無心少女ノ魔女裁判   作:寝心地

30 / 30
原罪:責任の怪物奴隷

祖父の家に住める様になってからも生活はギリギリだった。

 

母は相変わらず寝たきりでバイトの時は祖母と祖父が家事をしてくれていた。

 

お陰で私の負担は多少軽減されたがそれも短い間だけ、祖父が体を壊し入院する事になった、お医者さんは多分2度と退院出来ないだろうと言った。

 

それから程なくして祖父は亡くなった、お金の無い私達には簡単な葬儀をあげてやるので精一杯で、それが終わったら前と同じ様に忙しい毎日だ。

 

否、前より酷いかも知れない。その一番の原因は大叔母だった。

 

『爺(兄)さんが亡くなったのはお前たちのせいだ!!あの家に住めなくなったのなら別の家に住めば良い物をわざわざこの家に上がり込んで来て従兄弟達を追い出して!!恥を知れ!!祖母の通帳は私が預かる!!これは婆(姉)さんの物だ!!お前達は自分で何とかしろ!!』

 

『そんな!!無理に決まってるでしょ!?私のバイト代だけじゃあ4人の食費にすら届かないのに!!大体お婆ちゃんの食費とかどうすれば良いの!?病院代は!?それも私達が面倒見ろっていうの!?』

 

『煩い煩い!!当然だろ!!あそこは婆(姉)さんの家なんだから!!住まわせてもらってる分際で贅沢言うな!!』

 

大叔母はそう言って連絡を絶った。

 

それから私の地獄すらも生温い1日が始まった。

 

早朝、起きて家族全員の朝食・昼食を作り妹が学校を出るより早くバイト先に向かい夜まで働き帰りに夕飯の買い物に行って夕飯を作り家事をして日が回る直前に布団に入り漸く1日が終わる、事はなく深夜に物音で目を覚まし音源に足を運ぶとそこには何時も認知症を患った祖母が立っている。

 

『お婆ちゃん何してるの?』

 

『お爺さんが居ないのよ、こんな時間に何処に行ったのかしら?』

 

『お爺ちゃんは……………………病院、病院に入院してるんだよ』

 

『あら!?何処か具合が悪いの?』

 

『うん、ちょっとね、明日お見舞いに行こう、だからもう寝よう?』

 

『そうねぇ、お爺さんに見せるのに寝不足の顔は見せられないわね』

 

そう言って布団に入るのをそばで見てまた布団に入る。祖母は元々認知症だったが祖父の死でそれが悪化した、記憶力が著しく低下し深夜徘徊する様になった。

 

夜の徘徊は朝までに大体4〜5回、2回で済めばそれは奇跡で1回も無い日なんて無く寝不足の頭でまた早朝に起きて家事とバイトに向かう。

 

勿論妹も出来る事を手伝ってくれたがそれでも私の負担は祖父が居た頃とは比べ物にならない。

 

それでも不調の中で毎日生活出来たのは母が丈夫な体に産んだからだろう。

 

でも精神は別だ、寝不足は思考を鈍らせバイト先でのミスが増える様になった。資金難は飢えと病を呼び込み常に空腹で病に掛かった者を病院に連れて行く金も無い、妹が病気になったのに病院に連れて行くことだって出来やしない。

 

『お願い大叔母さん!!妹が病院に行くお金だけで良いの!!お婆ちゃんにも許可貰ってる!!お婆ちゃんの通帳使わせて!!』

 

『いい加減にしな!!これ以上騒ぐ様なら警察を呼ぶわよ!!その程度市販の風邪薬でも飲ませて寝かせときゃあ勝手に治る』

 

『お願いします!!妹が病気なの!!病院に行くお金貸して下さい!!』

 

『ウチも今厳しいの、貸してあげたいのは山々何だけどねぇ』

 

『お願いします!!』

 

『無理無理、ウチもカツカツ何だよ』

 

『誰か…………』

 

『店先で騒ぐな、さっさと帰れ』

 

『お願い…………』

 

気が付くとスーパーの市販薬品売り場で風邪薬を手に立ちすくんでいた。

 

(ああ、これさえあれば、この薬が欲しいのに)

 

その時、私の手が熱を持った、初めて見る物なのに使い方が分かった、それが私が【収納】を得た瞬間、そして私のタガが外れた瞬間。

 

