コードギアス 騒動のルルーシュ 〜 Lelouch of ToLOVE Ru 作:elimin
マジでこれ頭抱えたけど
地下室での一騒動を終え、ルルーシュはリトに促されるまま、リビングの食卓へと向かった。すると頭に花を生やした赤子のような薄緑髪の女の子がルルーシュを見あげた。
「まう?」
「…なんだ、この幼子は」
薄緑色の髪という点のみでC.C.を想起したが、あまりにも幼いのですぐにその思考は吹っ飛ばされた。
「あぁ、その子はセリーヌ。宇宙の植物から生まれたんだ」
「植物から生物が生まれる…?」
「…あはは、まあそりゃそうなるよな…」
リトの紹介でルルーシュが難しい顔をする。そんなルルーシュにセリーヌは飛びついてみる。
「まう♪」
「…俺に懐いてどうする」
「ま、まう…」
記憶上は死亡してからそこまで時間が経っている感覚がしない。ルルーシュは戸惑っていたが、その顔がセリーヌには怖く映ってしまったのか、セリーヌは離れてしまい、リトの足に隠れた。
「…本意ではなかったが怖がらせてしまったようだ」
「たしかにルルーシュの顔ってちょっと気難しいときって威圧感あるかもしれない…」
それから食卓ついたルルーシュたち。机の上に並べられたのは、温かい湯気を立てる味噌汁に、ふっくらと炊き上がった白米、そして照り焼きハンバーグ。
ブリタニアの宮廷で出される豪奢で洗練された料理とはまるで違う、どこか家庭的で優しい匂い。
空腹であることを半ば忘れていたルルーシュの腹が、かすかに鳴りかけた。それを悟られまいと、彼は咳払いを一つして背筋を伸ばす。
「……美味そうだな」
「でしょ? 美柑のご飯は世界一なんだから!」
ララが鼻を高くして自慢すると、美柑は照れくさそうに笑いながら皿を追加で運んできた。
「はいはい、みんな座って。……あ、ルルーシュさん、お口に合うといいんだけど」
「いや、心遣いに感謝する」
ルルーシュが紳士的に一礼した、その時だった。
空中に突如として光の粒子が収束し、空間がぐにゃりと歪む。
眩い光とともに、リビングの真ん中に二人の少女が姿を現した。
「ただいまー、姉様!リト! 美柑!」
「ふふ、お邪魔しますね、みなさん♪」
ピンク色の髪をツインテールにした小柄な少女と、同じくピンク髪でショートカットの、どこか大人びた雰囲気を纏った少女。
デビルーク星の第二・第三王女──ナナ・アスタ・デビルークと、モモ・ベリア・デビルークだった。
「うわあっ!? ナナにモモ!?」
「もう、入ってくるときは普通に玄関から入ってきてって言ってるのに……」
リトが飛び上がり、美柑は額を押さえる。
ルルーシュは一瞬で眼光を鋭くしたが、すぐさまその動きを止めた。
殺気も敵意もない。ただの「日常的な帰宅」の光景なのだと、彼女たちの表情が物語っていたからだ。
「あれ、リト?その人は誰だ?新しい居候?」
ナナがジト目でルルーシュをまじまじと見つめてきた。少し生意気そうで、素直になれない年相応の少女の瞳だ。
「そんなところかな…ルルーシュは今日、道に迷ってて知り合ったんだよ」
「ふーん……なんか、リトとは大違いで、ずいぶんシュッとした男だな。変な服着てるし」
「ナナ、初対面の人に失礼よ」
モモがくすりと笑いながらナナの頭を軽く叩き、ルルーシュに向かって淑やかに一礼した。
「はじめまして、ルルーシュさん。私はモモ・ベリア・デビルーク。隣の生意気なのが双子の姉のナナです。お姉様がご迷惑をおかけしていませんか?」
「いや、問題ない…申し遅れたが、ルルーシュ・ランペルージだ。こちらこそ、突然押しかけてしまって申し訳ない」
ルルーシュは洗練された仕草で深く一礼を返す。
その無駄のない洗練された立ち振る舞いに、モモは紫色の瞳をわずかに細めた。
(……ただの高校生には見えないわね。身のこなしや視線の配り方……まるで、どこかの国の軍人か王族みたい。私の知る宇宙人の王族とは、少し毛色が違うかしら?)
