妖怪バスター村上 〜御三家侵攻編〜   作:黒影時空

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第21話「閻魔を超えるために」

「——まず、件(くだん)と破道閻魔に対抗するための第一段階として、失われた人間側の戦力……すなわち退魔師たちの霊力供給システムを速やかに復旧・再構築します」 大江山のアジトの大広間。赤と黒のマーカーを指で回しながら、村上はホワイトボードの前にたたずんでいた。集まった大妖怪たちの視線が集中する中、彼はバインダーを繰りながら淡々と語り始める。 「退魔師学校における山本五郎左衛門の一件……俺は旧・御三家の力を潰すために行動しましたが、あのアナマリーについて、ずっと引っかかる点がありました」 村上は眼鏡の位置を正すと、ホワイトボードに退魔師学校の構造図を描き足した。 「山本五郎左衛門の墓は封印が解かれる寸前で学校に残されていた……今こうして、ぬらりひょんさんが最初から仕組んでいたことなら可能性はあります」 ぬらりひょんがキセルから煙をくゆらせ、面白そうに目を細める。村上はその視線を受け止めながら、事件のロジックを解き明かしていった。 「ぬらりひょんさん、あなたが退魔師達に提供していた霊力循環モデルは、あまりにも完成度が高すぎました。旧・御三家という最上級の危険資産を、計画のためとはいえ安々と人間に貸し出すとは思えない。そして何より……復活して実際に俺が退魔師学校で見た山本五郎左衛門が手を抜いていたようにも感じなかった……ならば、答えは1つです」 村上はマーカーのキャップをカチリと鳴らした。 「山本五郎左衛門を構成する物……仮にミイラのようなものを分割して一部分だけを墓に閉じ込めて退魔師学校に送っていたのなら?後はそれを繰り返せば何度も復活と封印のサイクルを繰り返せます、本来はそういう計画だったのでは?」 静まり返る大広間。ぬらりひょんはトントンとキセルを畳に叩きつけると、不敵で、どこか呆れたような笑みを唇に浮かべた。 「ほう、……詐欺の深い被害者というものは、詐欺のやり方にも詳しくなるものよなあ?如何にもお前さんが少し前に退魔師共と鎮圧した山本五郎左衛門というものは、奴の『右目』を送ったものよ」 「やはり……右目ぐらいに小さいものでしたか」 「左様。旧・御三家にして悪の権化たる山本五郎左衛門……奴の部位は、たった一つの『目』であっても人間に分不相応な霊力を与える。あの学校に封印されていたのは、奴の全身ではなく、ほんのひと欠片の『右目』に過ぎん。それ一つで数百人の退魔師どもがAランク規模の妖怪と戦えるだけのエネルギーを回収できておったのだから、実にコストパフォーマンスの良い触媒じゃったよ」 ぬらりひょんは煙を吐き出しながら、カラカラと笑った。だが、酒呑組の白沢や学園のドラゴンは、そのあまりにも身も蓋もない「人間のエネルギー資源化」の真相に顔をひつらせていた。 「……悪の権化の目玉をエネルギーサーバー代わりにしてたのかよ。退魔師共も知らねえうちにえげつないサブスク契約結ばされてたわけだ、学園もいい迷惑だよ」 ドラゴンが呆れたように呟く。 「ですが村上様」 白沢が心配そうに身を乗り出した。 「理由が判明したとはいえ、一度破壊された『右目』による霊力供給は停止しています。退魔師たちは今やただの人間と同等……このままでは、件が認知の上書きを始めた際、人間側の抵抗勢力として機能しません」 「ええ、だからこそ『再稼働』が必要です」 村上は一切の迷いなく言い放った。腰に差した妖刀『正大』が、彼の決意と同調するようにかすかな神気を放つ。 「ただし、かつてのような危険な単一障害点(SPOF)を持つ管理体系ではありません。山本五郎左衛門の力を再び退魔師の力にさせ、その上で悪用されないように弔う方法を考えます」 「弔う……? 悪の権化をか?」 八尺様が白い帽子の下から不審そうに声を潜めた。村上はホワイトボードの中央に、大きく二つの単語を書き落とした。 