ガンダムビルドファイターズ-Sailing to the Sunshine!!-   作:陽@曜花推し

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どうも、作者です。

前回は、津島善子が「堕天使ヨハネ」としてAqoursに正式加入しました。

これでAqoursは、千歌、曜、梨子、ルビィ、花丸、善子の6人。

そして千咲も「入った覚えはないよぉ」などと言いながら、いつの間にかAqoursの活動にほぼ毎日のように付き合うようになっています。

今回は、そんな千咲にも大きな転機が訪れます。

そのきっかけは浦の星女学院が抱えている、ある重大な問題。

理事長である鞠莉から告げられる「廃校」の危機です。

かつてμ'sが学校を救ったことを知っている千歌は、Aqoursでも学校を救えるのではないかと考えます。

その第一歩として始まるのがPV制作。

ですが、内浦という町を改めて見つめ直すと、千歌たちは思いのほか苦戦することに。

「海がある」

「みかん畑がある」

「……でも、それって特別なの?」

そんな迷いを抱える中で、彼女たちは自分たちの暮らしている町の本当の魅力に気づいていきます。

そして、今回はもう一つ。

千咲にとって非常に重要な出来事があります。

幼い頃から大切にしてきた浦女。

大好きな鞠莉や、姉のように慕ってきたダイヤ、果南。

その場所がなくなるかもしれない。

果たして千咲は、その現実をどう受け止めるのか。

そして、過去にスクールアイドルだった3人は、廃校問題を前に何を思うのか。

それでは、第13話「PV作っちゃおうか」をどうぞ。



前回の-Sailing to the Sunshine!!-

突如として姿を現した「堕天使ヨハネ」。

その正体は、学校へ行くことすら怖くなっていた津島善子だった。

千歌たちは善子をAqoursへ誘い、千咲もまた、ヨハネとして生きる彼女自身を肯定する。

一度はAqoursの活動に参加した善子だったが、自分らしさを出した結果が周囲から笑われることを恐れ、再び逃げ出してしまう。

そこで千咲は、幼い頃に出会った「好きなものを笑われて泣いていた女の子」のことを思い出す。

その少女こそ、幼い頃の善子だった。

そして千歌たちの言葉を受けた善子は、自分の大好きな「ヨハネ」を捨てないことを決意する。

Aqoursは、ついに6人になった。




第13話「PV作っちゃおうかぁ」

「……というわけで」

 

千歌が教室で何やら楽しそうに話していた。

 

「これからAqoursは、6人で活動していきます!」

 

「おー!」

 

曜が手を上げる。

 

「よろしくね、善子!」

 

「ヨハネ!」

 

善子が即座に訂正する。

 

「はいはい、ヨハネ」

 

梨子が苦笑する。

 

「千咲君もよろしくね」

 

花丸が笑う。

 

「千咲君、もう完全に毎回来てるずら」

 

「そうなんだよねぇ」

 

千咲は机に突っ伏している。

 

「なんか、最近ずっとここにいる気がするよぉ」

 

ルビィが笑う。

 

「千咲君、もうAqoursのメンバーみたい」

 

「だから」

 

千咲は顔を上げる。

 

「ボク、入った覚えないんだけどぉ」

 

千歌がすぐに返す。

 

「でも毎回来るじゃん!」

 

「暇だからぁ」

 

「練習手伝ってくれるじゃん!」

 

「まあ」

 

「ライブにも来てくれたじゃん!」

 

「まあまあ」

 

「動画にも出てくれたじゃん!」

 

「それはヨハネちゃんに巻き込まれただけぇ」

 

善子が。

 

「ヨハネに選ばれたことを誇りに思いなさい!」

 

「はいはい」

 

「なんか扱いが雑!」

 

千歌が笑う。

 

「じゃあ、もうサブメンバーってことで!」

 

「勝手に決めたぁ……」

 

けれど、千咲は少し笑っていた。

 

「まあ」

 

「ん?」

 

「もういいよぉ」

 

「え?」

 

