看守に重傷を負わされたマーゴはメルルの献身的な看病により何とか峠を越えた。
しかしまだ安静にしていなければならないのは変わらず怪我が治るまでの間マーゴは医務室の住人となった。
他の少女達がマーゴを心配し見舞いに行く中、タビノは興味ない為に部屋で食っちゃ寝していた。
しかし当然それを良く思わない者も出て来る。
「引きこもってばかりいるのは正しくない」
そう言って突然部屋に上がり込んできたのはヒロだった。
「………………………………何、突然」
本当に突然の事にタビノはそう言う。
「君はここに来てから禄に運動していないだろう。精々毎食の食堂と部屋の行き来だけだ、そんな事では体調を崩してしまうし精神的にも良くない、たまには散歩でもするべきだ」
「え〜、面倒臭いしやる意味無いからやらな〜い」
「ではこうしよう、今日の君の夕飯は私が作る、無論材料は君に出して貰わなければならないが、食事を作ると言う手間が省けるのは君にとっても得だろう?」
「う〜ん、じゃあやっても良いかな」
ヒロはそう言ってタビノを言葉巧みにベットから引き摺り出しタビノは散策を始める。
最初は牢屋敷の外の散策に出る、自然溢れる森の中心で肺いっぱいに息を吸い込めば新鮮な空気がまたたく間に肺を支配する。
「でも、わざわざ着いてくる事無くない?」
「散歩したと嘘をついて別の部屋で怠けられては意味が無いからな」
「そんな事しないのに」
「どうかな」
ヒロはそう言いながらタビノの後をついてくる。タビノは場所を移し牢屋敷内を散策する。
途中何人かの少女達とすれ違うが特に会話は無い。
「ねぇそろそろ戻って良い?」
「そうだな、そろそろ良い時間だろう」
ヒロの言葉もありタビノが牢屋に戻ろうとした時、車椅子に乗るマーゴとその車椅子を押すメルルに会った。
「あら、タビノちゃんにヒロちゃん、奇遇ね」
「怪我はもう良いの?」
「ええ、少し外の空気を吸いたくなってメルルちゃんにお願いしたの」
「そうなんだ、お大事にね」
「ふふ、そう思うならタビノちゃんが押してくれても良いのよ」
「マーゴ、彼女を動かすには対価が…………」
そう言ってヒロがタビノの方を見ると直立したまま青い顔でガタガタと震えるタビノがいた。
「タビノ?」
「な、何でも無い…………ごめん私、具合悪いから戻るね」
「だ、大丈夫ですか?具合が悪いなら何かお薬を…………」
メルルがそう言って伸ばした手をタビノは振り払い悲痛な顔で牢屋に戻るとベットで蹲る。
「大丈夫大丈夫誰も居ないからもう搾取されない自分の好きな事してて良いもう責任なんて無いおじいちゃんのお墓もお父さんのお墓も叔母さんのお墓も大叔母さんもお母さんも妹もおばあちゃんもここには誰も何も無いんだから私は好きな事して良いのゲームして漫画読んで好きな物食べて好きな時間に寝て親戚の人に頭下げるのもバイトに行くのもおばあちゃんを病院に連れて行くのも洗濯も掃除も料理も全部全部しなくて良い私はもう奴隷じゃない私はもう奴隷じゃない私はもう奴隷じゃない私はもう奴隷じゃない……………………………………じゃあ、今の私は一体何?」
仄暗い瞳で呟くタビノの言葉に答える声は何も無かった。