タビノと別れた後、ヒロは電車とバスを乗り継いでタビノに渡された住所に向かう。
牢屋敷で仲良くなった少女達と連絡をやり取りしているとバスが進んで行く程に都会から離れていき少なくなるビルに反比例する様に田畑が多くなっていく。
やがて目的のバス停で降りるとそこはド田舎と言う程では無いがそこそこの田舎。道行く人に住所を尋ねながら歩いていくとやがて1軒の2階建て住居に辿り着く。
「ここか」
ヒロはインターホンを何度か押すが音が鳴らず仕方無く扉に手を掛ける。幸いと言うべきか鍵は掛かっておらず横にスライドさせると部屋の中が見える。明かりは付いておらず窓もカーテンも閉め切られており衣服が散乱している。
「すみません!!どなたかいらっしゃいませんか!?」
「は~い」
ヒロが声を張り上げると奥からか細い声が聞こえスタスタと軽い足音が聞こえてくる。現れたのはヒロより4〜5歳程年下に見えるやせ細った傷だらけの女の子、やせ細り暗い顔をしてあちこち絆創膏や包帯を巻いているものの何処となくタビノに似ているとヒロは思った。
「あの、貴女は?」
「私は二階堂ヒロ、日渡タビノの友人だ」
「ッ!!お姉ちゃんの!!お姉ちゃんは無事なんですか!?今何処に……」
ヒロに近付こうと一歩足を踏み込んだ少女は足がもつれ転びそうになる、それをヒロが上手いこと掴み事なきを得る。
「取り敢えず中で話をしたい、立ち話で済ませて良い内容じゃないからな」
「そ、そうですよね、私お客様に失礼な事を、どうぞ何も無い汚い所ですが上がって行って下さい」
少女に案内された家内は確かにお世辞にも綺麗と言える所では無かった、あちこちに埃が溜まり洗濯したのかしてないのか分からない様な服が散見している。
(これでも頑張って家事をしている方だろう、この子の年齢と状態を考えれば良くやっている方だ)
しかしヒロはそれを咎めず目の前の少女に賞賛を送る。やがて彼女の部屋と思われる場所に案内され緑茶を出される。
「ありがとう」
「いえいえ、それでお姉ちゃんの事なんですけど、あ、そう言えば私まだ自己紹介してませんでしたね、私日渡ノゾミです。えっと、二階堂さん?」
「ああ、回りくどいのも時間を取るばかりであれだろう、今日はタビノの代理で来た、コレを」
そう言ってヒロはノゾミと名乗る少女にアタッシュケースを渡す。
「これ、何ですか?」
「開けてみろ」
ヒロにそう言われノゾミがアタッシュケースの鍵を開けると中には無数の1万円札が入っていた。
「え?これ……」
「詳細は言えないがタビノが得た金の一部だ、私は数えてないが5千万入っていると言っていた」
「そ、そんな大金受け取れませんよ!!」
「受け取っておけ、私の物ではないから私に返されても困るしな。それに余り他人の家庭の事情に踏み込みたくないが家計は苦しいのだろう?なら尚更受け取っておけ」
「それもお姉ちゃんに聞いたんですか?」
「そうしなければいけない事情があった、とだけ言っておく」
ノゾミは俯きながらヒロにそう尋ねヒロもそれに答える。
「…………ありがとう…………御座います」
ノゾミはそう言ってアタッシュケースの箱を閉じ涙ながらにヒロに礼を言う。
「要件はそれだけだ、私も帰るとするよ」
「もうですか!?せめて夕飯でも…………」
「いや、遠慮しておくよ、私も久々に家に帰るからな」
ヒロはそう行って玄関まで行き靴を履き直すとノゾミを見る。
「1つだけ教えてくれ、君はタビノを恨んでいるか?」
ヒロの質問にノゾミの顔が一瞬強張る。
「正直恨む余裕なんてありませんでした。お母さんとお婆ちゃんの世話でいっぱいいっぱいで、でも、ずっとずっとお姉ちゃんに助けて欲しいって思ってました、そしたらこうして助けてくれました、だからもう良いんです」
「…………そうか、そう言えば私の聞いた話では君の母と祖母が居るはずだが声も気配も無いな」
ヒロはそう口にした瞬間寒い物を感じノゾミを見るとその目から光が消える。
「随分古い情報ですね、今私は一人暮らしですよ、だからお姉ちゃんに伝えて下さい、家で私が1人で待ってるって」
「そ、そうか、分かった、確かに伝えておく」
「またいらして下さいね」
ノゾミはそう言って扉を締めヒロはフゥ〜っと息を吐く。
「似たもの姉妹、という事か」
誰にも聞こえない声でそう呟きヒロは自宅に向かった。