100億人に一人の才能 作:キモいよ
大規模雇用計画。仕事の多くは農業、林業、鉱山業、道路工事のような肉体労働。機材と給与代わりの食事と水を発注する。が、優秀な人材については試験を実施し、知性に優れた人材には高度な教育を施し機械設計に進ませる。身体能力に優れた人材は軍人として訓練を受けさせる。概ねそのような内容だ。
クチナシは言われた通りに書類を確認しながらも不満が溜まっていた。
「あの川のゴミ掃除を仕事にしないの?」
「綺麗ごとでは世の中は動かないわ」
「あんなに無駄にお風呂が好きなのに?」
カミーラは苛立ちを見せた。
「経済というのは効率よ。掃除をした方が効率がいい状況になれば掃除するわよ」
「川が綺麗になると人間自体の生命力が上がって結局は人材の底上げにつながると思うけど」
「そう思うなら自分で計画書を書いてハルケンブルグに見せなさい」
「カミーラは見ないの?」
「こういう損得勘定はあいつに任せるのが一番よ」
「そっか。カミーラは読んでも計算ができないんだ」
カリ。カミーラが巨大なち〇んちんをつねった。
「ち〇ちんってそんなぺたぺた触るもんじゃないと思うんだけど」
「あらそう? 邪魔だから払おうかと思って」
書類整理が終わるとカミーラは眠ってしまった。クチナシのオーラで体力は回復しても脳には休憩が必要だったのだろう。手下達もクタクタで眠り始める。
クチナシはカミーラのパソコンを動かし、ハンター試験について検索する。今年はザバン市で開かれる、カキン王国で開かれる、オチマ連邦で開かれる、ジャポンで開かれる、などなど情報が錯乱している。この中から正しい情報を選ぶのも試験なのだろうか。過去の開催地を調べると、大雑把な都市だけ指定して厳密な場所を指定しないのが通例であるようだ。また、ハンター協会の公式サイトにヒントがあるらしい。
ハンター協会の公式サイトを検索して入る。ブログをやっている。「今日は新鮮な魚がもらえました。漁師の皆さんありがとう」という文言と共に写真が。どこかの港。画像検索をするとザバン市であるようだ。これがザバン市開催という意味なのだろうか。
クチナシであれば和を使って心を読むことができる。少しズルいが試験会場に辿り着けないというのは興が醒める。事前にハンター協会に行って心を読んでしまうことも念頭に入れる。
クチナシは女達や動物達も試験に誘うことを考える。ハンターライセンスは非常に価値が高く個人の証明書として使えるらしいのだ。不可持民や肉であることを不安に思っているモルナやカミィにはいい薬になるだろう。動物は、そんな証明書を必要しているわけではないが、クチナシとしてはハンターに狩られる側の動物がハンターとして狩る側になるのはおもしろい気がしていた。と言っても、調べるとハンター試験の受験資格として人またはそれに準ずる知的生命体と書いてあった。魔獣はよくても動物は受験資格を認められないのかもしれない。
ハンター試験はこの辺でいいだろう。一度パソコンを閉じ、大規模雇用計画に川と海の清掃をねじ込む方法を考える。直前でハンター試験について調べてしまったせいか、それにちなんだ方法が頭に浮かんでしまった。
「今年のハンター試験はカキン王国の近海で開かれるらしいぞ」
「試験の内容は海のゴミ拾い」
「一番多く集めた人が合格できるってことかな」
「優れたハンターは自然に愛される前に自然を愛さなければならないとネテロ会長が言ってた」
「ダブルハンターのジン=フリークスが海でゴミ拾いしていたの見たぞ」
「やっぱり今年の試験はゴミ拾いだな」
「時代は持続可能な開発。ハンターも時代に追いついてきたか」
