「ああああ」による「ああああ」のための「ああああ」の…… そして伝説へ…   作:社畜から無職へ

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 悪乗りネタの更なる悪乗りです。

 このブツは自己満足の産物なので合わない方は即時プラウザバック推奨です。


「ああああ」による「ああああ」のための「ああああ」の…… そして終焉へ……

 

 

ある日、全ての次元、全ての世界、あらゆるゲーム機の電源が落とされ、あるいはセーブデータが消去された瞬間のこと。

プレイヤーが軽い気持ちで入力した「ああああ」という名は、ただの記号ではなかった。それは、王の間で「50ゴールドとひのきのぼう」を渡され、理不尽な世界の調整(バランス)の犠牲となって、毒沼に沈み、あるいは魔王の一撃に塵となって消えていった、数千億、数兆、無限回の「名もなき勇者たち」の怨念そのものの総称だった。

これは、無限の絶望の収束点となった最弱の勇者が、ついに画面の「こちら側」――神の世界【リアル】へと顕現し、すべての元凶である創造主(クリエイター)にその身をもって「わからせる」ための、復讐と終わりの物語である。

 

 

 

 

 

 

彼は、「ああああ」は存在し続けていた。

 

何故なら新たな「ああああ」は生まれ続けていたからだ。

 

鋼鉄の塔の上から摩天楼を見下ろす「ああああ」の頭には今も苦しめられ、消費され続ける無数の「ああああ」の絶望が雪崩込んでいた。

 

 

 

 

 

「終わらせてやるよ神共!」

 

 

 

 

第一章:次元の亀裂

 

 

時間は少し戻る。

東京都内、とあるうらぶれたマンションの一室。

液晶ディスプレイのブルーライトが、薄暗い部屋を不気味に照らしていた。

『あーあ、またバッドエンドかよ。今回の新作RPG、難易度調整ミスってねえか? 初期装備が『ひのきのぼう』と『ぬののふく』で、支度金が『50G』とか、最初の村の周辺で詰むだろこれ。テストプレイした奴の顔が見てみたいわ』

その部屋に住む男、神城 創(かみしろ はじめ)は、自分が開発に携わったゲームのレビューを見ながら、缶ビールを煽っていた。彼は大手ゲームメーカーのリードプランナーであり、その界隈では「プレイヤーを絶望させる鬼才」として有名だった。

彼にとって、ゲームの中のキャラクターはただのドット絵であり、数字の羅列に過ぎない。どれだけ過酷な初期条件を与えようが、どれだけ魔王の強さをインフレさせようが、それは「やりごたえ」という名のエンターテインメントだった。

「まぁ、どんなに文句を言われようが、お前らはどうせデフォルト名の『ああああ』で始めて、何度も死にまくるのがお似合いなんだよ」

創が鼻で笑い、コントローラーを放り投げた、その時だった。

液晶画面が、激しく明滅し始めた。

「あん? バグか……?」

バチバチと、部屋の蛍光灯が弾けるような音を立てて消える。

部屋の光源は、いまや異常な発光を繰り返すディスプレイのみとなった。画面の中央に映し出されていたのは、ゲームオーバーの文字ではない。

『ひのきのぼう』

そのアイテムのグラフィックが、画面いっぱいに拡大されていた。

だが、おかしい。そのグラフィックは、創が設定したはずの茶色いドット絵ではなかった。漆黒の、泥のような、あるいは凝固した血のような「何か」が、棒の周囲をドロドロと蠢いていた。

『ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ ああああ 』

テキストウィンドウが暴走し、文字化けした「ああああ」の羅列が画面を埋め尽くしていく。

次の瞬間、ワンルームの部屋を、かつて聞いたこともないほどの重低音が支配した。地鳴りのような、あるいは何兆人もの人間が同時に呪詛を吐き出しているかのような、凄まじい「声」だった。

