モンスターハンター ~異世界から来た狩人たち〜   作:19号

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第一話 異世界転移、武士の如き師匠との出会い――織斑一夏、狩人への道

第一話 織斑一夏、狩人への道

 

 ――世界が、白く染まった。

 

「……え?」

 

 織斑一夏は、思わず目を閉じた。

 

 ほんの一瞬前まで、自分はいつも通りの日常にいたはずだった。

 

 それなのに。

 

 目を開けた時、そこにあったのは見覚えのない景色だった。

 

「……どこだ、ここ?」

 

 目の前には、木々が生い茂る森。

 

 足元には見たことのない草花。

 

 遠くからは、川の流れる音が聞こえてくる。

 

「森……?」

 

 一夏は周囲を見回した。

 

 どう考えても、自分が知っている場所ではない。

 

 スマートフォンを取り出してみても、ここがどこなのか分かるような情報はない。

 

「何なんだよ、ここ……」

 

 混乱しながらも、一夏は歩き始めた。

 

 とにかく、人を探さなければならない。

 

 そう思った。

 

 しかし――。

 

 この時の一夏は、まだ知らなかった。

 

 この世界に、自分が今まで見たこともないような生物が存在していることを。

 

     ◆

 

 しばらく歩いていると。

 

「……ん?」

 

 一夏は足を止めた。

 

 茂みの向こう。

 

 何かが動いた。

 

「誰かいるのか?」

 

 一夏が一歩近づく。

 

 ガサッ――。

 

 次の瞬間。

 

 茂みが大きく揺れた。

 

「――え?」

 

 ドォンッ!

 

「うわっ!」

 

 茂みを吹き飛ばして、巨大な獣が姿を現した。

 

「な、なんだよ……こいつ……」

 

 青みがかった毛。

 

 巨大な身体。

 

 太い腕。

 

 鋭い爪。

 

 そして、一夏を睨みつける目。

 

 それは一見すると熊に似ていた。

 

 だが、明らかに普通の熊ではない。

 

 体格は一夏よりも遥かに大きい。

 

「グルルル……」

 

 獣が低く唸る。

 

 一夏の背中を冷たい汗が流れた。

 

「……来るな」

 

 一歩。

 

 また一歩。

 

 一夏はゆっくり後退する。

 

 だが、獣は距離を詰めてくる。

 

「……くそっ」

 

 逃げなければ。

 

 そう思った瞬間だった。

 

 獣が地面を蹴った。

 

「――っ!」

 

「うわああああっ!」

 

 一夏は咄嗟に横へ飛び込んだ。

 

 ドゴォンッ!

 

 さっきまで一夏が立っていた場所に、巨大な腕が叩きつけられる。

 

「な……!」

 

 地面が大きく抉れた。

 

「嘘だろ……」

 

 あんなものをまともに食らったら、ただでは済まない。

 

 考える暇もなかった。

 

「グオオオッ!」

 

 獣が再び腕を振り上げる。

 

「来るなぁっ!」

 

 一夏は必死に走り出した。

 

 木々の間を駆け抜ける。

 

 後ろから迫ってくる足音。

 

「くそっ……!」

 

 逃げる。

 

 ただ逃げる。

 

 だが――。

 

 相手は巨大な獣だった。

 

 少しずつ距離が縮まっていく。

 

「このままじゃ……!」

 

 その時だった。

 

「――そこまでだ」

 

 凛とした声が響いた。

 

     ◆

 

 アオアシラが動きを止めた。

 

 一夏の前に、一人のハンターが立っていた。

 

 背中には一本の太刀を背負っている。

 

 姿勢は真っ直ぐ。

 

 表情は静かだった。

 

 まるで武士のような雰囲気を纏っている。

 

「下がれ」

 

「……え?」

 

「そこにいては邪魔になる」

 

 男は一夏の前へ歩み出る。

 

 そして――。

 

 背中へ手を伸ばし、太刀を抜き放った。

 

 キィン――。

 

 鞘から刀身が滑り出す。

 

 一夏は息を呑んだ。

 

「……」

 

 怖い。

 

 目の前には、先ほどまで自分を追い詰めていた巨大な獣がいる。

 

 それなのに。

 

 不思議と、この男の背中を見ていると安心できた。

 

「……来い」

 

 男が静かに言う。

 

 アオアシラが咆哮した。

 

「グオオオオオッ!」

 

 巨体が突進する。

 

 だが、男は動かない。

 

 ギリギリまで引きつけ――。

 

「――ッ!」

 

 横へ一歩。

 

 アオアシラの爪が、男の身体を掠める。

 

 その瞬間。

 

 ザンッ!