『メモリアルダイヤモンド』『分散型霊力コア』。 「今の時代には技術がある、今度は山本五郎左衛門の『遺骨』を使い、これを無数のダイヤモンドに加工します……そういうサービスが頼めば出来るんですよ、今は」 大広間の空気が、一瞬で凍りついた。 「ダイ……ヤ……!?ダイヤですか!?あの宝石の!?」 白沢が眼鏡をずり落としそうになりながら叫ぶ。村上はバインダーのプレゼン資料をトントンと整え、平然とした顔で説明を続けた。 「現代のテクノロジーでは、遺骨や遺灰に含まれる炭素を抽出・精製し、人工ダイヤモンドとして結晶化させる『手元供養(メモリアルダイヤモンド)』の技術が確立されています。山本五郎左衛門の残る遺骨を回収し、これを数万個の超高純度霊力ダイヤモンドへと加工・標準化します」 村上はペン先でホワイトボードを叩いた。 「これには明確な三つの構造的メリットが存在します。 第一に、リスク分散。部位そのものを保管すると、以前のように妖怪や破道閻魔に奪われた際、一括で乗っ取られるリスクが生じる。しかし、数万個に分散化されたダイヤモンドであれば、一つや二つ奪われたところでシステム全体が崩壊することはありません。第二に、品質の標準化とトレーサビリティ。均一なカットと質量で製造された『霊力ダイヤモンド』を、退魔師たちに『貸与型装備ライセンス』として手渡します。個シリアルナンバーと契約コードを付与することで、悪用や売買をリアルタイムで監視・差し押さえ可能にします。そして第三に……コンプライアンスと供養(リスペクト)です。怪異をただの肉体パーツとして搾取するから怨念が残る。尊厳あるメモリアルジュエリーとして結晶化させ、正規の『供養・契約関係』を結ぶことで、山本五郎左衛門本来の強力な神威を、呪いではなくクリーンな霊力として抽出し続けることができる」 村上はバインダーを閉じ、冷たい視線で全妖怪を見渡した。「悪の権化の遺骨を、現代技術でジュエリー化し、退魔師たちに支給して管理する。これぞ、科学技術とコンプライアンスに基づく、身も蓋もない現代的な『手元供養型戦力復旧ソリューション』です……それに、管理が簡潔になります」 「……」「……」大広間を包み込んだのは、凄まじいまでの静寂だった。八尺様は呆然と口を開き、ドラゴンは言葉を失ってフリーズしている。そして——上座に座るぬらりひょんのキセルが、手からポロリと畳へ落ちた。 「……お前さん、悪の権化を粉砕してダイヤモンドにして配るだと……? 妖怪を銭に変えるどころか、妖怪の骨をハイテク加工して人間にレンタルするじゃと……?」 ぬらりひょんの顔が引きつり、やがて不気味な笑いを超えた、尊敬のような戦慄へと変わっていく。「カカカ……妖怪よりよっぽど悪魔的なロジックじゃ……! 閻魔もどきどころの騒ぎではないぞ、この男……!いよいよ儂も宝石商か……趣味の悪い遺体を残すよりはよほど縁起が良い……!40%は儂のじゃ……」 「評価していただけて光栄です」 村上は感情の籠もらない声で淡々と言った。 「白沢さん、すぐに酒呑組を通して国内の宝石加工プラントおよび炭素抽出企業のアライアンス契約を進めてください」 「は、はいっ! ただちに!」 「これで、人間側の戦闘インフラの再構築に目処が立ちました、次は……」村上は腰の『正大』の柄に手を置き、力強く床を踏みしめた。 「破道閻魔、そして件……俺たちの日常を粉飾した罪、身も蓋もない現実(ロジック)で支払ってもらう」 —— 「……で、おれを呼んだってことは、直談判ってことか」 次の段階、二百四拾族のみを呼び出した村上。 八尺様だけではない、メンバーであるケンタウロスやメリーさん、無数の提灯お化けに火車に色々と圧巻の光景だ。 百鬼夜行の役割は与えた、次は八尺様に頼みたいことがあるので村上は堂々と自ら入る、デリケートな話題なので村上も慎重になる。「八尺様達にはそのスピードを利用して人間たちに噂を広めていただきたいのです」「天下のモンスターマシンを伝書鳩か……ま、おれの役割なんてそんなもんか、だが分かってるのか?