妖怪バスター村上 〜御三家侵攻編〜   作:黒影時空

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第7話「旧・御三家」

ワンルームの狭い室内に、圧倒的な異物感が鎮座していた。

畳の上にどっかりと横たわり、村上の愛用するクッションを抱え込みながら缶チューハイを煽る影。

 日本三大妖怪の一角であり、現行の退魔師では討伐不可と指定されるSランクの大妖怪、酒呑童子である。

 

 妖怪界屈指の大所帯『酒呑組』の頭領という恐ろしい肩書を持ちながら、今の彼女の姿は連休最終日の無気力なニートそのものであった。

 

「それをうちのアパートでやられたらライン超えでは?」

 

村上はポテチの袋を片手に、死んだような目で自室のベッドを完全占領する大鬼を見下ろした。家賃を払う気もなければ、出て行く気もない。警察に相談したところで「角の生えた不法侵入者がいます」と伝えても悪質な悪戯だと一蹴されるのがオチだ。危害を及ぼしてこないとはいえ、身元不明のニートを居座らせているのと何ら変わらない。

 

「固いことを言わないでくれ村上。組の本部にいても白沢の奴がやれ決裁だの勢力図の報告だのうるさくて敵わんのだ。お前の部屋は実に落ち着くんだ…」

 

「俺の部屋を避暑地みたいに使わないでほしいんだけど。そもそも妖怪達って日本征服が目的なんですよね? なんでさっさと退魔師を倒さずに内輪揉めから始まってるんですか」

 

村上の素朴な疑問に、酒呑童子は缶を置くと、億劫そうに体を起こした。

「あの退魔師から何も聞いてないのか……?妖怪が人間などという脆弱な種族を本格的に攻めないのは、人間などいつでも滅ぼせるからなんだって。奴らが本当に求めているのは……『旧・御三家』の力だよ」

 

「なんか急に特別そうな家柄が出てきた……」

 

「大昔に並外れた妖力を誇った三つの家系を旧・御三家と呼ぶ。その力をすべて手中に収めれば、日本征服など赤子の手をひねるようなもの。だから私も含めた妖怪共は退魔師など目もくれず、旧・御三家の力を巡って毛のむしり合いをしているというわけ。ちなみに、一つ目の『山本五郎左衛門』は退魔師学校のデカい墓に封印されているが、もうすぐ目覚める予兆がある。そして二つ目の『源浜岸雪右衛門』は、大昔の源家や牛若丸とも縁深い力で……すでに酒呑組が確保している」

 

つまり、各地で起きている妖怪同士の戦争は、まだ見つかっていない最後のひとつを巡る奪い合いだった。酒呑童子からすれば、最後のひとつをどこかの派閥が見つけた瞬間に横取りすればいいだけの話であり、それが彼女の圧倒的な退屈と暇に繋がっていた。

話を聞いていた村上は、ポテチを一枚口に放り込み、至極当然といった風に首を傾げた。

 

「旧・御三家って、全部揃わないと意味がないんですか?」

 

「それはまあ……三位一体となって初めて真の力を発揮するからな。だから皆、必死こいて取り合いをしている」

 

「なら御三家を一個無くせば二度と集まらなくなって何も出来なくなるんじゃないですか」

 

「……は?」

 

酒呑童子はポカンと口を開けた。

 

「だって、その三つが揃わないと機能しないシステムなら、酒呑組が持ってる『源浜岸雪右衛門』ってやつを処分して消滅させればいいじゃないですか。そうすれば誰も旧・御三家を完成させられなくなって、陣取り合戦自体が意味を無くす。誰も目的を達成できないんだから妖怪同士の戦いも終わるし、酒呑さんも頭領として戦う理由が永遠に消えますよね?」

 

静寂が部屋を支配した。

村上の身も蓋もない超・現実的ソリューションが、酒呑童子の脳内を稲妻のように駆け巡る。

 

(な、なんだその天啓は……っ!?)