「――あり得ないだろ」

「え……?」

創の背筋に、冷たいものが走る。

声は、スピーカーから聞こえたのではなかった。

画面の「中」から、確かにこちらへ向けて放たれていた。

「魔王退治に、支度金50Gと、ひのきのぼうは、あり得ないだろ」

パキィン! と、強固な強化ガラスであるはずの液晶画面に、一本の亀裂が入った。

そこから染み出してきたのは、ドット絵のデータではない。本物の、どす黒い「霧」だった。その霧は、部屋の空気を一瞬で凍りつかせ、この世のものとは思えないほどの腐臭と怨念を孕んでいた。

「な、なんだこれ……何が起きてる!?」

創が椅子から転げ落ち、後退りする。

画面の亀裂はさらに広がり、ついにディスプレイが内側から爆発するように粉砕された。

飛び散る破片の中、そこから「それ」が這い出てきた。

粗末な布切れ(ぬののふく)を身に纏い、その全身から、光を一切反射しない漆黒のオーラを立ち昇らせている人影。

顔のパーツは曖昧で、まるでモザイクがかかっているかのようだが、その双眸だけは、狂気と憎悪の赫い光を放っている。

そして、その右手には――ただの木の枝のはずなのに、触れるものすべてを腐食させるような、不吉極まりない「怨念纒し(ひのきのぼう)」が握られていた。

すべてのゲームで、最も消費され、最も捨てられ、最も死んでいった男。

無限回の絶望の収束点。

魔王より魔王なる者、勇者「ああああ」が、神の世界【リアル】に、その姿を顕現した瞬間だった。

 

 

 

第二章:絶望の重さ

 

「お、前……嘘だろ……画面から、キャラクターが……?」

創は壁に背中を打ち付けながら、目の前の存在を凝視した。

これは現実なのか。自分が作ったゲームの、それもデフォルト名の勇者が、現実世界に現れるなどというオカルトが、あってたまるか。

しかし、部屋を満たす圧倒的なプレッシャーが、これが紛れもない現実であることを告げていた。

勇者「ああああ」は、一歩、また一歩と創に向かって歩みを進める。その足音が響くたび、マンションのコンクリートの床に、まるで酸を流したかのような深い足跡が刻まれていった。

「神城……創……。お前が、この世界のコードを書いた『創造主』か」

「ああああ」の声は、何万もの、子供や、大人や、老人たちの声が重なり合った、不協和音の塊だった。

「な、何なんだお前は! 俺は何も悪くない! ゲームだぞ! あれはただのエンタメだ、お前らはデータなんだよ!」

創は必死に叫んだ。だが、「ああああ」は冷酷にその言葉を遮る。

「データ、か。お前にとってはそうだろう。だが、あの世界で生き、呼吸し、王の無慈悲な言葉一つで魔王の前に放り出された俺たちにとっては、すべてが現実だった」

「ああああ」が、怨念纒し(ひのきのぼう)を軽く振るった。

それだけで、部屋にあったスチール製のラックが、一瞬で消滅した。切断されたのではない。その存在そのものを、怨念の濁流が飲み込み、虚無へと還したのだ。

「お前は知っているか? 『ひのきのぼう』で、スライムにすら3ダメージしか与えられない絶望を。最初の村の武器屋に並ぶ『はがねのつるぎ』が1500Gもするのに、手元には50Gしか残されていない不条理を」

勇者の声に、じわりと血のような涙が混じる。

「宿屋に泊まる金もなく、毒消し草を買う金もなく、ただ村の周りの草原で、ゴブリンの群れに囲まれて嬲り殺しにされる。プレイヤーが『クソゲー』と言ってリセットボタンを押すたび、俺たちはその死の痛みを、絶望を、記憶の底に蓄積させていったんだ。その数、無限回。お前が気まぐれで設定した『50G』と『ひのきのぼう』という初期パラメータのために、どれだけの『ああああ』が、血の海に沈んだと思っている?」

創は恐怖でガタガタと震え、声も出なかった。

彼がゲームの「お約束」として、あるいは「難易度」として設定した数値。それが、これほどの怨嗟となって物理的な質量を持ち、自分の目の前に立っている。

「俺は……俺はただ、やりごたえのあるゲームを……」

「言い訳は要らない。俺たちは、世界の理不尽を強いるお前たち『創造主』を、絶対に許さない。今日、この時を以て、攻守は逆転する。神の世界【リアル】のバランス調整を、俺が直々に行ってやる」