おれは……」 「人間が嫌いだと把握しています、その原因は人間による恐怖を消されて霊気を失ったから」 「……まあ、分かるだろう?お前も人間で、男で、年頃なら、一時期は洒落にならないほど怖い話とまで言われたおれの、有様……」 妖怪の霊気は周囲の恐怖に直結する、だからこそ村上の言霊は色んな妖怪にかなり聞いた、恐怖の要素をそぎ落とされることこそ妖怪の弱点であることを知る者は少ない。 中でも八尺様という存在についてはむしろ、恐怖以外の観点の方が有名といえるだろう。 大きな女性のような未知の存在が田舎で人を捕まえようとした、いかにも恐ろしい話だったはずなのに八尺様が迂闊だった所は自分が現代でインターネット越しに伝わったこと。「少年なんかピンポイントで捕まえてねえよ……確かに田舎で子供なら単純だけどな、性癖なんかないし、胸だって噂だから可変式みたいなもんとはいえなあ……一番びっくりしたのは男にされてまで女と絡んだ時……人間の発想力ってやりたい放題だな」「織田信長だって言ってしまえば最悪な虐殺者みたいなものなのに日本を象徴する英雄として名前を売っていますし」「なあ村上、いや、人間代表、教えてくれ。妖怪であるおれが悪魔みたいに扱われるのも大概理解したつもりさ、ただ分からないんだけど……一体どうして、人間っていうのは生きている限りいつまでもおれたちの事をおもしろおかしくイジらずにいられないんだろうな」「……八尺様にとって人間は……」「忌々しい、怖いと言ってくれるばかりじゃないか、怖いと、怖がらないと死んでしまう……そう、まるでおれが……人間達を怖がらせていないから彼らは死んでしまうんじゃないかと思うくらい、未だに自分以外を怯えている……妖怪の在り方を変えた君だからこその意見を聞かせてほしい」妖怪の特徴というのは一般的に知られやすい、有名なものほど強くなるのもあるが、それ以上に八尺様は最も多く使われた属性に取り込まれてしまった。長い間生きて、ネットミームにしてきた人間を見てきて、今や誰よりも人と離れたはずの自分には……他人事とは思えない程に、どうしようもなく苛立ちが募る。もしも過去に戻ることができるとしたら、今でも怖いと言われ続けて怪異の象徴であったかもしれないのに。「……他人事だからですよ」「他人事、自分には無関係という事か」「今の俺達の件も同じです、閻魔大王になろうとあらゆるものを踏みにじった愚者が閻魔大王になり歪んだ情論を掲げようとしている……妖怪の皆さんは事の重大さを理解しているので手を貸してくれますが、人間からすれば自分達がどうなるかも分からないので知ったことではありません……織田信長の件で言えば、現代で広まっているものみたいに女の子にしようがなんだろうが、信長が現れて切り殺しにくるわけでもありません」 村上が歴史学者でもなければ専門家でもないので現代の一般人として個人的な印象であるが、織田信長は暴虐の限りを尽くし、世の中を混乱に陥れながらも天皇を凌ぐ権威を持ち日本に強い影響を与えた暴君であり、乱世の天才とも言える。 だが、現代には本人はもういないし、現状のように女子にされるなどの悪戯をしていても怒りに任せて恨み節を語ることもないのだ。 当時の記録を漁れば当時はまだ信長が怖くて仕方なかったようだが、結局その後の江戸時代では偉人に成り下がり、現代で弄り倒されて喜んでいる人間もいる。 当時は確かに怖かったのだろうが、そこにある意味で繋がりがない。 要するに、多くの人間からすればどんな有名な妖怪でも人間でも自分達に関係ないことなのだから弄られるのだ、いじられるような属性で固定されてしまうのだ。