「千歌先輩がしつこいからぁ」

 

「やったぁぁぁ!」

 

千歌が両手を上げる。

 

「千咲君、正式にサブメンバー!」

 

「正式って何ぃ……」

 

6人が笑う。

 

そんないつもの光景。

 

それが、千咲にとっても少しずつ当たり前になりつつあった。

 

だからこそ、その知らせは突然だった。

 

◆

 

放課後。

 

「千咲」

 

理事長室から呼び出し。

 

「んー?」

 

「理事長が呼んでるよ」

 

先生から伝えられる。

 

「ボクだけ?」

 

「そう」

 

千咲は首を傾げる。

 

「何だろぉ」

 

Aqoursのみんなに別れを告げ。

 

千咲は理事長室へ向かった。

 

扉を開ける。

 

「失礼しまぁす」

 

「Come in♪」

 

鞠莉。

 

そして。

 

ダイヤ。

 

「鞠莉ちゃん、何か用ぉ?」

 

「ええ」

 

鞠莉の顔は。

 

いつもの明るい笑顔ではなかった。

 

「少し」

 

一拍。

 

「話しておきたいことがあるの」

 

千咲は。

 

椅子に座る。

 

「なぁに?」

 

ダイヤも少し離れたところで立っている。

 

鞠莉はゆっくり息を吐いた。

 

「どの道、近いうちに生徒全員に言わなきゃいけないことだから」

 

「…………」

 

「ここでちさにも言っておくわ」

 

千咲の表情が。

 

少しだけ真剣になる。

 

鞠莉が少し間をおいて。

 

「沼津の高校と統合して」

 

一拍。

 

「浦の星女学院は」

 

「廃校になるの」

 

「…………」

 

千咲が呆然となる。

 

「…………」

 

意味を理解するまで少し時間がかかった。

 

「…………」

 

「……廃校?」

 

「ええ」

 

「…………」

 

千咲の手が少し震える。

 

そして。

 

「統廃合になったらぁ」

 

声が小さくなる。

 

「ボクどうなるの、鞠莉ちゃん……」

 

鞠莉はその顔を見る。

 

涙目。

 

今までほとんど見せたことのない不安そうな顔。

 

「…………」

 

鞠莉は静かに歩み寄った。

 

そして、千咲を抱きしめる。

 

「よしよし」

 

「…………」

 

「泣かないで」

 

優しく頭を撫でる。

 

「いい子だから、ね?」

 

「…………」

 

千咲は鞠莉の胸元へ少しだけ顔を埋めた。

 

その光景を見ていたダイヤが。

 

「…………」

 

呆れたような顔になる。

 

「……あの」

 

「ん?」

 

「いちゃつくのでしたら、よそでやってくださいます?」

 

ジト目。

 

「えっとぉ…」

 

鞠莉。

 

「Oh……」

 

少しだけ離れる。

 

「でもね」

 

鞠莉は真剣な顔に戻った。

 

「ただ」

 

「まだ決定ではないの」

 

「…………」

 

「まだ待って欲しいと、私が強く言っているから」

 

「大丈夫なのぉ、それ」

 

「何のために私が理事長になったと思っているの?」

 

「…………」

 

鞠莉はまっすぐ千咲を見る。

 

「この学校はなくさない!」

 

「…………」

 

「ここは私にとって、どこよりも大事な場所なの!」

 

千咲はしばらく鞠莉を見つめる。

 

それから。

 

「でも」

 

「ん?」

 

「どうするのさぁ」

 

千咲は少し困ったように言う。

 

「年々、入学希望者は減っていってるんでしょぉ?」

 

「…………」

 

「男の子のボクを入学させるくらいなんだからさ」

 

「何を言ってるの?」

 

そして。

 

ニコッ。

 

「千咲は男の娘でしょ?」

 

「…………」

 

「ノープロブレム!」

 

「…………」

 

「…………あの」

 

「はい?」

 

「まじめにやっていただけます?」

 

「…………」

 

少しの沈黙。

 