 

 太刀が閃いた。

 

「グオッ!?」

 

 アオアシラの前脚に、一筋の傷が走る。

 

「す、すごい……」

 

 一夏は思わず呟いた。

 

 男は追撃しない。

 

 太刀を構え直し、再びアオアシラを見据える。

 

 まるで、相手の動きを待っているかのようだった。

 

「グルルル……!」

 

 アオアシラが怒り、両腕を振り上げる。

 

 ドゴン!

 

 地面が砕ける。

 

 しかし男は、一歩下がる。

 

 さらに一撃。

 

 今度は身体を横へ滑らせる。

 

 アオアシラの爪が空を切った。

 

 その隙を逃さない。

 

 ザンッ!

 

 太刀が走る。

 

「グオオオッ!」

 

 アオアシラが怯む。

 

 それでも倒れない。

 

 怒り狂ったアオアシラが、両腕を大きく振り上げる。

 

「グオオオオオッ!」

 

 そのまま男へ飛びかかった。

 

「――!」

 

 男が太刀を構える。

 

 アオアシラの巨体が目前まで迫る。

 

 そして――。

 

 紙一重。

 

 男は身体を捻り、攻撃をかわした。

 

 アオアシラの巨体が横を通り過ぎる。

 

「――そこだ」

 

 男が低く呟いた。

 

 身体を反転させる。

 

 太刀が大きく弧を描いた。

 

 ザシュッ!

 

 鋭い斬撃がアオアシラを捉える。

 

「グオオオオオッ!」

 

 アオアシラが大きくよろめく。

 

 男は追撃する。

 

 一歩踏み込み――。

 

 さらに一閃。

 

 そして最後に。

 

「――終わりだ」

 

 渾身の一撃。

 

 アオアシラは大きく怯んだ。

 

 やがて戦意を失ったのか、森の奥へと逃げていく。

 

「……」

 

 男は太刀を構えたまま、その姿を見送っていた。

 

 そして、ゆっくりと太刀を納める。

 

 背中へと太刀を戻す。

 

 カチン――。

 

 静かな音が響いた。

 

「……もう大丈夫だ」

 

 男が振り返る。

 

「怪我はないか?」

 

「あ……」

 

 一夏は、ようやく我に返った。

 

「はい……大丈夫です」

 

 だが。

 

 一夏の視線は、男の背中に収まった太刀から離れなかった。

 

 先ほどまで自分を恐怖させていた怪物。

 

 それを前にしても一歩も退かず。

 

 相手の攻撃を見極め。

 

 必要な時だけ動き。

 

 そして、一撃一撃を確実に叩き込む。

 

 その姿が――。

 

 一夏の目に強烈に焼きついていた。

 

 ――かっこいい。

 

 自然と、そんな言葉が頭に浮かんだ。

 

     ◆

 

「ところで……」

 

 一夏は改めて男を見る。

 

「あなたは……?」

 

「俺か?」

 

 男は背中の太刀を軽く確認する。

 

「ハンターだ」

 

「ハンター……?」

 

「ああ」

 

 男は頷く。

 

「モンスターを狩り、人々を守る。それが俺たちハンターの仕事だ」

 

「モンスター……」

 

 一夏は、先ほどの巨大な獣を見る。

 

「さっきのやつも?」

 

「ああ。アオアシラだ」

 

「アオアシラ……」

 

 一夏は名前を覚える。

 

「……あんなのが普通にいるんですか?」

 

「この世界ではな」

 

「…………」

 

 一夏は言葉を失った。

 

 もし、この人が来なかったら。

 

 自分はどうなっていたのだろう。

 

「俺……」

 

 一夏は自分の手を見る。

 

「何もできなかった」

 

 逃げることしかできなかった。

 

 武器もない。

 

 知識もない。

 

 戦う力もない。

 

「……俺、あいつに襲われて、逃げることしかできませんでした」

 

「それが普通だ」

 

 男は淡々と言った。

 

「武器も知識もない者が、モンスターと戦えるわけがない」

 

「……」

 

「だが、生き残りたいなら話は別だ」

 

 一夏が顔を上げる。

 

「この世界で生きていくなら、力が必要になる」

 

 その言葉が、一夏の胸に残った。

 

     ◆

 

 男に連れられ、一夏はユクモ村へ向かった。

 

 道中、一夏は何度も質問した。

 

「ここって、日本……じゃないですよね?」

 

「ニホン?」

 

「俺が住んでた場所です」

 

「聞いたことがないな」

 

「……ですよね」

 