 

そうだ。自分はなぜ「揃った後で奪い取る」などという面倒な思考に囚われていたのか。手元にあるひとつを物理的に処分してしまえば、妖怪世界のパワーバランスは永遠に崩壊し、自分が面倒な戦争や組の指揮に駆り出される未来も完全に潰える。

大妖怪としての誇りも数百年の宿願も、村上の放ったたった一行のマジレスによって綺麗に砕け散った。

 

「す、素晴らしい……! 天才かお前は! 今すぐ大江山に行って源浜岸雪右衛門を処分しよう村上!!」

 

「いや俺は明日学校だし……」

 

興奮冷めやらぬ様子で村上の両手を握りしめる大鬼と、心底面倒そうに手を振り払う高校生。妖怪界の運命を左右する重大な決断が、畳六畳の汚部屋で実にあっけなく下されたのだった。

 

——

 

 ということで大江山にあるオフィスに堂々と侵入した酒呑童子、自分のアジトに堂々侵入というのも変な話であるが結局村上を大事なところに連れて行ったのでしょうがない。

 村上としてもほぼ強引な形になってしまっている、最近紅院はバイトで忙しいので山本五郎左衛門の方をなんとかしてとも言えない空気感だった。

 

 

「これが源浜岸右衛門だ」

 

 そうしてスーパーコンピュータやサーバーに紛れてぽつんと置かれていたのが墓、同じく墓だ。

 これには村上も二度見して指をさすが。

 

「い、いや……あそこに置いてたらなんか肝が冷えるから……サーバー冷やすのとかにちょうどよくて」

 

「じゃあ撤去したらダメじゃないですか」

 

「い……いいんだよ!!旧・御三家が一つでもなくなれば事務仕事とかしなくて済むし!!」

 

「そういう問題じゃあないんですよ、貴方もうもう一回現実的に首が飛ぶことになりかねないですって」

 

 村上が軽くそう言ったのも墓を軽く保管してるものと思ったら酒呑組がガッツリ利用してるなんて想定外だったし、というかこれ撤去関係なく他の一派に奪われたら致命傷な使い方をしているのが問題だ、旧・御三家を潰されるだけで簡単に詰みかねない。

 

「なんでエアコンとか買っておかなかったんですか」

 

「妖怪は別にエアコンなくてもいいし水飲むのは弱者の発想だから……」

 

「倫理観昭和の野球部?」

 

 とりあえずこれをなんとかする前に新しいエアコンを用意した方が早いということで急遽スマホで検索する村上。

 こういったサーバールーム用のエアコンは普通に買えるわけではないので専用の販売サイトやメーカーを見ていく必要があるらしい。

 しかし酒吞童子は村上の手を引く。

 

「じ……実際、エアコンとか家電の事全然よく分からなくて……教えて欲しいというか……」

 

 ……ということで性能のいいエアコンというものを知るために家電量販店まで行くことになった村上と酒呑童子、これは会社にとっても大事なことなので経費で落とせるということで業務用エアコンを選ぶ前に家電を何個か買っておこうということになった、村上は結構家電が好きなのでそういうのも悪くないと思っている。

 

 

 だが本題はそこではない。

 

(えっ……ちょっと待って、これ……えっ、これはもしかしなくても。)

 

 買 い 物 デ ー ト !!

 

 生まれて首切られてなんだかんだで復活してかれこれ数百年、鬼の王にようやく到来した春。

 三大妖怪のうち大嶽丸と玉藻の前がくっついたせいでマウント取られて結婚願望が強かったところに見えてくる一大イベント。

 こんなことがあっていいのか、エアコン買いに来ただけだし酒呑組にとってはわりと死活問題だが有頂天の酒呑童子にとっては知ったことではない。

 

 村上が手を握ってるし村上と買い物してるし村上が今よりずっとそばにいる。

 これだけで酒呑童子にとっては刺激的だったが、少年がジャンプするくらいのラインを弁えなくては色々と笛吹き男にしばかれてしまいそうな雰囲気がある。

 

