シルフィとフィッツ 作:シルフィ超かわいい
ルディに逢える!
ああ本当に楽しみだ!
世界全てが鮮やかに視える!思わず踊り出してしまいそうだ!
今のルディはどんなだろうか。
えっと、わたしが少し前に成人したから同い年もルディも今年で15歳になるはず。
成人したルディ…きっとかっこいいだろうなぁ〜
最後に別れたのは7歳の時だけど、その時からルディはほんとにかっこよかった。
それに実績もすごい。
『泥沼』のルーデウス、弱冠13歳にして北方大地でA級冒険者とし活動、僅か数年で魔法三大国中に名を轟かせた天才魔術師。
はぐれ竜の単騎討伐なんて正に御伽話の主人公みたいだ!
当時からルディのことはほんとうにすごいと思っていたし、尊敬していた。
けどアリエル様の所で働き始めて今まで知らない世界を知る中で、ルディの凄さに比較がついた。
ルディは規格外だった、王国の全てが集まると言ってもいい王宮にもルディの様な事が出来る人はいなかった。
ルディは、ほんとのほんとにとんでもなくすごかったのだ!
そんな人に2人っきりで魔術を教えて貰っていたなんて、当時はわたしはなんて贅沢だったんだろう。
考えるだけで悶えてしまいそうだ。
「うへへ〜」
声が出てしまった。
隣でアリエル様が微笑んでいる、ルークも苦笑いだ。
恥ずかしい、顔が赤くなってるのが自分でも分かる。
思えば、そんな2人とも随分長い付き合いになった。
ルディと一緒にいた時間よりも、ずっと長い時間共にいる。
彼らには大いなる目的がある、生半可な事では到達し得ない目標が。
現状は良いとは言えない、手段を選んでいる場合ではないのだ。
それにもかかわらず、わたしたちの再会を全面的に賛同してくれた。
作戦が失敗するリスクがあるにも関わらずだ。
とても嬉しく思う。
彼らのことは大好きだ。
彼らはみんなすごい人たちだから少しおこがましいと思うけど、それでも親友だと胸を張って言える。
そんな人たちがわたしの事を仲間と思って、とても頼りにしてくれている。
わたしに出来ることは少ないけど、それでも全力で協力したいと思う、邪魔するなんてもってのほかだ。
でも、こと今回に関しては譲れる気がしなかった。
だからとても嬉しい。
反対されたら、わたしはどうしたらいいか分かんなくなっただろうから。
でも一つ不満な事がある。
彼だ。
関係性を形容するのが難しい、彼だ
なんというか、彼はルディに対して冷たいのだ。
露骨に貶したりはしないけれど、否定的で、そんな彼を懸想するわたしに対しても批判的だ。
これが他の誰がなら納得できた「ああ、きっとルディのことをよく知らないんだろう」って
でもこと彼に関しては納得できない。
彼はルディのことをわたしと同じくらいよく知っている筈なのだ!
それなのにどうしてルディの事となるとこうも頑ななんだ。
普段はむしろわたしに肯定的で、アドバイスはあれど否定なんてもっての外という感じなのに…
こんな事は初めてだ。
本当にどうしてだろう?
わたしはてっきり彼もルディのことが好いているものだと思っていたから、ひどく困惑した。
それもあって、あれから彼とあまり話せていない。
う〜ん。
まあ、彼もルディと会えば考えも変わるだろう、何事も会ってみないことにはね。
それより今は髪の手入れだ。
今、塗ってもらっているオイルは以前アリエル様が送ってくれた物だ。
なんだかきっかけがなくてずっと取っておいていたけど、使うなら今しかないだろう。
わたしは自分の髪にあまり自信がない。
それが原因でイジメられたこともあるし、今はこんなんだ。
アリエル様は綺麗だと褒めてくれるけど、ルディは長い方が好きみたいだし…
こんなことしても…
ううん、今はアリエル様の言葉を信じていよう。
こんなんだけどちょっとでも綺麗と思って欲しいしね。
「ふふ、最近のシルフィはなんだかずっと上の空ですね」
「あっごめんなさい。相談にのってもらうばかりか髪の手入れまでして貰ってるのに」
まあ、これはアリエル様がやりたいと言って始めたことだけど。
でも、わたしなんかのために時間を取ってくれているのだ。
それなのに上の空など、失礼にも程がある。
「いいのですよ。
しかし、私のシルフィをそこまで虜にするとは余程の方なのですね、ルーデウスという方は。
なんだか妬けてしまいます」
落ち込ませてしまった!
どっどうしよう…
なっなんて言えば、えっと、えっと。
「ア、アリエル様!
