タビノが父親の夢を見なくなって数日が経った。
劇の準備は着々と進む一方でタビノは何故父の夢を見なくなったのか皆目見当もついていなかった。
そんなある日の夕飯後の自由時間、タビノは1人になった牢屋で寝る準備をしているとスマホの通知音が鳴った。
『はぁ~、また殺人事件が起きてしまいました、何時もの様にラウンジに集合して下さい』
ゴクチョーの通知にタビノはため息を吐きながらもノソノソと動きだしラウンジに向かう。そこには既に少女達が集まっておりアンアンのみが居ない事で亡くなったのはアンアンなのだろうと思っているとゴクチョーがやって来る。
「やれやれ、起きちゃいましたね、殺人事件。ここ暫くは平和だったのに、やっぱり抗えないんですかねぇ。さて、それでは今回も事前投票をしていただきましょうか」
ゴクチョーがそう言うと同時に顔面蒼白だったヒロが声を上げる。
「私が殺した…………」
その言葉がトリガーとなり他の少女達がヒロを問い質すがヒロにその問いに答える余裕は無い、結局事前投票ではヒロが選ばれ残りの少女達には捜査の時間が与えられた。
タビノはそんな時間の中でも娯楽室で映画を流しながら父の夢を見なくなった理由を考えていた。
そんな娯楽室にミリアが現れタビノの隣に座る。
「タビノちゃん」
「何、ミリアちゃん」
「その、タビノちゃんがおじさん達に興味が無いのは知ってる、だけどおじさんにはヒロちゃんが殺したとは思えないんだ、勿論他の子が殺したとも思ってない、だからその、えっと…………何ていうか」
暫く言い淀んだ後ミリアは意を決した様にタビノに願う。
「捜査、協力してくれないかな!?」
「………………………………」
少しの間沈黙が続いた後タビノが口を開く。
「私は人の為に動く時は何か貰うかくれる時だけって決めてる」
「そっか、そうだよね、分かった、おじさんに出来る事なら何でもやるよ!!だから力を貸してタビノちゃん!!」
タビノの言葉にミリアは意を決した様にそう言いタビノはソファから立ち上がるとミリアに顔を寄せる。
「じゃあ、また膝枕して映画一緒に見てね」
「え?そんな事で良いの?」
「うん、それが良い」
「タビノちゃん…………分かった、おじさんが好きなだけ付き合ったちゃうよぉ!!」
ミリアにそう言われタビノは微笑みを浮かべると2人して娯楽室を出た後捜査を始める。
時間が無かった為アンアンの死体とその周辺に絞って重点的に調べる事にした。
「死体発見の状況は?」
「えっと、見ての通り上から落ちて柵に刺さっちゃったみたい、落ちたのはあそこからだね」
そう言ってミリアは柵が壊れた部屋を指差しタビノはその指を追う。
「あの部屋は?」
「ノアちゃんとヒロちゃんが見つけたアトリエだよ、元々は入口が無かったんだけど扉を描いたら本物の扉になっちゃったんだって」
「……………………変だな」
「え?何が?」
「何本も突き立ってる柵にこんなピンポイントに心臓だけ当たる事あると思う?仮に当たったとして何でこの1本だけ?他の箇所に刺さっててもおかしくないと思うんだけど」
「確かに、それに柵はこんなに壊れてるのにアンアンちゃんに刺さってるこれ1本だけ変形してない、綺麗なままだ」
「それに頭、仮に奇跡的に心臓だけ柵に突き刺さって奇跡的に変形もしなかったとして、あの高さから落ちたなら頭を打ったはず、でも見る限り頭にそんな出血も打撲痕も見られない、これは絶対おかしい」
「つ、つまり?」
「私の考えではアンアンちゃんは落ちたけど奇跡的、或いは何かの仕掛けで何とも無かった、しかし背後からこの柵で心臓を貫かれた、これならこの状況と一致する」
「って事は」
「ヒロちゃんはああ言ってたけど、犯人は別にいる可能性が高い、と私は思う」
タビノの言葉にミリアは5息を呑み、それと同時にゴクチョーから裁判所に集まる様に通達があった。