。
そして。
「ヴァルキリーでよくない?」
「……ヴァルキリー?」
「そう」
恵里菜は得意げに言う。
「赤いし」
「……」
「金髪のちぃと並ぶし」
「うん?」
「私の『紅の戦乙女』とセットで」
恵里菜は笑う。
「紅の戦乙女姉妹!」
「……」
千咲は目を細めた。
「ボク、男の子だよぅ」
「知ってるって」
「姉妹じゃないよぉ」
「細かいことはいいの!」
「よくないよぉ」
陽哉が笑う。
「まあ、名前としては悪くないんじゃないか?」
「でしょ?」
恵里菜が得意げになる。
「ヴァルキリーガンダム!」
「……」
千咲はデザインを見る。
赤。
白。
黒。
青。
そして翼。
どこか自由。
どこか運命。
いくつもの要素が混ざっている。
「……ヴァルキリー」
千咲が呟く。
「うん」
「……いいかも」
こうして、千咲専用機の名前は「ヴァルキリーガンダム」に決まった。
◆
「……じゃあ次」
陽哉が言う。
「俺の番だな」
「?」
「シグムント」
机の上に、陽哉の愛機。
デスティニーガンダムシグムントが置かれる。
「これをプロリーグ仕様にしたい」
「うん」
「OGLにも話してたんだけど、どうも決め手に欠けてな」
千咲はシグムントを見る。
「これ、かなり完成度高いよぉ」
「ありがと」
「変にいじらない方がいいところも多いねぇ」
「そうなんだよ」
「……でも」
千咲がペンを取る。
「これなら、もっとできると思うよぉ」
陽哉が少し驚く。
「ほんと?」
「うん」
「どこから?」
「ここ」
千咲が肩を指差す。
「肩、もっと大きくできるよぉ」
「なるほど」
「背中も」
「うん」
「あと、シグムントで外したもの」
「……?」
「砲撃」
陽哉の目が少し開く。
「やっぱりそこ?」
「近距離だけじゃなくてぇ、遠くからも撃てた方がいい」
「俺もそれは考えてた」
「なら」
千咲はどんどん描く。
「二刀流は残す」
「それは絶対」
「でも、二刀流だけじゃなくてぇ」
「うん」
「剣そのものを砲にする」
「……!」
陽哉が身を乗り出す。
「それ、面白いな」
「腰だめで撃つの」
「いい」
「刀身が割れて、中から砲口」
「めちゃくちゃいい」
さらに。
「パルマも戻そう」
「やっぱり?」
「うん」
「それなら近距離も維持できる」
「そう」
二人の会話は加速する。
肩。
腕。
武装。
砲撃。
翼。
そして。
「……これ」
千咲が描いたのは、全身に配置された緑色のクリアパーツだった。
陽哉がじっと見る。
「これ、何?」
「粒子」
「ほう」
「アシムレイトで機体と一体になったらぁ」
千咲が指先で線を追う。
「ここから粒子を出す」
「……」
「バースト系のシステムにできると思う」
「シャイニングバースト」
陽哉が呟く。
「……それ、名前にしよう」
「うん」
そして、二人はさらに描いた。
シグムントの面影を残しながら、デスティニーの万能性を取り戻し。
さらに、ランスロットsiNを思わせる要素を加えて。
プロリーグで戦うための新しい機体。
◆
気が付けば、時刻は深夜を回っていた。
「……」
誰も気付いていなかった。
スタッフも。
恭一も。
恵里菜も。
隆利も。
何人かは途中で仮眠を取っている。
それでも机の周りには大量の紙。
描き直したデザイン。
没になった武装案。
新しく生まれたギミック。
そして、最後の一枚。
「……」
陽哉が見る。
千咲も見る。
OGLスタッフも見る。
完成した。
千咲専用ガンプラ。
陽哉の新たなデスティニー。
「……やったな」
陽哉が呟く。
「うん」
千咲も小さく笑う。
「無事に終わったねぇ」
「すげえな」
恭一が後ろから声をかける。
「まさか、一晩でここまで進むとは」
「ボクもびっくりしてる」
「俺も」
陽哉が笑う。
「やっぱり、アイデアって一人で抱えるより誰かと話した方が出るもんだな」
「そうだねぇ」
そして、恵里菜があくびをしながら近づいてくる。
「ところでさ」
「なに?」
「私の名前案、ちゃんと覚えてる?」
「ヴァルキリー」
「そう!」
恵里菜が満足そうに笑う。
「で、陽哉の方は?」
千咲は少し考えた。
そして。
「……インフィニティ」
「インフィニティ?」
陽哉が聞き返す。
「無限の可能性を秘めた機体って意味」
千咲が言う。
「シグムントをベースにしてるけどぉ」
「うん」