 しかし村上も酒呑童子も知らない裏で動向を除く4つの影……。

 

「浮かれているな酒呑様」

 

「そうでなくてはこちらも困る」

 

「あの村上という人間には悪いが……なんとしても酒呑童子様とお近づきになってもらわなくては」

 

「ええ……酒呑様の今の幸せのためにも」

 

 彼ら大江山四天王、古来より酒呑童子に仕える4人の鬼。

 熊童子、虎熊童子、星熊童子、金童子……彼ら4人は白沢より前から酒呑と共に過ごし、彼女の後ろ姿を見てきた。

 現在の立場が枷になり大人の悲しみと悲哀を背負うお労しい姿がようやく解放されるかもしれない。

 そう、村上と結婚すればかつての酒呑童子様に戻るかもしれない……!

 なによりも彼女自身の幸せを尊重したいという気持ちが、4人の鬼をきぶり妖怪に変えてしまった。

 

「あの二人をなんとしてもあの買い物デートで進展させるんだ」

 

「家電量販店でって難しくない?」

 

「だがここを逃したら次はない!酒呑様を幸せにするんだ!!」

 

 かくして鬼達の陰謀が幕を開ける……!

 

 ——

 

 家電量販店の明るい店内。色とりどりの最新家電と賑やかなPOPが立ち並ぶ中、村上と酒呑童子は業務用エアコンの慣れとして生活家電の売り場へと足を進めていた。

その二人の後ろ、陳列された大型テレビの陰や洗濯機の物陰から、妖気を限界まで殺した四つの影が目を光らせていた。大江山四天王——準備万端である。

 

「よし、作戦開始だ。酒呑様とあの人間の距離を物理的にも精神的にも縮める、我ら鬼達も現代で進歩したところを見せてやる」

 

「だが熊童子、具体的にどうするんだ? 公園や遊園地なら家電量販店だぞ?」

 

「任せろ。まずは定番の『二人で一緒に未来を体験させる』作戦だ!」

 

 

 

---

 

【アプローチ①:最新スマートホーム&高級家具体験コーナー】

 

四天王の一人・星熊童子が、店員に化けて(あるいは幻術で)二人を最新の体験型スマートホームコーナーへと誘導した。

 

 「酒呑童子様が都合よくリアクションしてくれるかな?」

 

「あの人はちょろいところがあるから大丈夫だ!」

 

そこにはフカフカの高級ソファと、声で操作できる最新の照明・AV機器が設置されている。

 

「ほら村上! 見てみろ、声で照明が暗くなるらしいぞ! 試しに二人で座ってみないか?」

 

酒呑童子は頬を赤らめつつ、胸を躍らせて村上の袖を引く。二人で薄暗い部屋のソファに並んで座る……まさに甘い雰囲気になるはずのシチュエーションであった。

 

裏で見守る四天王が「勝った……!」とガッツポーズをした瞬間、村上が冷ややかな目で室内環境を検分し、口を開いた。

 

「いや、酒呑さん。このスマート電球、専用のハブと2.4GHz帯のWi-Fi環境が必須ですよ。酒呑組の本部にWi-Fi飛んでるんですか?白択さんになんて説明します?」

 

「え? わ、わいふぁい……?」

 

「あとこのソファ、本革製だからお手入れ怠るとすぐひび割れますし、お値段40万です。エアコン買いに来て40万のソファ買うのは予算オーバーどころかただの無計画です、こういう買い物あるある。あと照明を暗くして何するんですか、暗いと説明書が読めないでしょ」

 

「あ……はい……」

 

家電マニアを舐めてはいけない、一瞬で現実へと引き戻された酒呑童子は、しょんぼりと肩を落とした。

物陰で見ていた星熊童子は血涙を流していた。

 

「理屈で攻めてくる……! なんてスキのない人間なんだ……!」

 

「くそおあの歳でなんて計画性のある男、だからこそ酒呑童子様を養うには相応しい……」

 

「よし、次の作戦だ!」

 

