翌々日の朝食後の自由時間、タビノがうたた寝から目を覚まし寝返りを打つ、その時に目に入ったのは刃物を振り上げるナノカの姿だった。
咄嗟にタビノは抱き枕を投げ付け視界を塞ぐと刃物を持った手を掴み手首を捻る。
ナノカの手から刃物が落ちナノカの腹を蹴り距離を取る。
「グッ!!」
ガシャン!!と鉄格子にナノカの体がぶつかり音を立てる、余程強くぶつかったのかナノカは立ち上がろうとするが足元がおぼつかず再び鉄格子に背中を預けその場にへたり込んだ。
「…………………………………………」
一方同じ頃、エマもハンナの牢屋に来ていた。
エマ達は脱獄に気球を作る事を計画し裁縫が得意なハンナがその球皮部分を作っていた。
その手伝いにシェリーとメルルが付き添いエマが様子を見に来たのだが生憎シェリーは役に立って居ない様子だったが確実に計画は進行していた。
(これ以上は皆の邪魔になっちゃうよね)
エマはそう判断し何処か別の場所の様子を見に行こうとした時。
『アアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』
奥の牢屋から悲鳴に近い叫び声が聞こえその声が通路全体に響き渡る。
「な、何事ですの!?」
「今のは悲鳴でしょうか?」
部屋の中で作業していたハンナとシェリーもこれには流石に通路に出て様子を伺う。
「この奥は、確かタビノさんが寝ていた筈です」
メルルがそう言いタビノの身に何かあったのかとエマ達は急いでタビノの居る牢屋を覗き込む。
「タビノちゃん!!……………………え?」
エマがタビノの名を呼び中に入るとそこには、
「あれ?エマちゃんじゃん、どしたの?」
顔に赤い液体を付けたタビノとその近くでガタガタと震え荒い息を吐く縛り付けられたナノカの姿があった。
ナノカは腕を後ろ手に縛られ椅子の脚と両足をそれぞれに縛り付けられている。その目には恐怖が滲んでいる、最もそれを読み取れるのは片目だけだが。
「た、タビノちゃん、な、ナノカちゃんのその目…………」
「え?あ~これ?いやさ〜、私考えた訳よ、どうしたら私の事ほっといてくれるかなって、皆は私の言ったこと守ってくれるから別に良いんだけどさ、ナノカちゃんだけ全然私の事ほっといてくれないわけ」
そう言いながらタビノは【収納】を開き中からハンカチを取り出し顔の血を拭う。
「そこで考えた訳、どうやったらナノカちゃんは私の事ほっといてくれるかな〜って、そこで閃いたのよ【
まるで名案を思い付いた様に自分の考えを話すタビノにエマはこの世のものとは思えない恐怖を感じる。
「だ、だからって殺すなんて、そんな事したらタビノちゃんが【魔女裁判】で処刑されちゃうよ!?」
「そ、そうですわ!!貴女死ぬおつもりですの!?」
エマの振り絞った声にハンナが同調しタビノの説得を試みる。その姿を見ていたタビノはキョトンとした顔をしていた。
「何言ってんの?そんな面倒な事するわけ無いじゃん」
「え?」
「【裁判】が行われるのは死体が見つかった時だけでしょ〜、ここのルールは【殺人事件が起きたら【魔女裁判】を行う】だからね」
「成る程、ナノカさんを殺さず視力だけを奪うつもりなんですね」
納得が行った、と言うようにシェリーはポンと手を叩きそう言うと名タビノは「ピンポーン♪」と正解音の様な物を口にする。
「そんな、そんな事の為にナノカちゃんを傷付けるなんて、そんなのおかしいよ!!」
「わ、私は銃を返してもらおうと思っただけよ」
エマの言葉にタビノが反論する前にナノカが口を開き皆の視線が自然とナノカに集まる。
「アレはもう私のだから」
「人の物を勝手に奪っておいて何が【私の物】よ、そんな横暴まかり通る訳無いわ」
「でもナノカちゃんだって独断と偏見で私とミリアちゃんを黒幕って決めつけたよね?此方の言い分もミリアちゃんの言い分も聞かずに、【幻視】だっけ?そんなあやふやな物のあやふやな証拠でさ……………………盲目になっても未来や過去が見えるのかな?【盲目の預言者】って何かカッコいいよね」
「貴女、イカれてるわ」
ナノカのその言葉にタビノの動きがピタリと止まりナノカの残った目を覗き見る。
「私に言わせれば【他人の為に】なんて言ってる奴の方がイカれてるよ、他人の為に身を切って相手や周りが何を返してくれるっての?感謝?激励?ハッ、そんなものクソ食らえよ」
タビノはそう言うとナノカの残った目に爪を突き立てナノカの目には何も映らなくなった、永遠に