僕が魔王になった理由~異なる未来~   作:小合紫

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その5

 

 

『よくぞ来たな。勇者よ』

 

そう。僕は「勇者」を待っていた。

 

ずっと待っていたんだ。

 

でも何故だろう。

 

思い出せない。

 

靄がかかったように昔のことは思い出せなくなってきている。

 

頭が痛い。

 

ズキズキする。

 

大事なことがあったはずなのに。

 

思い出せない。

 

でも、もういい。

 

僕は忘れることこそ望み、すべき事を覚えているのだから。

 

 

 

それらはごく少数のパーティだった。

 

人間だけかとおもえば、天使や悪魔までいた。

 

偉そうに指示を出しているあいつが勇者だろうか。

 

暗くて顔まではよく見えない。

 

僕は「勇者」の顔をよくみてやろうと、彼らの回りに火柱を建てる。

 

辺りが真昼のように明るくなった。

 

怯んだように動きを止めた「勇者」達。

 

確かに「勇者」の顔を確認することはできた。

 

しかしそれよりも僕を惹き付けたのは 「勇者」の連れてきた悪魔だ。

 

あれはだれだろう。

 

若い、女悪魔。

 

僕はあの悪魔(ひと)を知っている気がする。

 

思い出せない。

 

ああ、でも、何故だろう。

 

懐かしい。

 

逢いたかった。

 

なぜ、こんな所に居るのだろう。

 

何故、今、「そこ」に居るのだろう。

 

人間と共に、「勇者」なんかと一緒に。

 

 

僕がその悪魔に触れようと手を伸ばすと 「勇者」達はその悪魔を守るように立ちふさがる。

 

邪魔をされた僕は不機嫌になる。

 

尾を振るい 「勇者」達を弾き飛ばそうとするが、天使や悪魔に手を引かれ宙に逃げられる。

 

悪魔は人間と頷き合い、連携して攻撃を仕掛けてくる。

 

何故かその姿が勘にさわる。

 

何故そんなやつらと一緒にいるんだ。

 

そんなやつらよりもそんなやつらよりも

 

僕は、

 

僕が、

 

僕こそが、

 

 

激しい 瘴気を生み出し、室内を満たす。

 

悪魔にはほとんど影響のない 瘴気だが、人間には猛毒だ。

 

苦しみのたうつ人間に口を歪めて嘲笑う。

 

けれど悪魔は青い顔で駆け寄り、風を生み出して何とか 瘴気を遠ざけようとする。

 

泣きそうな顔。

 

その顔を見たとたん僕は身動きができなくなった。

 

を泣かせてしまう。

 

僕が立ち尽くす間に天使が辺りの浄化を行い、人間達も体制を建て直す。

 

どうして。

 

どうしてそいつらの事をそんな風に心配するんだ。

 

どうして、そんな顔でやつらを見るんだ。

 

どうして、僕を、そんな目で見るんだ。

 

僕こそが、君を、守ると、決めたのに。

 

苦しい。

 

なぜ、どうして、キミは、僕の、

 

「っっ!!!」

 

痛みに気づけば、僕の瞳につき立つ輝く刃。

 

投げたのは、彼女。

 

致命傷ではない。

 

けれど、僕を殺そうと、殺意を持って投げられたもの。

 

あの悪魔(ひと)に、僕は、もう、いらない。

 

何かが足元から崩れていく。

 

いやだ、駄目だ。

 

 

 

「僕」が死ぬ。

 

 

 

 

「 ああぁぁああああああぁぁあ!!!」

 

 

 

 

そこから先のことはよく覚えていない。

 

ただ、ひたすらに怒り、「魔王」は「勇者」を殺そうと暴れた。

 

僕は頭をいくつも失い、羽は破れ、全身から血を流し、尾も半ばで断たれている。

 

人間達も半数ほどに減り、生きている者も、ある者は腕を失い、ある者は武器を失い、天使は翼をもがれ、悪魔は、悪魔も傷を負っていた。

 

どれ程の時間戦っていただろう。

 

やがて先に力尽きたのは僕の方だった。

 

どぅと地響きを立てて倒れ込む。

 

 

 

 

立たなければいけない。

 

ーなぜ?

 

「勇者」を殺さなければ

 

ー何のために

 

「勇者」は仇だから。

 

ー誰の?

 

・・・・・思い出せない。

 

ーあの子は其処に在るのに?

 

・・・・・

 

ー僕は、もう、いらないのに?

 

・・・・・

 

 

 

瞼をあげることさえも億劫だった。

 

程無く僕は死ぬのだろう。

 

運命なんてものがあるのなら、なんて意地悪なんだろう。

 

僕は、何のために魔王になったのか。

 

 

 

 

 

 

そう思った時、誰かが魔法を使った。

 

僕に止めを刺すためのものではない。

 

麻痺の魔法。

 

今さら何故と、僅かに瞼を持ち上げれば、麻痺しているのは「勇者」の方だった。

 

魔法を使ったのは後衛の男。

 

何か言っている。恨み言のようだ。

 

どこにでもいる、妬みと恨み、そして欲望に負けた男の言い訳だ。

 

要は勇者を殺して自分一人の手柄にするつもりなのだろう。

 

人間の都合など僕にはどうでもいいことだ。

 

けれど、男の刃の先には彼女がいる。

 

男が狂気を孕んだ笑みで彼女に近づいていく。

 

殺される。

 

あの子が、僕の が。

 

 

 

 

 

 

最期の力を振り絞り、男の上半身を喰い千切る。

 

けれど、それが限界だった。

 

力がするするとほどけていくのを感じる。

 

魂達が僕という楔から解き放たれようとしている。

 

間に合ってよかった。

 

きっと、僕は、このために生まれてきたんだ。

 

を救える魔王は僕だけだから。

 

 

きっと

 

 

これが

 

 

僕が魔王になった理由。

 

 

 

 

 

 

++++++

 

 

 

僕に妹のミオンが出来た。

 

ミオンはとっても小さくて...なんだか...暖かくて....優しい気持ちになれた。

 

僕は、僕がしてほしいことをミオンにしてあげた。

 

ミオンを抱きしめてあげた。

 

ミオンと一緒に添い寝してあげた。

 

ミオンに愛してると言った。

 

 

 

 

 

ミオン、愛してる。

 

 

 

 

愛してるよ。

 

 

 

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