100億人に一人の才能 作:キモいよ
クチナシの身体には1万前後の蟻が暮らしており、その数は日々増減している。
戦闘で死ぬだけではなく、繁殖が行われ、卵が産み落とされているわけだ。
クチナシの感覚では、その卵の一つに妙に巨大なものが混じったという印象だった。
蟻に巨大になれと命じているのだ。大きな卵が発生するのはおかしくない。より大きな卵からより大きな蟻が生まれ、成長すれば今の蟻よりも数段大きいサイズが見込めるだろう。それ自体は正しい過程であり喜ぶべきことだ。
が、卵の場所が少し気になった。クチナシの体内から少し外れた場所。クチナシの体内から発生させた木でグルグル巻きにした、ネルーの内部。特に損傷が酷かった下腹部の付近。長い〇んちんの近くでもある。
そこは念入りに木と蟻で修復している。だから蟻が卵を産んでもおかしくはない。だが、ネルーの肉体を修復している蟻に、繁殖はするなと命じていたはずだった。ゆえに、そこに卵があるなら命令違反である。
もっとも、蟻に非があるとは限らない。クチナシは自分や蟻がクジラであると思い込もうとしていた。その指示を聞いた肉体修復用の蟻が、自分を繁殖用のメスだと思い込んでしまってもおかしくはない。ただ、確率からするとその蟻が巨大卵を産み落とすのは変だと感じるだけだ。いずれにせよ、疑いよりも結果の方が大事だ。せっかくの巨大なタマゴだ。大切に育てたい。
クチナシはちん〇んを通して巨大なタマゴをネルーから剥ぎ取り自分の体内に運ぶ。そして、壊れないように繊細にコントロールしながらも、巨大化するよう豊潤な栄養を与え続けた。
一週間後、卵の殻は破られる。だがそこから現れた幼体は蟻の姿をしていなかった。マッコウクジラに似ているようなよく分からない生物の姿。そして、酷く弱々しく見えた。そこでネルーとの会話を思い出す。
遺伝子を混ぜ合わせた生物をキメラと言う。ライオンと虎程度の近さなら大丈夫だが、遺伝子が異なり過ぎるキメラは受精したとしても成長が難しい。
この、蟻に見えない謎の幼体は、キメラなのではないだろうか。蟻の遺伝子に、いつの間にかクジラやアザラシの遺伝子が混ざってしまった。混ぜる気はなかったが、和を用いて自分を巨大クジラや巨木だと思い込ませていたのだから、肉体に変化が起き、遺伝子に変化が起きてもおかしくない。
仮にキメラだとしたら、この弱々しさは説明できる。クジラの特徴を持つ幼体が蟻のやり方で成長できるはずがない。受精はしても成長が難しいとはこういう意味だったのだろうか。このままで衰弱していく一方だ。
あくまで頭部の大きいクジラのように見える何かというだけで、クジラと決まったわけではない。だが、幼体は明らかに自力で呼吸ができず液体を求めていた。
謎の幼体が求める環境などクチナシは知らない。だが、考える暇もない。クチナシの本能は女性の胎内が正解だと答えている。それに従うしかなかった。
謎の幼体はち〇ちんを通して再びネルーの胎内へ送られる。
「うっ。熱いっ!? なに、この感覚……!?」
ネルーが再び覚醒する。いや、まだ眠ったままだ。目覚めたつもりだがまた夢の世界だった。全身が木に包まれていて身動きが取れない。その中で、お腹に熱いものが入ってくる。うごめいている。
「医学部の姉ちゃんごめん、また知識を貸してほしいんだけど」
「また君? ちょっと、私今苦しいからそれどころじゃないんだけど。動けないんだけど」
「たぶん姉ちゃんが言ってたキメラってやつができちゃったんだけど、卵から出てすぐに死にそうでさあ。たぶん呼吸できてないから栄養でいっぱいの液体で満たすべきだと思うんだよね。教授はどうやって液体作ってたの?」
「それは知らないわ。羊水を調べていたみたいだけど」
「羊水って何?」
「母体の子宮内で胎児を包み込んでいる液体よ」
「母親ってことは、姉ちゃんもそれ出せる?」
「今は出ないわよ。着床しないと」
「着床って?」
「なんで夢の中で子供にこんな説明をしないといけないのかしら。私は今苦しいのよ?」
「時間が無いから喋ってね」
「は……?」
子供の全身から触手のような物が無数に現れ、ネルーの全身に突き刺さる。
「んぎゃあああああああああああああああああああ!!???」
触手は全身に、特に脳に突き刺さっていた。抗えない。無理矢理屈服させられる。
「着床って何?」
「アッ、アッ。受精卵が、子宮内膜に、アッ、潜り込む……」
「医学部の姉ちゃんの子宮にキメラをくっつけたら羊水が出る?」
「アッ、アッ……。分からない……。キメラの幼体が、胚膜が形成し、その後……アッ。出るかもしれない……ッ。アッ♡」
クチナシは幼体を子宮の内側にくっつけ、タマゴの白身のような質感の膜で覆う。
「これで待っておけば反応するの?」
「アッ、アッ……。分からない……ッ。アッ」
「ちょっと本能を刺激してみるかな」
――振――
バクン、バクン、バクン。
「アアウッ! あうっ! あうっ! はうっ!?」
一定の間隔で胎内に無理矢理何かを送り込まれる。子宮が膨らみ、萎む、膨らみ、萎むと繰り返す。その振動にネルーの中の何かが共鳴する。そして、液体がじゅわりと染み出した気がした。
「これが羊水ってことでいいのかな? ありがとう姉ちゃん」
謎の触手から解放される。
「はひゅーっ、はひゅーっ、はひゅーっ。アッ、アッ♡」
クチナシはネルーの胎内に羊水らしきものを確認した。
和によってそれを分析。メスの蟻、メスのアザラシ、イルカなどから、似た物質を集め、クチナシの体内で似た液体を再現する。そうして作った液体を、ち〇ちんを通してネルーの胎内に送る。
幼体はようやく安定したように見えた。