ハンター協会のブログにあった魚の写真を混ぜながら、このような文言をいろいろなサイトに投稿する。毎年数百万人が応募し、試験会場に辿り着くことさえ困難だというハンター試験。ならば、偽情報をバラまいて体力自慢の狩人達に掃除させてしまえばいいのだ。
不可持民についてもだ。例えば「ゴミを最も多く拾った人はカミーラの私設兵になれる」こんな嘘をバラまくのはどうだろう。パソコンで文書を作成し、私室で寝るカミーラの寝顔を証拠画像として貼り付ける。全員が信じなくてもいい。全体の何割かが信じれば世界は動き始める。ついでにたたら場のような燃焼施設の作り方についても文書を作る。作った文書をコピー機で印刷。後はばら撒くだけだ。
ぺちぺちとカミーラの頬を叩く。カミーラはけだるげに瞼を上げた。
「おーい。修行はまだか」
「疲れてんのよ。明日にしなさい。しっ、しっ」
本人から許しが出たので離宮を後にする。
―――和―――
鳥たちがクチナシの元に集まってくる。
さあ、バラまけ。このビラを。
鳥たちはゴミ拾いの誤情報が書かれた文書を加え、飛び立っていく。後は何が釣れるか待つだけだ。
モルナとの定期的な修行。そこでもハンター試験を話題に出した。
「一緒に受けよう。ハンター試験。ハンターライセンスが最高級の身分証明書として使えるらしいぞ」
「それはいいけど、私は元マフィアです。犯罪者が受けると試験会場でプロハンターに捕まってしまうのでは?」
「隠して受ければ? 身分証明書がないんだら分からないでしょ」
「……ブラックジョークにしては趣味が悪いわ」
「そういうのを気にしなくなるために試験に受かればいいんだよ」
「私は……、受けます……!」
「よしきた」
「私は遠慮するわ。自然保護ってハンターとは相反する概念だと思うから」
「お好きにどうぞ。強制はしないよ」
カミィは受けて、ミネルバは断る。モルナは悩んでいるようだった。
「ハンター試験ってチームプレーは可能なのかしら?」
「もちろん」
「うちの子から何人か、どれくらい戦えるか試してみたかったのよね……」
「じゃあ全員で受けようか」
「一応、声をかけてみるわ」
モルナは参加に前向きでいてくれるらしかった。
「ミネルバ。ここに残る君に頼みがあるんだけど」
「何かしら」
「実はウソのハンター試験でここのゴミ拾いをさせることになっていて。荒事はクジラ達に任せるけど怪我人が出たりしたら適当に看病しておいて」
「……」
ミネルバは嫌そうな顔をした。だが、性格的に怪我人を放っておきはしないだろう。
その後、寝顔を撮影したことがカミーラにバレて銃で撃たれたり、早めにハンター試験の会場を下見に来た人とゴミ拾いしたり、騙されたと知って襲い掛かってきた人と戦闘したり、ハンター協会に行って心を読んでザバン市が会場だと認識しつつも、順調に修行の日々を過ごす。
そして、とうとうハンター試験当日となった。
「ふぅっ、ここがザバン市か」
「ごほっ、ごほっ。疲れましたぁ」
クチナシは泳いでザバン市にやってきた。背中に小さなカミィを背負っている。裸では外聞が悪いので水着を着ている。なお木製の巨大ち〇ちんは相変わらず丸出しだった。クチナシの後ろから5頭のアザラシ、3匹の巨大イカ、2匹の巨大タコが続く。モルナは仲間達と別の移動法で会場を目指すらしい。
通常、どのルートでザバン市に入った場合でも、隠れ試験官に出会えるように試験官は配置されている。たが、泳いでくると予想していた試験官はいなかった。クチナシはまず試験官を探すことから始める。
―――和―――
クチナシの、広大で穏やか過ぎるオーラが街を包み込む。念能力者は自然に反応してしまう。クチナシは相手の居場所を知る。
「怪しいのが何人かいるな。強そうなやつから当たってみるか」
「ドキドキしますね……!」
試験官らしき男は表面では平穏を装っていた。だが裏側で焦っているのは明白だった。
「嬢ちゃん達旅行者かい?」