わたしは、その、アリエル様のことも、大好きですよ?」
「まあ!嬉しいことを言ってくださいますね。
でも、最近はあまり相手してくださいませんしねぇ…
夜伽にも応じてくれませんし。」
「いや、でも、えっと、それは…」
それを言われると弱い。
少し前のわたしはアリエル様に甘えっぱなしだった。
獣族の発情期の時期なんか、ほぼ毎晩といっていいレベルで寝室にお邪魔していた。
でもルディの名前を見て以来、わたしは彼女と一度もそういう事をやっていない。
別にわたしもアレが嫌というわけではないんだけど、ただ、ルディに逢おうとしてる時にそういう事をするのはなんか嫌だった。
でも考えてみれば、不誠実が過ぎた。
今まで散々好き勝手しておいていらなくなったらポイなんて、まるでルークみたいだ。
それを他でもないアリエル様にするなんて…
やはり応じた方が良いんだろうか。
でも気持ちが向いていないのに応じるのは、それこそ不誠実では無いだろうか?
いや、以前アリエル様が「それはそれで唆る」みたいな事を言っていた様な…
いや、でも、う〜ん…
「ああ、ごめんなさい少し揶揄っただけで、困らせるつもりはなかったのです。
私は無理矢理するのもされるのも大好きですが、シルフィの嫌がることはしたくないのです」
揶揄われていたらしい、少し頬を膨らませてそっぽを向く。
別に怒っている訳じゃない、むしろ立場を考えれば不敬もいいところだ。
でも、わたしたちは友達なんだからいいのだ。
それに友達にやられっぱなしというのも嫌だ
「…この間はやめてって言ってもやめてくれなかったくせに」
「あら?とても気持ちよさそうでしたし、てっきり誘ってるものかとばかり。
それに、どうしても嫌な時な噛みついてと言ったではないですか」
「そんなことできるわけないでしょう!?跡が残ったらどうするんですか!」
ほんとになんて事をわたしに求めるのだ、この『お姫様』は!?
わたしの立場としても彼女の立場としても、これは決してバレてはいけない秘め事なのだ。
隣の部屋に声が漏れているとルークに言われた時は肝が冷えた。
結局それは揶揄っていただけで、他の部屋にも漏れていた訳ではなかったのだけど…
あの時は本当に恥ずかしかった、寝室と隣の部屋とを分ける壁は護衛の為に薄く造ってあるのだ、それをわたしはすっかり忘れていた。
アリエル様は多分わざと黙っていた、わたしの後ろでニマニマしていたし。
思い返してもなんだかずっとやらっぱなしだな、揶揄われてばっかりだ。
「あら、それなら心配入りませんよ?アスラにはバレないように隠す技法はいくらでもあります。
それにもしそうなればシルフィが治してくれるでしょ?
それとも…本当に嫌だったのですか…」
「うっ。いや、その、確かに気持ちよかったけど、でもわたしはもっとこう、ゆっくりとしたのが…」
「おほん。」
「あっ」「あら?」
ルークが咳払いをした。
ここはアリエル様の自室、つまり男子禁制の女子寮だ。
しかし王族や貴族の護衛としてなら立ち入りが許可されている。
普段は寝室に続く前の部屋で待機しているのだけれど、今日は新学期も近いということで今後の方針の確認も兼ねて寝室に入っていた。
そう入って「いた」。
ずっといたのだ、わたしの頭の中からすっぽ抜けていただけで。
「ッ〜〜〜!!!!」
さっきの比ではない量の血液が顔に上るのを感じながら、わたしは意識を手放した。
・・・
「もう、揶揄いすぎですよ」
「あら、ごめんなさい。シルフィがあまりにも可愛いものですから」
僕の言葉にアリエル様は微笑みと共にそう返した。
「しかし改めて聞いても凄まじいですね。
シルフィの想い人は」
声色が変わった。ここからが本題なのだろう、気がつくとルークもそばに寄っていた。
「5歳で聖級、7歳で家庭教師、そしてはぐれ竜を単騎で、ですか。
まあシルフィの証言もありますしその経歴を今更疑いはしませんが、気になるのはそれ以外ですね。」
「ええ、噂が綺麗過ぎる。
情報統制をかけているのではと疑うほどです。」
なぜルークも居るのかと少し思ったが、どうやら彼も同じ思いだったようだ。
「今回はそのことについて、他でもないあなた聞きたかったのですよ、フィッツ。
シルフィから少し聞きましたが、なんでもルーデウスを疑っているとか」
なるほど、さっきの茶番はその為だったと。
相変わらず食えない人だ。
「意図は分かりますが、悪趣味ですよ」
「あら?失礼しますねぇ、あれは本心からですよ。
むしろあなたの手前セーブしているのですよ?本当はもっとしたいくらい。」
この人は相変わらず…
「救いになっているのも事実ですからあまり止めませんでしたけど、
ほんとに依存しやすい子なんですから気をつけてくださいよ?」
「相変わらず過保護ですねぇ。
彼女はあなたが思っているよりずっと強い子です、大丈夫ですよ。
それに今回のことは、あなたの方がシルフィに聞かれたくなさそうだと感じましたので」
この辺りの察しの良さは流石王族といったところか。
いや、僕が分かり易いだけか。
外面は作れるようになったけれど、どうにも身内にはすぐバレてしまう。
「それでフィッツ。あなたはどう思っているのですか?
