何でもアリな人だけどうぞ…。
〔1〕
問:人は平等であるか否か?
あぁ、そう長々と話をするつもりは無い。別に福沢諭吉の「学問のすゝめ」の文言を引用して何かを言うつもりは無いのだ。結論から言えば、人は平等足り得ない存在であり、努力なくして権利を勝ち取れない。というのが
問:バスに乗ってるだけで、乗客ほぼ全員の注目を集めるボクの存在は罪か?
…何を言っているんだ、と言われること間違い無しだが、少しボクの言葉を聴いてほしい。実の所、ボクは困っているのだ。何故ならボクは荒事を起こさず、何事も無く無事に平穏な生活を送りたいのだ。しかし、他の乗客の声を聞いてみると、それがほぼ不可能であることが分かる。
「ねぇ…あの子、可愛くない?」
「だよね!とっても可愛い!」
「男子用の制服を着ているということは…男の娘!?」
「なにそれ最高」
「同じ学校で良かったぁ…」
…ほらね?現実逃避したくなる内容だろう。あぁ失礼。ボクとしたことが、自己紹介を忘れていた。
ボクの名前は
しかもどうやらボクの容姿は一般的に「可愛い」だとか「美しい」だとかの部類に入るらしく、目立つことこの上ない。
「全く…読書に集中できないわね…うっ…可愛い…」
隣に座る険しい表情をした女子生徒ですら、ボクの姿をチラリと見ただけでこの様子なので、ボクが何をしようとも注目されてしまうのだ。
『次は〜高度育成高等学校前〜高度育成高等学校前〜』
ボクが降りるべき停留所に到達しそうなので、降車ボタンを押す。前方に座る「傲岸不遜」という言葉が似合いそうな、ボクと同じ新入生の男子以外からは常に注目されていて、針の筵状態のボクは居心地が本当に悪い。早く降りてしまいたい…。
「開いたか…降りよう…」
『私も一緒に降りる〜!』
「うわぁ!?」
ボクがバスから降りたと同時に、ボクへ飛びかかるかのように多くの女子生徒が降りてきた。ボクは無惨にも揉みくちゃにされてしまった。どさくさに紛れて胸やお尻を触られた気がしたが、気のせいだと思いたい…。
「うぅ…酷い目に遭った…」
「だ…大丈夫?」
そんな中、1人の女子生徒がボクの状態を伺う。金に近い茶色のショートボブの女子生徒だ。
「気遣ってくれてありがとう…ボクは大丈夫だよ…」
「そ…そう?ちょっと制服が汚れちゃっているから、拭いてあげるね」
「ありがとう…」
この子は天使か?見ず知らずの男にここまでしてくれるなんて…。
「ありがとうね…。ボクは綾小路 清隆。君の名前は?」
「どういたしまして!私は
い、いきなり名前呼び…だと…?
「良い名前だね…よろしくね、桔梗ちゃん」
「可愛いな…」
「えっ?」
「いや、なんでもないよ!清隆くんって接しやすそうだな、って!」
さっきの桔梗ちゃんの目が狩人のソレに見えた気がしたのは気のせいだろうか?
「えへへ!これで私と清隆くんはお友達だねっ!」
「と…友達…!うん!友達だ!」
「ほんと可愛いなこの子…」
「…?」
さっきからボソボソと何かを言っている気がするが、よく聞き取れない。
「さて、クラス表見なきゃね!行こっ、清隆くん」
「わっ!」
突然桔梗ちゃんが手を繋ぎ、走り出す。こういう経験が無いボクは少し照れ臭くなるが「友達なら当たり前」だと思い、一緒に駆け出した。クラス表を見てみると、Dクラスの表にボクの名前が載っているのが分かった。
「清隆くん、何クラスだった?」
「ボクはDクラスだったよ」
「ほんと!?私もDクラスだったよ!」
「本当に!?」
良かった…せっかくできた友達と離れ離れになるのは悲しいことだからな…。嬉しくなり、桔梗ちゃんの手を取って小さく跳ねてしまった。
「ふふっ、清隆くん可愛いね」
「可愛いなんて言わないでよぉ…」
「だったら私にカッコいい所、見せてほしいな?」
桔梗ちゃんはボクをやる気にさせるのが得意らしい。やはり
「それじゃあ一緒にクラスに行こっ」
「うん…ところで、桔梗ちゃんは気づいてる?」
「ん?何が?」
その違和感は至る所にあったが…流石に普通の学校に
「ほら…あそことか、そっちとかに監視カメラがあるでしょ?」
「えっ…あっ、本当だ!」
桔梗ちゃんの反応で分かった。監視カメラなんて普通の学校に絶対に無い…。どうやらここは普通の学校では無いらしい…。
「なんであるんだろ…イジメの抑止とか?」
「どうだろうね…」
「それにしても、清隆くんは洞察力があるんだね!」
「まぁ…少しね」
褒められるのは悪い気はしないが、目立ちたくないという気持ちが勝る…。
〔2〕
Dクラスの教室に入ったボクと桔梗ちゃんに待っていたのは、黄色い声の嵐であった。
「何あの美少女コンビ!?」
「可愛すぎるだろ…」
「片方は男子制服だぞ!?」
「男の娘とか本当にいたのか…」
「あの2人…推せる!」
さっきから何を言っているのかよく分からないが、褒められていると思って良いのだろうか?
