ナノカの処刑から数日後、少女達は暗い雰囲気の中でこれからどうすれば良いのか様々な提案を上げていく。
エマ達3人組は2度に渡る裁判に脱獄を提案しレイアとミリアはメルルと言う管理人が居なくなったにも関わらず行われる裁判に疑問を持ちヒロがゴクチョーにその理由を問い質した。
しかしゴクチョーはあんな性格なので特に大した理由は無くではこれからどうするかと言う話題に変わりレイアが劇の準備を続ける提案を上げ少女達も同意した。
勿論その輪に加わらない少女も居るが少なくとも沈んだ空気は無くなっていた。
そんな中でもタビノのスタンスは変わらず好きな様に生活していた。
食後は寝るかゲームか漫画か映画、映画の際はミリアとアンアンが隣にいる事が多い。
しかし今回はアンアンの代わりにエマが来ていた。何でも台本が出来たので演技の参考にしたいらしい。
「これは、何をやっているのかな?」
それから数分後、ヒロがやって来る頃には演技の練習は何処へやら、ミリアによる写真撮影会に変わっていた。
「君は相変わらずの様だな」
ミリアとエマと話していたヒロは2人と話す事が無くなったのかタビノに声を掛けてくる。
「ヒロちゃん…………うん」
「???どうした、あまり元気が無い様だが体調でも悪いのか?」
「いや、ただちょっと考え事をしながら映画見てただけ、頭使い過ぎて疲れたのかも」
「考え事?」
ヒロの言葉を聞き空気を読んだミリアがエマにそれっぽい事を言い娯楽室から退散しヒロとタビノの2人だけになる。
「父の夢を見なくなった」
「父親の夢?」
「顔は見えない、多分父の顔を忘れたからだと思う、住めなくなった家で2人でテーブルの対面に座ってる夢、私が『そっちに言って良い?』って聞くと決まって『駄目』って言われる夢」
「君の父は?」
「……………………死んじゃった、首を吊って自殺して」
「自殺…………」
その言葉にヒロの胸がジクリと痛むのを感じた。
「怪物になってもあの夢だけは毎日見てた、それが良いことなのか悪い事なのかは分からないし何で急に見なくなったのかも分からない、それについて考えてた」
「………………………………」
ヒロはタビノの言葉を黙って聞いていると更にその先の考えを話す。
「何年も見てた、悪夢なのか幸せな夢なのか、良い事なのか悪い事なのか、それすらも分からない夢が突然消えた、だからどう感じたら良いのかすらも分からない」
「そうか」
(ただの夢だと断じる事も出来るが何年も見ていた夢を突然見なくなったと言うのは確かに奇妙だ、夢は心を映す鏡等と言われる事もある、安直な考えだが夢を素直に受け取るならタビノには自殺願望や希死念慮の類があった?しかしそれを亡くなった父の手前出来ずにいた、そしてそれが最近になって消えたから夢も見なくなった、と言うのは私に都合の良い解釈だろうか?)
「ヒロちゃんはどう思う?」
タビノの問いにヒロは思考の海から上がり言葉を返す。
「私に聞かれても困る、私は君の父親の事を知らないし君の事もここに居る間の事しか知らない、自分で答えを見つけるしか無いだろう」
ヒロは当り障りの無い無難な返答を返す事にした。
「そっか、分かった」
それに対しタビノもそれだけ言うと口を開く事はなくヒロは別の場所に向かった。