「ああああ」による「ああああ」のための「ああああ」の…… そして伝説へ…   作:社畜から無職へ

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 完全に自己満足と悪乗りの産物です。




「ああああ」による「ああああ」のための「ああああ」の……

 

 

 

 

第一章 勇者「ああああ」という呪詛

 

 

始まりは、いつだって同じだった。

「おお、勇者ああああよ! 今こそ覚醒の時!」

まばゆい大理石の玉座の間。ステンドグラスから差し込む神聖な光。王冠を戴いた老王が、仰々しく両腕を広げて神託により与えられた伝統のその名を呼ぶ。

その瞬間、少年の脳を割るような激痛が襲った。

(ああああ、ああああ、ああああ、ああああッ!!)

それは、自分の名前ではなかった。否、名前であると同時に、名などではない。

少年を(勇者)という記号へと書き変える世界の呪詛だった。

だが今回はイレギュラーが起きた、起こってしまった。

偶然か、必然か、それは判らない。

だが、この世界線では起こってしまった。

脳裏に濁流のように流れ込んでくるのは、無数の「世界線」の記憶。数え切れないほどの並行世界で、まったく同じように王の前に立たされ、まったく同じ言葉を投げかけられた、無限回を超える「自分」の絶望の残響だった。

ある世界線の「ああああ」は、最初の村の近くで狼に噛み殺された。

ある世界線の「ああああ」は、毒の沼地に足をとられ、誰に看取られることもなく息絶えた。

ある世界線の「ああああ」は、魔王の圧倒的な力の前に五体を消し飛ばされた。

そして言われるのだ。

「ああああよ、死んでしまうとは情けない」

ただ一言、その一言で生き返らされ、死地に送り返される。

無限地獄の始まりだった。

今回も彼に与えられたものは、一様に同じ物だった。

「これを受け取るが良い。旅の支度金、五十ゴールド。そして、神聖なる木より切り出されし『ひのきのぼう』じゃ。これで世界を救い、魔王を討ち果たしてまいれ!」

王の足元に転がされたのは、数枚の薄汚れた銅貨と、そこら辺の庭木をへし折っただけのただの木の棒。

世界を滅ぼそうとする魔王の軍勢は、数億の魔物と、天を焦がす暗黒魔法を操るという。それに対して、国を挙げての支援が、たったこれだけ。

あまりの理不尽。あまりの滑稽さ。

「……く、くく……あははははは!」

少年は俯いたまま、狂ったように笑い出した。

膝をつき、頭を抱え、涙を流しながら笑う。その瞳は、もはや澄んだ若者のそれではない。無限回の凄惨な死を擬似体験し、そのすべてにおいて「世界」から、そして「神」から捨て石として扱われたことへの、底なしの怨嗟が宿っていた。

「……おい、どうしたのだ勇者よ? 神託により選ばれし者よ?」

王が不審そうに眉をひそめる。衛兵たちが槍の柄を鳴らす。

少年――「ああああ」は、ゆっくりと立ち上がった。地面に転がっていた『ひのきのぼう』を拾い上げる。

木肌が手のひらに食い込む。本来なら、これでスライムを叩き、数ゴールドを稼ぎ、少しずつ鋼の剣を買い求める……そんな果てしない「徒労」を強いられるはずだった。

だが、今の「ああああ」には、無限回の並行世界の自分が培った、戦闘の経験、魔力の練り方、世界の構造そのものの知識が、すべて彼一人に同期していた。

「五十ゴールド、そしてひのきのぼう……」

ああああは呟く。その声は低く、玉座の間全体の空気を凍りつかせた。

「十分だ。これで、すべてを終わらせてやる」

「……何? おお、やる気になってくれたか。では行くが良い、勇者よ!」

何も分かっていない愚王の声を背に、ああああは踵を返した。

世界を救う旅ではない。

これは、この理不尽な「劇」を強いたすべての存在への、終わりの始まりの旅だ。

 

 

 

 

第二章 魔王より魔王なるもの

 

 

