遥か未来、激しくなってゆく災害や戦争被害に対策するため、人類は防具を必要としていた。
そこで作られたのが快適ナノテクアーマー、メカスーツである。
メカスーツは瞬く間に世界中に広がり、老若男女の必需品となっていった…。
これはそんな未来の、一つの都市のお話。
───
械劫都市ユグノー。
外壁に囲まれたコロニー。他都市への移動はレールレストレインに依存している。
そこの入都市監視エリアにて、暇を持て余す男が1人…。
「暇だ…。」
彼の名は『ライオット』シノ。
旅する傭兵であり、大きな仕事を終えてきたばかり。ユグノーへはバカンス目的で寄りついたのであったが…。
「まさか立ち入り禁止なんてありえねーだろーが。」
審査は期限付き、そう言われたはずだ。
しかし1週間はここで過ごしている。まだ何も言われていない。どういうことだ。まったく。
「…なんかおもしれーこと起きねーかな。」
大きな爆発音がした。
「…。」
『襲撃です。セキュリティが対応します。ご安心ください。』
───
メカスーツは重さのないナノテクスーツであり、人間の持ちうる持久力を活かし、足りない瞬発力を補う作りとなっている。
すなわち、空中への移動能力の追加や、装甲の強いクッション性による致命打の回避、軽減、また、耐熱、耐寒を装着者に与える。
従って普通、メカスーツの戦闘は長く泥臭く続くものであり、メカスーツのパワーが切れるか、作戦目標を達成した時点で撤退するというのがセオリーである。
「ぐ、ああああああ!!!」
テロリストのメカスーツ《イカロス》が爆砕する。
爆発によって着用者を吹き飛ばし、守るセーフティだ。しかし、エネルギーの剣がその命を許さなかった。
「マイティ!!よくもォォーー!!」
「おいやめろォー!《ヘラクレス》だぞッ!」
ユグノーのセキュリティが誇る最強のメカスーツ、【ヘラクレス】。
巨大な躯体と装甲を持ち、装備するエネルギー剣《マルミアドワーズ》はメカスーツに多量のエネルギーを充填し爆砕。また、その熱で攻撃対象を溶かす絶対的な攻撃だ。
「あ、ああ、あああーーーッ!!」
「言わんこっちゃない。どこで拾ってきたんだあいつら。」
「どうせ与えたのは安物のイカロスだろ。いくら死んでも構わんよ。」
岩陰に隠れていた2人はその場から飛び退いた。テロリストを二つ切った剣が岩をじくじくと発泡させ爆散させる。
「生きて帰るぞ。」
「そうだな。」
ヘラクレスに相対する2人。
1人はメカスーツ《メドゥーサ》。マルミアドワーズほどではないが、エネルギーをメカスーツに送信し、対象をハックする信号を送り込む能力を持つ。
もう1人はメカスーツ《タロス》。戦闘モードに入ると展開される3mの巨大な躯体と装甲が売りであり、農業や建築でも使われるフレキシブルなスーツである。
ローラーで移動しながら銃火器を撃ち込むが全く話にならない。ヘラクレスの装甲はびくともしない。
「魔眼を使う!」
ヘラクレスの眼がメドゥーサを捉えた。
(しまっ───。)
踏み込みが見えなかった。ヘラクレスがその剣を振り翳す───寸前!タロスが割って入り、マルミアドワーズを受けて爆散する。
「マーク!」
「俺は無事だ!」
が、操縦者は爆発の中機体から降り、間髪入れず手榴弾を投擲して銃火器を発砲する。衝撃で揺れるヘラクレスをメドゥーサの魔眼が直視する。
カメラアイが明滅する。
「効いた!」
動きが停止するヘラクレス。
「やったな…。」
他の方面の戦いは続いている。しかしユグノー最強のヘラクレスを鹵獲できたとあっては、それは撤退に足る大戦果に違いない。
なんて、お考えかな?お二人は。
「───が。」
「スーツの下にスーツを着込む。いいアイデアだ。───安物のイカロスなのが残念だが。」
五指がタロス乗りの腹を貫く。ヘラクレスのパイロット───ディラン。
すんでのところでスーツを脱ぎ捨て、ヘラクレスの影に隠れて速攻を仕掛けた。指を引き抜き、タロス乗りを蹴り飛ばす。
「…引けよッ!」
そのままメドゥーサに攻撃を仕掛ける。イカロスのような安物ならともかく、スーツの下に着れるようなものでメドゥーサに仕掛けてくるとは思ってもいなかった。テロリストの反応が遅れる。
「遅い。」
姿勢操作により体重を全て乗せ、かつ加速された拳によってメドゥーサは吹き飛ばされる。数mは空中にいただろうか。果てに爆発を起こし、テロリストは意識を失った。
最後にこちらを睨みつけるタロス乗りの頭を蹴飛ばし、気絶させる。
「…アンダースーツでも多少は動けるのが良いところだな。…。近いうちに更新があるとはいえ、今のヘラクレスでは持たないぞ…。」
各方面も打開しつつある。
時代においてかれそうなヘラクレスを再起動し、ディランは再び身に纏った。
「さ、続きをやろうか。」
彼こそは、セキュリティ最強と呼ばれる男である。
───
「ライオット。」
「お?」
身なりからわかる。遠隔操作のアンドロイド…。【ライオット】シノは獰猛に笑った。
「面白そうじゃねぇか。」
「まだ何も話していない。」
「…だな。早く用件を言え。」
「ライオット。お前をユグノーに入れてやる。」
アンドロイドはパスキーをライオットに見せた。
「…で、要求は。」
「…ユグノーに迫るテロリストは多くいるが、その中でも大きな集団が潜伏している。」
「…。」
「ヘファイストスと名乗る連中だ。近日中に暴れ出すだろう…この機体を使って。」
その機体こそはラジカル・カラミティ。
密輸されたパーツで作られた非合法な機体である。バックパックユニットによる空中移動能力と、超巨大なエネルギー砲を構えており、一目見ただけでも厄介な機体とわかる。
「ラジカル・カラミティが現れたら、戦って破壊しろ。それが要求だ。」
「誰よりも先にか?」
「そうだな。できるか?ライオット。」
「やってやるよ。」
ライオットはパスキーを受け取った。
「ようこそ、ユグノーへ。」
械劫都市に、1人のライオットが入り込む。