ガンダムビルドファイターズ-Sailing to the Sunshine-   作:陽@曜花推し

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どうも、作者です。

今回から本作を正式に再スタートさせます。

『ラブライブ!サンシャイン!!』と『ガンダムビルドファイターズ』を軸に、原作アニメの流れを大切にしながら、そこへオリジナル主人公・小原千咲を加えた物語として進めていきます。

千咲が内浦へやって来て、浦の星女学院へ通うことになり、Aqoursと出会い、そしてプロガンプラファイターとしてジャパンガンプラリーグを戦っていく。

その長い物語の、始まりです。




あらすじ

鹿児島から内浦へ引っ越してきた15歳の少年、小原千咲。

5年ぶりに訪れた内浦の町は、昔とほとんど変わっていなかった。

幼い頃、鞠莉、果南、ダイヤと一緒に遊んだ場所を巡りながら、千咲はこれから暮らす町を歩いていく。

そして、2週間後に通うことになる学校――浦の星女学院を初めて訪れた千咲は、そこで思わぬ人物と出会う。



1st Season
第1話「千咲、沼津に立つ」


 

 

夏の終わり。

 

まだ蝉の声が残る季節。

 

沼津駅のホームに、新幹線から降りてきた一人の少年がいた。

 

小さなキャリーバッグを引き、肩には黒いバッグ。

 

金色の髪。

 

その髪の一部には、まだ控えめながらもピンク色のメッシュが入っている。

 

小柄な体つき。

 

そして、眠そうな目。

 

周囲の人間が一瞬、彼を見てから二度見する。

 

見た目だけなら、可憐な少女にしか見えない。

 

しかし――。

 

「……暑いねぇ」

 

少年は、間延びした声でそう呟いた。

 

「……沼津かぁ」

 

小原千咲。

 

15歳。

 

鹿児島育ち。

 

そして今日から、この静岡県沼津市が新しい生活の拠点になる。

 

千咲はホームからコンコースへ向かいながら、スマートフォンを取り出した。

 

画面を確認する。

 

時刻は昼前。

 

「……鞠莉ちゃん、まだ来てないや」

 

画面には、少し前に届いたメッセージ。

 

『ごめんね、千咲。まだ海外から戻れていないの。先に沼津へ向かっていて♪』

 

相変わらずの調子だった。

 

千咲は小さく笑う。

 

「……まあ、まりちゃんだし」

 

別に慌てる理由もない。

 

小原家からの迎えを待つ必要もない。

 

バスで内浦まで行けばいい。

 

「……久しぶりだなぁ」

 

ぽつりと呟く。

 

沼津駅から内浦へ向かうバス。

 

その乗り場まで歩いていく。

 

窓口で案内を確認し、バスの時間を見る。

 

「……少し待つかぁ」

 

ベンチに腰を下ろす。

 

キャリーバッグを隣に置き、空を見上げる。

 

夏の空。

 

鹿児島とは違う空。

 

けれど、不思議なことに嫌な感じはしなかった。

 

むしろ――。

 

「……懐かしい」

 

まだ小学校に上がったばかりの頃。

 

両親に連れられて内浦へ来たことがある。

 

そこから何度か訪れた。

 

鞠莉。

 

果南。

 

ダイヤ。

 

年齢は少ししか違わない。

 

それなのに、幼い千咲にとって3人はいつも自分よりずっと大きく見えた。

 

鞠莉は何でも先にやってしまう。

 

果南はどこへでも連れて行ってくれる。

 

ダイヤは何かと面倒を見てくれる。

 

3人とも千咲にとっては「お姉ちゃん」だった。

 

だが――。

 

ここ5年ほど、会う機会はほとんどなかった。

 

千咲が鹿児島で暮らしていたこと。

 

3人が内浦で忙しくしていたこと。

 

そして、千咲自身も学校生活やガンプラバトルに時間を使っていたこと。

 

だから、今こうして内浦へ戻ってきたことが、千咲には少し不思議だった。

 

「……また会えるかなぁ」

 

そう呟いたところで、バスがやって来る。

 

千咲は立ち上がった。

 

「よし」

 

キャリーバッグを引きながら、バスへ乗り込む。

 

---

 

 

◆ 内浦へ

 

沼津市街を抜ける。

 

次第に建物が少なくなり、景色が変わっていく。

 

海が見える。

 

山が近くなる。

 

道路の向こうに駿河湾が広がる。

 

千咲は窓側の席に座り、ずっと外を見ていた。

 

「……」

 

海。

 

山。

 

家々。

 

道路。

 

