俺だけ使える成長システムで湘北を全国制覇に導きたい 作:should
誕生日の朝
「翔真、1歳のお誕生日おめでとう!」
母親の声と一緒に、ろうそくが一本だけ立った小さなケーキが目の前に置かれた。
「あー、うー」
意味のある言葉は、まだ出ない。頬にクリームをつけて手を叩くだけだ。それでも両親はそれだけで大喜びだった。
「ちゃんとハイハイもできるし、つかまり立ちもできる。本当に丈夫な子だわ」
「ああ。こいつずっと動いてるし、将来スポーツ万能になるぞ」
父親は本気の顔でそう言った。
壁にはバスケットボール。
本棚にはバスケ雑誌がぎっしりだ。
その日の夕方。
父親が棚を整理していたとき、古い一冊がぱさりと俺の目の前に落ちた。
『月刊バスケットボール 高校生特集 海南大附属高校、初のインターハイ出場!』
表紙は少し色褪せていた。
だが、深い緑のユニフォームと、その上に踊る文字ははっきり読めた。
「おっ、それは今年の夏に出た号だ。今年、海南が初めて全国に行ったんだ。神奈川の高校が出るのが嬉しくて、すぐ買ったんだよ」
(……海南、大附属?)
その瞬間、頭の奥で、何かがカチリと鳴った。
海南。神奈川。インターハイ。
そして、湘北。
(ここ……スラムダンクの世界だ!)
前世の記憶が一気になだれ込んできた。
夜中に読み返した最終巻。何度も泣いた山王戦。桜木花道の成長。
(俺、あの世界に転生したのか……!)
【 条件を満たしました 】 【 育成システムを起動します 】
視界の中央に、半透明の板が浮かび上がった。
【 ようこそ、佐藤翔真さん 】
【 あなたには『育成画面』が授けられました 】
【 覚醒前の記録を反映します…… 】
「あうっ!?」
【 反映完了 】
佐藤翔真 1歳 身長 76cm OVR 25
■ フィニッシュ
クローズショット 25 ドライビングレイアップ 25
ドライビングダンク 25 スタンディングダンク 25
ポストコントロール 25
■ シューティング
ミドルレンジ 25 スリーポイント 25
フリースロー 25
■ プレイメイク
パス精度 25 ボールハンドル 25
ボール保持スピード 25
■ ディフェンス
インサイドD 25 ペリメーターD 25
スティール 25 ブロック 25
ヘルプD IQ 25
■ リバウンド
オフェンスReb 25 ディフェンスReb 25
■ フィジカル
スピード 27 アジリティ 26
パワー 25 ジャンプ力 25
スタミナ 26
特殊能力
■フィニッシュ
なし
■シューティング
なし
■プレイメイク
なし
■ディフェンス
なし
■リバウンド
なし
■フィジカル
・晩成型
・怪我しにくい体 ★NEW
「あうあうあうー!?(なんだこれ!?)」
画面の隅に、小さなメッセージが表示された。
【 特殊能力『怪我しにくい体』を獲得しました 】
【 獲得条件:1歳まで一度も怪我をしないこと …… 達成済み 】
(……マジか)
寝返りも、ハイハイも、つかまり立ちも。
俺は何も知らないまま、一度も怪我をせずに一年を過ごしていたらしい。
(桜木の背中、三井の膝、赤木の足首。スポーツでいちばん厄介な敵は怪我だ。それが最初から解決してるなんて)
思わずため息が出た。安堵のため息だ。
もうひとつ、画面が切り替わる。
【 覚醒前の経験点を集計しました 】
【 寝返り:+3 ハイハイ:+5 つかまり立ち:+8 …… 】
【 合計:経験点 132 】
「うー!(結構貯まってる!)」
続けて、特殊能力の一覧が表示された。
■ フィニッシュ
フィニッシュ○ (要:経験点 150)
■ シューティング
シュート○ (要:経験点 150)
■ プレイメイク
ドリブル○ (要:経験点 150)
■ ディフェンス
ディフェンス○ (要:経験点 150)
■ リバウンド
リバウンド○ (要:経験点 150)
■ フィジカル
ジャンプ力○ (要:経験点 150)
スタミナ回復○ (要:経験点 120)
高身長 (要:経験点 150)
……
(欲しいものだらけだ。でも足りない。どれを取るかじっくり選ばないと)
原作を知る俺はこの世界で何が必要かを分かっている。
花道は、リバウンドとジャンプ、そして「ど素人」の伸びしろ。
流川は、圧倒的なオフェンス。
(全国制覇するには、俺が何を伸ばすかが重要だ)
窓の外は、夕焼けだった。
父親が拾い上げた雑誌を、そっと本棚に戻す。
その背表紙を見つめながら、俺は小さな拳を握りしめた。
俺は新しいおもちゃに夢中になった。
「あー……うー……(やってやる)」
言葉にならない声は、部屋の温かい空気に、静かに溶けていった。