メカスーツ、シェイクスピア…。周りにいるメカスーツへエネルギーを分散・集約できる機能を持つジョイント型メカスーツだ。
エネルギーを固形化することができる。
エネルギーにはプログラムが仕込まれており、攻撃用、回復用と分けることも可能だ。
取り巻きはユグノー安全保障がセキュリティから購入した警備用重装機クラブ6名と、その下位のメカスーツ、射撃援護機アロー4名。数合わせの作業機ハンド3名で構成されている。
とはいえ、メカスーツの戦闘で過剰な火力は無駄になりやすい。防御力が低いメカスーツでも戦闘で役に立たないということはない。
「撃て!」
物質化されたエネルギーが銃の形を取り、ユグノー安全保障の人員各々に配布される。無手であろうとも即座に武装が可能だ。
「遅え!」
メカスーツ、アキレウスの俊敏性ならば、多少の弾幕は避けられる。向かってきた弾丸はバルムンクで切り払えば無害化できる。
取り巻きを1人2人と無力化していくシノ。メカスーツ殺しのエネルギーが機体を溶かす。大部分の損壊を察知した機体は致命的なダメージを受けたと勘違いして爆散する。
「く、クラブが全滅…!」
「散開しろ!小回りを効かせるんだ!、」
装着者のダメージ回避のための安全機能を逆手に取った戦略だ。警戒した面々はローラーを巧みに使い、位置を変えながらライオットへ攻撃を続ける。
「撃ち続けろ!」
これ以上の損耗を回避するため、シェイクスピアがアキレウスの前に立ちはだかる。
エネルギーの剣を振りかぶる。ライオットはバルムンクにて受けるが、突如としてアラートが鳴る。
『脚部故障。』
「!?」
エネルギーの固形化は全身から可能だ。シェイクスピアの足から発射されたエネルギーがアキレウスの脚部を故障させていた。
重苦しい鉄となった足パーツが動きを阻害する。
高性能アシストがついたメカスーツというのはその分リスクもあるのだ。
動きが鈍くなったライオットは射撃の雨を受け、万事休す───。
「射撃止めろ!…ライオット。」
倒れ伏したライオットを見下すミラ・ルイス。
「もう一度聞く。ルドメイ。そのスーツケースを渡したまえ。」
「……わかった。」
後方で待機していたルドメイはミラへスーツケースを渡す。
「…受領した。我々の任務は終わりだ。手荒な真似をしたこと、許してくれとは言わないが…。」
50万クレジットほど、ルドメイのIDパスへ振り込まれる。
「これで動乱が終わるまではユグノーで暮らせるはずだ。」
「…。」
「撤収するぞ!」
負傷者を回収し、ユグノー安全保障は引き上げようとする───その時だった。
「雑な仕事だ。」
冷たい。
指に当てられた刃のような。
じんわりと焼けつく傷口のような───鮮烈な、冷たさを持つ声。
「ユグノー安全保障。問題はスーツケースの中身だ。箱だけ持ってこいとは言っていない。」
「───ライオット!逃げるぞ!」
「わかった。」
地下都市の天から降りる青い天使───サン・シェード。
「ユリウス・テクノ…!しかし!指示には…!」
「君と問答している暇はない。評価を更新したければ協力せよ。───フィリア・ルドメイを捕縛する。」
「…っ隔壁を要請します。司令部!」
──────
地下街の隔壁が、ルドメイとライオットの逃げ道を塞ぐ。
「指示を誤解し、申し訳ありませんでした。…ユリウス・テクノ新議長。」
「形だけだろう。ミラ・ルイス…。後で君の行動については調べさせてもらう。」
「……対象、ライオット及びフィリア・ルドメイ。ユリウス議長を援護しながら捕縛せよ!」
敵にはあのユリウス・テクノとミラ・ルイス。また、ユグノー安全保障の人員5名。
対し、アキレウスの足部外装をパージしたライオットと、戦闘力が未知数のルドメイ。
戦況は絶望的だ。
「…さすがに、これは無理があるぜ。」
「らしくないな、ライオット。」
「…シェイクスピアをどうするつもりだ?」
シェイクスピアの能力は外装で受けても、注がれたエネルギーがメカスーツに侵入、情報化されウィルスとなって機体を侵す。
これにアキレウスは耐えられない。
生身のシノであれば対処できないこともないが、その場合は銃火器に無力となり、取り巻きに倒される。どうしようもない。
「問題ない。対処する。」
「…ようやく、お手なみ拝見ってとこか。」
「ライオット、お前はサンシェードを。奴の羽はエネルギーを吸収するが、バルムンクのエネルギー、ソリッドレイなら負荷を負わせられる。たくさん食わせてやれ。」
イモータルが形を変える。
漆黒、鋭角、光沢───それは、あのスーツケースのメカスーツの、真の姿。
何者にも侵されない、強固にして絶対の信念を体現する。
(無理をさせる。すまない。)
「───行くぞ、ペルセポネ。」
ペルセポネの周りを黒い稲妻が奔る。
冥界の女王の名を冠する機体が、地底に降臨した…!