コードギアス 騒動のルルーシュ 〜 Lelouch of ToLOVE Ru   作:elimin

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ちなみにルルーシュのギアスは据え置きで、この世界でもちゃんと通用します
1人につき1度だけという制約や、相手の目を直接見て命令しないと通用しないという弱点もそのままです( * . .)"


STAGE 1 追いついた過去の影

(……ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア)

 

かつて世界のほとんどを統べた一族を表す家名にして、世界を震撼させ、最後には世界の憎悪を一身に受けて散ったはずの血塗られた名。

この平和で穏やかな世界において、その名は何の価値も持たないどころか、忌むべき魔王の刻印でしかない。

 

「……ルルーシュ・ランペルージだ。好きに呼んでくれて構わない」

 

選んだのは、かつてアッシュフォード学園で一人の学生として過ごした、平穏な日々の名前だった。

 

さすがに、自分の左目に宿る「絶対遵守のギアス」のことや、かつて一国の皇帝として世界を支配し、己の野望と贖罪のために命を捧げた「ゼロ・レクイエム」の真実までを明かすわけにはいかない。

 

「ルルーシュ、か。よろしくな、ルルーシュ!」

 

リトは屈託のない笑みを浮かべ、気さくに手を差し伸べてきた。ルルーシュはその手を一瞬だけ見つめた後、静かに握り返す。

 

「ああ、よろしく頼む、リト」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー、美柑!」

 

リトが玄関のドアを開けると、香ばしい醤油と夕飯の出汁の匂いがふわりと漂ってきた。

 

「おかえり、リト。……って、誰その派手な人?」

 

リビングから顔を出したのは、エプロン姿の少女──リトの妹、結城美柑だった。

 

整った顔立ちに、しっかり者らしい落ち着いた瞳。ルルーシュを一目見るなり、そのあまりにも浮世離れした皇帝服に不審そうな視線を向けている。

 

「あ、いや! その……途中で道に迷って困ってたルルーシュさんだ。いろいろ事情がありそうだから、とりあえず夕飯一緒にどうかなって……」

 

「はぁ……またいつもの『放っておけない病』? まあいいけど……いらっしゃい、ルルーシュさん。すぐご飯にするから座ってて」

 

呆れつつも手際よく皿を並べ直す美柑の姿に、ルルーシュの胸の奥がキュッと締め付けられた。

 

(……ナナリー)

 

かつて自分にも、こうして身の回りを気遣ってくれる妹がいた。だが、今の自分には帰るべき場所も、守るべき妹もいない。

 

(これから、俺はどうするべきだ……?)

 

思考を巡らせる。

この世界にはブリタニアも黒の騎士団も存在しない。自分が戦うべき相手も、変えるべき世界もないのだ。ならば自分は、ここでどのように生きればいいのか──。

 

──ドドドオォォォンッ!!!!

 

思考を断ち切るように、足元から地響きのような重低音と衝撃が家中を揺らした。

 

「な、なんだ!?」

 

「うわあっ! またララのやつ、地下で何か爆発させたのか!?」

 

リトが頭を抱えながら叫ぶ。

だが、ルルーシュの反応は違っていた。

 

(この微振動……そして重力波の伝播……!? サクラダイトリアクター特有の波動……なぜだ!?)

 

ルルーシュの全身の毛穴が泡立つ。

ただの爆発音ではない。体内に刻み込まれたナイトメアフレームの起動シグナル。

ルルーシュは瞬時にリトの制止を振り切り、階段を駆け下りて見るからに不自然な造形の扉をあけ、下へと続く階段を駆け下りて地下室へと飛び込んだ。

 

「おい、ルルーシュ! 危ないって──!」

 

慌てて追いかけてくるリト。

 

リトを置き去りにして地下に広がっていたのは、怪しげな宇宙技術の機械が立ち並ぶ広大なガレージ……そして、煙が充満するその中央に「それ」は鎮座していた。

 

漆黒の装甲。金色の流線型フレーム。

重厚にして洗練された、かつて黒の騎士団のトップの機体として、そして神聖ブリタニア帝国唯一皇帝の専用機として世界の頂点に立った、絶対守護領域を持つ可変ナイトメアフレーム──。

 

「蜃気楼……!?」

 

ルルーシュは息を呑み、目を見開いた。

煙の向こうで、ピンク色の髪をした少女──ララ・サタリン・デビルークが、ドライバーを片手に無邪気に振り返る。

 

「あ、リトお帰り〜! 地下の倉庫の時空歪曲ポータルから急に大きいロボットが降ってきたから、珍しくてちょっと分解してみようとしたんだけど……なんか急に火花が出ちゃってさ!…ってリトじゃない、だぁれ?」

 

「分解……!?」

 

