俺だけ使える成長システムで湘北を全国制覇に導きたい 作:should
目標は、1240点。
期間は、約2か月。
条件は、毎日「新しい何か」に挑戦すること。
(やることは、単純だ。新しい行動を、片っ端から試す。それだけだ)
そう思っていた時期が、俺にもありました。
最初の一週間は、順調だった。
絵本のページをめくる。
【 絵本のページめくり:+2 】
積み木を一つ持ち上げる。
【 積み木を持ち上げた:+2 】
スプーンを握る。
【 スプーンを握った:+2 】
母親は、目を細めている。
「翔真、最近、本当によく動くわね」
(順調だ。これは、いける)
一週間の集計を見た。
【 今週の経験点:126点 】
(1日平均18点。目標のペースには、ぴったりだ)
だが、ここから先が、地獄だった。
二週目。
同じ行動の効率が、どんどん落ちてきた。
絵本のめくりは、もう+0。
積み木の持ち上げも、+0。
スプーンも、+0。
(新しい行動が、もうネタ切れだ)
俺は、部屋を見回した。
使えそうなものは、ないか。
まだ試していないことは、ないか。
視線の先に、階段があった。
(階段……!)
一段目に、足をかけてみる。
「あー、うー」
そのとき、背後から声がした。
「翔真ー!! ダメー!!」
ぐいっと抱え上げられた。
【 階段への挑戦:失敗 】
【 経験点:+0 】
母親の顔は、真っ青だった。
「危ないでしょ! 絶対に登っちゃダメ!」
(すみません……)
その日のうちに、階段の入口に、頑丈な柵が取り付けられた。
(階段、封鎖……)
翌日は、積み木に挑戦した。
ただ持ち上げるのは、もうやり尽くした。
今度は、積み上げる。
一段目。
二段目。
三段目。
【 積み木を積む:2段 +3 】
(よし、いける。次は四段目だ)
そっと、四つ目を載せる。
ぐらっ。
ガラガラガラガラ。
【 積み木タワー:崩壊 】
【 経験点:+0 】
「あうー……(惜しい……)」
もう一度、挑戦する。
三段目まで積んで、四段目。
ぐらっ。
ガラガラガラ。
【 積み木タワー:崩壊 】
【 経験点:+0 】
三回目、四回目、五回目。
崩壊。
崩壊。
崩壊。
その様子を、母親は、腹を抱えて笑いながら見ていた。
「あはは、翔真、また倒れた」
【 母親の笑い声:+1(承認ボーナス) 】
(笑われて経験点が入るのは、どうなんだ……)
三日目。
父親が、ボールを渡してくれた。
「翔真、投げてみろ」
(投げる。これは、新しい行動だ)
両手で持って、思いきり前に押し出す。
ぽとっ。
自分の足の前に、落ちた。
【 ボールを投げた:失敗 】
【 経験点:+0 】
「もう一回だ」
今度は、もっと強く。
腕を振り上げて、振り下ろす。
ボールは、天井に向かって飛び上がった。
そして、ちょうど父親が置いていたコーヒーカップの上に、落下した。
ガシャーン。
「うおおおおお! 俺のコーヒー!!」
【 ボールを投げた:飛距離 1.5m 】
【 経験点:+4 】
【 器物損壊:-1(叱責ペナルティ) 】
(プラスマイナスで、+3。でも、なんだか申し訳ない)
父親は、コーヒーまみれになりながら、笑っていた。
「お前、パワーがあるな。将来、いい投手になるぞ」
【 親から褒められた:+1 】
(いや、バスケがしたいんだ、俺は)
一か月が経った。
【 累計経験点:562点 】
(ペースは、悪くない。あと、4週間ちょっと)
ここで、俺は、大きな発見をした。
隣の家の犬、ポチだ。
散歩中のポチが、リビングの窓越しに、俺を見つめている。
(あれは、新しい相手だ。生き物と触れ合う経験は、点数が高いはず)
母親に抱かれて、庭に出る。
ポチが、尻尾を振りながら、近づいてきた。
「あー、うー」
手を伸ばす。
ポチが、鼻を近づける。
そして。
べろん。
顔面を、丸ごと舐められた。
【 犬に舐められた:+0 】
【 感想:生ぬるい 】
「あら、ポチ、仲良くなったのね」
(仲良く……なった……のか……?)
