二年後…
グスタフはベッドの上で最期の時を迎えようとしている。
周りではオーク族の医師や、ダークエルフの侍従。そして、傍にはディネルースがいる。
しかし…彼はすでに意識を混濁し、自分が何をしゃべっているのかさえ、わからなくなっていた。
「グスタフ・・・ お前・・・」
ディネルースがグスタフにそう話しかけたとき、グスタフはわずかに働く五感で、周りの時間の流れが止まったことを悟った。
なぜわかったかといえば、以前に同じことを経験したからである。
「どうもー。ご無沙汰しております~、異世界管理局の者です。」
あの”メイド姿”が視界の端からひょっこり現れた。
彼女はディネルースの近くにあるサイドテーブルを物色している。
グスタフはなぜかはっきりした頭でものが考えられるようになっていた。
「おい…そっちは、」
「お、あったあった。」
”メイド姿”はグスタフの「遺言書」を取り出す。
「頼む…!やめてくれ…」
グスタフは身を起こそうとするが動けない。
「やっぱりここにありましたか。なになに、この遺言を決して神聖視してはならない。考えましたねぇ。私のもこうすればよかった。」
彼女はパラパラと遺言書を最後まで読み終えると、
「まっ、こんなもんならいいでしょう。でも、一つ書き忘れてることがありますね…」と”メイド姿”は遺言書の最後のページに何かを書き足し、グスタフの目の前に持ってゆく。
ディネルースよ、バイクに乗ってはいけない。君だけは、頼むから
「こうしとかないと、危ないですから。お礼はいいですよ。」
「…そのためにここに来たのか?」
「や、あなたの輪廻先を決めましたので、その報告に。もちろん地獄ですよ!」
「どうせろくでもないものだろう。株なしの白エルフか?それともオルクセン連邦崩壊後の時代にでも飛ばすのか?」
グスタフは”メイド姿”の言った「地獄に送る」という言葉を思い出せていた。いや、思い出させられたといった方が正しいかもしれない。
「そんなありきたりなことはしません。それに、あなたは一つ勘違いをしています。」
「生まれ変わり先は未来とは限りません。」
「どういう…ことだ?」
「輪廻先では、あなたの大切な人はみんな生きてるってことです。ツィーテンさんまでね。ついでに今回の豚生の記憶もつけちゃいます。」
「???」
「わかりませんか?「強くてニューゲーム」ってやつですよ!」
グスタフの要領を得ない様子を見て、”メイド姿”は口をすぼめて不機嫌そうにする。
「むぅ。しかしなかなかいい最期ですね。いいベッドの上で、奥さんがそばにいて…癪だなぁ」
”メイド姿”は「そうだっ」と呟き、少しグスタフから離れると、右手を斜め上にまっすぐ掲げ、左手の人差し指を白唇にあて…
「ハイル〇ットラー!!」と叫ぶと、そのまま部屋を出て行った。
グスタフは最初は意味が分からなかったが、やがて理解し始めると同時に体中を不安が駆け巡った――
そして時間の進み始めとともに、彼の意識はまた混濁してゆき、そのまま戻ることはなかった。
◆
星暦XXX年 黒い森のどこか
ある牝のオークが一人の子供を連れて、さまよっている。
背中には2,3本の矢が突き刺さっていて、彼女の歩いた後には赤い線ができていた。
やがて彼女は力尽き、近くにあった木の根元に座り込む。
彼女の息子もまた、その木の近くにしゃがみ込んだ。
「いい?…いい、アルブレヒト、あなたは…ぐふっ…逃げなさい。」
「しかし…かあ様を置いてなど…!」
「しっかりしなさい…あなたは…立派な王様になるんでしょう!」
「立派な王…アルブレヒトⅡ世に!」
その瞬間、彼に存在しない記憶が流れ込む。
ここは、どこだ?
私の母は死にかけていて…いや、私は母を食べたはずだ!?
アドヴィンはどこだ?みんなは…
ディネルースに…会いたい。
私は誰だ…?
彼の混乱した思考は、背後から現れた魔種族狩りたちによって遮られることになる。
魔種族狩りは三人、こちらは一人だ。
「グスタフ」はいくらか若くなった思考で毒づいた。
あの野郎。何が…
「強くてニューゲーム」だ!
答え合わせ ~(完)~
次回、「強くてニューゲーム」に続かない。
最後までお読みいただきありがとうございます。
魔王が大魔王に昇進するという話になります。
元々、WEB原作の13日間危機を読んだ時に、
ちょっとオルクセン弱くなってね?
ディネルースの性格的にバイク乗ってそうだけど乗ってないな?
何故ディネルースだけこんなに絶望してるんだろう?
といったあたりに疑問を持ったのと、さらにアルブレヒトⅡ世がものすごく優秀な王だったという話をSNSで拝見し、そんなに優秀な王なら中身はグスタフ並みに熟練した王だったんじゃないか?という考察妄想をこのような形にまとめました。
嘘です。グスタフを地獄に落としてみたかったんです。
”メイド姿”こんな見た目のイメージです。
【挿絵表示】