懐かしい景色。

 

何もかもが、記憶の中にあるものとほとんど変わっていない。

 

少し古くなった建物もある。

 

新しくなった場所もある。

 

それでも。

 

「……変わってないねぇ」

 

声が自然と漏れる。

 

運転席の後ろにある車窓を見ながら、千咲は昔を思い出した。

 

あの角を曲がったら、公園があった。

 

その先には海。

 

昔、鞠莉に連れられて走った道。

 

果南に手を引かれて行った場所。

 

ダイヤに叱られたこと。

 

どれも遠い昔のようで。

 

でも、ほんの少し前のようでもあった。

 

「……」

 

千咲は窓に頭を預ける。

 

眠くなってきた。

 

けれど、眠るつもりはなかった。

 

せっかくの5年ぶりの内浦なのだから。

 

全部見ておきたい。

 

やがてバスは、内浦へ入っていく。

 

千咲は顔を上げた。

 

「……着いた」

 

---

 

 

◆ 変わらない町

 

バスを降りる。

 

潮の匂い。

 

海風。

 

蝉の声。

 

千咲は一度、大きく息を吸った。

 

「……やっぱり内浦だ」

 

荷物を引きながら歩き始める。

 

ホテルへ向かう前に、少し散策するつもりだった。

 

なにしろ、淡島へ向かう船まではまだ時間がある。

 

小原家からも、

 

「好きなところを見てきていい」

 

と言われている。

 

ならば――。

 

昔の記憶を探しに行こう。

 

千咲は、ゆっくり歩き出した。

 

---

 

◆ あの公園

 

最初に訪れたのは、幼い頃に鞠莉、果南、ダイヤとよく遊んだ公園だった。

 

千咲は入り口で立ち止まった。

 

「……」

 

遊具を見る。

 

当時はあれほど大きく見えた鉄棒が、今では随分と小さい。

 

滑り台も。

 

ベンチも。

 

全部、記憶より小さく見える。

 

「……ボクが小さかっただけかぁ」

 

少し笑う。

 

千咲はベンチに腰を下ろす。

 

視線の先。

 

昔、4人で遊んだ場所。

 

鞠莉が「千咲、こっちよ!」と走り回って。

 

果南が「危ないから、そっち行くなよ」と言って。

 

ダイヤが「まったく、二人とも千咲さんを連れ回して!」と文句を言って。

 

それでも最後には、4人で笑っていた。

 

「……」

 

千咲は空を見上げる。

 

「みんな、今どうしてるかなぁ」

 

鞠莉はもう高校生。

 

果南も。

 

ダイヤも。

 

昔のように気軽に遊べる年齢ではない。

 

自分だってそうだ。

 

「あー……」

 

千咲は小さく欠伸をする。

 

「時間って、早いなぁ」

 

立ち上がる。

 

そして、公園を後にする。

 

---

 

◆ 海

 

次に向かったのは海だった。

 

防波堤の近く。

 

千咲は足を止める。

 

「……」

 

海面は穏やか。

 

太陽に照らされ、キラキラと輝いている。

 

鹿児島にも海はあった。

 

けれど、内浦の海には内浦の海の良さがある。

 

千咲はバッグから、小さなタックルケースを取り出した。

 

「……釣り、できそう」

 

もちろん今日は本格的な釣り道具は持ってきていない。

 

ただ、海を見るだけでも楽しい。

 

「引っ越したら、まず釣り場探そうかなぁ」

 

鹿児島では、休日になるとよく釣りに出かけていた。

 

一人で行くことも多かった。

 

海を見ながらぼーっとしている時間が好きだった。

 

何も考えなくていい。

 

ただ待つ。

 

魚が掛かる。

 

それだけ。

 

「……内浦なら、いろいろ釣れそうだねぇ」

 

これからの日常を想像して、千咲は少し笑った。

 

---

 

◆ そして、浦の星女学院

 

そこから少し歩く。

 

やがて。

 

千咲の前に、一つの学校が現れた。

 

校門。

 

校舎。

 

そして、その向こうへと続く道。

 

千咲は足を止める。

 

「……」

 

校門を見上げる。

 

そこにある名前。

 

浦の星女学院

 

「……ここかぁ」

 

二週間後。

 

自分がここへ通うことになる。

 

それを思うと、不思議な感覚だった。

 

「……」

 

千咲は大きくため息をついた。

 

「まさか女子高に通うことになるとはねぇ」

 

本当にそう思う。

 

話は少し前に遡る。

 

---

 

◆ 入学試験

 

鹿児島。

 

中学卒業直前。

 

