コードギアス 騒動のルルーシュ 〜 Lelouch of ToLOVE Ru   作:elimin

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男子達のジェラシーが溶けていく回も予定してるので、ルルーシュモテモテターンそろそろ一区切りつくかもとは思ってる
流石にずっと黄色い声ばっか浴びるのもルルーシュは疲れちゃうだろうし

あとリトとの共存をちゃんとしておきたいからね( * . .)"


STAGE 7 甘き洗礼

夜の静寂が結城家を包み込む頃。

 

自室のベッドで横になっていたモモ・ベリア・デビルークは、薄暗い部屋の中で自身のモニター画面を眺めながら、ふっと小さく吐息を漏らした。

端末の画面に映し出されているのは、結城家の敷地内に展開させた超小型観察ドローンからの映像──そして、そこに入浴を終えて自室へと戻っていくルルーシュの姿だった。

 

「……ふふ、本当に面白いお方ですね」

 

モモはベッドの上で頬杖をつき、長い尻尾をパタパタと揺らしながら、画面の中のルルーシュを紫色の瞳でじっくりと観察していた。

 

デビルークの第3王女であるモモは、幼い頃から数多の異星人や王権に携わる人々を見てきた。相手の表情の裏、隠された意図、そして真の資質を見抜く眼力には長けている自負がある。

だからこそ、昨日この家にやってきたルルーシュ・ランペルージという存在は、モモの知的好奇心を強烈に刺激してやまなかった。

 

(姿形は地球人のそれと変わりませんけれど……醸し出す気配があまりにも異質。それに、あの立ち振る舞い……洗練され尽くした王族のような優雅さと、冷徹なまでの観察眼……)

 

モモはふと、今日の昼間に耳にした学校での噂──そして、昨日リトから聞いた「校長の件」を思い出した。

 

(そういえば……暴走していたあの校長先生が一瞬で大人しくなり、校内で女子生徒を追い回さなくなったと聞きました…それも、ルルーシュさんが一言命令しただけで……)

 

一般的な地球人の解釈であれば「迫力に押された」「心理学の応用」などで片付けられるのかもしれない。

だが、全宇宙の超科学技術と異能の存在、そして何より自分の持つ「植物との意思疎通能力」を知るモモにとって、それは単なる偶然やハッタリには思えなかった。

 

(あの時、ルルーシュさんの脳波か……あるいは精神的な波長に、一瞬だけ奇妙な出力の跳ね上がり(スパイク)が観測されていましたね。催眠術……? いいえ、精神干渉系の特殊な力……?)

 

もちろん、それが「絶対遵守のギアス」という呪われた王の力であることなど、知る由もない。

ギアスという言葉も、その真の恐ろしさも、この世界ではまだリトとルルーシュの間だけの不文律な秘密だ。

しかし、モモの鋭い洞察力は、ルルーシュが「ただの知的な高校生」などではないという真実に、確実に迫りつつあった。

 

「美柑さんに対しても、完璧すぎる紳士的な謝罪で収めてしまいましたし……ふふ、リトさんとは全く違うタイプの『おたらし様』かもしれませんね♡」

 

モモは口元に密やかで小悪魔的な笑みを浮かべた。

恐怖や警戒ではない。

全宇宙の覇王の娘として、そして知謀を好む少女として、この「底の知れない美しき居候」がこれからどんな風にこの平穏な日常を揺らし、あるいはこの日常に染まっていくのか──。

 

「楽しませていただきますね、ルルーシュさん……♡」

 

モニターをパタリと閉じ、モモは楽しげに目を細めながら、静かにシーツへと潜り込んだ。

 

 

 

 

ほてった身体を冷まし、着替えを済ませてリビングへ戻ったルルーシュは、部屋の奥で画面に釘付けになっているララの背中を目にした。

 

テレビのモニターには、色鮮やかな衣装に身を包んだ少女が怪人を相手にド派手なエフェクトとともにポーズを決めている映像が映し出されている。

 

『なんでもかんでも燃やして解決!爆熱少女・マジカルキョーコ、炎(フレイム)!』

 

「わぁ〜!キョーコちゃん、今日もカッコいい〜っ!」

 

ララはソファの上で瞳をキラキラと輝かせ、画面に合わせて一緒におもちゃのステッキを振り回していた。

 

ルルーシュはそっと近づき、腕を組みながら画面を覗き込んだ。

 

「……ララ。それは何だ?」

 

「あ! ルルーシュ! これね、『マジカルキョーコ』っていうんだよ! 地球のテレビ番組なんだけど、すっごく面白いの!」

 