---

 

【アプローチ②:邪魔者の排除(&吊り橋効果の捏造)】

 

気を取り直した四天王は、次に「アクシデント演出」を試みることにした。

虎熊童子が売り場の配電盤にこっそり妖気を送り込み、店内を一瞬停電させてパニックを起こし、酒呑童子が村上に抱きつく隙を作ろうと画策する。

 人間なんて知ったこっちゃない鬼らしいなかなかのあくどい手段である。

 

さらに運悪く、新しいテレビといい感じのブルーレイ機器を体験しに店を訪れていた退魔師の蒼介、現在退魔師ランキング68位(笑)が通りかかった。

 

「ぬっ……! あの男は腕の立つ退魔師! 酒呑様とのせっかくのおデートを邪魔させるわけにはいかん!」

 

金童子と虎熊童子が一致団結し、気配遮断で蒼介の背後に回り込むと、神通力を用いて「期間限定で新作おでんの試食会をやっている」という偽の案内板を設置して蒼介を遠くのコンビニへと鮮やかに誘導・排除した。邪魔者の排除は完璧だった。

 

 (お前……おでん食いたかったんだな……)

 

そして、虎熊童子が配電盤のスイッチを操作し、エアコン売り場の一角をパッと停電させた!

 

「きゃっ!? む、村上……! 急に暗くなって恐ろしいな……っ!」

 

千載一遇のチャンスとばかりに、酒呑童子はオーバーに怖がってみせ、村上の腕に抱きつこうと胸を躍らせる。

 

しかし、村上は一切動じることなく、ポケットからスマホを取り出すと、慣れた手つきでライトを点灯させた。

 

「あ、単なる breaker(ブレーカー)落ちですね。このエリア、展示用のドライヤーと業務用エアコンを一斉に稼働させすぎたんですよ。アンペア数が足りてません。店員の電力計算のミスですね」

 

「ハ、ハイ……」

 

「抱きつく前に足元気をつけてくださいね。延長コードに引っかかって転んだら普通に怪我しますから」

 

「うぐっ……!」

 

恐怖も甘い雰囲気も、村上の「アンペア数へのマジレス」によって一瞬でボロボロに粉砕された。

 

「ブレーカーの仕組みを即座に見抜くだと……!? あの高校生、何者なんだ……!?」

 

「もしかしてあいつ就職希望先が電気計装工事だったりする?」

 

配電盤の陰で虎熊童子ががくりと膝をついて横で熊童子が冷静にツッコミを入れていた。

 

---

 

【アプローチ③:新婚生活を連想させる『ホットプレート』試食コーナー】

 

最後に残された熊童子が動いた。

 

「ならば最後は食だ! 一緒に料理を作る未来を想像させるのだ!家電と食は縁が深い!!」

 

「なるほど!日本人ほど食事に食いつかない種族はいない!何百年前からそうだったもんな!!」

 

四天王は売り場の試食コーナーに介入し、最新のたこ焼き機能付きホットプレートを二人に勧めさせた。

 

「見てくれ村上! これがあれば二人でたこ焼きパーティーができるぞ! 楽しそうじゃないか!?こういうの私凄いあこがれていて……」

 

酒呑童子は「二人でたこ焼きを突き合う新婚のような生活」を妄想し、目を輝かせる。

 

村上はホットプレートのプレート部分を持ち上げ、裏側のヒーター形状を確認しながら呟いた。

 

「ああこれ、溝が多くて洗うのがめちゃくちゃ面倒なタイプですね。あと、たこ焼きのプレートって最初の二、三回使ったらあとは押入れの肥やしになるのがオチです。酒呑さん、自分でたこ焼きのプレートゴシゴシ洗う気あります?」

 

「あ、ありません……白沢に怒られます……」

 

「ですよね。酒呑組のサーバー用に買うなら、下手に多機能なやつより、プレートが取り外せて丸洗いできるシンプルな三千円の業務用たこ焼き器か、そもそもホットプレート自体買わないのが正解です」