千咲は小原家から一通の封筒を渡されていた。

 

「……入学試験?」

 

渡したのは、鞠莉の父だった。

 

「そうだ」

 

「高校の?」

 

「ああ」

 

千咲は中身を見る。

 

だが、学校名が書かれていない。

 

「……どこの学校?」

 

「それは秘密だ」

 

「なんでぇ?」

 

「試験を受けてからのお楽しみだ」

 

「……変なの」

 

それでも受けた。

 

そして――。

 

合格した。

 

その後。

 

初めて告げられた。

 

「君には、浦の星女学院へ通ってもらう」

 

「……」

 

千咲はしばらく黙った。

 

「……女子校?」

 

「ああ」

 

「……ボク、男だけど」

 

「知っている」

 

「……」

 

「特別生として受け入れてもらう」

 

「……」

 

千咲は天井を見た。

 

どういうことなのか。

 

どうしてそうなったのか。

 

いろいろ聞きたいことはあった。

 

だが。

 

小原家の決定はすでに動き始めていた。

 

そして何より。

 

両親も海外赴任。

 

内浦へ引っ越すことも決定済み。

 

学校まで決まった。

 

「……もう、決まったんだもんねぇ」

 

当時の千咲は、そう呟いた。

 

そして今日。

 

その学校の前に立っている。

 

「……」

 

千咲は校門を見つめる。

 

「……まあ」

 

一度、目を閉じる。

 

「仕方ないかぁ」

 

腹を括る。

 

女子校でも。

 

特別生でも。

 

もう決まったこと。

 

だったら、行ってみればいい。

 

「……案外、楽しいかもしれないし」

 

そう言って、校門へ背を向けた。

 

---

 

◆ 思わぬ出会い

 

そのとき。

 

「……あれ?」

 

背後から声。

 

千咲が振り返る。

 

そこには、一人の少女がいた。

 

赤みのある髪。

 

真っ直ぐな視線。

 

制服姿。

 

年齢は近そうだ。

 

少女は千咲を見る。

 

千咲も少女を見る。

 

「……」

 

「……」

 

「浦の星の関係者?」

 

少女が尋ねる。

 

千咲は少し考える。

 

「まだじゃないよぉ」

 

「まだ?」

 

「2週間後から通う予定」

 

「そうなんだ」

 

少女は少し笑った。

 

「私も浦女」

 

「そっかぁ」

 

千咲は彼女を見る。

 

「名前、聞いていい?」

 

「鳥谷あずみ」

 

「鳥谷……」

 

「うん」

 

千咲は小さく頭を下げる。

 

「小原千咲」

 

「小原……」

 

あずみが少し驚く。

 

「もしかして、小原鞠莉さんの?」

 

「従弟だよぉ」

 

「ああ……」

 

納得したらしい。

 

「聞いたことある」

 

「そう?」

 

「うん。すごく優秀な人だって」

 

「……そうなの?」

 

「本人が知らないの?」

 

「知らない」

 

あずみが少し笑う。

 

「変な人」

 

「よく言われるぅ」

 

二人の間に、少しだけ沈黙。

 

千咲はあずみの制服を見る。

 

「……今から学校?」

 

「ううん。今日は用事で来ただけ」

 

「そっかぁ」

 

「千咲は?」

 

「散歩」

 

「荷物多いけど?」

 

「これからホテル」

 

「ああ」

 

そこで、あずみが思い出したように言う。

 

「そういえば、来月からチームの登録もあるんだよね」

 

「……」

 

千咲の目が少し変わる。

 

「……知ってるの?」

 

「当然。だって同じチームになるんでしょ?」

 

「……」

 

初めて聞いたわけではない。

 

だが、こうして同年代に直接言われると、少しだけ実感が湧いた。

 

OHARA GUNPLA DEVELOPMENT

 

千咲が言う。

 

「あずみちゃんも?」

 

「うん」

 

「……じゃあ、チームメートだねぇ」

 

「そうだね」

 

千咲が少し笑う。

 

「よろしく」

 

あずみも笑う。

 

「よろしく、小原さん」

 

「千咲でいいよぉ」

 

「じゃあ、千咲」

 

「うん」

 

それだけ。

 

まだ少し距離がある。

 

けれど。

 

これから長く付き合うことになる仲間との、最初の出会いだった。

 

「あ、そろそろ行かなきゃ」

 

あずみが時計を見る。

 

「じゃあね、千咲」

 

「うん。またねぇ」

 

あずみはその場を離れていく。

 

千咲はその後ろ姿を少し見送った。

 