ララは嬉しそうにソファーをポンポンと叩き、ルルーシュに隣へ座るよう促した。ルルーシュは少し躊躇いながらも、静かにララの隣へと腰を下ろした。

画面の中では、主人公のキョーコが突如現れた巨大な怪人に対し、必殺技の呪文を唱えている。

 

(……魔法少女、か。この世界のサブカルチャーにおける代表的なジャンルだな)

 

ルルーシュはアッシュフォード学園時代、生徒会室でミレイ会長たちが盛り上がっていた雑学やアニメの知識を脳内で瞬時に検索・照合した。

 

「……なるほど。仮面や変装によって正体を隠し、特殊な能力を用いて悪と戦うヒーロー構造……。演出は過剰だが、プロパガンダ的観点から見れば、視聴者に親しみやすさと勧善懲悪のカタルシスを与える巧妙な構成だな」

 

「え? ぷろぱがんだ……?」

 

難解な単語に首をかしげるララ。ルルーシュは「いや、こちらの話だ」と軽く首を振った。

 

だが、画面の中でマジカルキョーコが放つ「マジカルフレイム」という技で敵が派手にに爆発するシーンを見て、ルルーシュは真面目な顔で深く考察を深めていった。

 

(……正体を隠して戦うという点においては、俺が演じた『ゼロ』と同義。だが、ゼロが必要としたのは恐怖と圧倒的なカリスマ、そして緻密な盤上の計算だった。対して、この『マジカルキョーコ』が提示するのは、純粋な好意と情操への働きかけ……)

 

真剣な眼差しで「マジカルキョーコ」を見つめるルルーシュ。

その横顔は、まるでシュナイゼルとのチェス対局や、黒の騎士団の戦術を練っている時と同等レベルの集中力を醸し出していた。

 

「ねえねえ、ルルーシュもキョーコちゃん好きになったの?」

 

ララが無邪気に顔を覗き込んでくる。

ルルーシュはふっと正気に戻り、咳払いを一つして姿勢を正した。

 

「……いや。好悪の問題ではない。ただ、この世界の文化的背景と、人々の思想形成に与える影響について考えていただけだ」

 

「むー、難しいこと言ってる〜! でもね、キョーコちゃんはすっごく強くて優しいんだよ! わたしもあんな風に、みんなを笑顔にできる発明品を作りたいな〜!」

 

無邪気に笑うララの言葉。

ルルーシュは一瞬目を見張り、やがて柔らかく口元を緩めた。

 

「……フッ、そうか。……良い目標だな」

 

仮面を被り、己を偽り、世界を血で染め上げた自分とは真逆の存在。

けれど、この平和な世界で誰かを笑顔にするために輝く「正義の味方」を、無邪気に眩しがる少女の姿。

ルルーシュは、特撮番組の賑やかなBGMが流れるリビングで、ララと共に静かにテレビの画面を見つめ続けていた。

 

(…しかしカメラアングルといい一部の演出といい、些か子供向けにしては攻めた内容ではないか…?)

 

ルルーシュは訝しんだ。なんせパンツ丸見えのカットとかもあったりしたのだから。

 

 

 

 

 

 

リビングでの賑やかな時間を終え、夜もすっかり更けた頃。

ルルーシュは結城に増設されていた地下室、隠蔽されたスペースに鎮座する愛機──『蜃気楼』へと足を運んでいた。

 

重厚な装甲が月光を浴びて鈍く光を反射している。ハッチを開け、使い慣れたシートに身を沈めると、革の匂いとメカニカルな静寂が身を包んだ。

 

(……やはり、ここが一番落ち着くな)

 

ふっと長く息を吐き、コクピットの背もたれに体重を預ける。

ふかふかのベッドよりも、極限の戦場を共にしてきたこの狭い空間の方が、今の自分にとっては余計な緊張を解きほぐせる場所だった。

シートを倒し、まどろみへと落ちかけようとした──その時。

 

『……ちょっと。こんなところで何やってんだ?』

 

コクピットの通信モニターがフッと点灯し、外部マイクを通じて聞き覚えのある生意気な声が響いた。

ハッチを少し開けて外を覗くと、そこにはパジャマ姿のナナ・アスタ・デビルークが、小脇に枕を抱え、不機嫌そうに唇を尖らせて立っていた。

 

「……ナナか。こんな夜遅くにどうした?」

 

ルルーシュがシートから身を起こすと、ナナはフンと鼻を鳴らし、あからさまにジト目を向けてきた。

 

