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放棄世界線 A70D92 世界線異常。シナリオSの可能性あり。
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コンソールにそんな警告が表示されたのは、私がちょうど定時上がりで帰るために荷物をまとめ始めていた時だった。
通知欄を開くと、そこには懐かしい世界線の名前がある。
「ヴィラール」世界線
六次元観測機を呼び出して情報を読み出す。
おかしい。
本来なら18世紀までに滅亡しているはずのオーク族が存在している。
いや、生き残っているどころか増えている!
それとアメリカ合衆国南部に相当する地域の熱源が異様に多い。「真正世界線」より多くの投資・開発がなされている証拠だ。
「真正世界線」との大幅な乖離。
――誰かがいじっている。
私の放棄世界線管理官としての直感がそう告げていた。
放棄世界線に不法干渉する奴は多い。誰だって自分が
もしくは…いやないか。放棄処理を行えば、混線が起こらないことは確認済みだ。
情報をシステムに送り、干渉の許可を取り付ける。目的は干渉者の確保と影響の修正だ。
システムの推奨は…エルフ族での転生だ。向こうでの地位と能力を考えれば当然だろう。
さてどこで生まれるかだが…オークの居住地に近いところがいい。シルヴァン川北岸地域にセット。
たまにはダークエルフに転生するのもいいものだ。転生したら適当な巨狼族を護衛にして、干渉者の調査をすればいい。
残業代をもらいつつ、あの美しい世界でまったり過ごせるなんて、役得だなぁ。
現地の知的生命体として転生する場合、転生先の肉体で物心がつくまで、自我を発揮できない。
神経系の発達が追い付かないからだ。
計算によると私の自我が復活するのは…現地暦875年11月ごろか、ヨシ!転生!
う、うわあああああ!!
◆
星暦923年 ケーニヒスガーデン王宮にて
グスタフは、王宮の一室で自分の腹心を集めた。
その部屋は小さい会議室のような部屋で、グスタフの執務室の手前に位置している。
中央に王宮に見合う重厚感のある丸テーブルが一つあり、周りには5つの椅子があった。
警備は厳重だ。入り口には
さらにこの日はアンファングリアの警備が増員され、二個中隊が警備していた。
会議室にいるのは、この国の中枢といってよい。
国王 グスタフ・ファルケンハイン
王妃 ディネルース・アンダリエル
陸軍総司令官 アロイジウス・シュヴェーリン
大統領 カール・ヘルムート・ゼーベック
議題は、アスカニアの賠償問題のような国際情勢のものではない。しかしもっと切迫したものだった。
グスタフはテーブルの上に一枚の紙を置いた。今朝、グスタフの執務室に置いてあったものだ。
「なぁ、皆はこの字読めるか?」
三人は首を横に振る。その内ディネルースはその文字に見覚えがあった。
あのティリオン離宮の黄金樹の下にあった石碑の文字…
「グスタフ、この文字は…」
紙に書かれた文章は
お前たちのやったことはすべてお見通しだ。首洗って待ってろ干渉者どもめ!
グスタフは手紙の内容を読み上げると、自分がティリオン離宮で知ったことと合わせてしゃべり始めた。
この手紙を書いた人間がだれであれ、自分が来た未来よりもさらに遠い未来から来た人物のものであろうこと。
そしてその人物は私がこの世界にしたことを快く思っていないこと。
おそらく私は殺されるだろうが、その時に生じるであろう混乱に対して三人には備えてほしいこと。
「「「…」」」
三人は黙って聞いていたが、最初にディネルースが口を開いた。
「グスタフ。私は…私たちは」
「失礼いたしますぅ~」
不意に部屋のドアが開き、キャメロット式”メイド姿”のダークエルフの少女が入ってくる。
彼女は困惑する4人をよそにそれぞれの前にコーヒーの入ったカップを置いていった。
「待て。お前どうやってここに入ってきたんだ?」
ディネルースが”メイド姿”に話しかける。
部屋の入口には警護隊の見張り二名とアドウィンがいる。
彼女らには誰も通すなと厳命していた。
「特殊な交渉術ってやつですよ。それとも
空いている席に5つ目のカップを置くと、彼女がその席に座った。
「どうもー。異世界管理局の者です。皆さんお集まりのようですね?」