「……言ってくれるな、確かに妖怪の立場に寄れば人間にはこんなもんなんだろうな」「ですので、あらゆるものに干渉できる八尺様でなくてもいいのです……俺が求めるのは……」「ああ、言われるまでもない……『同じことをすればいい』んだな、霊気を失うだけじゃない、人間に対しての報復にもなるとなれば、妖怪の見せ場だ」「ええ……貴方が了承してくれるなら、話は早いです……なるべく速くというのも、暴走族には野暮な要望でしたあね」 話がスムーズにまとまったので村上は立って退散しようとする、その姿だけ見ると登下校間近の高校生の面影も確かにあるような気もするが……八尺様は村上を呼び止めるように背中を掴む、元々がデカいので簡単にそんなことも出来てしまう。「お前……ずっと一見すると鬼畜なこと言ってるようでおれ達に凄く気遣ってないか?わざわざおれにこんなことを話して確認するのもそうだし、あの頼みごとなんざただでは動かない狸爺をダイヤで懐柔したり……お前に徳なんてないだろ」「……本来、人に何かを送るなら見返りがあったり便利だったりして当然なものなんですよ、騙すようなことにはならないから」「………」 村上は人を信じていない、これまで色んな経験があり詐欺というものを多く見てきたからだ、そして『騙す』という行為は、必ずしも想定外のことから振り注ぐ。 自分は誰も信用できない、だからこそ村上は『対価』でしか周囲とコミュニケーションを取らない。 八尺様にはどうこうできないし、それをさせる理由もない。 それが出来るような妖怪がいたとしたら、もう既に——。 大江山での戦略会議を終え、次なる課題へと着手するため、村上は妖学四天王の一角であるドラゴンと共に、妖怪学園の校長室へと足を運んでいた。荘厳だがどこか薄暗い校長室の長机に、村上はバインダーを広げ、腰の妖刀『正大』の柄に手を置いたまま静かに息を吐いた。 「俺は妖怪学園に一度も行ったことないけど改革みたいなことをしてよかったの?」 村上が淡々とした声で尋ねると、長机の上で小さく身を縮めていたドラゴンが、フンスと小さな鼻息を漏らしながら翼を揺らした。 「校長代わりのその妖刀握って意思を乗っ取られてない奴が言う事なら誰も言うことはない、実質的に村上が校長みたいなものよ」 本来であれば妖刀『村正』のヤドリガミである正大に精神を呑まれ、狂気に陥るはずの存在。しかし村上は、圧倒的なリアリズムと冷徹なロジックによって妖刀の呪いすら「ただの莫大な霊力インフラ」として従えている。学園の妖怪たちから見れば、校長の証である正大を完膚なきまでに手中に収めた村上こそが、名実ともに新たな「学園長」そのものであった。 「では、遠慮なくガバナンスの刷新を行わせてもらいます」 村上は胸ポケットからペンを取り出すと、学園の組織図が書かれた資料をテーブルに広げた。 「破道閻魔と件に対抗するため、残された課題はシンプルに『妖怪という勢力の増強』です。兵站(霊力供給)と人間側の世論工作に目処が立ちつつある今、妖怪側の実動部隊となる妖怪学園の戦闘能力底上げは急務となります。……だが、そのためには学園の指導層である『妖学四天王』の体制を整える必要がある」 「ああ、そうなんだよ……」 ドラゴンは短い腕を組み、困ったように唸り声を上げた。 「実は最近、四天王の枠が空いているんだ、俺、ケンタウロス、メリーさんで3つなのは以前からだが、どうにも1枠足りなくて……小豆洗い、小豆洗いとか良さそうなのかな……微妙なんだよな……」 「なるほど。元々1枠欠員が出たままめぼしいものが出ず放置したり繰り返されていたわけですか。ずいぶんとズサンな組織管理ですね。……ですが、現状の課題はそれだけではありません」 村上は冷ややかな手つきで、組織図の「ケンタウロス」と「メリーさん」の名前に赤ペンで矢印を引き、八尺様率いる『二百四拾族』の枠組みへと繋げた。 「二百四拾族にも属しているケンタウロスとメリーさんはそちらの戦力として頭数に入れたいから3枠手頃なものを加える必要があるね」 村上の身も蓋もない人事移動の提示に、ドラゴンは目を丸くした。 「めちゃくちゃ煩雑なことになるな…」 「煩雑ではありません、ただのポートフォリオの最適化です。ケンタウロスとメリーさんは機動力と都市伝説的な拡散能力に秀でています。