ルーデウスはやはり信用ならないと?」
僕の態度をみれば、そう思うのも当然だろう。
でも違うのだ、彼が信用できない訳ではない。
「いえ、そうではないのです。
ルデッ、ルーデウスは信用して良いと思います。
実力についてはほぼ事実です。
僕は実際に目にしていますから保証できます。
人柄は…別れたのが7歳の時ですので断言は出来ませんが、余程歪んでない限り大丈夫かと。
噂についても母親のゼニスさんを探しているようですし、それで意図して流しているのなら説明がつきます」
「ふむ、あなたがそこまで言うとは、
ならば懸念無しとして本格的に引き入れに行っても良いかもしれませんね。
しかし、そうなるとあなたは何を懸念しているのですか?」
何を懸念しているか、そんなもの決まっている。
「シルフィです、少し浮かれすぎだ。
アリエル様だって気がついているでしょう?彼女は少し抜けているところはあるけれど、あんなお花畑じゃない」
彼女だ、今までにないほど浮かれまくっている彼女だ。
「確かに、最近の彼女はとても元気で、とても可愛いですね。
でも良いではありませんか、せっかく想い人がみつかったのですから。喜び過ぎぐらいでちょうど良いのです。
それに以前はあなたも元気付けるきっかけを探していたではありませんか?」
「いえ、僕も彼女が元気になったことは嬉しく思っています」
僕も彼女が嬉しそうに笑っているのを見て、良かったと思っている。
でもだからこそなのだ。
「しかしこの元気はルーデウスありきです。
彼女は彼と8年も会っていないのですよ?
恋人がいるかもしれない、世帯を持っている可能性もある、もしかしたら彼女のことは綺麗さっぱり忘れていて、全く気づいてもられないかも知れない。
そんな可能性が彼女の頭の中にはカケラもないのです。
もし本当のことになれば、以前以上に塞ぎ込みかねません!」
僕がそう言うとアリエル様は少し考えるそぶりをした後に口を開いた。
「ふむ。確かにそうなれば多少塞ぎ込んだりするかも知れませんが、大丈夫ですよ。
ルーデウスが結婚しているという話は聞きませんし、それに先ほども言いましたがあの子は強い子です。ねぇルーク」
「ええ、その通りかと。
フィッツ、お前は彼女を過小評価し過ぎだ。
お前には実感があまりないかも知れないがターミネートボアを吹き飛ばし俺たちを救ったのはまぎれもなくシルフィなんだぞ。
今、彼女がお前の庇護下にいるは事実だか、だからって過保護がすぎるんじゃないか?
お前は俺の女の扱い方に苦言を呈してたじゃないか、お前のそれは俺より数段度がきついぞ。
俺が言うのもなんだが、もうちょっと彼女を信じて自由にやらせてやれ」
それを言われると言葉を紡げなくなる。
前にも似たようなことを言われたが、僕はそんなに重いだろうか。
「それにこれは仮定の仮定に過ぎません、心配し過ぎですよ。
あなた自身では自覚しにくいかも知れませんが、無詠唱魔術を使える白髪のエルフとなれば世界に2人といません。
忘れたくても忘れられないでしょう。
大丈夫ですよ。」
アリエル様は僕の両手を包みながら優しく言ってくれた。
しかしそこなのだ、そこが最大の問題なのだ。
でもこれを言うことは出来ない。
彼女が一番隠したいことを、僕が勝手に話すわけにはいかないのだから。
結局僕は不安を抱えたままその日を迎えることとなった、
そして、予感は的中した。
アリ×シル、ガールズラブ要素はこれです。
物語の本筋にはあまり関係ありませんし、ノイズになるかとも思いましたが、入れました。
理由は筆者が幸せになれるからです。
百合はどんな蕾であれ、咲くべきなのです。