ただ、この経験は、無駄ではなかった。
【 動物との触れ合い:初回ボーナス +6 】
(そこは、ちゃんとくれるのか)
さらに、翔真は、母親のティッシュ箱に目をつけた。
(ティッシュを引っ張り出すのは、赤ちゃんの定番行動だ。何か点がもらえるかもしれない)
一枚、引く。
二枚、引く。
三枚、四枚、五枚。
気づいたら、床が、ティッシュの海になっていた。
【 ティッシュ引き出し:+2 】
【 ティッシュ全出し達成:+3 】
【 母親の叱責:-2 】
「翔真ー!!! 何やってるのー!!!」
(ごめんなさい、ごめんなさい)
総合で、+3。
でも、心の中は、-100だった。
そんな騒動の連続で、二か月が過ぎた。
失敗も、たくさんした。
砂場で砂を食べて、+0。
父親の真似をして腕立て伏せをしようとして、体重を支えきれず潰れて、+0。
ジャンプしたつもりで膝を曲げただけで、+0。
洗濯物の山に突っ込んで、埋もれて、+0。
【 失敗した行動の総数:47回 】
【 経験点を得られなかった回数:47回 】
(うん。知ってた)
だが、失敗の合間に、確実に成功もあった。
父親のバスケ中継を、膝の上で一緒に見て、観戦経験ボーナス。
歩いて父親に飛びついて、抱きしめられるボーナス。
母親の歌に合わせて手を叩く、リズムボーナス。
そして、ある夜。
【 累計経験点:1240点 】
「あうっ!?」
(1240点! 届いた!)
俺は、思わず、ベビーベッドの上で、ガッツポーズをした。
「あうあうあうー!!」
隣の部屋から、母親の声が聞こえた。
「翔真、夜中に大声出しちゃダメよー」
(すみません……)
俺は、小声で、画面を開いた。
身体設計の項目を、一つずつ、確認する。
【 最終身長 +17cm:680点を使用しますか? 】
「はい」
【 最終身長:181cm → 198cm 】
【 連動効果:ウィングスパン 186cm → 203cm 】
【 連動効果:股下 77cm → 84cm 】
【 連動効果:足の大きさ 27.5cm → 29.0cm 】
続けて、ウィングスパンに、320点を使う。
【 ウィングスパン:203cm → 211cm 】
股下に、160点を使う。
【 股下:84cm → 92cm 】
最後に、手の大きさ。
80点。
【 手の大きさ:小 → 大 】
すべてを終えたとき、画面には、こう表示されていた。
■身体設計(現在の予測値)
最終身長 198cm
ウィングスパン 211cm
股下 92cm
手の大きさ 大
頭の大きさ 小
足の大きさ 29.0cm
【 身体設計:目標値に到達しました 】
【 残り経験点:0点 】
(できた……!)
思わず、両手を天井に突き上げた。
長かった。
本当に、長かった。
階段で怒られ、積み木に笑われ、ティッシュで叱られ、犬に顔を舐められた、あの2か月。
それでも、俺の体は、ジョ○ダン級の設計図になった。
(これで、体の土台は完成だ。あとは、この体を、どう使うかだ)
窓の外に、満月が浮かんでいた。
【 現在の目標 】
【 ① 特殊能力を厳選する 】
【 ② 湘北高校に入学する 】
【 ③ 花道たちと、全国制覇する 】
「あー……うー……(次は、いよいよ技術だ)」
隣から、父親の寝言が聞こえてきた。
「翔真ぁ……コーヒー……」
(すみません。本当に、すみません)
俺は、小さく笑って、目を閉じた。