「いえ、ハンター試験を受けようと思いまして」
「今年の試験会場は離島だよ。まずは港の船に乗ってね」
「ありがとうございます」
カミィはお辞儀をして海岸に戻ろうとするがクチナシは動かなかった。
「あの辺にオーラが使える人はいなかったよ。まあ、俺の和に反応せず隠しているだけの可能性もあるけど」
「……」
この試験官は、間違ってこのルートに来た受験者を追い返すのが役割。仕事をこなしているだけで悪気があって嘘を教えているわけではないのだ。だが、相手はオーラを使える。しかも格上。少し恐くなってしまった。
「そうなの? 自分も人に聞いて知っているだけだからよく分からないなあ。他を当たってみるといいかもね」
「そうするよ」
クチナシは手当たり次第に強そうな人に声をかけていく。婆がいた。
「ドキドキ二択クイーーーーズ!」
「声デカッ!?」
「びっくりしましたね」
「お前の母親と恋人が悪党に捕まりどちらかしか助けられない。どちらを助けるのが正解か」
「ええっ!? どちらかしか!? 正解なんてあるんですか!?」
「うーん。若い方が将来性があるとかそういう話かな。恋人で」
「正解!」
「えっ! すごいですクチナシ君!」
「そこのバスに乗って試験会場に行くがよい」
「はいはい」
婆をガン無視して強そうな試験官を探す。
「きゃぁああ! 誰かぁああ!」
「近づくな! 近づくとこいつを殺す!」
その後、人質にされていた女を救ったり。
「お礼にあなたの命をちょうだい!」
「そんな!? クチナシ君!?」
お礼にと家に誘われた場所で襲われたり。
「えっ!? 今ので首の骨が折れたの!? ひ弱すぎる!?」
「やっぱり試験官だったか」
「首が360度回った!?」
「今の俺はゴムだから」
「ゴムならば何をやってもいいと!?」
死んだフリをして試験官をからかったり。
「おめぇ、何のためにハンターになりたいんだ?」
「私は……! 自分に自信がほしくって!」
「暇つぶし、ひつまぶし」
「舐めんなよ。もう試験は始まってるんだぜ? てめぇが命をかけてまでハンターになろうって意志、隠すんじゃねえよ」
「えっ、命がけだったんだ。ごめんなさい、死ぬと思ってなかった。ハンターには別になりたいと思ってないんだよ。本当に暇つぶしで試験をゲームとして楽しみたいって気持ちだったんだ」
「ふんっ。てめぇにゃ覚悟が足んねえな。出直してこい。ハンター試験失格だ」
ハンターを目指す理由を答えただけで失格扱いされたり。
「あの道の先が試験会場だよ。早い者勝ちだよ」
「クチナシ君! 急ぎましょう!」
「へいへい」
偽物の道を指示されて、あえて素直についていき。
「ぎゃああああああ!? 橋が壊れたぁあああ!」
「助けてくれぇえええええ、え?」
「クチナシ君! すごいです!」
他の受験と一緒に落下して、死にそうになっている受験生を助けたり。
「あの嵐の海を超えて帰ってこられた者だけがハンター試験を受けられる。距離は往復20kmだ」
「そんな……。無茶です……」
「ならば今回は諦めるといい。何もハンター試験は今年だけじゃない」
「じゃ、泳いでくるよ」
嵐の中を泳いで帰還するという無理難題をあえて受けてこなしたりした。
クチナシは既に心理テストで不合格を受けているらしく、いつまで経っても正解の道筋を教えてもらえなかった。むしろ、クチナシを追い出そうとどんどん無理難題がエスカレートしていった。
最後には試験官は諦めろとしか言わなくなった。
「今年のハンター試験は諦めた方がいいかも。来年も受けられるよ。君達には将来がある!」
「ちょっとお身体に触りますね」
「は? きゃぁああああああああああ!?」
しょうがないので、強制的な和を使って相手の心を読んだ。本当の試験会場は定食屋の地下らしい。