「ふふっ、美少女
「桔梗ちゃんが可愛いのは分かるけど、ボクは違うでしょ…」
「かわっ!?…もう、そういうトコだよほんとに…」
「ん?」
何故か桔梗ちゃんが頬を赤らめていた。そんな中、同じバスに居たあの「傲岸不遜」マンがボクに話しかけてくる。
「そこのボーイ、名前は?」
「えっ?綾小路 清隆だよ」
「私は
「えーと、あ、ありがとう?」
「ハッハッハ!」
変な人だな、高円寺くんは。ボクの席は桔梗ちゃんとは遠い席らしく、ちょっとしょんぼり。ボクの隣の席に座っていたのは、バスの中で読書をしていた黒髪長髪の少女であった。
「おはよう。ボクは綾小路 清隆だよ。よろしくね」
「拒否させてもらっても…!?」
「…ん?」
「…私は
堀北さんは恥ずかしがり屋なのだろうか?ボクに顔を向けるとすぐに本の方に向かってしまい、黙ってしまった。こうして見ると、このクラスの人間は騒いでいる生徒ばっかりだな、と感じてしまう。そう思っていると、始業を伝えるチャイムが鳴ると同時に、黒髪の女性教師が教壇に立つ。
「新入生諸君。私はこのDクラスを担当する
そう言って、茶柱先生はSシステムについて説明を始める。
「この敷地内にはあらゆる施設が整っている。生活に必要なものは、すべてこの学校内で賄えるということだ。勿論、娯楽もな」
すべて賄える…ね。
「全員、入学と同時に支給された学生証端末があるだろう。この学校では、あらゆるモノをポイントで売買する。1ポイント1円の価値だ。ポイントは毎月1日に配布される。入学したお前たちには、既に10万ポイントが支給されている」
ほうほう…来月10万ポイント貰えるとは一言も言ってないな。
「ポイントの支給額が多いことに驚いたか?この学校は実力で生徒を測る。10万ポイントは入学したお前たちに対する評価みたいなものだ。遠慮することなく使え。ただし、このポイントは卒業時に全て学校側が回収することになっているから貯めても意味は無い。ポイントを使う必要が無いと思うのであれば、誰かに譲渡しても構わないが、カツアゲするような真似だけはするなよ。学校はいじめ問題だけには敏感だからな」
そう言って、茶柱先生は「何か質問は無いか?」と聞く。…後から目立ってしまう前に、先に目立った方が後からダメージが少ないか。そう思い、ボクは手を上げた。
「綾小路か。何だ?」
「この10万ポイントは入学時点での評価とのことですが、来月時点での評価次第ではこのポイントが変動する可能性はありますか?また、その変動に関わる要因は何ですか?」
「それは
「分かりました。ありがとうございます」
「他に質問は無いか?…無いようだな。私は職員室にいるので、困ったときは来るように」
そう言って、茶柱先生は教室を後にした。その後、金髪の爽やかイケメンな男子生徒が立ち上がる。
「皆、少し話を聞いて貰っても良いかな?」
爽やかイケメンくんは話を続ける。
「僕らは今日から同じクラスで過ごすことになる。だから今から自己紹介をして1日も早く友達になれたらと思うんだ。入学式まで時間もあるしどうかな?」
「うん、いいと思う!私たち、まだ皆の名前とか全然分からないし!」
その言葉に桔梗ちゃんも同調する。言い出しっぺの爽やかイケメンくんから自己紹介をする。
「
平田くんが自己紹介すると、女子生徒を中心に黄色い声が飛ぶ。平田くんは女子の人気者になるタイプだな。
「櫛田 桔梗です。クラスのみんなと友達になりたいです。学校のことはまだ分からないことばかりですけど、皆で助け合えたらいいなと思っています。男女関係なく、気軽に話しかけてください。よろしくお願いします」
桔梗ちゃんには男子生徒を中心とした黄色い声が飛ぶ。桔梗ちゃんは男子の人気者になりそう。そんな彼女と友達であることに少し優越感が湧く。
それからも、個性的な自己紹介が飛んでくる。そんな中で、自己紹介を拒否する者もいた。堀北さんもその1人であった。そして、ボクの番になる。
「綾小路 清隆です。こんな見た目だけど、男です。どうか仲良くしてくださいっ」
『可愛い…よろしくね!』
一時はどうなるかと思ったが、どうやら上手くいったようだ。
「清隆くん、こっちこっち」
『清隆くん!?』
「桔梗ちゃん?どうしたの?」
『桔梗ちゃん!?』
「えっ?」
皆は何を騒いでいるのだろうか?桔梗ちゃんは
「櫛田さん、綾小路くんのこと名前で呼んでいるの…?」
