械劫都市のライオット   作:K+#ガソ林

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第三話 揺れるユグノー

 ラジカル・カラミティを打倒した【ライオット】シノ。体から力が抜け、倒れ込む。戦闘の衝撃で身体中が傷だらけだ。

 

「…依頼達成だ。だろう?ルドメイ…。」

 

 物陰からルドメイ操るアンドロイドが顔を出し、ライオットへ肩を貸す。

 

『文句なしだ。』

 

「…ところでよ。」

 

 所々でサイレンが鳴っている。

 ここへ辿り着くまでのケアレス・ライダーの疾走は隠匿できていたが、ラジカル・カラミティとの戦闘は派手になりすぎた。

 セキュリティがここに集まってきている。

 

「どうやってここを抜ける?」

 

『抜け道がある。入れ。』

 

「…マンホールかよ。」

 

───

 

 中は思ったよりも、臭くはなかった。下水が通っているわけではない。…貯水槽のようなものか。

 しばらく歩くと、壁に分厚いドアがあった。

 しかし通り過ぎる。

 

「あのドア、なんなんだ?」

 

『地下娯楽園に繋がっている。セキュリティの管轄内だ。そちらに逃げる事はできない。』

 

「…。」

 

 しばらく進み、道中、用意してあったバイクを壁から取り出し、乗り込む。各地の地下にあらかじめルドメイが仕込んで置いたものだ。

 

───

 

「……?」

 

 どうやら、すっかり眠ってしまっていたらしい。

 目覚めるとベッドの上だった。

 

「ルドメイ。」

 

 誰も返事をしない。側のアンドロイドも動かない。ゆすってみたが、それで起きるわけがない。

 

「…ルドメイ。おい、誰かいないのか。」

 

 屋敷の中を歩き回ろうとドアノブを捻ったその時だった。誰かが部屋に入ってくる。

 …まだ少女と言える見た目の女だ。金の髪に赤い目。花を思わせる容姿だが、表情が薄く、無愛想に見える。

 

「……。もう起きていたか。」

 

「ふ、その口ぶりだと…。」

 

 ベッドに腰掛けるライオット。

 

「そうだ。私がルドメイ…フィリア・ルドメイだ。」

 

「まさかルドメイってのも本当だったとはな。」

 

「…その通りだ。」

 

「なぁ、ルドメイ。お前はまだ、俺に何か頼みたいことがあるんじゃねぇのか。」

 

 ライオットは疑問を明らかにした。

 

「ラジカル・カラミティをぶっ壊す。それだけで何か解決したわけでもねぇ。奴のバックのヘファイストスは健在だ。…お前の目的がなんなのかはわからんが、この次を教えろ。」

 

「察しがいい…。」

 

 ルドメイは電子資料を空間に投影した。

 

「ライオット、お前が倒したラジカル・カラミティは試作品…。パイロットもグレイツ・ランドノブという科学者だ。本調子ではない。セキュリティ本部への襲撃は問題なく執り行われることだろう。」

 

「…。」

 

 ライオットは口を挟まない。

 なんとなくだが、ルドメイの目的はセキュリティを守る、などというものではないと感じている。

 『ラジカル・カラミティの破壊』。

 それが真の目的だ。

 それ以上でも、それ以下でもない…そのような意志を感じる。

 

「セキュリティ本部を襲う上で、ラジカル・カラミティのうちいくつかを陽動に放すはずだ。セキュリティ本部以外で最も手厚な戦力は、ここ、ユグノー管理者区域…。」

 

 ユグノー管理者区域、ルドメイ家のようなユグノー富裕層や、ユグノーの環境を管理する特殊な技術職のみが住むことを許される特権階級の区域。

 ユグノー・セントラルに準ずる戦力を保有する。最大量では劣るが、管理者区域の規模を考えると過剰な戦力と言える。

 

「そこへ襲いくるラジカル・カラミティを叩く。」

 

───

 

「なんでルドメイはこんなことをやってんだ?」

 

 次の襲撃が起こる2日後までは待機だ。ライオットもケアレス・ライダーの破片から特定されて指名手配中なので、紅茶を飲みながら団欒していた。

 