「……チームメートかぁ」

 

まだ9月からのことは、実感がない。

 

今はただ――。

 

「……ホテル行こぉ」

 

歩き出した。

 

---

 

◆ ホテルオハラ

 

しばらくして。

 

千咲は淡島行きの船へ向かう。

 

乗船。

 

海風。

 

波。

 

向こうに見える淡島。

 

「……」

 

内浦の海を渡る。

 

千咲は船の上から町を見る。

 

さっき歩いた場所。

 

浦の星女学院。

 

公園。

 

海岸。

 

どこも懐かしい。

 

でも――。

 

これからは「思い出の場所」ではなく、「生活する場所」になる。

 

「……不思議」

 

しばらくして。

 

船が淡島へ到着する。

 

千咲はキャリーバッグを引きながら、ホテルオハラへ向かう。

 

ホテルスタッフが出迎える。

 

「お待ちしておりました、小原千咲様」

 

「よろしくお願いします」

 

案内されていく。

 

館内は広い。

 

静か。

 

どこか上品。

 

「……ホテルって、こんな感じだったっけ」

 

幼い頃に来たことはある。

 

だが、もうほとんど記憶にない。

 

部屋に到着。

 

ドアが開く。

 

「こちらがお部屋となります」

 

「ありがとう」

 

スタッフが去っていく。

 

千咲は部屋に入った。

 

荷物を置く。

 

窓を開ける。

 

海が見える。

 

「……」

 

しばらく黙る。

 

そして。

 

「……いい部屋だねぇ」

 

ベッド。

 

机。

 

クローゼット。

 

必要なものはすべて揃っている。

 

そして――。

 

クローゼットの横。

 

ハンガーに、制服が掛けられていた。

 

浦の星女学院の制服。

 

千咲は近づく。

 

「……」

 

手を伸ばす。

 

制服を持ち上げる。

 

布地を指先で触れる。

 

しばらく眺める。

 

「……」

 

千咲の顔に、ほんの少し笑みが浮かんだ。

 

「制服、可愛いねぇ」

 

鏡の横へ持っていく。

 

自分に合わせてみる。

 

「……」

 

金髪。

 

小柄な体。

 

制服。

 

「……」

 

千咲は少し首を傾げる。

 

そして。

 

「……浦女でよかったかも」

 

そう呟いた。

 

さっきまで「女子校に通うことになる」と困惑していたはずなのに。

 

制服を目の前にすると、妙に楽しみになってくる。

 

「……二週間後かぁ」

 

窓の外を見る。

 

内浦の海。

 

遠くに見える町。

 

昔から知っている場所。

 

これから暮らす場所。

 

そして――。

 

まだ見ぬクラスメートたち。

 

千咲は制服をハンガーへ戻す。

 

「……楽しみだなぁ」

 

その顔は、少しだけ笑っていた。

 

---

 

その日の夜。

 

千咲はベッドに寝転がっていた。

 

スマートフォンを手に取る。

 

まだ、鞠莉から連絡は来ていない。

 

「……まりちゃん、忙しいのかなぁ」

 

そう呟いて、画面を閉じる。

 

目を閉じる。

 

今日一日で、いろいろなものを見た。

 

5年ぶりの内浦。

 

懐かしい公園。

 

海。

 

浦の星女学院。

 

そして、これからチームメートになる少女。

 

まだ始まったばかり。

 

でも。

 

「……」

 

千咲は小さく笑う。

 

「なんか、面白くなりそう」

 

そして、そのまま目を閉じた。

 

内浦へ帰ってきた少年の、新しい生活。

 

それはまだ始まったばかりだった。

 

---

 

 





次回予告

内浦での新生活が始まる。

鞠莉と再会し、そして幼い頃から交流のあった黒澤姉妹とも再会を果たす千咲。

そんな中、プロガンプラファイターとしての活動も本格化。

OHARA GUNPLA LABで、千咲はあるガンプラの製作に挑戦する。

そして――。

「……どうしてこうなった?」

第2話「お姉ちゃんたちとの再会」

千咲の高校生活が、いよいよ始まる。





まずは主人公・千咲が内浦へ帰ってくるところからスタートしました。

第1話ではあえてAqoursのメンバーを登場させず、「千咲が内浦という場所へ戻ってきた」という部分に重点を置いています。

次回から少しずつ人間関係が繋がっていきます。

そして、いよいよ千咲のビルダー適性が絶望的であることも明らかに……。

果たしてOHARA GUNPLA LABは、千咲が生み出す「何か」に耐えられるのか。

次回もよろしくお願いします。
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