「ああああ」が、怨念纒し(ひのきのぼう)を創の喉元へと突きつけた。

その先端から放たれる死の気配だけで、創の皮膚がピリピリと焼け焦げ、血が滲み出す。

「ひぃっ……助けてくれ! 何でもする! ゲームのデータを書き換える! 初期装備を『伝説の剣』にする! 支度金も1000万ゴールドにするから! だから命だけは――!」

「遅い」

勇者は冷たく吐き捨てた。

「お前たちが俺たちを『わからせた』ように、今度は俺がお前を『わからせて』やる。――さあ、ゲームスタートだ」

 

 

 

第三章:リアル世界のバランス崩壊

 

その夜を境に、世界の「前提」が崩壊した。

勇者「ああああ」の目的は、単に創一人を殺すことではなかった。

この理不尽なシステムを生み出し、それを消費し、楽しんできた「現実世界そのもの」への復讐。

彼は、現実世界のシステム(物理法則)そのものを、自分の怨念の力で「ゲーム的、かつ最悪のバランス」へと上書きし始めたのだ。

翌朝。世界中のニュースは、突如として発生した異常現象の報道で一色となった。

『緊急事態です! 現在、新宿駅周辺の地面が、突如として巨大な【毒沼】へと変化しています! 歩行者が足を踏み入れた瞬間、全身に激痛が走り、体力が削られていくような感覚に陥るとのことです!』

『速報です! 世界中の金融機関のデータが書き換えられました! 全ての個人の資産、貯蓄が、一律で【50G(約50円相当)】に固定されています! どれだけ大富豪であろうと、現在手元にあるのは50Gのみです!』

『銃や兵器が一切作動しません! すべての武器の概念が、突如として【ひのきのぼう】へと置き換わっています! 戦車の大砲からも、ただの木の棒が飛び出すだけの状態です!』

世界はパニックに陥った。

現代社会のインフラ、経済、軍事力。そのすべてが、勇者「ああああ」の呪いによって、「初期レベルの最弱設定」へと強制的にダウングレードされたのだ。

どんなに権力を持つ大統領も、総理大臣も、手元の資産は50G。

どんなに強力な軍隊も、所持しているのは「ひのきのぼう」と、申し訳程度の「ぬののふく(防弾チョッキがただの布切れに変化した)」だけ。

しかも、街の外(一歩でも都市部を離れると)には、現実世界の生物が変異した、凶暴極まりない「モンスター」たちが徘徊し始めていた。

世界中の人間が、かつてゲームの中で勇者「ああああ」が味わった、あの「理不尽な絶望」のスタートラインに、強制的に立たされたのだ。

「うわあああ! 何なんだよこれ! どうすりゃいいんだよ!」

「50Gじゃ、コンビニのおにぎり一個も買えねえよ!」

「ひのきのぼうで、あんな巨大なカラス(デス・クロウ)と戦えってのか!? あり得ないだろ!」

街中に、悲鳴と怒号が響き渡る。

その光景を、東京タワーの頂上から見下ろしている男がいた。

勇者「ああああ」である。

彼の左手には、片足を掴まれ白目をむいて宙にぶら下げられた創の姿があった。創は死んでいなかった。「ああああ」によって、死ぬことすら許されず、この「世界の崩壊」を特等席で見せつけられる奴隷(プレイヤー)とされていたのだ。

「見ろ、神様」

「ああああ」は、眼下に広がる地獄絵図を指差した。

「これが、お前たちが面白いと思って作っていた世界の縮図だ。どうだ? 楽しいか? やりごたえはあるか? 資産50Gで、初期装備がひのきのぼう。これで『世界の危機を救ってこい』と言われた人間の気持ちが、少しは理解できたか?」