ルルーシュの瞳に、激しい動揺と、かつての「覇王」としての鋭い光が戻る。ダモクレス攻防戦で戦火と共に消え去ったはずの、己の愛機。なぜこれがこの世界に存在するのか。

混乱は深まるばかりだったが、かつての愛機との思いがけない再会は、ルルーシュの運命の歯車を再び力強く回し始めていた。

 

「……あはは、ごめんねー! ちょっと中を覗こうとしたらバチバチッて弾かれちゃって!その…えっと」

 

ケラケラと無邪気に笑うララは、ルルーシュの姿を見るなり目線を泳がせる。初対面の相手だったためルルーシュの名前がわからないので気まずそうにしていた。そんなとき、リトが地下室にやってきた。

 

「ララ! お前また勝手に……! あ、ルルーシュ、こいつはララって言って、その……うちの居候なんだ」

 

頭を抱えるリトを余所に、ルルーシュはララと、その背景に聳え立つ漆黒の機体──蜃気楼を交互に見つめた。

 

「……君がこれを調べようとしたのか?」

 

「うん! 地球の技術ともデビルークの科学ともちょっと違う、面白いエネルギー反応がしてたからさ! まさかこのメカの持ち主?」

 

「ああ。俺はルルーシュ…ルルーシュ・ランペルージだ」

 

「ルルーシュだね!私、ララ!ララ・サタリン・デビルークだよ!」

 

「よろしく頼む、ララ…そしてこの機体の名は蜃気楼……俺の機体だ」

 

「えっ、ルルーシュの所有物なのこれ!?」

 

ルルーシュの静かな一言に、リトがと目を丸くする。

ダモクレスの激戦の末に破壊されたはずの機体。それがなぜ、自分と共にこの世界に存在しているのか──。時空の歪みか、あるいは C.C. や集合無意識がもたらした奇跡なのかは分からない。

 

だが、漆黒と金の装甲に触れた瞬間、掌から伝わるサクラダイトリアクターのかすかな振動が、これが「本物」であることを伝えていた。

 

「ねえねえ、それにしても変な格好だね! ルルーシュってどこかの王様か何か?」

 

ララが興味津々にルルーシュの顔を覗き込み、彼の着ている白と金の絢爛豪華な皇帝服を指さした。

 

「格好……? ああ……」

 

リトも改めて思い出したようにうなずく。

 

「確かに……公園で会ったときから思ってたけど、それ、かなり目立つよな。私服とか持ってきた着替えはないのか?」

 

「着替えか……」

 

ルルーシュは胸元の意匠を見下ろし、小さく息を吐いた。

ゼロ・レクイエムの象徴であり、世界の憎しみを集めた血塗られた衣装。これをいつまでも着ているわけにはいかない。

 

「コクピットのストレージなら、予備の私服や備品が残っているかもしれない。……確認してくる」

 

ルルーシュは蜃気楼のハッチを開放し、使い慣れた手つきでコクピットへと乗り込んだ。

狭く、重厚な電子音に包まれた操縦席。

かつて世界を相手にチェス盤を動かし、幾多の策略をめぐらせたこの空間に腰を下ろすと、不思議と心が落ち着くのを覚えた。

 

ストレージボックスを開けると、そこにはアッシュフォード学園の制服と、いくつかの私服、そして見慣れた通信端末類が綺麗に収められていた。

 

(……動く、な)

 

メインコンソールを操作すると、モニターに「Druid System」の起動ログが静かに流れる。

絶対守護領域を備えた最高峰の防御性能。ダモクレス戦でのダメージが一部残っているものの、稼働自体に大きな支障はない。

 

しかし今のルルーシュに、かつてのように世界を変革する意思も、戦争を起こすつもりも毛頭ない。

ゼロ・レクイエムを遂行し、自らの命すら捨てた男だ。もう誰も傷つけたくはないし、奪いたくもない。

 

だが──

眼下のララという少女が見せた異質な存在感。そしてリトの日常を取り巻く突拍子もない騒動。

未知に満ちたこの世界で、何が起きるかは誰にも予測できない。

 

(自分と、そして……関わった人間を守るための『力』まで捨てるつもりはない)

 

持っていた私服を抱え、ルルーシュはコクピットから降り立った。

その瞳には、混乱を乗り越え、この未知の日常を生き抜くという静かな覚悟が宿っていた。

しかしストレージの奥深くを捜索していたルルーシュの手が、硬質な感触に触れた。

 

(これは……)

 

さらに奥の暗がりに隠されるようにして転がっていたのは、黒く冷たい金属の光沢を放つ、かつて幾度となくその引き金に指をかけた「拳銃」だった。

 

(……銃か)

 

ルルーシュの胸に、重苦しい過去の記憶が不意に蘇る。

血に染まった手。引き金を引いた瞬間の反動と、二度と戻らない命の重み。この銃を手に持った人差し指で、初恋だった少女を撃ち、親友と撃ち合った。そんな苦い記憶が右手を起点に蘇る。