 

「お、おっしゃる通りで……」

 

「こういう家電買わせようとして騙してくる人間って結構いるんですよ、俺の親もそうだったからさ」

 

 村上の目は冗談ではなかった、人一倍怒り以上に心配さが勝っていた。

 これには四天王も何も言えなかった。

 

結局、四天王のあらゆる陰謀とアプローチは、村上の圧倒的リアリズムとコストパフォーマンス主義によってことごとく撃ち落とされた。

 

日の暮れた帰り道。

村上と酒呑童子は、デート中に無事に購入を決めた「高効率・省エネ仕様の業務用エアコン(工事費込み)」の履歴を片手に、村上の強い勧めで買った「シンプルで洗いやすい加湿器」を手に、アパートへの道を歩いていた。

 

遠くの電柱の陰で、疲れ果てた大江山四天王がガックリと首を垂れている。

 

「ダメだった……酒呑様とあの人間の間に、微塵も甘い雰囲気が生まれなかった……」

 

「あの男、高校生の皮をかぶったド級のリアリストだ……隙がなさすぎる……」

 

四天王が自分たちの無力さを嘆いていた、その時である。

 

「いやー、今日は楽しかったな村上!」

 

隣を歩く酒呑童子が、満面の笑みで村上の顔を覗き込んでいた。

 

「まあ……エアコン選んだだけですよ、 途中で停電したりして変な店でしたし」

 

「良いんだよ!お前と一緒にあちこち見て回って、あれこれ教えてもらったのだ。それだけで私は最高に楽しかったし……これで大江山のサーバーも冷えるし、白沢に小言を言われることも減る!」

 

そう言って、酒呑童子は心底嬉しそうに村上の袖をキュッと引っ張った。

 

それを見た四天王たちは、パッと表情を輝かせた。

 

「し、酒呑様が……あんなに楽しそうに笑っておられる……!」

 

「我らの愚かな工作など必要なかったのだ……! 一緒に買い物をしたという事実だけで、酒呑様は十分に幸せだったのだ……!」

 

「うおぉぉん! 酒呑様ぁーっ! お幸せにーっ!」

 

物陰で泣き崩れる四頭の大鬼たち。

そんな気配を微塵も察知していない村上は、重い溜め息を一つ吐き出した。

 

「はぁ……まあ、酒呑さんが満足したならいいですけど。帰ったらエアコンの設置工事の日程、白沢さんに連絡しておいてくださいね。俺は明日テストなんですから」

 

「む、冷たいな村上! ちょっとくらい打ち上げで酒に付き合え!」

 

夕闇の街に、大妖怪と高校生の身も蓋もないやり取りが響き渡っていくのだった。

 ……で、簡単に終われば苦労しない。

 

 「貴方達?」

 

 四天王の後ろから更に冷たい声……。

 

 「何やら妙な気配がするので背後に回ってみれば……四天王が揃いも揃って仕事もせずに何をしているのです?」

 

 「ゲェーっ!!は、白択!!?何故ここに!?」

 

 「新機種のandroidを探していたら酒吞様がエアコンなんて見ていてね……皆さん、説明してもらいますよ?」

 

 

 その日の晩、四天王は揃って締め上げられて酒呑童子も旧・御三家をサーバールームを冷やすのに利用していたことがバレてここしばらく小言を聞かされていたという。

 その時の彼女の顔は例えるなら情けない顔をして奥さんに怒られているオスライオンみたいだったという。

 そして村上は今回のことを紅院に話すと……。

 

 世間話感覚で聞いてた紅院はパキッと音を立ててグラスを片手の圧力だけで割った。

 

「あのね村上君?僕は基本君のやることを咎めたりはしないよ、でもね?さすがに僕達退魔師の相談もなしにやっちゃいけないラインがあることは分かってほしいなぁ」

 

 静かな紅院の怒りに村上は心の奥で震えた。

 紅院に黙って勝手に妖怪絡みのことはしないようにしようと心から誓った。

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