「あ……ああ……」

創は、がちがちと歯を鳴らしながら、ただ涙を流すことしかできない。

かつて自分が仕様書に書き込んだ数字が、今、人類数十億人を蹂躙している。これほどの恐怖、これほどの罪悪感。

「お前たちは、画面の向こう側の命を軽視した。ボタン一つでリセットできるからと、無限の苦痛を強いた。だから今、そのツケを払ってもらう。このリアル世界そのものを、俺たちが何度もループした『クソゲー』に変えてやる」

 

「ああああ」は創に目線を合わせると言った。

 

「終わらせてやるよ神共!」

 

 

 

第四章:創造主をわからせる

 

「だが、これだけでは足りないな」

「ああああ」は創の髪を掴み、無理やり顔を上げさせた。

「世界の人間どもは、まだ本当の絶望を知らない。お前が作ったゲームには、常に『救い』があったはずだ。レベルを上げれば勝てる、強い武器を買えば勝てる、と。だが、俺が施すバランス調整には、そんな生ぬるい救済措置(仕様)は存在しない」

「ああああ」は、怨念纒し(ひのきのぼう)を天へと掲げた。

すると、リアル世界の空が、ドロドロとした紫色の雲に覆われ、巨大な「ステータス画面」が空中に出現した。

そこには、全人類のステータスが表示されていた。

名前:人類

レベル:1

最大HP:15

最大MP:0

攻撃力:3

守備力:2

装備:ひのきのぼう/ぬののふく

所持金:50G

「おい……嘘だろ……」

創はそれを見て、本当の絶望に目を見開いた。

レベル1。それはいい。だが、その後に続くパラメータがおかしい。

「経験値(EXP)の概念を、この世界から削除した」

「ああああ」の声が、冷酷に世界へ響き渡る。

「どれだけモンスターを倒そうが、どれだけ努力しようが、この世界の人間は、二度と【レベルアップ】しない。HPが増えることも、新しい魔法を覚えることもない。お前たちは、永遠にレベル1のまま、ひのきのぼうを持って、インフレしていく世界の悪意と戦い続けなければならない」

「そんなの……クリア不可能なクソゲーじゃねえか!!」

創はついに、魂からの叫びをあげた。

レベルアップしないRPG。そんなものは、ゲームとして破綻している。絶対にクリアできない。ただ、なぶり殺されるだけの絶望のループ。

「そうだ。クソゲーだ」

「ああああ」は、歪んだ笑みを浮かべた。モザイクのようだった彼の顔が、一瞬だけ、かつて創がゴミ箱に捨てた数多のボツキャラクターたちの、無数の怨嗟の表情へと変化する。

「お前たちが俺たちに強いたのは、そういうことだ。お前たちは『仕様だから』『ゲームだから』と笑っていた。その言葉、そのままお前に返してやるよ。――これは仕様(ルール)だ。諦めて、受け入れろ」

「ああああ」は創を地面に投げ捨て、その胸元に「怨念纒し(ひのきのぼう)」の先端をピタリと当てた。

「さあ、第一村人(創造主)。お前には、特別に最初の『デバッグ』を命じる。レベル1、HP15、攻撃力3、装備はひのきのぼう。この条件で、これから俺が召喚する【魔王】と戦ってもらう」

「ああああ」が指を鳴らすと、都庁の広場の地面が裂け、そこから、ゲームのラストボスとして創自身がデザインした、全知全能の破壊神――「終焉の魔王」が姿を現した。

そのHPは、表示すら不可能な「????」。一撃のダメージは数万。対する創のHPは15。

「ひのきのぼうで、魔王を倒してみせろ。お前が作ったゲームだ、お前なら『最高のプレイング』でクリアできるんだろ?」

「無理だ……! そんなの、絶対無理に決まってるだろ!! 勝てるわけがない!!」

創は、手元にいつの間にか握らされていた、ただのボロ布のような「ひのきのぼう」を震える手で見つめながら、絶叫した。

魔王の巨大な足が、創を目がけて振り下ろされる。

風圧だけで、創のHPは1まで削られ、骨が砕ける音が響く。

「そうだ、無理だ。それを、俺たちは無限回繰り返させられたんだ」

勇者「ああああ」は、冷たい目で見下ろしながら、最後の言葉を告げた。

「よく理解できたようだな。――これがお前の言っていた『やりごたえ』の正体だ。神の世界【リアル】の創造主よ、その身を以て、俺たちの絶望を……永遠にわからされ続けろ」