「コホン」

 

一度咳払い。

 

「さて」

 

表情が変わる。

 

「私が何のためにスクールアイドル部を承認したと思っているの?」

 

千咲は少し考える。

 

「Aqoursが」

 

「…………」

 

「学校を救うきっかけになるかもしれない……ってこと?」

 

「私はそう思ってるわ」

 

「…………」

 

そして、窓の外へ視線を向ける。

 

「それに……」

 

鞠莉の目が少し遠くを見る。

 

「私は諦めない」

 

「…………」

 

「あの時からずっと思ってる」

 

その言葉に千咲が少しだけ反応する。

 

「まだ私たちは終わってない」

 

鞠莉の視線。

 

その先には唇を噛み締めるダイヤ。

 

「…………」

 

千咲は何も言わなかった。

 

3人の間に何かがある。

 

それだけは分かった。

 

鞠莉。

 

果南。

 

ダイヤ。

 

かつて何かを経験した3人。

 

千咲はその過去をまだ詳しくは知らない。

 

けれど、この学校を守りたいという気持ちだけは痛いほど伝わってきた。

 

ダイヤが静かに言う。

 

「……とにかく」

 

「私は」

 

一度、鞠莉を見る。

 

「私のやり方で廃校を阻止しますわ」

 

千咲は頷いた。

 

「うん」

 

◆

 

部室。

 

「ただいまぁ……」

 

千咲が扉を開ける。

 

「千咲君!」

 

「…………」

 

目の前。

 

千歌が部屋の中を走り回っている。

 

「やったー!」

 

「やったー!」

 

「μ'sと同じだぁ!」

 

「…………」

 

千咲はじっと見る。

 

「…………」

 

「…………」

 

そして、ポケットからスマートフォンを出す。

 

「もしもし、お巡りさん?」

 

「ちょっと待って千咲君!」

 

千歌が慌ててスマートフォンを取り上げる。

 

「110番しないで!」

 

「でも、なんか壊れちゃった人がいるよぉ」

 

「壊れてない!」

 

「本当にぃ?」

 

千歌は必死に説明する。

 

「廃校の危機なんだよ!」

 

「うん」

 

「μ'sと同じなの!」

 

「まあ……」

 

千咲は苦笑する。

 

そして心の中。

 

(いやぁ……)

 

(μ'sは東京で)

 

(こっちは内浦)

 

(そもそも人の数が違うよねぇ)

 

千歌のテンションに水を差すことはせず。

 

ただ。

 

「まあ、落ち着こうねぇ」

 

と言った。

 

千歌は。

 

「でも!」

 

「まずは、何かやらないと!」

 

「分かってるよぉ」

 

その時、千歌がぴんと来た顔をする。

 

「PV!」

 

「PV?」

 

曜が聞く。

 

「うん!」

 

千歌が。

 

「学校の魅力を、内浦の魅力を!」

 

「PVにするの!」

 

梨子も納得する。

 

「なるほど」

 

ルビィが千歌の意図を理解し。

 

「もっとたくさんの人に知ってもらうんだね」

 

花丸も。

 

「それなら、学校だけじゃなく町も紹介できるずら」

 

善子は。

 

「ふふ」

 

「我々の堕天の地を世界へ知らしめるのね!」

 

「そういう方向でいいのかなぁ」

 

千咲が呟く。

 

◆

 

そして。

 

PV制作開始。

 

海。

 

みかん畑。

 

学校。

 

商店街。

 

バス。

 

町並み。

 

「ここ!」

 

千歌がカメラを向ける。

 

「撮ってみよう!」

 

「はい!」

 

6人がいろいろな場所で撮影する。

 

けれど。

 

「…………」

 

撮影した映像を見る。

 

海。

 

みかん。

 

海。

 

みかん。

 

学校。

 

「…………」

 

沈黙。

 

曜。

 

「……これ」

 

梨子。

 

「どこかで見たことある感じ……」

 

花丸。

 

「内浦ずら」

 