(そんなに自分が大事なら私だって自分を守ってやる、それで誰が不幸になろうと関係知ったことか)

 

私は欲しい物を根こそぎ自分の物にした、食べ物も薬も金も服も理由さえも、欲しいから、楽しいから、得をするから、その程度、その行いが他人の迷惑や不幸や犠牲を強いたとしても。それが例え身内であろうと。

 

料理を作るのを辞めた、楽しくないから、掃除洗濯を辞めた、面倒臭いから、祖母の徘徊を止めるのを辞めた、眠たいから、バイトを辞めた、働く必要が無くなったから。全てを妹に押し付けた、散々面倒を見てきてやったのだから。

 

外道と呼ばれようと怪物と罵られようと自分が無くなれば生きていけないのだから。

 

そこで夢から覚める。

 

欠伸を1つしてベットから降りて食堂に向かう。さて、今日はどんな楽しい事をしようか。




原罪:責任の怪物奴隷
彼女は奴隷、責任の奴隷、家族を守る責任、家族を養う責任、家族を助ける責任、重く重く伸し掛かる数多の責任、重過ぎるそれを背負う為に多くを手放した、学習、時間、人生、未来、尊厳、そして希望。

しかしそれは果たして本当に彼女が自分の物を手放してまで背負わなければならない責任だろうか?
そしてその責任から逃れ怪物になった彼女を一体誰が非難出来るのだろうか?

それはきっと彼女と同じ事をしてやり遂げた者だけ、そんな者がいればの話だが
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

無用少女ノ魔女裁判(作者:あるふぁせんとーり)(原作:魔法少女ノ魔女裁判)

 居場所を探す少女、祁答院マイ。▼ 彼女は【印刷】の魔法を持つ魔法少女として牢屋敷で目を覚ました。▼ そして屋敷に集められた14人の魔法少女達には冷たく告げられる。▼「間もなく皆さんの間で【殺人事件】が起こると思います。その時は……面倒ですが、【魔女裁判】で犯人を処刑してもらいますので」▼ 誰もが被害者であり、誰もが加害者となりうる閉鎖空間。▼ 彼女の居場所…


総合評価:265/評価:8.88/連載:13話/更新日時:2026年10月17日(土) 07:01 小説情報

夏目アンアンや他の魔女達を幸せにしたいTS幼女さん(作者:雨神 白那)(原作:魔法少女ノ魔女裁判)

ココロノクライで泣いたら思いついた小説です。書きたい時に書く物です。魔法は【鎮静化】原罪は『孤独な幼子』▼夏目アンアンの隣の家に一人で住むTS幼女さんです。原作をやってない状態ですが夏目アンアンを救いたくて書いてしまいました。間違っていたりするかもですが、見たければブラウザバックなど出来るようにしてから閲覧してください。


総合評価:557/評価:8.67/連載:7話/更新日時:2026年10月07日(水) 00:00 小説情報

どうせ死ぬんなら甘い汁啜ってから死にたいよねって話(作者:トラネキサム産)(原作:魔法少女ノ魔女裁判)

この世界入ったら死ぬんだって〜やば〜▼でも結末知ってるならその間を最大限楽しんだ方がいいだろ?▼確かに!▼とか思って少女たちと絡みまくってたらなんか病み始めたお話▼


総合評価:87/評価:-.--/連載:2話/更新日時:2026年09月10日(木) 01:38 小説情報

転生少女ノ魔女裁判(作者:洒落た機長)(原作:魔法少女ノ魔女裁判)

大魔女とそのお気に入りのラブラブストーリー。なおエマやヒロも巻き込んでいく。


総合評価:478/評価:8.36/連載:8話/更新日時:2026年10月04日(日) 23:31 小説情報

夏目アンアンの『姉』が居た話(作者:水無月ズン)(原作:魔法少女ノ魔女裁判)

▼ 原罪『嘘言《ソラゴト》の眠り姫』。▼ 夏目アンアン、幸せを願ったが為に、その囁きによって幸せを破壊してしまった少女。▼ そんな彼女にもし、壊れることなくアンアンの傍に居続けた、両親とは違う肉親が居たら。そんな仮定話が書き連ねられるだけの場所。▼


総合評価:254/評価:8.83/連載:2話/更新日時:2026年08月10日(月) 12:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>