「どうした? じゃないっての! 部屋に戻ろうとしたら、アンタがこんなゴツい機械の中に入っていくのが見えたから見に来てあげたまでだ!」

 

「そうか。気遣いなら無用だ。俺はここで休むだけだからな」

 

「だ、誰が気遣いなんて言ったんだッ! 勘違いすんなよな!」

 

ナナはバッと顔を赤くして叫ぶと、ぷいっと横を向いた。

 

「ただ……こんな冷たい金属の塊の中で寝るなんて、変な奴だなぁって思っただけだ! 結城家にはちゃんと部屋もあるのに、居心地でも悪いのか…?アタシの部屋貸すか?」

 

「いや、部屋は快適だよ。……ただ、元々こういう場所で過ごすことが多かったものでね。この狭さと静けさが、俺には少し馴染み深いだけだ」

 

淡々と答えるルルーシュの言葉に、ナナは一瞬だけ言葉を詰まらせた。

 

不機嫌そうな表情の裏で、その紫色の瞳にほんのわずかな戸惑いと、戸惑いに隠しきれない好奇心が浮かぶ。

 

(……こんな機械の中で過ごしてきた……? アンタ、一体どんな生活をしてきたんだ……)

 

ナナは抱き枕をぎゅっと抱き直し、少しだけ声のトーンを落とした。

 

「……ふん。変なの。……まあ、姉上やリトが『ルルーシュは良い奴だ』って言ってるから、追い出したりはしないけどさ」

 

「フッ、それは光栄だな。デビルークの王女殿下に認められるとは」

 

「べ、別に認めたわけじゃないッ! もう、調子に乗るなぁ!」

 

慌てて突っかかるナナの姿に、ルルーシュはどこか可笑しそうに目を細めた。

強がりで、素直になれなくて、けれど根底には他者への気遣いが見え隠れする少女。

 

「……まあいい。風邪でもひかれたら美柑が心配するんだから、寒くなったらちゃんと部屋に戻りな!」

 

「ああ、善処しよう。……おやすみ、ナナ」

 

「……っ。お、おやすみなさい!」

 

ナナは最後にもう一度フンと鼻を鳴らすと、パタパタと素早い足取りで廊下の奥へと去っていった。

遠ざかる少女の足音を聞きながら、ルルーシュは再びシートへと深く身を沈めた。

 

(ナナ、か……。あいつもまた、不器用だが優しい心の持ち主だな)

 

静まり返った蜃気楼のコクピット。

夜風の音と機体の微かな駆動音だけが響く中で、ルルーシュはゆっくりと瞼を閉じ、異世界での穏やかな眠りへとついていった。

 

 

 

 

翌朝──。

 

蜃気楼のコクピットを包む、ひんやりとした朝の静けさ。

だが、目を覚ましたルルーシュ・ランペルージの意識は、覚醒と同時に尋常ではない「異常事態」を察知していた。

 

(……重い。胸から腹にかけて、妙な重量感と柔らかい圧迫感がある……)

 

まるでナイトメアの過重力訓練でも受けているかのような重み。

そして、鼻腔をくすぐる甘く可憐なフローラルの香りと、肌を伝うあまりにもダイレクトなぬくもり。

 

ルルーシュはゆっくりと瞼を開いた。

 

「……!?」

 

視界に飛び込んできたのは──黄金色の朝日に照らされた、眩いばかりの桃色の髪。

そして、布の一切れすら身にまとっていない、生まれ落ちたままの完璧な姿で、己の胸の上にスヤスヤと抱きついて眠るララ・サタリン・デビルークの姿だった。

 

(な────ッ!?)

 

超天才参謀の脳内CPUが、一瞬でオーバーヒートを起こした。

 

(全裸……!? なぜだ!? なぜララが蜃気楼のコクピットに!? しかもなぜ何も着ていないッ!? どのような物理的・力学的経路を辿れば、夜間に完全密閉された操縦席に全裸のデビルーク王女が侵入する事態が発生するのだッ!?)

 

超高速で事象の解析を試みるルルーシュ。

昨夜の記憶をリフレインする。

ハッチは確実にロックした。外部からの侵入形跡は……待て、彼女はデビルークの超科学者。「ぴょんぴょんワープくん」あたりの暴走か、あるいは寝ぼけてワープ装置を作動させたか!?

 

さらに最悪なのは、現在の体勢であった。

 

シートに仰向けになるルルーシュの上に、ララが乗っかる格好。ちょっとでも動けば、その肌と肌がダイレクトに触れ合い、この世界の「物理法則(ラッキースケベ)」が発動して地獄の破局を迎えるのは目に見えている。

 

(落ち着け……落ち着けルルーシュ・ヴィ・ブリタニア! 慌てるな、これは盤上の詰みではない! 戦術的撤退および状況の無力化を模索しろ……!)