「シグムントじゃできなかったことも、これならできる」
「……」
「だから、無限の可能性」
陽哉は少し黙った。
そして笑った。
「いいな」
「でしょぉ?」
「じゃあ、名前はそれでいこう」
OGLスタッフも頷く。
「デスティニーガンダムインフィニティ……」
「正式名称として登録しておきます」
◆
その時だった。
外から、鳥の声が聞こえた。
「……?」
千咲が顔を上げる。
窓の外。
空が。
少し明るい。
「……あれ?」
陽哉も見る。
「……朝?」
時計を見る。
「……マジか」
恭一が苦笑する。
「お前ら、徹夜したのか」
「……」
「……」
千咲と陽哉が顔を見合わせる。
「全然気付かなかった」
「俺も」
恵里菜が大きくあくびをする。
「もう朝じゃん……」
隆利も少し眠そうに目をこする。
「……帰れます?」
「帰れ」
恭一が即答した。
「今日はもう休め」
千咲は少しだけ笑う。
机の上に置かれた2枚の設計画。
1枚は。
ZGMF-X54S ヴァルキリーガンダム。
もう1枚は。
ZGMF-X42S/∞ デスティニーガンダムインフィニティ。
これからOGLが実際に立体化していく。
そして、その2機は今後のOGD沼津の戦いを背負っていくことになる。
「……楽しみだねぇ」
千咲が言う。
「うん」
陽哉が答える。
「絶対に勝とう」
「うん」
「今年は王者だ」
千咲は小さく頷いた。
「……がんばろうねぇ」
◆
帰り道。
千咲は再び船と車を乗り継いで、ホテルへ戻った。
空はすっかり朝。
いや、もう朝というより休日の時間が始まってしまっている。
「……眠い」
千咲は目をこする。
そしてホテルの部屋へ戻る。
ドアを開ける。
「ただいまぁ……」
「おかえりなさい、ちさ」
返事があった。
「……鞠莉ちゃん?」
部屋には鞠莉がいた。
今日は休みらしく、まだ部屋にいる。
千咲は鞄を床へ置く。
そして。
鞠莉へ近づく。
「……疲れたよぉ」
「どうしたの?」
「OGL行ってきた」
「それは知ってるけど」
「徹夜したぁ」
「ええ!?」
鞠莉が驚く。
「何してたの?」
「ガンプラぁ」
「もう……」
鞠莉が苦笑する。
千咲はそのまま。
鞠莉の隣へ座る。
そして。
「……鞠莉ちゃん。」
「ん?」
「眠い」
「寝なさいよ」
「でもぉ」
千咲は鞠莉の肩へ寄りかかる。
「甘えたい」
「……」
鞠莉が一瞬黙る。
そして笑った。
「いいよ」
千咲はさらに近づく。
「……鞠莉ちゃん。」
「はいはい」
「頭撫でてぇ」
「はいはい」
「背中も」
「はいはい」
「あとぉ……」
「まだあるの?」
「ぎゅーも」
「……仕方ないなぁ」
鞠莉が千咲を抱きしめる。
千咲はそのまま目を閉じる。
「……あったかい」
「徹夜なんてするからよ」
「楽しかったんだよぉ……」
「そんなに?」
「うん」
「じゃあ、よかったね」
「……うん」
千咲は満足そうに笑う。
そのまま。
鞠莉の腕の中で。
あっという間に眠ってしまった。
「……ふふ」
鞠莉は眠った千咲の髪を撫でる。
「頑張ったのね」
窓の外から。
朝の光が差し込んでいた。
そして。
この日。
OGD沼津に新たな2機の未来が生まれた。
ヴァルキリーガンダム
デスティニーガンダムインフィニティ
まだ、誰も知らない。
この2機が。
これから始まるJGLの戦いで、どれほど大きな存在になるのかを。
次回予告
OGLでは、ついにヴァルキリーガンダムとデスティニーガンダムインフィニティの開発がスタート。
一方、その頃。
学校帰りの千歌、曜、梨子は、十千万旅館前の三津海水浴場で何やら練習中。
「もう一回!」
「はい!」
「スタート!」
なぜかストップウォッチを持って、その練習を手伝っているのは新堂陽哉だった。
どうやら千歌たちのスクールアイドル部には、ある条件付きで申請が認められることになったらしい。
その条件は。
「体育館を満員にして、ファーストライブを成功させること」
一見、簡単そうに見える。
しかし、満員にするというのは、そう簡単なことではない。
そして千咲の天敵だった陽哉が、なぜ千歌たちの練習を手伝っているのか。
その答えは。
「俺、千歌と曜の幼馴染なんだわ」
そして。
「実家が十千万旅館の裏にあってさ」
千咲が知らなかった、陽哉と内浦のもう一つの顔が明らかになる。
次回、第7話「条件付きのファーストステップ」
お楽しみに。