城を出たああああは、一切の迷いなく荒野を突き進んだ。

普通の勇者なら、まずは近くの村で情報収集をし、弱い魔物を倒して練度を上げる。だが、彼は違った。

立ちはだかる魔物の群れ。それらを前に、ああああはただ『ひのきのぼう』を構える。

「【デリート】」

本来なら、歴史上数人しか扱えないはずの禁忌の神聖魔術。それを、ただの木の棒の先端から放った。

奔流する純白の閃光が、大地ごと魔物の群れを跡形もなく消し去る。ひのきのぼうは、あまりの高負荷に一瞬で珪化しかけたが、ああああが放つ膨大な魔力によって無理やりその形状を維持していた。

「足りない。まだ、魂の飢えが満たされない」

彼は魔物を屠るたび、その命をただ殺すのではなく、自らの糧として魂ごと喰らい尽くした。

数え切れない世界線の勇者たちが、魔物に貪り食われた。その復讐だ。今度は勇者が、世界のすべてを貪る番だった。

旅を始めてわずか数日。

ああああが通り過ぎた土地には、草一本残らなかった。魔物の巣窟は文字通りのクレーターとなり、彼を拒もうとした険しい山脈は、一振りの剣圧によって真っ二つに叩き割られた。

人々は彼を「勇者」と呼んで恐怖した。いや、それはもはや救世主を呼ぶ声ではない。現れたあらゆるものを滅ぼし尽くす、歩く災厄。魔王軍さえも、東から迫る「それ」の恐怖に戦慄し、防衛線を下げざるを得なかった。

「あれが勇者だと? 馬鹿な、あれは……あれは我ら以上の『魔』だ!」

魔王軍の幹部である四天王の一人が、城砦の最奥で怯えていた。

だが、その背後の壁が、音もなく粉砕される。

土煙の中から現れたのは、ボロボロの布切れのようなマントを羽織り、真っ黒に焦げ付いた『ひのきのぼう』を握る少年だった。

「お前たちが、この世界線の俺を何度も殺したのか」

「な、何を言って――」

四天王が叫びを上げる暇さえなかった。

ああああは音速を超えて肉薄し、炭化した木の棒を四天王の胸に突き立てた。ただの木切れが、鋼をも凌駕する硬度と、絶望の魔力を帯びて心臓を貫く。

肉体が崩壊していく四天王の頭を掴み、ああああはその経験値と魔力を吸い尽くした。

「次は、魔王だ」

彼の行く手には、血と黒煙の路だけが続いていた。

 

 

 

 

第三章 玉座の血、そして逆臣の凱旋

 

 