八尺様が主導する人間界への『認知・噂話拡散型情報戦』の現場に投入する方が、圧倒的にアセットとしての ROI(投資対効果)が高い。学園の防衛や生徒の指導に留めておくのは人材の無駄遣いです」 村上は刀の位置を指先でスッと直すと、淡々と続けた。 「したがって、現在の四天王で学園に残るのはドラゴンさん、あなた1人です。欠員の1枠に加え、出向する2枠……計3枠の新四天王を即座に選定し、学園の戦闘指揮系統を再構築します」 「いや言いたいことはわかるけどよ! 四天王って言ったら、学園中の猛者どもが年に一度、血で血を洗うような『恐怖の度合い』を競い合う『総大将合戦』を勝ち抜いて決めるのが伝統なんだぞ!? それを今から速攻で3人も生やせって、そんな都合よく強力な妖怪が面接に応募してくるわけねえだろ!」 ドラゴンが身を乗り出して叫ぶ。伝統ある妖怪学園のトップ決定戦。相手をどれだけ恐怖させ、どれだけおぞましい存在であるかを示した者が四天王に君臨する……それが、妖怪たちの血に刻まれた絶対のルールだった。だが、村上はその伝統に対して、心底興味なさそうにバインダーを叩いた。 「……そもそも、その『総大将合戦』とやら自体が、極めて定性目標に頼った非科学的な評価制度です」 「て、定性……なに?」 「『恐怖の度合い』という、観察者の主観や個人の耐性に依存する不確定な指標で役職を決めるから、欠員が出ても補充すらできない硬直化した組織になるんです。恐怖の演出なんて、相手のトラウマやその日の体調、事前の予備知識によっていくらでも変動する誤差の大きい数値でしょう。そんな曖昧な人事評価で四天王を選んでいたこと自体が、学園の構造的欠陥です」 身も蓋もない正論の連打に、ドラゴンは「ぐっ……」と言葉を詰まらせた。 「では、どうやって新四天王を決めるってんだよ……!? 恐怖も競わせずに、何を基準にするってんだ?」 「簡単です。『定量的な戦闘数値』と『組織運用能力』、そして『即戦力性』の3点による完全実力主義の採用選考です」 村上はホワイトボードに向かうと、黒のマーカーで大きな表を描き始めた。 「時間を簡潔にして……これより、妖怪学園臨時公募──『新・四天王選抜キャリア採用スクリーニング』を開催します。総大将合戦のような無駄なエンタメ要素は全カットです。学園中の全生徒・全教員から志願者を募り、実技テスト(火力・耐久値の定量的測定)と面接(リスク管理意識とコンプライアンス遵守度)の二段階で、3分以内に絞り込みます」 「さ、採用スクリーニング!? 3分!?」 「ええ。旧態依然とした『恐怖の誇示』に終始する妖怪は不採用にします。俺たちが今求めているのは、件の未来改変という超法規的システムに対抗できる、ロジカルで費用対効果の高い高戦闘力アセットです。伝説だの恐怖だのというブランド価値に胡坐をかいている伝統派妖怪など、今の現場では何の役にも立ちません」 村上の瞳に、狂気的なまでの冷徹な計算速度が宿る。自分たちの日常を壊し、友の人生すら出汁殻として踏みにじった破道閻魔と件。その悪徳買収を叩き潰すためなら、村上は妖怪世界の伝統や格付けすらも、身も蓋もない現実(ロジック)で躊躇なく解体してみせる。 「ドラゴンさん。新校長としての俺の初仕事です。すぐに学園内に全校放送を流してください」 「は、はいっ……! なんていやこれ放送すればいいんだ……!?」 村上は妖刀『正大』の柄に手をかけたまま、ホワイトボードをペンで強く叩いた。 「『四天王枠、緊急3枠募集。未経験可、恐怖の演出不要、即日勤務可能な高火力・高耐久妖怪求む。なお、伝統や威厳を主張するタイプは書類選考で落とします』……と」 冷酷で身も蓋もない新校長・村上の宣言に、ドラゴンはひえっと悲鳴を上げながら、大慌てでマイクへと飛びついていった。 ひとまず妖怪学園のほうもこれで問題ないだろう。 

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