モモの策略家としての勘が、ルルーシュの纏う「タダ者ではない空気」を察知していた。しかし、彼女はそれをおくびにも出さず、微笑みを崩さない。
「まあ、堅苦しい挨拶は抜きにしましょう。美柑さんのご飯、冷めちゃいますものね」
「あはは……」
リトが苦笑いしながらも人数分の椅子を引き、こうして大人数での賑やかな夕食が始まった。
「……美味いな」
ハンバーグを一口食べたルルーシュは、思わず本音を漏らしていた。
ブリタニアの極上のシェフが作っていた料理とは違う。だが、そこにはアッシュフォード学園の生徒会室で、ナナリーやミレイたちと囲んだ手作りの料理と同じ「温もり」があった。
「本当!? よかったぁ、口に合わなかったらどうしようかと思ったわ」
美柑がホッと胸を撫で下ろす。
「ふん、美柑のご飯はおいしいからね! ルルーシュ、残したら承知しないから!」
ナナが胸を張りながらハンバーグを頬張っていた。
「ナナ、口の周りにソースがついているわよ。まったく、子供なんだから……ふふ、でも賑やかなご飯は美味しいですね、リトさん?」
モモがリトの隣で思わせぶりに微笑んでいると、ララがはしゃぎながらルルーシュに色々話しかける。
「ねえねえルルーシュ! さっきの黒いロボット、あとで私にバズーカとか付けさせてよー!」
キャッキャと無邪気に身を乗り出すと、ルルーシュは「……勘弁してくれ。アレはすでに完成されたシステムだ」と真顔で辞退する。
戦火と策略、憎悪と犠牲に満ちていたルルーシュの人生において、こんなにも騒々しく、何の裏もない平和な食卓は、あまりにも眩しすぎた。
(世界を壊し、世界を創り……その果てに辿り着いたのが、この場所か)
ふと、胸の奥──スザクの剣に貫かれたはずの位置が、かすかに疼く。
あの痛覚は、自分が犯した罪の証。どれだけ平和な日常に溶け込もうとも、己の手が血に染まっているという事実からは一生逃げられない。
(俺は、生き直すのではない。……ただ、生かされたのだ)
死すらも許されず、この異世界へ放り出された意味。
それが神の気まぐれであろうと、 C.C. の悪戯であろうと関係ない。
ならば──今度こそ。
誰も悲しませず、誰の犠牲も払わずに、ただの「ルルーシュ・ランペルージ」として、この日常を守り抜いてみせる。
「ルルーシュさん?どうしたの、固まっちゃって。お代わりあるからね!」
美柑の声に引き戻され、ルルーシュはフッと自嘲気味な笑みを漏らした。
「……いや、なんでもない。お代わりをいただこうか、美柑」
「はーい!」
ワイワイと賑やかな声が響く結城家のリビング。
窓の外には、静かで穏やかな彩南町の夜空が広がっていた。
かつて世界を統治し、世界の憎悪を一身に背負って死んだ少年、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。
彼の止まっていた時計の針が、賑やかでハチャメチャな「第2の人生」という新たな文字盤の上で、今、静かに動き始めたのだった。
賑やかな夕食が終わり、結城家の夜は静かに更けていく。
美柑から「ルルーシュさん、お風呂沸いてるから先に入っていいわよ」と案内され、ルルーシュは脱衣所へと入った。
脱衣所の鏡の前に立ち、アッシュフォードの制服のボタンを一つずつ外していく。
布地を滑り落とし、上半身を露わにした瞬間──
「……っぐ……!?」
ルルーシュは突如として胸を襲った激痛に、鏡の縁を強く掴みしめた。
「はぁ……っ……つ……っ……!」
荒い息が漏れる。
指先で触れたその場所──左胸のやや中央寄り。そこには、一見すると滑らかな肌が広がっているだけだった。傷痕など、どこにも残っていない。
しかし、皮下の奥深くに刻み込まれた「記憶」が、あの日の感触を鮮烈に呼び覚ます。
スザクの抜いた冷徹な剣の感触。
胸腔を貫かれ、肺を満たした血の生温かさ。
そして、耳元で泣き叫んでいたナナリーの「愛しています」という声。
(ゼロ・レクイエム……。俺が……自ら望んだ結末だ……)
指に力を込め、激痛と罪悪感を力任せに押さえつける。
呼吸を整え、ゆっくりと目を開ける。鏡に映る自分の顔は痛々しいほど蒼白だったが、ルルーシュはふうと息を吐き、静かに首を振った。
(気を取り直せ……。俺はもう、死んだ男なのだから)
冷えた身体を温めるべく、ルルーシュは浴室の扉を開け、湯気の満ちる中へと足を踏み入れた。
桶で身体を洗い流し、温かい湯船に浸かろうとした、まさにその時だった。
──ピカッ!!!!