 

冷や汗を滝のように流しながら、心拍数を必死に抑え込もうとするルルーシュ。

しかし、その時──。

 

「んみゅ……むにゃむにゃ……ルルーシュのにおい……あったかい……」

 

「っ……!?」

 

ララが寝返りを打ち、すりすりとルルーシュの胸元に頬を寄せてきた。

その瞬間、彼女の豊かな胸の柔らかさと、スベスベの肌の感触がダイレクトに伝わり、ルルーシュの理性の防壁に大亀裂が入る。顔を押さえ込みながらルルーシュはどうにか耐えていた。

 

(ぐ……っ! これが……これが結城リトの日常だというのか……!? 万死に値する過酷さだぞッ!!)

 

なんとかララを起こさずに、ミリ単位の精度で脱出を試みようと、ルルーシュが指先一本ずつ慎重に動かし始めた──その瞬間。

 

『おーい! ルルーシュ〜! 朝飯できたぞー! って、蜃気楼のハッチが開いて……』

 

ガシャコン。

外から無邪気にハッチを開けたのは、朝の起こし係を担当させられた結城リトだった。

そして、朝日が差し込むコクピット内部の「光景」を目にしたリト。

 

「……え」

 

ルルーシュの上に、全裸で幸せそうに抱きつくララ。

滝のような冷や汗をかきながら、右手だけをシュールに挙げた格好で静止しているルルーシュ。

三人の間に、完璧なまでの静寂が訪れた。

 

「……リト」

 

ルルーシュは微動だにせず、声のトーンだけを極限まで低くして静かに告げた。

 

「俺の計算によれば、確率論的に言ってもこれは0.0001%の不可抗力による事故──」

 

「……ラ、ララぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!?!?!?」

 

「人の話を聞けぇぇッ!!」

 

リトの大絶叫が、結城家の地下庭園に虚しくこだました。

 

「ちょっとリト!? 朝から何を叫んで……って、なにやってるのよぉぉッ!?」

 

「まあ……ルルーシュさんたら、朝からお姉様とそんな大胆な……♡」

 

「アンタたち、朝っぱらから何やってんのよーーーッ!!」

 

声を聞きつけて駆けつけてきた美柑、モモ、そしてナナ。

美柑は顔を真っ赤にして目を逸らし、モモは目を輝かせてクスクス笑い、ナナは抱き枕を投げつけんばかりの勢いで咆哮する。

 

「ん〜……? みんな、朝から賑やかだねぇ〜……」

 

全員の悲鳴でようやく目を覚ましたララが、むくっと起き上がり、全裸のまま無邪気に目を擦った。

 

「あ、ルルーシュおはよ〜! ルルーシュの胸、すごく暖かくてよく眠れたよ〜!」

 

「ララ……頼むから、まず服を着てくれ……っ!!」

 

かつて世界を震撼させ、神をも騙した男・ルルーシュ・ランペルージ。

異世界の圧倒的な「ギャグ補正」と「ラッキースケベの物理法則」の前には、如何なる智謀も虚しく撃破されるのであった。

 

 

 

 

 

「……ハァ……」

 

結城家の玄関前。

彩南高校の緑の長ズボンに白いワイシャツを着付けたルルーシュは、今や絶滅危惧種レベルの深い溜息を吐き出し、片手で頭を抱えていた。

 

「ご、ごめんねルルーシュ……! ララが夜中に『ぴょんぴょんワープくん改』の実験をして、そのまま服だけワープさせて寝ぼけちゃったらしくて……っ!」

 

隣でカバンを握りしめたリトが、冷や汗をダラダラと流しながら全力で申し訳なさそうに頭を下げている。

 

「いや……いい。原因が物理的な事故(ワープ装置の暴走)であると判明した以上、お前を責める筋合いはない……」

 

ルルーシュは頭痛をこらえるように眉間を指で揉みほぐした。

かつてシュナイゼルとのチェス対局でも、ブラックリベリオンの極限状態でも、これほど脳の疲労を感じたことはなかった。

 

(なんなんだ、この家は……! 策略や伏線など何一つ存在しない。ただ純粋な『ハプニング』という名の暴力が、完璧な計算を嘲笑うかのように襲いかかってくる……!)