ルビィ。

 

「でも……」

 

善子。

 

「…………」

 

善子も少し困る。

 

「これって」

 

千歌。

 

「何もない……?」

 

その言葉にみんな黙った。

 

◆

 

一方は千咲はOGLに。

 

「ここです」

 

スタッフが机の上へ大量のパーツケースを並べる。

 

「ヴァルキリーガンダムの組み立て前パーツ」

 

「うん」

 

千咲は一つ一つを見る。

 

「こっちは?」

 

「右脚部」

 

「こっち」

 

「胸部」

 

「こっちは?」

 

「腕部装甲」

 

千咲は真剣。

 

現在ヴァルキリーガンダムは組み立てに入る最終段階。

 

そのため、千咲自身が組み立て前の各パーツを一つ一つチェックしていた。

 

傷

 

成形

 

接続精度

 

可動範囲

 

重量

 

全部確認する。

 

「……ここ」

 

千咲が指差す。

 

「少しだけヤスリが甘いよぉ」

 

「分かりました」

 

「あと」

 

別のパーツ。

 

「ここも」

 

「了解」

 

スタッフが修正を行う。

 

「これ、今日中に終わる?」

 

「終わらせます」

 

「じゃあ」

 

千咲は椅子へ深く座る。

 

「ボク、今日はここに缶詰だねぇ」

 

こうして千咲はPV撮影に参加できなくなった。

 

Aqoursの6人だけで撮影を続けることになった。

 

◆

 

数日後。

 

PV完成。

 

部室。

 

6人が完成した映像を見ている。

 

千咲もOGLから戻ってきて完成版を初めて見る。

 

「…………」

 

海

 

みかん畑

 

町

 

学校

 

内浦の日常

 

けれど、どこかまとまりがない。

 

「…………」

 

千咲が少し考える。

 

「まあ……」

 

千歌が尋ねる。

 

「どう?」

 

「うーん……」

 

千咲の反応がいまいちだけど、とりあえず理事長室へPVを持っていくことになった。

 

◆

 

理事長室。

 

鞠莉がモニターを見ている。

 

PV。

 

最後までじっと見る。

 

そして再生終了。

 

「…………」

 

Aqours、全員緊張している。

 

千咲も。

 

静かに。

 

見ている。

 

鞠莉がゆっくりこちらを振り返った。

 

その表情にはいつもの明るい笑顔がない。

 

「……これが」

 

低い声。

 

「あなたたちが本気で撮ったPVですか?」

 

千歌が。

 

ゴクリ。

 

唾を飲む。

 

それでもまっすぐ答える。

 

「はい!」

 

「ふーん……」

 

一拍。

 

「それでこのテイタラクですか?」

 

千咲が少し考える。

 

「軽トラック?」

 

「え?え、えと…テイタラクね」

 

「軽トラックはいいよねぇ」

 

「…………」

 

「ス〇ルのサ〇バーはいいよぉ」

 

「…………」

 

「農道のポ〇シェって言われてるしぃ」

 

「…………」

 

「ボク欲しいなぁ」

 

「…………」

 

「免許取ったら釣りに行きたい」

 

鞠莉の目つきが変わる。

 

キラッ。

 

「わかったわ!」

 

「…………」

 

「お姉ちゃんに任せなさい!!」

 

「落ち着きなさい」

 

パシン!!

 

「痛い!」

 

「話を戻してください」

 

ダイヤが千咲を見る。

 

「千咲さん」

 

「んー?」

 

「イイ子ですから」

 

「はい」

 

「お口にチャックですわよ」

 

「はぁい」

 

千咲は黙った。

 

曜が恐る恐る。

 

「……あの」

 

「何?」

 

「さっきの発言」

 

「ええ」

 

「さすがに、ひどいんじゃ……」

 

「千咲に軽トラを買ってあげること?」

 

「違います」

 

「ミニバンの方が良かったかしら?」

 

「違います!私達のPVの方です!」

 

「Oh」

 

千歌が一歩前へ出る。

 