「……!? 敵奇襲──!?」
空間が不自然に歪み、まばゆいピンク色の閃光が浴室全体を包み込んだ。その閃光は元の世界に存在した超破壊核兵器・フレイヤを想起させるものだった。
とっさに戦闘姿勢を取ろうとしたルルーシュの眼前に、上空から「ドサッ」と何かが落ちてくる。
「きゃああっ!?」
ドポンッ!と盛大な水しぶきが上がり、湯船の湯が派手に溢れ出した。
湯煙が少しずつ晴れていく中で、ルルーシュは目を丸くした。
そこにいたのは、ピンク色の髪を濡らした少女──ララ・サタリン・デビルークだった。
しかも、布切れ一枚纏っていない、完全な全裸の状態で。
「ふはっ! げほっ、げほっ……あれ〜? また失敗しちゃったかなぁ……」
ララは鼻をこすりながら無邪気に顔を上げた。
ルルーシュもまた、一切の服を着ていない全裸である。
「……なっ!?」
頭脳明晰な元皇帝の思考回路が、一瞬でフリーズした。
目の前には、十代半ばの少女の生々しく柔らかい肉体。隠すものなど何一つない。
「ら、ララ!? 君は……なぜこんなところに!?」
「あ、ルルーシュ! ごめんごめん、地下のラボで『ぴょんぴょんワープくん』のテストをしてたんだけど、空間計算がズレちゃったみたいでさ〜!」
ララは悪びれる様子もなく湯船の中で立ち上がると、無防備にその肢体を晒した。
「それにしても困ったなぁ。この発明品、転送するときに『服だけ置き去りにしちゃう』クセがあってさ! 着ていた服、ラボに残ったままだよ〜」
「服を……置き去りに……!?」
理屈になっていないトンデモ科学に、ルルーシュの眉間には激しいシワが寄った。
これが噂に聞く「ラッキースケベ」というやつなのか。異世界の常識の破綻ぶりにクラクラしながらも、ルルーシュはとっさに視線を外し、手桶で自分の股間を隠しつつ叫んだ。
「と、とにかく隠せ! 身体を……服を着るんだ!」
「えー? だって服、ラボにあるんだもん。ルルーシュだって裸じゃない」
「俺は今、風呂に入っている最中だ!!」
ハレンチという概念が根本から欠落しているララは、ルルーシュの慌てぶりに首をかしげた。
そして、湯船から上がろうとルルーシュへ歩み寄ったその時──
ララの視線が、ルルーシュの左胸の「何もないはずの場所」に釘付けになった。
「……あれ?」
「む……?」
視線に気づいたルルーシュが、反射的に手で左胸を覆う。
「ルルーシュ……そこ、どうしたの?」
ララはいつもの奔放な笑顔を消し、真面目な顔でルルーシュの胸元を見つめていた。
「どうしたも何も……何もない。傷など──」
「ううん、あるよ」
ララは静かに手を伸ばし、濡れた指先でルルーシュの左胸──心臓の真上の肌にそっと触れた。
ルルーシュは思わず息を呑み、身体を硬直させる。
「目には見えないけど……すっごく深い傷のあとの『波形』が残ってる。痛かったでしょ、これ。……誰かに、大きな剣みたいなもので刺されたの?」
デビルーク星の第一王女にして、宇宙最高峰の天才科学者であるララの眼。
彼女の発明家としての鋭い感性は、ルルーシュの肉体と魂に刻まれた「ゼロ・レクイエムの傷痕」の残滓を、完璧に読み取っていた。
全裸の男女が浴室に佇むという、本来なら極めてハレンチでコミカルな状況。
しかし、いま二人の間に流れている空気は、静まり返るほどにしんみりとしていた。
「……」
ルルーシュは自らの胸に触れるララの温かい指先を見つめ、ゆっくりと目を伏せた。
「……過去の傷だ。俺が受けるべき……報いのようなものさ」
「報い……?」
「俺は、多くの人間を奪い、世界を傷つけた。……この痛みは、その代償だ。消えることもないし、消えていいものでもない」
