無職転生 〜過去転移したから本気出す〜   作:解放の激憤

1 / 2
無職転生 〜過去転移したから本気出す〜

「満足かい?」

 

 何が?

 

「これが、君が望んだ結末だ。

 僕は全ての能力を封印されて、ここで一人、生き続ける。

 世界を存続させるためだけに、生かし続けられる。

 もう、世界を見ることもできない。誰かに話しかけることもできない。

 この先ずっと、この真っ白い、何もない、無界の光景を眺め続けるんだ」

 

 どうだろうな。

 満足かどうかって言われても、わからん。

 俺の目的は、お前をどうこうする事じゃなかった。

 ただ、シルフィとロキシーとエリスと、幸せに暮らしたかっただけだ。

 

 仕事に行って金を稼いで、帰って来て家族みんなでご飯を食べて、夜になったら寝室でしっぽりと子作りをする。

 

 普通の……そう、普通の生活だな。

 俺の考えうる限り、最大限に幸せな普通だ。

 

「君の幸せは、僕の不幸せだ」

 

 そっか。

 じゃあ、満足だよ。

 お前は今、最高に不幸そうだしな。

 お前がそうなったってことは、きっと俺は幸せなんだろう。

 

「そうか……そうかい……憎らしいな」

 

 ヒトガミの表情はわからない。

 だが、声音は憎いというものではない。

 ただ悲しみに包まれていた。

 

 泣きそうな声で、ヒトガミは言った。

 

「僕は君が、嫌いだよ」

 

 そうか、俺はお前が、そんなに嫌いじゃなかったんだと思うよ。

 

 ヒトガミが嫌そうな顔をした気がした。

 

「何を言ってるんだ……?」

「俺もよくわからないけど、今、こうして穏やかな気持ちでいられるのは、お前のおかげという気もする。お前という明確な敵がいなければ、俺はここまで満足できなかったと思う」

 

 明確な敵、明確な目標が出来たからこそ、死ぬまで動けた。

 その結果、今の俺があるのだ。

 

「……そんな事を言っても、手をゆるめたりはしないよ」

「ああ……いや、うん。そういうつもりで言ったのではないんだが……」

 

 なんだろうな。

 別にヒトガミに言いたいことがあるわけではないのだ。

 嫌っていないというだけで、特別に好きというわけでもないのだ。

 もちろん、お礼を言いたいわけでもない。

 

「……」

「……」

 

 だから、それっきり、会話が途絶えてしまう。

 

「……もしも」

 

 なんだ?

 

「……もしも、手をゆるめると言ったら君はどうする?」

「どうもしないさ」

 

 なにせ俺は死んだんだからな。

 

「そうか……そうかい。……なら、少し手をゆるめよう」

「まあ、好きにしたらいいさ。

 俺が言う事じゃないかもしれないけど……」

 

 なんとなく、その肩に、手をぽんと置く。

 

「これから、頑張れよ」

 

 怒るかな……。

 と思ったが、ヒトガミはため息のようなものをついて、肩を落とした。

 

「もしも、次に会う機会があれば仲良くいこうじゃないか。ルーデウス・グレイラット」

「お前が改心していたらな、ヒトガミ。

 じゃあな」

 

 最後に一言。

 段々と意識が薄れてゆく中、俺はヒトガミの横を通りすぎて歩き始めた。

 振り返る事なく、ただ真っ直ぐに――。

 

 最期にヒトガミは、「またね」と呟いた。

 

 

 

 

 ※ヒトガミ視点

 

 

 過去に、行こう。

 

 幸い、ルーデウスを真似て少しずつ協力者を増やしてきた。

 運命を歪ませれば、オルステッドに勘付かれる可能性があるが、今までとは異なる干渉だ。

 ルーデウスも死んだ。

 おそらく邪魔はされないはずだ。

 過去転移魔術を完成させ、ルーデウスを呼び出した瞬間に戻るのだ。

 そして、ルーデウス・グレイラットを味方につける。

 そうだ、そうすれば良いのだ。

 結局のところ、オルステッドがぼくに勝てる要因はルーデウス・グレイラットだ。

 ならば、ルーデウス・グレイラットをぼくの味方にすればいい。

 ルーデウスはぼくを嫌いではないと言った。

 つまり、とんでもないお人好しだ。

 ザノバ・シーローンやクリフ・グリモルのような親友でなくとも構わない。ただ友人である。それだけでいいはずだ。

 

 待っていろ、ルーデウス・グレイラット。

 ぼくの手で、君を幸せにしてやろう。

 

 「君の幸せは、僕の“幸せ”だ」

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。