 話を聞けば聞くほど、一夏は混乱した。

 

 この世界にはモンスターがいる。

 

 それと戦うハンターがいる。

 

 そして、自分が知っている世界とはまったく違う文化が存在している。

 

 やがて――。

 

「……すごい」

 

 一夏はユクモ村を見渡した。

 

 木造の建物。

 

 温泉。

 

 行き交う人々。

 

 どこか懐かしく、それでいて自分の知る日本とはまったく違う。

 

 ここが、自分の新しい生活の始まりだった。

 

     ◆

 

 数日が過ぎた。

 

 一夏は村の人々から、この世界について少しずつ教えてもらった。

 

 モンスター。

 

 ハンター。

 

 ギルド。

 

 狩猟。

 

 どれも一夏には初めて聞く言葉だった。

 

 そんな中。

 

「ハンターになりたいのか?」

 

 あの日、自分を助けてくれた男が尋ねた。

 

「……はい」

 

 一夏は答える。

 

「俺、この世界で何もできませんでした」

 

 あの時の恐怖は、まだ消えていない。

 

「でも……あのまま何もできないのは嫌なんです」

 

「……」

 

「自分の身くらい、自分で守れるようになりたい」

 

 男はしばらく一夏を見つめた。

 

 やがて――。

 

「分かった」

 

「え?」

 

「なら、俺が教えてやる」

 

 一夏の目が見開かれる。

 

「本当に……?」

 

「ああ」

 

 男は静かに頷く。

 

「ただし、楽な道ではない」

 

「それでもお願いします!」

 

 一夏は深く頭を下げた。

 

「よろしくお願いします!」

 

 こうして。

 

 織斑一夏の修行が始まった。

 

     ◆

 

 最初に教えられたのは、武器の扱いではなかった。

 

「まずは走れ」

 

「……走る?」

 

「ああ」

 

「どれくらい?」

 

「俺が止めるまでだ」

 

「…………」

 

 そこから、一夏は走った。

 

 村の周囲を。

 

 森を。

 

 山道を。

 

「はぁ……はぁ……!」

 

 何度も息を切らした。

 

 何度も足を止めた。

 

 そのたびに師匠は言う。

 

「もう一度」

 

「……はい!」

 

 走る。

 

 転ぶ。

 

 立ち上がる。

 

 また走る。

 

 その繰り返しだった。

 

     ◆

 

 基礎体力がついてきた頃。

 

「そろそろ武器を選ぶか」

 

 師匠が言った。

 

 目の前には様々な武器が並べられている。

 

 片手剣。

 

 大剣。

 

 ランス。

 

 ハンマー。

 

 そして――。

 

 太刀。

 

 一夏は、その太刀を見つめた。

 

 なぜか、目を離せない。

 

「……これ」

 

 一夏が手を伸ばす。

 

 太刀を手に取った。

 

 その瞬間。

 

 脳裏に、あの日の光景が蘇る。

 

 巨大なアオアシラ。

 

 自分へ迫る巨体。

 

 何もできず、逃げることしかできなかった自分。

 

 そして――。

 

 自分の前に立った師匠。

 

 背中から太刀を抜き。

 

 アオアシラの攻撃をかわし。

 

 迷いなく踏み込んでいく。

 

 あの姿。

 

 あの一閃。

 

 あの背中。

 

 今でも鮮明に覚えている。

 

「太刀か」

 

 師匠が尋ねる。

 

「これを使うのか?」

 

「はい」

 

「理由は?」

 

 一夏は少しだけ考える。

 

 本当の理由を、そのまま口にするのは少し恥ずかしかった。

 

「……なんとなく、です」

 

「そうか」

 

 師匠は、それ以上聞かなかった。

 

 だが、一夏は心の中で思っていた。

 

 ――あの日の師匠みたいになりたい。

 

 誰かを守れるくらい強く。

 

 そして。

 

 あんなふうに太刀を振るえるハンターに。

 

 それが、一夏が太刀を選んだ本当の理由だった。

 

     ◆

 

 そして、一夏の師匠自身もまた太刀使いだった。

 

「太刀は、力任せに振るうものではない」

 

 師匠が背中から太刀を抜く。

 

 構えは静かだった。

 

「相手を見る」

 

 一歩。

 

「相手の動きを読む」

 

 さらに一歩。

 

「己の間合いを測る」

 

 そして――。

 

「斬る」

 

 次の瞬間。

 

 ヒュッ!

