祖父の家に住める様になってからも生活はギリギリだった。
母は相変わらず寝たきりでバイトの時は祖母と祖父が家事をしてくれていた。
お陰で私の負担は多少軽減されたがそれも短い間だけ、祖父が体を壊し入院する事になった、お医者さんは多分2度と退院出来ないだろうと言った。
それから程なくして祖父は亡くなった、お金の無い私達には簡単な葬儀をあげてやるので精一杯で、それが終わったら前と同じ様に忙しい毎日だ。
否、前より酷いかも知れない。その一番の原因は大叔母だった。
『
『そんな!!無理に決まってるでしょ!?私のバイト代だけじゃあ4人の食費にすら届かないのに!!大体お婆ちゃんの食費とかどうすれば良いの!?病院代は!?それも私達が面倒見ろっていうの!?』
『煩い煩い!!当然だろ!!あそこは
大叔母はそう言って連絡を絶った。
それから私の地獄すらも生温い1日が始まった。
早朝、起きて家族全員の朝食・昼食を作り妹が学校を出るより早くバイト先に向かい夜まで働き帰りに夕飯の買い物に行って夕飯を作り家事をして日が回る直前に布団に入り漸く1日が終わる、事はなく深夜に物音で目を覚まし音源に足を運ぶとそこには何時も認知症を患った祖母が立っている。
『お婆ちゃん何してるの?』
『お爺さんが居ないのよ、こんな時間に何処に行ったのかしら?』
『お爺ちゃんは……………………病院、病院に入院してるんだよ』
『あら!?何処か具合が悪いの?』
『うん、ちょっとね、明日お見舞いに行こう、だからもう寝よう?』
『そうねぇ、お爺さんに見せるのに寝不足の顔は見せられないわね』
そう言って布団に入るのをそばで見てまた布団に入る。祖母は元々認知症だったが祖父の死でそれが悪化した、記憶力が著しく低下し深夜徘徊する様になった。
夜の徘徊は朝までに大体4〜5回、2回で済めばそれは奇跡で1回も無い日なんて無く寝不足の頭でまた早朝に起きて家事とバイトに向かう。
勿論妹も出来る事を手伝ってくれたがそれでも私の負担は祖父が居た頃とは比べ物にならない。
それでも不調の中で毎日生活出来たのは母が丈夫な体に産んだからだろう。
でも精神は別だ、寝不足は思考を鈍らせバイト先でのミスが増える様になった。資金難は飢えと病を呼び込み常に空腹で病に掛かった者を病院に連れて行く金も無い、妹が病気になったのに病院に連れて行くことだって出来やしない。
『お願い大叔母さん!!妹が病院に行くお金だけで良いの!!お婆ちゃんにも許可貰ってる!!お婆ちゃんの通帳使わせて!!』
『いい加減にしな!!これ以上騒ぐ様なら警察を呼ぶわよ!!その程度市販の風邪薬でも飲ませて寝かせときゃあ勝手に治る』
『お願いします!!妹が病気なの!!病院に行くお金貸して下さい!!』
『ウチも今厳しいの、貸してあげたいのは山々何だけどねぇ』
『お願いします!!』
『無理無理、ウチもカツカツ何だよ』
『誰か…………』
『店先で騒ぐな、さっさと帰れ』
『お願い…………』
気が付くとスーパーの市販薬品売り場で風邪薬を手に立ちすくんでいた。
(ああ、これさえあれば、この薬が欲しいのに)
その時、私の手が熱を持った、初めて見る物なのに使い方が分かった、それが私が【収納】を得た瞬間、そして私のタガが外れた瞬間。
(そんなに自分が大事なら私だって自分を守ってやる、それで誰が不幸になろうと関係知ったことか)
私は欲しい物を根こそぎ自分の物にした、食べ物も薬も金も服も理由さえも、欲しいから、楽しいから、得をするから、その程度、その行いが他人の迷惑や不幸や犠牲を強いたとしても。それが例え身内であろうと。
料理を作るのを辞めた、楽しくないから、掃除洗濯を辞めた、面倒臭いから、祖母の徘徊を止めるのを辞めた、眠たいから、バイトを辞めた、働く必要が無くなったから。全てを妹に押し付けた、散々面倒を見てきてやったのだから。
外道と呼ばれようと怪物と罵られようと自分が無くなれば生きていけないのだから。
そこで夢から覚める。
欠伸を1つしてベットから降りて食堂に向かう。さて、今日はどんな楽しい事をしようか。
原罪:責任の怪物奴隷
彼女は奴隷、責任の奴隷、家族を守る責任、家族を養う責任、家族を助ける責任、重く重く伸し掛かる数多の責任、重過ぎるそれを背負う為に多くを手放した、学習、時間、人生、未来、尊厳、そして希望。
しかしそれは果たして本当に彼女が自分の物を手放してまで背負わなければならない責任だろうか?
そしてその責任から逃れ怪物になった彼女を一体誰が非難出来るのだろうか?
それはきっと彼女と同じ事をしてやり遂げた者だけ、そんな者がいればの話だが