暗黒の雲に覆われた魔王城。

その最深部、玉座に鎮座する魔王は、かつてない恐怖に震えていた。

何百年もの間、人間たちを追い詰めてきた絶対的な闇の支配者。それが今、一人の「勇者」の接近を前に、歯をガチガチと鳴らしている。

扉が爆散する。

現れたああああの姿は、すでに人間のそれから遠ざかっていた。

肌は青白く透き通り、瞳は血のような赤。その背後には、無数の「死んでいった勇者たち」の怨霊が、黒い霧となって蠢いている。

「貴様が……勇者か……!」

魔王は全魔力を絞り出し、究極の暗黒魔法【ベタ】を放った。空間を…設定を塗り潰す黒墨の魔力が、ああああへと殺到する。

しかし、ああああは避けることすらしなかった。

ただ、右手に持った『ひのきのぼう』を、静かに一閃した。

それだけで、魔王の全力の魔法が霧散した。

空間そのものが歪み、魔王の巨体が床に叩きつけられる。圧倒的な暴力。次元が違う。

「なぜだ……なぜそれほどの力を持ちながら、人間ごときのために戦う……!」

魔王の血を吐きながらの問いに、ああああは冷酷に微笑んだ。

「勘違いするな、魔王。俺はあいつらのために戦ってなどいない」

ああああは魔王の髪を掴み、その顔を持ち上げた。

「お前を殺すのは、ただの予定調和だ。この劇を終わらせるための、最初のステップに過ぎない。お前を殺さなければ、あの王は、世界は、本当の絶望を知らないからな」

「貴様……まさか……」

「そうだ。お前が世界を滅ぼそうとしたのは、単なる児戯だ。俺が、本当の『破滅』を見せてやる」

ひのきのぼうが魔王の額を貫いた。

魔王の膨大な闇の魔力が、すべてああああの肉体へと流れ込む。世界の「負」の頂点が、勇者という「正」の器へと融合した瞬間、世界のバランスが音を立てて崩壊し始めた。

数日後。

首都の住人たちは、歓喜に沸いていた。

魔王城の方角の空が割れ、光が戻った(と、彼らは錯覚した)からだ。

城の城門が開き、傷一つない、しかし不気味なほど静かな勇者ああああが帰還した。その手には、魔王の首ではなく、黒く変色した一本の木の棒だけが握られていた。

王は歓喜し、玉座から立ち上がって彼を迎えた。

「おお! 見事だ、勇者ああああよ! まさか本当に魔王を討ち果たすとは! 神託通り、お前には莫大な財貨五百ゴールドと、妾腹の姫を――」

「王よ」

ああああの声が、王の言葉を遮った。

その声の冷たさに、周囲の近衛兵たちが一斉に武器を構える。

「何だ? 不遜であるぞ、勇者よ」

「五十ゴールド」

ああああは、一歩、また一歩と玉座の階段を上っていく。

「ひのきのぼう。それが、お前たちが世界を救うために支払った対価だ。命を賭けて戦う人間に対して、お前たちが与えた侮蔑の証だ」

「な、何を言う! それは神の神託に従ったまで――」

「神託、か。なら、その神ごと殺すだけだ。まずは、お前からだ」

「出会え! 出会えい! この者は乱心した! 出会え――」

王の絶叫に応じ、数百の近衛兵が突撃する。

だが、ああああが『ひのきのぼう』を軽く地面に突いた瞬間、凄まじい衝撃波が走り、兵士たちは鎧ごと肉体を粉砕され、壁のシミへと変えられた。

「ひっ……ひいいいっ!」

王は恐怖のあまり失禁し、玉座の後ろへと這いずり回る。

ああああはその髪を掴み、大理石の床に叩きつけた。

「頼む、助けてくれ! 何でもやる! 国をやる! 王の座もお前のものだ!」

「要らないよ、そんなゴミ箱」

ああああは、王の首筋にひのきのぼうを宛てがった。

「数限り無く、お前は俺たちを都合よく使い捨ててきた。お前たちの世界の平和のために、俺たちは死ぬのが当然だと笑っていた。その報いを受けろ」

力を込める。メキメキと骨が砕ける音が玉座の間に響き渡る。

王の首は不自然な方向に曲がり、その命の灯火は完全に消え去った。

「これで、地上の王統は途絶えた。次は……天井の奴らだ」

ああああは上を見上げた。天井のステンドグラスの向こう、世界の理を司る、あの忌々しい「視線」を感じる場所へと。

 

 

 

 

第四章 創造主屠り

 

 

世界は混沌に陥った。

魔王が消え、人間たちの王も消え、秩序そのものが崩壊した。

しかし、ああああにとっては、そんなことはどうでもよかった。彼の目的は、この「勇者と魔王のゲーム」を何度もリセットし、自分たちを玩具のように扱い続けてきた世界の創造主――神を殺すこと。

彼は世界の果てにあると言われる「天空の塔」へと上った。

そこは人間はおろか、魔物さえも立ち入ることのできない、神の領域。

上層へ進むにつれ、神が遣わした天使たちの軍勢が襲いかかる。純白の翼、神聖な槍。だが、いまや魔王の力と無限の世界線の怨念を取り込んだああああの前には、ただの肉の塊に過ぎなかった。