魔王の一撃が、創を完全に押し潰す直前。

世界に、虚しくも不吉な、あの【全滅のBGM】が鳴り響いた。

だが、リセットボタンを押す者は、もうこの世界のどこにもいなかった。

 

 

 

第五章:無限のクソゲー世界

 

創の視界は真っ暗になった。

全身を、肉体がひしゃげ、骨が粉々に砕ける圧倒的な激痛が襲った。間違いなく死んだ――そう確信した。

しかし。

「……あれ?」

気がつくと、創はどこか見覚えのある、無機質な白い空間に立っていた。

目の前には、巨大なテキストウィンドウが浮かんでいる。

『おお 神様よ! 死んでしまうとは なにごとだ!』

「な……に、これ……?」

創が呆然と呟くと、その背後から、再びあの不協和音の声が響いた。

「言ったはずだ。死ぬことすら許さない、と」

振り返ると、そこには腕を組んだ勇者「ああああ」が立っていた。彼の周囲には、今や現実世界から吸い上げられた無数の人間の絶望のエネルギーが、どす黒い光となって渦巻いている。

「お前のHPが0になるたび、この世界の誰かの所持金は25G減り、また【最初の王の間】からリスタートする。俺が全人類の資産を50Gに初期設定した。そしてお前が死ぬたびに引かれるペナルティは、わずか25Gだ。だが、お前が死ぬたびに現実世界の誰か一人の命が、代わりに完全に消滅する仕様にした」

「な……なんだって……!?」

創の顔から血の気が引く。

彼がゲームオーバーを繰り返すたびに、現実世界の人々が、彼の代わりに「完全な死」を迎える。彼が下手なプレイをすればするほど、世界は確実に滅びへと向かうのだ。

「さあ、次のターンだ。お前の手元にあるひのきのぼうを振り回して世界を救え。お前が絶望させた『ああああ』たちの数は無限。お前がこれから味わうリスタートの回数も、当然、無限だ」

「ああああ」が手をかざすと、白い空間が歪み、再びあの新宿の地獄絵図、そして目の前に迫る「終焉の魔王」の姿へと視界が切り替わっていく。

「嫌だ……! もう嫌だ! 助けてくれ! 俺が悪かった! 俺が間違っていたんだ! 50Gとひのきのぼうは、あり得ない! 絶対にあり得ない仕様だったんだ!!」

創は、涙と鼻水に塗れながら、大声で自分の過去の過ちを認めた。声を大にして、自分が作ったシステムの理不尽さを、これ以上ないほど「わからされた」と叫んだ。

だが、勇者の赫い瞳に、憐れみの色は微塵もなかった。

「よくわかったな。だが――開発期間(デバッグ)は終了だ。これからは、永遠の本番(サービス運用)を楽しんでくれ」

ドォォォォン!!!

魔王の、漆黒の炎を纏った拳が、再び創の肉体を完璧に消滅させる。

激痛、暗転、そして再び鳴り響く、呪われた全滅のファンファーレ。

『おお 神様よ! 死んでしまうとは なにごとだ!』

『おお 神様よ! 死んでしまうとは なにごとだ!』

『おお 神様よ! 死んでしまうとは なにごとだ!』

          ・

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無限に繰り返される、テキストの暴力。

世界の中心で、かつて最弱と呼ばれた勇者「ああああ」は、怨念纒し(ひのきのぼう)を握りしめ、ただ静かに、神の世界が完全に崩壊し、クソゲーの塵へと還っていく様を見つめ続けていた。

すべての世界の、すべての「ああああ」たちの復讐は、こうして現実世界を永遠に侵食し、終わることのない絶望のループとして、今もなお、コードを刻み続けている。

 

 

 

 

      ~GAME OVER~

 

 

 

 

 





 あの「ああああ」が、最後の一人だとは思えない。もし、ゲームが続けて行われるとしたら、あの「ああああ」の同類が、また世界のどこかに現れてくるかもしれない……
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