幸運なことにミオンの手がかりを掴んでからさほど時を待たずに僕は外出の機会を得た。
何もかも上手く行き始めた気がした。
僕にもやっと小さな幸せというやつが訪れるのかもしれない。
街頭のニュースでは不景気だとか、どこそこで強盗があったとか、自称「勇者」の一行が検問で捕まったとか、いろんな事件を報道しているけれど、僕にとっては「ミオンに会えるかもしれない」というトップニュースが頭を閉めていて他のことなんかまるで入ってきやしなかった。
だから、村の入り口に立つまで僕はまるで考えもしなかった。
村が人間に襲われたなんて。
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焼き払われた村。
多くの家は焼け落ち、倒壊した残骸が道を塞いでいる。
煙は出ていないことや警官が不機嫌そうに立っていることから「それ」が昨日今日おこったことではないことがわかる。
村の門があっただろう柱に酒を抱えた老人が座り込んでぶつぶつと文句を言っている。
あの野郎、悪魔に成りすましてやがった。騙しやがって。
何が勇者だ。
女も子供も一緒くたじゃねえか。
ミナゴロシだ。
ちくしょう。なんもねぇ。なんも残ってねぇ。
ちくしょう。
村はどこまで行っても同じだった。
瓦礫と嫌なものが焼けた臭いの充満し、時々すすり泣くような声が聞こえる。
母親の実家のあった場所の前に立つ。
生け垣は奇跡的に無傷で来客を迎えていた。
けれどそこが無人なことは入らずともわかった。
地面が抉れている。
家があったはずの場所はまるで巨大な龍にひと飲みにでもされたかのように何もなかった。
ミオン。
僕はどうしていいのかわからなかった。
ミオンはどこに行ったのだろう。
人間?
ここは魔界で、人間は入ってこられないはずなのに、どうしてそんなあり得ないことを言うんだろう。
何も考えられない僕が固まったように立ち尽くしていると、入口にいた老人がフラフラと近づいてきた。
あんた、この家の関係者か?
この村の有り様は全部ここの家の餓鬼のせいだ。
あの餓鬼が人間を手引きしやがった。
俺は前からおかしいと思ってたんだ。
あの餓鬼はまるで人間みてえな姿形をしてやがった。ありゃあ絶対母親が人間にしこませた木偶だ。人間を狩るときに使う疑似餌だよ。木偶の分際でいっぱしの悪魔様みてえな暮らしをさせてもらっていたくせに、恩を仇で返しやがった。
気づいた村のやつら全部でこの家を吹き飛ばしてやったが、肝心の人間にゃ効かなかった。奴ら逆に炎の龍をこんな場所で呼び出しやがった。
餓鬼の名前?確か、
ミオンとか...
老人の言葉が途切れた。
僕の鉤爪が老人の首を鷲掴みにしたから。
老人の足が地面から離れるほど腕を高く掲げる。
この老人は何て言った?
この家を吹き飛ばした?
ミオンのいたこの家を?
僕のミオン。
大事な大事な僕のイモウト。
大切なミオン。
それをフキトバシタ?
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どれくらい時間がたっただろう。
村には誰もいない。
「もう」誰一人いなくなった。
僕は頭が白く白くなるのを感じていた。
僕はなぜこんなところにいるんだろう。
雨が降ってきた。
不思議と冷たくはない。
日が暮れる。
闇が全てを覆う。
僕はなぜこんなところにいるんだろう。ミオンのいないこんなところに。
そうだ、ミオン。
ミオンを探しにいかないと。
僕は町に向かって歩き出した。
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