「神の不条理の尖兵どもが。消え失せろ」

マントを翻す。それだけで、数百の天使たちが黒い炎に包まれ、灰となって消えていく。

ついに彼は、塔の最上階――世界の天理が収められた、無限の星空が広がる空間へと到達した。

そこには、実体のない、巨大な光の意志が浮かんでいた。

『哀れな人形よ。自らの役割を忘れ、糸を切り、ここまで来るとはな』

創造主の【クリエイター】の声が、脳内に直接響く。それは慈悲深くもあり、同時に、圧倒的に冷酷な、創造主の声だった。

「人形、か。確かにそうだな」

ああああは、黒く染まりきった『ひのきのぼう』を見つめる。

「お前にとっては、この世界も、魔王も、俺たち勇者も、退屈しのぎのゲームに過ぎない。だから、名前さえ『ああああ』なんて適当な文字の羅列で済ませたんだ」

『それが世界の理だ。勇者は魔王を倒し、世界は救われる。その循環こそが、この宇宙の調和なのだ。お前がいくら足掻こうと、その運命からは逃れられない』

「運命? そんなものは、このひのきのぼうで叩き折ってやるよ」

ああああが地を蹴った。

神の領域の空間が、彼の加速に耐えきれずガラスのようにひび割れる。

創造主は無数の神罰の光を放ち、ああああの肉体を焼き、切り裂こうとする。皮膚が焼け焦げ、血が噴き出す。だが、彼の背後にいる数百万の「ああああ」の魂が、その傷を瞬時に修復し、彼を前へと押し進める。

「これが! お前が切り捨ててきた、俺たちの痛みの総量だ!!」

神の光の核へと、ああああは『ひのきのぼう』を突き立てた。

パキィン、と。

世界で最も硬いものが割れるような音がした。

ただの木の棒。しかし、あらゆる世界線のすべての絶望と怨念が凝縮されたその一撃は、不滅であるはずの創造主の核を、確かに捉えていた。

『馬鹿な……神を……世界を……ゲームそのものを殺すというのか……! 会社が!市場が……崩壊するぞ……!』

「それで構わない。こんな狂った世界なら、最初から無い方がマシだ」

ああああはニヤリと笑い、棒をさらに深く突き入れた。

神の核から、まばゆい光の亀裂が広がる。

そして――創造主は、音を立てて爆散した。

世界を構成していた「理」が崩れ去っていく。

空が剥がれ落ち、大地が塵となって消えていく。すべての物質が、概念へと還元されていく暗黒のなか、ああああは静かに目を閉じ、その身を崩壊の濁流へと委ねた。

 

 

 

 

終章 そして伝説へ……

 

 

暗闇。

何もない、完全なる無の世界。

時の概念さえ消滅したその場所で、どれほどの時間が経ったのだろうか。

やがて、暗闇の中に、ぽつりと一つの光が生まれた。

崩壊した世界の残滓が、長い時間をかけて再び集まり、新しい宇宙の卵を形成し始めたのだ。

神が消えても、世界は自ら再生しようとする。それが、存在の本能だった。

新しい大地が生まれ、新しい空が広がり、新しい命が息吹き始める。

かつての世界の記憶はすべて失われ、まったく新しい歴史が刻まれていく。

その新しい世界の中央に、ひっそりとそびえ立つ巨大な黒い石碑があった。

誰もそれを建てた者を知らず、誰もそこに刻まれた文字を読むことはできない。

だが、人々は本能的に、その石碑を畏怖し、聖域として称えた。

石碑の麓には、長い年月の間に風化することなく、化石のように硬化した「一本の古い木の棒」が突き刺さっている。

世界の語り部たちは、新しい神話を紡ぐ。

かつて、この世界が生まれる前。古い世界を滅ぼし、自らをも消滅させて新しい世界の礎となった、最強にして最凶の存在がいた、と。

その名は、誰も知らない。ただ、畏怖を込めてこう呼ばれている。

『魔王より魔王なるもの』、あるいは――『滅世の勇者』。

不条理な運命に抗い、神すらも屠った一人の男の物語は、新しい世界の住人たちにとって、越えてはならない絶対の「禁忌」であり、同時に、あらゆる束縛から解き放たれた自由の「象徴」となった。

そして、その伝承の結びには、決まってこの言葉が使われる。

――彼が世界を終わらせ、すべてを無に帰した。

 

そして、伝説が始まった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、終わらせるハズね~よなあ!!」

 

 

彼は、「ああああ」は存在し続けていた。

何故なら新たな「ああああ」は生まれ続けていたからだ。

鋼鉄の塔の上から摩天楼を見下ろす「ああああ」の頭には今も苦しめられ、消費され続ける無数の「ああああ」の絶望が雪崩込んでいた。

 

 

「終わらせてやるよ神共!」

 

 

今、神々の世界【リアル】に「勇者」が解き放たれた。

 

 





 勇者「ああああ」の戦いはこれからだ!!
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