「…詳細は省くが、私がこの世界を壊したいと思っているからだ。」

 

「壊したい?」

 

 意外な発言だ。

 ラジカル・カラミティの破壊はむしろ、その目的から遠ざかる行為だろう。

 

「それは、ラジカル・カラミティが壊してくれるんじゃねーのか?」

 

「万が一の目もない。奴ら如きでは。…セキュリティの練習台と言ったところか。」

 

「…そこまで弱くは感じなかったが。」

 

「…ライオット。ラジカル・カラミティ…あの機体群は最強のメカスーツというパフォーマンスに振り切っている。しかしそれは、勝利するかどうかとは無関係だ。」

 

「…。」

 

「簡単に思いつくなら、持久力。メカスーツ自体は低コストで運用できるのが基礎だ。しかしあれは、高コストかつ高エネルギー。用いる兵装もだ。数を用意できない。」

 

「抱えてる工場はないのか?」

 

「ユグノーにどれだけの工場があると思っている?都市管理AIによって常に監視体制が築かれている。大々的に生産を行う事はできない。…話が過ぎたな。」

 

 ルドメイは紅茶をそのままに立ち上がった。

 

「ライオット、次の作戦の為に用意していた兵装がある。取りに来い。」

 

「メカスーツがあるのか?」

 

「ルドメイのものではないが、ケアレス・ライダーと似たものを用意させた。」

 

───

 

 メカスーツ『アキレウス』。

 ケアレス・ライダーの環境擬態機能のような特殊な兵装は持たないが、その分ローラーの回転効率と装甲の高密度化により、純粋な耐久、移動能力が向上している。

 それと、新品のバルムンク。

 

「バルムンクを用意するのも難しい。予備は渡さないから慎重に使え。ラジカル・カラミティ1体撃破に1本が基本になるだろうが、なるべく長く使ってくれると助かる。」

 

「わかった。…これは…。」

 

 バトンのようなものが置かれている。

 

「パルス・スプリット…その改造品だ。カーボン構造記憶素材だから生半可な衝撃では砕けない。長く使えるはずだ。」

 

 

───

 

 ライオットとラジカル・カラミティの戦闘の翌日。テクノアカデミック総合商社を囲むようにバリケードが張られている。

 ライオットとラジカル・カラミティの激戦の跡地だ。セキュリティが調査を進めている。

 

「…これは…どういうことだ…?」

 

 ライオットのケアレス・ライダーと思われる破片と、もう一つは未登録のメカスーツの破片…。

 ライオットがなんらかの意図でテクノアカデミックを襲撃したのは警備員達からの証言でわかっている。しかし、謎の機体の出現、そこがわからない。

 

「もしもこの機体の破片がラジカル・カラミティだったとして、わざわざライオットと戦う理由があるだろうか?」

 

 テクノアカデミックのビルに目立った傷がないという事は、両者が立ち会うことを望んでいたということ。

 ラジカル・カラミティとしてもライオットを倒したい理由があった?

 

「…このビルの中から何が出てくるか…。」

 

 今のところ、目立った異常はない。社員への聞き取りでも情報は出てこない。

 

「オルマ隊長!地下への入り口を見つけました!」

 

「…出るもんが出たな。細心の注意と記録を忘れるな!安全が確保できたら踏み込むぞ!」

 

「はい!」

 

 ビルへ向かう2人、しかし…。突如として轟音ッ…!

 テクノアカデミック総合商社が大きく爆発した…!!建物は倒壊し、調査員達は生き埋めになる…!

 オルマ達はギリギリのところで巻き込まれずに済んだ。しかし…。

 

「いったい…何が起きてんだ…?」

 

 ユグノーの都市監視システムは?検問でのチェックは?

 こんなことが起きうる土台が、そもそも入ってこないはずなのだ。この械劫都市ユグノーでは。

 

「……っ救助を!早くしろ!」

 

「は、…はいッ!…ユグノー・ヘッド司令部に救助要請!こちらユグノー・ヘッド刑事課第二担当のアラタ!午前10:56分に前触れなくテクノアカデミック総合商社が爆発を起こし…。」

 

 平和かと思われたユグノー。

 世界はゆっくりと秒針を刻み続ける。

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