「そうです!」

 

「これだけ作るのがどれだけ大変だったと思っているんですか!」

 

「…………」

 

鞠莉は静かに言った。

 

「努力の量と結果は比例しません!」

 

「…………」

 

「大切なのは」

 

「…………」

 

「このタウンやスクールの魅力を、ちゃんと理解しているかデース!」

 

「…………」

 

ぐうの音も出ない。

 

正論。

 

あまりにも正論。

 

千歌たちは黙り込む。

 

すると善子がむっとした顔で鞠莉を睨む。

 

「じゃあ」

 

「ん?」

 

「理事長はわかっているの?」

 

鞠莉は少し微笑む。

 

「少なくとも」

 

「…………」

 

「あなたたちよりは理解しているわ」

 

一歩。

 

「……聞きたい?」

 

自信たっぷりの表情。

 

Aqours全員が鞠莉を見る。

 

縋るような視線。

 

しかし、千歌だけは静かに首を振った。

 

「いえ、いいです」

 

善子が千歌に。

 

「ちょっと!何意地張ってるのよ!」

 

千歌は黙っていた。

 

その判断、今は自分たちで考えるべきだとそう思ったのだろう。

 

鞠莉も少しだけ笑った。

 

「Good」

 

そして。

 

「それでこそ」

 

「Aqoursね」

 

◆

 

理事長室を出た後、千歌たちはそれぞれ帰っていく。

 

「じゃあ、また明日」

 

曜。

 

「うん」

 

梨子。

 

「気をつけてね」

 

ルビィ。

 

花丸。

 

善子。

 

6人。

 

ただし。

 

千歌と千咲だけ。

 

少しだけ。

 

部室に忘れ物がある。

 

「千咲君」

 

千歌が言う。

 

「取りに戻ろう」

 

「うん」

 

2人は学校へ戻った。

 

◆

 

部室から荷物を取る。

 

そして帰ろうと体育館の前を通る。

 

「…………」

 

音。

 

「ん?」

 

千歌が足を止めた。

 

体育館から音楽が聞こえる。

 

「誰だろ?」

 

2人は体育館へ。

 

そっと扉を開ける。

 

「…………」

 

中。

 

ステージ。

 

ダイヤが一人踊っている。

 

美しい。

 

力強い。

 

静か。

 

そして、気品がある。

 

千歌はただ見つめていた。

 

「…………」

 

千咲も見つめる。

 

ダイヤが舞う。

 

「すごい……」

 

千歌がぽつり。

 

言葉を漏らした。

 

「…………」

 

その時、ステージの上からひらひら一枚紙が落ちた。

 

ふわり。

 

ふわり。

 

そして。

 

2人の足元。

 

千歌が拾う。

 

「……?」

 

そこには。

 

『署名のお願い』

 

と書かれていた。

 

「署名?」

 

千咲が覗く。

 

「廃校を阻止するためのやつかなぁ」

 

「たぶん……」

 

その時音楽が止まった。

 

「…………」

 

ダイヤが振り返る。

 

鋭い視線。

 

こちらを見ている。

 

「…………」

 

千歌は少し驚いた。

 

でも、次の瞬間。

 

「すごく……」

 

一歩前へ。

 

「綺麗でした!」

 

「…………」

 

「感動しました!」

 

「な、何ですの、突然……」

 

珍しく狼狽える。

 

一歩下がる。

 

千歌は真剣な目。

 

そのまま言葉を続ける。

 

「ダイヤさんがスクールアイドルが嫌いなのは分かってます」

 

「…………」

 

「でも」

 

「…………」

 

「私たちも」

 

千歌の声が少し震えている。

 

「学校に続いて欲しいって」

 

「なくなって欲しくないって」

 

「思ってるんです!」

 

「だから!」

 

「…………」

 

「一緒にやりませんか?スクールアイドル!」

 

「…………」

 

ダイヤは言葉を失った。

 

◆

 

千咲がすっと一歩前へ出る。

 

「千歌先輩」

 