 

「あ〜っ! リト、ルルーシュ〜! 待ってよ〜っ!」

 

玄関から、元気にカバンを抱えたララが走ってきた。もちろん、今はちゃんと彩南高校の女子制服を着ている。

 

「まったく、お姉様ったら朝から大騒ぎさせて……。ルルーシュさんも、災難でしたね♡」

 

モモがくすくすと小悪魔的な笑みを浮かべながらついてきて、

 

「ふん! アンタもアンタよルルーシュ! なんで速攻で叩き起こさないのよバカ!」

 

ナナがバツの悪そうな顔でぷいっと横を向く。

 

「……起こそうとしたさ。だが、ミリ単位の接触面積を計算している最中にリトが入ってきたのだ」

 

「うっ……俺のせいかよ!?」

 

がっくりと肩を落とすリト。

そんな不条理極まりない朝の狂騒曲を引きずったまま、ルルーシュたちは登校路へと歩みを進めた。

 

 

 

 

 

「あ、結城君!ララさん!ルルーシュ君、おはよう!」

 

途中の交差点で、西連寺春菜と合流する。

爽やかな朝の光の中で微笑む春菜の姿に、リトは「お、おはよう西連寺……!」と一瞬硬直しつつ応じる。

 

「おはよう、西連寺さん。今日も健やかで何よりだ」

 

ルルーシュは瞬時に「完璧な紳士」の仮面を張り直し、爽やかな微笑みを返した。朝の全裸騒動など微塵も感じさせない完璧な立ち振る舞い。

だが、学校に到着した瞬間、その穏やかな空気は一変した。

 

「あーっ! イケメン転校生ルルーシュ君だーっ!」

 

「ルルーシュく〜ん! 今日もお写真撮らせて〜!」

 

校門を潜った途端、待機していた女子生徒たちが雪崩のように押し寄せてきた。

昨日一日で「知的で優しく、校長すら一言で撃退したミステリアスなイケメン」としてクラスどころか全校に噂が広まり、朝の校門前はちょっとしたアイドルのお出迎え状態となっていたのだ。

 

「みんな、朝から元気だな。だが、他の生徒の通行の妨げになる。廊下に立ち止まるのはやめよう」

 

ルルーシュが洗練された動作で優しく促すと、「キャーッ!」「注意の仕方も素敵〜!」と女子たちが悶絶する。

 

一方で──。

 

「……見たか猿山。今日も今日とて大人気だぞあいつ……」

 

「許せん……! 朝から女子に囲まれて爽やかな顔しやがって! 俺たちの青春を返せルルーシュ・ランペルージ!!」

 

靴箱の前で血の涙を流す猿山ケンイチと男子生徒たち。

 

「ちょっと! 朝から教室前で騒がないの! 通行の邪魔よ!」

 

そこへ、腕章を巻き、凛とした表情の古手川唯が仁王立ちで現れた。

女子生徒たちを散らし、怒気を含んだ瞳でルルーシュへと歩み寄ってくる。

 

「ルルーシュ君! あなたもあなたよ! 自分が目立つって自覚があるなら、もっとコソコソ登校しなさい!」

 

「……不条理だな、古手川さん。俺はただ普通に歩いてきただけなのだが?」

 

ルルーシュが可笑しそうに肩をすくめると、唯はその完璧な横顔と──耳に届く自分にとって耳馴染みのある「妹の面影を持つ声」に、一瞬だけ胸を詰まらせた。

 

(く……っ! なんでそんなに余裕そうなのよ……! 朝から男前すぎるのよハレンチな……!)

 

「とにかく! 風紀を乱すような真似は許さないんだからね!」

 

真っ赤な顔でプイッと横を向く唯。

朝からの全裸ラッキースケベの疲労、女子生徒からの熱烈な歓迎、男子からの怨嗟の視線、そして風紀委員からの理不尽な怒り。

ルルーシュは自席に腰を下ろし、教壇に立つヨボヨボの骨川先生を眺めながら、再び深く深く溜息をつくのだった。

 

(……黒の騎士団を率いてブリタニア帝国と戦っていた頃の方が、遥かに精神的にはラクだった気がするな……)

 

絶対遵守の王権をも跳ね返す「日常の混沌」の中で、ルルーシュ・ランペルージの学校生活2日目が、本格的にスタートするのだった。




ラッキースケベという単語は、どうやら「機動戦士ガンダムSEED DESTINY(2004)」第1話で、シン・アスカがステラ・ルーシェの胸を誤って触ってしまったときに、同期のヨウラン・ケント(CV:杉田智和さん)がシンを茶化す際に放ったセリフが初めてらしい( * . .)"
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