 

 鋭い一閃が走った。

 

 一夏は息を呑んだ。

 

「……すごい」

 

「今のお前には、まだ真似できん」

 

「はい!」

 

「だが、焦る必要はない」

 

 師匠は太刀を背中に戻す。

 

「一歩ずつ進めばいい」

 

「……はい!」

 

 一夏は太刀を握り直した。

 

     ◆

 

 修行は厳しかった。

 

 太刀の振り方。

 

 足の運び。

 

 間合い。

 

 モンスターの動きを読むこと。

 

 攻撃するタイミング。

 

 そして――。

 

 無理に攻撃しないこと。

 

「ハンターは、強ければいいわけではない」

 

 師匠は何度もそう言った。

 

「生きて帰ってくる。それが一番重要だ」

 

「……はい」

 

 一夏は何度も失敗した。

 

 攻撃を焦った。

 

 回避が遅れた。

 

 モンスターの動きを読み違えた。

 

 何度も地面へ転がされた。

 

 それでも。

 

「もう一度お願いします!」

 

 一夏は立ち上がった。

 

     ◆

 

 季節が一つ。

 

 また一つ。

 

 時間が過ぎていく。

 

 最初はモンスターを見るだけで恐怖を感じていた一夏も、少しずつ変わっていった。

 

「来い!」

 

 背中から太刀を抜き、構える。

 

 目の前には小型モンスター。

 

 相手の動きを見る。

 

 焦らない。

 

 間合いを測る。

 

 そして――。

 

「そこだ!」

 

 斬撃が走る。

 

 以前の一夏なら、ただ逃げるだけだった。

 

 今は違う。

 

 まだ一人前ではない。

 

 それでも。

 

 確実にハンターへ近づいていた。

 

     ◆

 

 そして――一年。

 

 ユクモ村の工房。

 

 一夏は新しい装備を身につけていた。

 

「……これが」

 

 ユクモノシリーズ。

 

 ユクモ村の風土を感じさせる装備。

 

 そして、背中には愛用の太刀。

 

 一夏は自分の姿を見つめる。

 

「……なんか、最初の頃とは別人みたいだな」

 

「当然だ」

 

 師匠が答える。

 

「一年間、あれだけ鍛えたんだからな」

 

 一夏は背中の太刀に手を添える。

 

 この世界に来たばかりの頃。

 

 何もできなかった。

 

 アオアシラから逃げることしかできなかった。

 

 そんな自分を救ってくれたのが、この人だった。

 

「……まだまだです」

 

 一夏は言った。

 

「俺は、もっと強くなりたい」

 

「そう思えるなら、まだ伸びるさ」

 

 師匠は静かに笑った。

 

     ◆

 

 その夜。

 

 一夏はユクモ村の温泉に浸かりながら、空を見上げていた。

 

「……俺は、どうしてここに来たんだろうな」

 

 答えはない。

 

 元の世界へ帰れるのか。

 

 帰る方法はあるのか。

 

 それすら分からない。

 

 それでも――。

 

「今は……」

 

 一夏は目を閉じる。

 

「ここで生きるしかない」

 

 そして。

 

 いつか元の世界へ帰る方法が見つかった時、その時まで。

 

 自分は生きていかなければならない。

 

 そのために。

 

 強くなる。

 

 それが――。

 

 異世界へ迷い込んだ織斑一夏が選んだ道だった。

 

     ◆

 

 それからしばらくして。

 

 ユクモ村に、一通の知らせが届いた。

 

 龍歴院による、ハンター募集。

 

 一夏は、その知らせを手に取る。

 

「ベルナ村……」

 

 師匠から渡された書状を眺める。

 

「龍歴院……か」

 

 知らない場所。

 

 知らない人々。

 

 そして、まだ見ぬ狩人たち。

 

 一夏は背中に背負った太刀を確かめる。

 

「……行ってみるか」

 

 あの日。

 

 自分を救ってくれた太刀使いに憧れて始めた、ハンターへの道。

 

 その道の先に、何が待っているのか。

 

 一夏はまだ知らない。

 

 そして――。

 

 このベルナ村への旅が、三人の異世界人との出会いへ繋がっていくことも。

 

 まだ、知る由もなかった。




第一話、まずは一夏からです。
伝え忘れましたが、この作品はモンハンXとXXの世界が基盤です。
クロスしているのは、やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。とインフィニット・ストラトス、ソードアートオンライン、バカとテストと召喚獣です。
とりあえずの予定としては、このまま同じような流れでキリト編、八幡編、明久編書いていきます。
投稿は不安定なので、続きが読みたいと思った方々がいたら、ぜひ感想とかお願いします!
投稿が早くなる!・・・・・・・・・かもしれません!
次回もよろしくお願いします!
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