「……?」

 

「ちょっと待って」

 

「?」

 

「ここは」

 

「…………」

 

「ボクに任せて。先に帰って。」

 

「…………」

 

千歌が少しだけ目を細める。

 

「……死亡フラグだよ」

 

「死なないよぉ」

 

「本当に?」

 

「うん」

 

「……分かった」

 

千歌は体育館を出る。

 

「じゃあ、先に帰ってるから」

 

「うん」

 

扉が閉まる。

 

静か。

 

「…………」

 

「…………」

 

千咲とダイヤが互いを見る。

 

「ダイヤちゃん」

 

「はい?」

 

「ボクも」

 

「…………」

 

「久しぶりに踊ってもいい?」

 

ダイヤが少し驚く。

 

「え?」

 

「昔」

 

「…………」

 

「ダイヤちゃんの見よう見まねで覚えたことあるでしょぉ」

 

「…………」

 

ダイヤは少し笑った。

 

「……ええ」

 

「構いませんよ」

 

千咲はステージへ。

 

音楽が再び流れる。

 

◆

 

千咲が踊る。

 

ダイヤの動き。

 

完全ではない。

 

けれど、幼い頃から何度も見ていた。

 

だから、体が覚えている。

 

ダイヤも合わせる。

 

2人。

 

同じ舞。

 

しばらく無言。

 

そして、踊りながら千咲が口を開く。

 

「ボクねぇ」

 

「はい」

 

「鞠莉ちゃんの部屋で」

 

「…………」

 

「見ちゃったんだぁ」

 

「…………?」

 

「ダイヤちゃんと」

 

一拍。

 

「果南ちゃんと」

 

一拍。

 

「鞠莉ちゃんが」

 

「…………」

 

「スクールアイドルをやってた時の写真」

 

ピタッ。

 

ダイヤの動きが止まる。

 

千咲も動きを止めた。

 

「…………」

 

ダイヤは何も言わない。

 

千咲は静かに。

 

「何かあったんでしょ?」

 

「…………」

 

「でもねぇ」

 

「…………」

 

「ボクは聞かない」

 

「…………」

 

「無理に聞いちゃいけないんだと思ったからぁ」

 

「…………」

 

「だからねぇ」

 

少し笑う。

 

「ボク、待ってるよぉ」

 

「…………」

 

「ダイヤちゃん達が」

 

「…………」

 

「話してくれるのを」

 

ダイヤはただ千咲を見る。

 

「…………」

 

「じゃあ先に帰るねぇ」

 

一歩。

 

「またね、ダイヤちゃん」

 

そして体育館を出ていく。

 

ダイヤは。

 

その場に。

 

立ち尽くす。

 

「…………」

 

千咲の背中が遠ざかる。

 

「…………」

 

ダイヤは唇を噛んだ。

 

◆

 

翌朝。

 

早朝。

 

内浦。

 

町内清掃。

 

浦の星女学院の生徒たち。

 

町の人々。

 

商店街。

 

近所の住民。

 

様々な人が集まっている。

 

「おはようございます!」

 

「おはよう!」

 

「今日はよろしく!」

 

そして、OGDのメンバーも地域貢献の一環として参加していた。

 

「千咲!」

 

陽哉がゴミ袋を持ってくる。

 

「これ」

 

「んー?」

 

「持て」

 

「えぇ……」

 

「お前も参加するんだよ」

 

「みんな、がんばれぇ」

 

「いや、おめーもやるんだよ」

 

陽哉が千歌へ。

 

「はいゴミ袋」

 

「あ、ありがと」

 

そして、受け取る。

 

その瞬間、手と手が触れた。

 

陽哉と千歌が互いを見る。

 

2人は赤面。

 

そこに千咲が…

 

「ラブコメ警察でーす」

 

「は?」

 

「新堂陽哉さん」

 

敬礼。

 

「ラブコメの現行犯で逮捕でーす」

 

「何でだよ!」

 

「そして、公然ラブコメ罪で死刑です」

 

