僕が魔王になった理由~異なる未来~   作:小合紫

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その4

 

魔王城

 

正式には別の名前があるのだが、一般的にそう呼ばれる城は議会から離れた山中にある。

 

古の王達はここから魔界のすべてを睥睨し、そして納めていた。

 

しかし今、巨大な石造りの城は誰もいなかった。

長く王不在であったため調度は埃をかぶり、ネズミさえ住んでいない。

 

その城の地下深くにがらんとした空間がある。天井も奥行きも明かりが届かないほど高く広く、手燭ひとつ持って入れば底知れぬ闇の中に取り残されたような錯覚に陥るだろう。

 

ここは魔王の間。

 

僕のいるべき場所。

 

 

 

あのあと、老人達は僕を正式に魔王に迎えたいと申し込んできた。

 

彼らが言うにはこれまでも僕のように魂を暴食して肥大化した悪魔は何人も居たらしい。けれどどの悪魔も皆一様に理性を失い、町も人も見境無く破壊したのだと言う。

また、理性を失えばそこで魂を食べることも止めてしまうため僕程大量に食べることもまれだと言う。

 

僕はこの数百年で最も成長した悪魔であり、そして理性を残した唯一の化け物と言うことになる。

 

そして、理性のある化け物の事を僕らの国では魔王と呼んだ。

 

あの老人達は化け物か魔王かの判断をしに来ていたのだ。

 

そうして、僕はこの魔王城に連れてこられた。

 

魔王と言っても議会の存在する魔界では事実上お飾りでしかないことはわかっている。

 

実際この魔王城には使用人らしい使用人はおらず、化け物を体よく隔離するための施設にすぎないだろう。

 

けれど僕は魔王となることに頷いた。

 

魔王の間の真ん中に僕は丸く踞る。

 

ここにいれば何れ「やつら」がくる。

 

だから僕はここで待つ。

 

 

++++++

 

 

あれから何年が経つだろう。

 

僕が城に住み着いてから、魔力に誘われて小鬼がすみ始めた。(今では大分珍しい存在になったが、ここには沢山いた)

 

小鬼は悪魔の魔力を糧に生きるため宿主の命をある程度聞く。

 

小鬼は頼みもしないのにせっせと魂を運んでくるので食うに困ることはなかった。

 

やがてどこから聞き付けてきたのか、魔王に仕えたいと言う物好きが現れた。

 

僕は誰かに敬われたい訳じゃない。

 

僕が無視をしていると、何をどう受け取ったのか、勝手に城の采配を始める。

 

煩わしい来客などの対応をしてくれるので放っておく。

 

気づくと城には生き物の気配で溢れるようになった。

 

僕には彼らが何のためにこんな辺鄙なところへ好き好んで住み着いたのかわからなかった。

 

それでも、活気のある気配は不快ではなかった。

 

不思議と、不快ではなかったんだ。

 

だから、「それ」の気配を感じた時は少し残念だった。

 

僕が魔王になった理由。

 

それがやってくる。

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