自嘲気味に呟くルルーシュの声には、隠しきれない重圧と哀しみが滲んでいた。
ララはしばらくルルーシュの顔を見つめていたが、やがてその指先から温かいエネルギーをふわりと込めるようにして、優しく微笑んだ。
「ううん。過去に何があったかは分からないけど……今、ルルーシュはここにいるよ」
「……ララ?」
「私の故郷の科学でも、魂の傷までは直せないけど……ここ(地球)はとってもいいところだよ。リトも、美柑も、みんないい人ばかりだし! だから……ここで過ごす時は、そんなに痛がらないで笑ってほしいな」
真っ直ぐで、悪意も計算も一切ない、純粋な優しさ。
過酷な運命と陰謀の世界を生き抜いてきたルルーシュにとって、その言葉はあまりにも眩しく、そして不思議なほど素直に心へと染み渡っていった。
「……君は、奇妙な奴だな」
ルルーシュは小さく息を吐き、少しだけ口元を緩めた。
「ふふっ、よく言われる〜!」
ケラケラと笑うララ。
そこでようやく、ルルーシュは正気に戻った。
(……待て。俺たちは今、二人とも一切の身包みを剥がされた状態ではないか!?)
冷や汗が吹き出す。
「……ララ。感心している場合ではなかった。早くバスタオルを巻いて脱衣所へ出ろ。リトや美柑に見られたら……どんな誤解を生むか分からん!」
「え〜? 別にリトならいっつも見てるから平気だよ?」
「平気なわけがあるか!! いいから隠れろ!!」
元皇帝の必死の叫びが、湯気の満ちる浴室に虚しく響き渡ったのだった。
風呂上がりの冷えかけた身体に、リトから借りた(少し丈の短い)パジャマを袖に通したルルーシュ。
ララはあの後、無事に「ぴょんぴょんワープくん」の座標修正に成功し、自分の服が残された自室へと帰っていった。
(まったく……とんでもない世界に来てしまったものだ)
濡れた黒髪をタオルで拭いながら、ルルーシュはふと足を止めた。
リビングの電気が消え、静まり返った廊下。ここで一つの現実的な問題が頭をもたげる。
(……俺の寝床はどうする?)
結城家はリトと美柑、そして居候のララたちが暮らす家だ。急に押し掛けた身で、空き部屋や予備の布団など用意されているはずもない。
リビングのソファで横になるという選択肢もあったが、他人の生活空間をこれ以上占有するのは流石に気が引けた。
「……やむを得んか」
ルルーシュは静かに階段を下り、暗がりが広がる地下室へと向かった。
そこには、重厚な静寂の中で鈍い光を放つ愛機──蜃気楼が鎮座している。
(幸い、コクピットはエアコンディショナーのシステムも生きていれば、シートのリクライニングも可能だ。戦場にいた頃を思えば、これほど安全で静かな寝床もない)
自分を守る鉄の城であり、かつての「ゼロ」としての記憶が色濃く残る場所。
ルルーシュがハッチを開け、コクピットへ足をかけようとした──その時だった。
「ふふ……こんな暗いところで寝るつもりですか、ルルーシュさん?」
「っ……!?」
闇の中から、甘く、鈴の転がるような可憐な声が耳元に届いた。
背後を振り向くと、そこにはピンク色のショートヘアを少し揺らし、パステルカラーの可愛らしいネグリジェ姿の少女──モモ・ベリア・デビルークが立っていた。
「モモ……か。こんな夜更けに何の用だ」
ルルーシュは身体を滑り込ませかけるのを止め、警戒心を悟らせないよう静かに問いかけた。
モモはパジャマの裾を指先でちょこんとつまみながら、小悪魔的な笑みを浮かべて一歩近づいてくる。
「用事だなんて、そんな冷たい言い方……。お風呂上がりに、ルルーシュさんが困ったお顔で廊下に立っていたのが見えたものですから。寝る場所、お困りでしょう?」
「……まあな。だが、この機体のコクピットなら何の問題もない。慣れている」