「いや、意味わからん!」

 

「しかも裁判なしで死刑とか!」

 

「どこの暴君だよ!」

 

「うるさいなぁ」

 

「お前が始めたんだろ!」

 

千歌の顔は真っ赤。

 

「もう!」

 

周囲から笑い声。

 

◆

 

そんな、コントをしている場合ではなかった。

 

内浦。

 

多くの人が清掃活動に参加している。

 

千歌はふと周囲を見る。

 

子ども。

 

老人。

 

商店の人。

 

バスの運転手。

 

学校の先生。

 

そして、OGDのファイターたち。

 

みんなこの町にいる。

 

千歌の目が少しずつ大きくなる。

 

「…………」

 

曜が。

 

「千歌ちゃん?」

 

千歌が何かに気付く。

 

「……そうか」

 

梨子が。

 

「何?」

 

「これだよ」

 

「…………?」

 

千歌が周りを見る。

 

「私たちが探してたもの」

 

「…………」

 

「内浦の魅力」

 

「町の人たち……?」

 

「うん。海でもみかんでもない。この人たちなんだ」

 

一年生組も何かに気付いた。

 

千咲は少し離れたところからそれを見ている。

 

「…………」

 

千歌の顔はもう迷っていない。

 

◆

 

「皆さん!」

 

千歌が声を上げる。

 

周囲の人々が振り返る。

 

「私たち!」

 

一歩前へ。

 

「浦の星女学院でスクールアイドルをやっている」

 

「Aqoursです!」

 

「…………」

 

町の人たちが気付く。

 

「Aqours?」

 

「あの子たち?」

 

「この前のライブの?」

 

「はい!私たちは!学校を残すためにここに生徒をたくさん集めるために皆さんに協力して欲しいことがあります!」

 

町の人々は静かに聞いている。

 

「みんなの気持ちを」

 

千歌は胸に手を置く。

 

「形にするために!」

 

その言葉に。

 

一人。

 

また一人頷く。

 

「手伝うよ」

 

「もちろん」

 

「学校がなくなるのは寂しいからね」

 

「この町の学校だもんな」

 

千歌が深々と礼をする。

 

「ありがとうございます!」

 

◆

 

数日後の夜。

 

内浦。

 

浜辺。

 

町の人々が集まっている。

 

そして無数のスカイランタン。

 

ひとつまたひとつ。

 

光が空へ。

 

ゆっくり昇っていく。

 

「…………」

 

Aqours。

 

6人。

 

千歌。

 

曜。

 

梨子。

 

ルビィ。

 

花丸。

 

善子。

 

そして。

 

千咲。

 

今回は撮影スタッフ側。

 

カメラを持っている。

 

「千咲君」

 

千歌が振り返る。

 

「撮れてる?」

 

「撮れてるよぉ」

 

「本当に?」

 

「うん」

 

「じゃあ、行くよ!」

 

「了解ぃ」

 

カメラが回る。

 

そして音楽が流れる。

 

Aqoursが歌う。

 

「夢で夜空を照らしたい」

 

夜空。

 

ランタン。

 

海。

 

町。

 

6人。

 

その周りには内浦の人々。

 

笑顔。

 

拍手。

 

光。

 

そして、Aqoursの声。

 

千咲はカメラ越しにそれを見ていた。

 

「…………」

 

少し笑う。

 

「……いいねぇ」

 

町の人たち。

 

自分たちの学校。

 

Aqours。

 

全てがひとつになっている。

 

これこそ、この町の魅力なのかもしれない。

 

◆

 

数日後。

 

PV完成。

 

部室。

 

6人がモニターを見る。

 

そして再生。

 

夜の浜辺。

 

スカイランタン。

 

内浦の人々。

 

笑顔。

 

海。

 

学校。

 

Aqours。

 

歌。

 

最後。

 

夜空へ光が昇っていく。

 

再生終了。

 

「…………」

 

全員黙っている。

 

千歌が小さく。

 

「……できた」

 