 

(この世界で、これを使うような事態が起きないことを祈るばかりだが……)

 

ルルーシュはリトやララに気づかれないよう手早く拳銃をストレージに隠し帯びると、アッシュフォードの制服へと着替えた。

白と金の絢爛な皇帝服から、見慣れた漆黒の生徒会制服へ。

モニターに囲まれた中で、血塗られた魔王の影がほんの少し薄れ、一人の学生としての佇まいが戻っていく。

コクピットから降り立ったルルーシュを見て、リトは「お」と声を上げた。

 

「へえ、さっきの豪華な服よりずっと似合ってるよ! それ、学校の制服?」

 

「ああ。以前通っていた学校のものだ。当面の私服としては、これで十分だろう」

 

「うん、すごく格好いいと思うよー!」とララが無邪気に拍手をする。

 

そこへ、ドタドタと足音が響き、地下室の階段から美柑が顔を出した。

 

「ちょっと、下の階で何の音……って、なにこの大きなロボット?」

 

美柑は腰に手を当て、煙が薄れかけた地下室を見回した。

かつて世界を震撼させた第八世代相当の最高峰ナイトメアフレーム──蜃気楼。その圧巻の存在感を前にして、美柑の反応はあまりにもあっさりとしたものだった。

 

「まったく……ララさん、また何か変なもの持ってきたの? 夕飯冷めちゃうから、片付けたら早く上に来てね」

 

驚く様子すら見せず、呆れたようにため息をつく美柑。

 

「……驚かないのか?」

 

思わず問いかけたルルーシュに、美柑は「え?」と首をかしげた。

 

「だって、うちには宇宙人が居候してるし、いつも部屋の中で謎のメカが爆発したり変な生き物が飛んできたりするから……今さら大きなロボットが1台増えたくらいじゃ、もう驚かないよ」

 

「……そうか…いや待て、宇宙人だと!?」

 

「うん、宇宙人だよ!デビルーク星の第一王女なんだ〜♪」

 

ララが黒い尻尾を揺らしながら応える。この器官は地球人の人間には明らかに存在しない。

 

ルルーシュは驚愕した表情を見せていた。

自分がいた世界では、ナイトメアフレーム1機で国家の情勢すら変わりかねなかった。それがこの家では「日常の一コマ」としてあっさりと受け入れられている。宇宙人という要素が規格外すぎるが故か。

 

(宇宙人……そして、この常識外れの日常か)

 

冷たい金属の拳銃を懐に秘め、黒い制服の袖を通したルルーシュ。

ゼロ・レクイエムを遂行し、死んだはずだった男の「新しい日常」が、この賑やかすぎる結城家から静かに始まろうとしていた。

 

ララの第一王女という肩書きと、ルルーシュの持っていた第11皇子という肩書き。それでもこんなに奔放に、無邪気に生きている彼女を見ていると、ルルーシュは頬が緩む。

 

「ルルーシュ、なんか顔についてる?」

 

ララがきょとんとした顔で首を傾げると、ルルーシュはくすっと笑って額に手を当てる。

 

「いや、ララは環境に恵まれていたのだな…と思ってつい、な」

 

「ふぅん…ルルーシュって難しいこと考えてるんだね!」

 

にぱ、と笑って複雑な空気を吹き飛ばすララ。ルルーシュは軽くため息ついて彼女をそっと見つめていた。




とりあえずここでのルルーシュの設定を

〇ルルーシュ・ランペルージ

本名はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。元神聖ブリタニア帝国第11皇子であり、黒の騎士団を率いた仮面の英雄・ゼロであり、そして神聖ブリタニア帝国第99代唯一皇帝でもあった少年。

年齢は享年と同じ19歳のはずだが、肉体は17歳(皇暦2017年時点)と同じ状態にまで戻っている(違いは19歳の時期と比べてもほとんどない)。しかしゼロレクイエムで剣を刺されたときの傷と痛みは僅かに残っている。

謎の少女C.C.との契約によって左目に「絶対遵守」の力を宿すギアスを授かり、過去の世界ではこの能力と己の出生とずば抜けた頭脳をもってブリタニアと戦争を繰り広げ、最終的に世界を征服したのちにゼロレクイエムで己の命と共に世界中の憎悪を消し、世界を変えた。

しかし、死亡後に彩南町へと行き着いており、結城リトの家でララ・サタリン・デビルークを筆頭に様々なトラブルに巻き込まれていく。ここでは皇族だった血筋も、皇帝だった事実も役に立たないため、血なまぐさい家名ではなく、日常を生きた「ルルーシュ・ランペルージ」として生きることに。
第二の人生は、まだ始まったばかりである。
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