「そんな固いシートじゃ、体を壊してしまいますわ」
モモは紫色の瞳を潤ませるようにしてルルーシュを見上げると、その口元に添えた指先から、ゾクッとするほど甘い吐息を漏らした。
「……ルルーシュさんさえよければ、私の布団を使っていただいても構いませんのよ……? ♡」
「……なに?」
「ふふ、二人で入るには、ちょっと狭いかもしれませんけれど……ルルーシュさんのような素敵で紳士的なお方なら、私、喜んでお部屋にお招きしますのに……♡」
すっと顔を近づけてくるモモ。
十代半ばとは思えない妖艶さと、完璧に計算された策略家としての「仕掛け」。
もし相手が年相応の男子高校生──例えばリトであれば、一瞬で顔を真っ赤にしてパニックを起こし、鼻血を吹いて倒れていただろう。
だが──目の前に立つ男は、神聖ブリタニア帝国の元皇帝にして、数々の謀略と心理戦を勝ち抜いてきた男、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアだった。
ルルーシュは眉ひとつ動かさず、冷徹なまでに冷静な瞳でモモの顔を見つめ返した。
「……申し出はありがたいが、辞退させてもらおう」
「あら……? 私の魅力では、不足かしら?」
モモは少し意外そうに首をかしげ、いたずらっぽく微笑む。
「そういう問題ではない。見知らぬ男を自分の部屋に招き入れるなど、いくら好意のポーズであっても軽率だ。君の身の安全のためにも、そして何より──」
ルルーシュはフッと自嘲気味な笑みを浮かべ、淡々と背を向けた。
「俺は、他人の温もりを無条件に享受できるほど、清廉な生き方をしてきていないのでね」
「……」
その一言に込められた、あまりにも深く、冷たい拒絶と過去の重み。
モモの計算し尽くされた小悪魔的な笑みが、一瞬だけピタリと止まった。
(……本当に、なびかないのね。それどころか、心の奥底に踏み込ませないための『完璧な壁』……)
モモはルルーシュの背中に向けて、感心したように、そして少し悔しそうにため息をついた。
「……ふふ、振られてしまいましたわね。リトさんとは、まったく違うタイプのお方……」
「なんとでも言え。……夜風は冷える。君も早く部屋へ戻って寝るといい」
「ええ、そうさせていただきますわ。……おやすみなさい、ルルーシュさん。良い夢を」
モモは淑やかに一礼すると、今度は本物の微笑みを残して、静かに地下室を去っていった。
「……ふう」
ルルーシュは一人になると、大きく息を吐き出して蜃気楼のコクピットへと入っていった。
ハッチが重厚な音を立てて閉まり、外部の音が完全に遮断される。
操縦席のシートを少し倒し、天井の暗闇を見上げる。
(……甘い誘惑か。あの少女、見た目以上に食えない策士だな。俺を試す素振りでさえあった…分かりやすすぎる)
だが、そうやって頭脳戦の真似事をする余裕すら、この世界の「日常」の一部なのだろう。
身体を横たえると、再び左胸の奥がじんわりと疼いた。
(……良い夢、か)
死に損ないの自分に、果たしてどんな夢を見る資格があるのか。
だが、ララが言っていた言葉──『ここで過ごす時は、笑ってほしい』という無垢な願いが、頭の片隅で微かに温かさを残していた。
ルルーシュは静かに瞼を閉じた。
サクラダイトリアクターのかすかな駆動音と、冷たい鉄の匂いに包まれながら──異世界での最初の夜は、ゆっくりと深みへ落ちていったのだった。
ルルーシュは多分童貞のままゼロレクイエムで死んで行ったと思ってたけど、世界を征服してからゼロレクイエムまでの2ヶ月の間にC.C.とやることやってた説というのも見て、たしかになぁ…それもありえなく無いかも、と思いました( * . .)"