曜も。

 

「うん」

 

梨子も。

 

「今度は」

 

花丸も。

 

「ちゃんと」

 

ルビィも。

 

「私たちらしいね」

 

善子も。

 

「悪くないわ」

 

千咲も。

 

「いいと思うよぉ」

 

そして、動画はネットへ公開された。

 

◆

 

再生数が一気に伸びる。

 

コメントも増える。

 

共有、そして拡散。

 

「すごい!」

 

千歌が叫ぶ。

 

「めちゃくちゃ見られてる!」

 

曜が。

 

「ランキングも!」

 

梨子も。

 

「上がってる!」

 

ルビィも。

 

「本当だ!」

 

花丸も。

 

「すごいずら!」

 

善子も。

 

「フフフ……」

 

「我らの堕天の光がついに全国へ……!」

 

「そこだけ?」

 

千咲が笑う。

 

「冗談よ!」

 

そして、スクールアイドルランキング。

 

Aqoursのランキングが大きく上昇。

 

それはこれまでとは明らかに違う伸び方だった。

 

学校。

 

町。

 

Aqours。

 

その全部を込めた等身大のPV。

 

「…………」

 

千歌はスマートフォンを握りしめる。

 

「やった……」

 

「やったよ!」

 

曜も。

 

「うん!」

 

梨子も。

 

「本当に」

 

Aqours、みんなが喜んでいた。

 

そして、千咲も笑っている。

 

◆

 

その頃。

 

OHARA GUNPLA LAB。

 

開発室。

 

照明を落とした空間。

 

静か。

 

壁際。

 

2つの大型ケース。

 

それぞれガンプラのシルエットが見える。

 

ひとつ。

 

赤。

 

もうひとつ。

 

青。

 

技術スタッフが最後の確認を行っている。

 

「全パーツの組み立て準備完了」

 

「各部関節、問題なし」

 

「武装接続もクリア」

 

「パラメータ入力も完了」

 

最後のチェック。

 

そして。

 

「…………」

 

スタッフの一人がケースを見る。

 

「ようやく」

 

「…………」

 

「目覚めの時ですね」

 

静かにケースのロックが解除された。

 

「…………」

 

赤い機体。

 

その輪郭。

 

翼。

 

剣。

 

装甲。

 

そしてもう一機。

 

巨大な翼を思わせる装備。

 

無限を思わせるシルエット。

 

ヴァルキリーガンダム。

 

デスティニーガンダムインフィニティ。

 

2機がついに完成した。

 

◆

 

Aqoursが内浦の夜空を照らした頃。

 

OGLでは2機のガンプラが静かに目覚めの刻を待っていた。

 

スクールアイドル。

 

ガンプラバトル。

 

全く違う世界。

 

けれど、どちらも今新しい一歩を踏み出そうとしている。

 

 




次回予告


AqoursのPVが完成。

スクールアイドルランキングも。

大きく上昇。

そして、その頃。

OGLでは待ちに待った瞬間が訪れる。

「千咲!」

「陽哉!」

「2機とも完成したぞ!」

ついに。

ヴァルキリーガンダム。

そして。

デスティニーガンダムインフィニティ。

ロールアウト。

今回は特別に鞠莉の計らいでAqoursの6人。

そして、ダイヤも。

OGLへ招待されることになる。

「これが……」

「千咲君の新しいガンプラ……」

「すごい……」

さらに新たな剣を手にした千咲と陽哉は実戦を想定したGクエストへ挑む。

しかしそのミッションはこれまで誰一人クリアしたことがない。

あまりにも難易度の高いクエストだった。

「……これ、本当にクリアできるの?」

千咲。

「さあ……」

陽哉。

「やってみなきゃ分からないだろ」

新たな翼。

新たな剣。

新たな力。

そして、新たな戦い。

次回、第14話「紅蓮の戦乙女と無限の翼」

ついに。

ヴァルキリーガンダム。

そして。

デスティニーガンダムインフィニティ。

出撃。

お楽しみに。






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