「うん。友達同士だから名前で呼んでいるんだよ?」
「何か問題があったかな…?」
「「いやいや!問題無いよ!」」
「そう?えっと、王さんと井の頭さんだったよね。改めて、綾小路 清隆です。よろしくね」
「あっ、私のことは王じゃなくて『みーちゃん』って呼んでください」
「私も心で良いですよ!」
「そう?じゃあこれからお友達だね、みーちゃん、心ちゃん」
「「天使…!櫛田さん、ありがとう!」」
「ふふっ、良かったね」
「ほえ?」
こうして、ボクは桔梗ちゃんのグループに入ると共に、みーちゃんと心ちゃんとお友達になったのだった。
〔3〕
「「「きゃー!清隆くん、可愛いー!」」」
「どうしてこうなった…」
ボクは何故か女装させられている上に、桔梗ちゃんたちの着せ替え人形になっている。何があったのかというと、数時間前に遡る。
ボクと桔梗ちゃん、みーちゃん、心ちゃんは4人で一緒にケヤキモールに来ていた。ランチを摂るのと、日用品を買うためである。そんな中で、ボクは3人からあることを聞かれていた。
「ねぇねぇ清隆くん」
「どうしたの?」
「ポイントに関する質問を茶柱先生にしていたよね?」
「そうだね」
「なんであんなこと聞いたの?」
「それはね———」
来月貰えるポイントが10万ポイントとは限らないからだよ。
「えっ…それってどういう…」
「茶柱先生は、10万ポイントについて『入学したお前たちに対する評価』とは言っていた。けれども『毎月10万ポイントが貰える』とは一言も言っていないんだ」
「あっ…確かに…」
「それに、毎月10万ポイントが必ず貰えるのだとしたら、全校生徒が480人と仮定した場合、毎月4800万ポイント。1年にしたら5億7600万ポイントという膨大なお金になる。こんな金額を国立とは言え…いや、国立だからこそ、国が許してくれるかな?」
「「「あー…」」」
「それに、桔梗ちゃんには言ったけど、この敷地にはたくさんの監視カメラがある。そこから導きだせるのは何だろう?」
「えっ…?」
「何でしょう…?」
「…もしかして、私たちの素行…とか?」
どうやら桔梗ちゃんが答えに辿り着いたようだ。
「ボクもそうじゃないかな、と思っている。例えば『授業中に私語をしてはいけない』とか『ゴミを散らしてはいけない』とか。学生として、社会人としての基本を守っているか、を見ているんだと思うよ」
「「「成る程…」」」
ボクの考えを伝えると、3人は感嘆の声を出す。
「とりあえず清隆くんが凄いことは分かりました」
「うんうん」
「そうかな…」
「「照れ顔可愛い…」」
「みーちゃん、心ちゃん、その気持ち、凄く分かるよ」
「んー?」
よく分からないが、これで良かったのだろう。そう思っていると、3人がヒソヒソ話を始める。
「ねぇねぇ、みーちゃん、心ちゃん」
「どうしました?」
「清隆くんに女装させたらさ、可愛いと思わない?」
「櫛田さん、貴女は神ですか!?」
「清隆くんが女装…アリですね…!」
何か不穏な予感がする…。
「「「清隆くん!」」」
「えっ、な、何かな?」
「「「服、買いに行こう!」」」
「あっ、うん…」
その結果、今に至るという訳だ。本当に、どうしてこうなった…。
「見て、あの子凄く可愛くない!?」
「本当だー!お人形さんみたい!」
「背も高いし、モデルさんかなぁ?」
「あっ、情報出た。男の娘!?」
「天使…ううん、女神だわ!」
なんか外が騒がしいな…。変なことばっかり言ってるのが地味に怖い。
「あー…目立っちゃってるね」
「早く逃げ出したい…」
「ふふっ、清隆くんは人気者だねっ」
「こんなカタチで人気者になりたくなかったよ…」
その後は、桔梗ちゃん達3人の服を見ることになった。
「清隆くん、この服どう?」
「コッチの方が桔梗ちゃんに似合うと思う」
「清隆くん、このコーデどうでしょう?」
「みーちゃんの魅力がハッキリと伝わるコーデだね」
「清隆くん、このワンポイントどうかな?」
「心ちゃんにそのワンポイントはアリだと思うよ」
ボクはなけなしのファッションスキルを総動員して3人のコーディネートをしていく。どうやら3人共満足したようで、全員笑顔になっていた。
「そうか…これがボクの日常になるのか」
少し騒がしいけれど、こういう日常を謳歌できるのは、悪くないかもしれない。
男の娘清隆がもっと見たい!という方は、応援してくださると投稿者のモチベーションに繋がります…。