ACE COMBAT 8 〜転生した女子高生、空の英雄になる〜 作:三坂
美空がエースコンバットの世界にやってきて空母エンデュランスに拾われて1時間後、初出撃の命令を受けて格納庫から看板上にあげられるスーパーホーネットと共にエレベーターに乗っていた。
いきなりの初出撃…少しは考える時間ぐらい欲しいなー…と内心そんなことを思いながらヘルキャットを見つめつつ、エレベーターで上がっていると何処からともなく声が聞こえてくる。
ー初出撃……はぁ考える時間もう少しくれてもいいじゃん…ー
「おっ、きたきた。やぁ、ミスター・ニューカマー!」
その声に気づいた美空はその方向に視線を向けるとエレベーターが上がった甲板上に、明らかに軍関係者とは思えないスーツにメガネをつけたネクタイ男性がこちらにスマホを向けつつ、話しかけてきていた。
「ん?今誰か」
「運が良かったな、君たちの後に陸地から飛んでくる機影はもういなくてね。最後の避難民収容任務もこれで終わりさ」
だが初対面な彼女はどちら様?と尋ねるがネクタイの陽気な男は気にするほどのものではないと告げながら、話題を逸らすように話を進める。
「あの…どちら様…ですか?」
「なーに、君が気にするほどの人じゃないさ。それよりも、すっかりとなくなってしまったね。何もかも」
いやその話を聞いてる訳じゃないんですけど…と呆れながら話を聞いていた美空に対して、気にする素振りを見せないネクタイ男は一方的な会話を続けていく。
ーいや…それを聞きたいんじゃなくて…ー
「だが、もちろん違うのさ。この空気中には無数の電波が飛び交っている」
とは言え適当なことを言っているのかと言われるとそんなことは一切なく、今やバラバラとなってしまった本土では助けを求める声など様座があるのは確か。
「かつて連邦を成していた土地のあちこちでなおも助けを呼ぶ声、最後の別れのために振り絞る声。そして合流すべき仲間を求める声」
ちなみに彼はそんな様々な声を再組織するのが仕事らしく、本人曰く広告業みたいなものだとか…
「それを再組織するのが仕事さ、まあ広告業みたいなもんでね」
ーなるほど…なんか変わった人だな…ー
そんなことを話している間にも一緒に飛行甲板へと上がってきたレガシーホーネットを牽引するために繋いだ航空機牽引車(トーイングトラクター)に腰掛けたネクタイ男に隣へ座るように促されたため、美空はため息をつきながらも隣へと腰掛ける。
「よっと、さっレディファーストだぞ」
「……はぁ……よっと」
2人が腰掛けたことを確認した運転手が移動を開始した直後、ネクタイ男が今回美空が出撃する任務に関係した話題を振っていく。
どうやら彼の話わく、合流を求める声の主が水平線の向こうからこちらに近づいてきているらしい。
「さて、合流を求める声はこの近くにもあってこの水平線の向こうからこちらに近づいて来る」
だが味方識別信号は発していないらしく、偵察ドローンで確かめようにもあいにくこの空母エンデュランスには搭載されておらず品切れ状態。
「だが味方識別信号を発してこない、ところで偵察ドローンは品切れでねー」
あーゆうものこそ大量に仕入れておくべきだったよねーとネクタイ男はそんなことを呟きながら、スマホをつついていく。
「あーいうものこそもっと仕入れておくべきだったよね」
ちなみに今回の任務はそれと関係しているらしく、偵察ドローンがないため、人が直接行って確かめる必要があるとのこと。
つまり偵察任務、それを聞いた美空は緊張のあまり表情が強張ってしまう。
「なので人間が出かけていって確認しなくちゃならない」
ーつまり偵察任務…でも相手が味方って可能性ばっかじゃ…うぅ…なんか緊張してきたー
するとそれを察したのかネクタイ男は安心させるように肩を叩きながら、彼女が乗る機体を操縦する男が『シーヴの翼』ジャン・レックス・コープであることを告げた。
「大丈夫、君の前に座って操縦するのは『シーヴの翼』ジャン・レックス・コープだ」
どうやらコープは誰もが知っている伝説の撃墜王らしく、この戦争で彼いわく最初にダブルエースになった戦闘機パイロットらしい。
首都陥落の際も脱出の時間を稼いだ救世主らしく、それを聞いた美空はなら大丈夫か…と内心ホッとした表情を浮かべながら胸をなで下ろす。
「そう、誰だって知ってる伝説の撃墜王!この戦争で最初にダブルエースになった戦闘機パイロット!首都陥落からの脱出の時間を稼ぎだした救世主!」
ーエース…なら大丈夫か…ー
そうこう話しているうちにその人の目の前までやってきたのか、ネクタイ男は行ってこいと言わんばかりに背中を押してトーイングトラクターから降ろしていく。
「わっ…!?」
降ろした先、そこにはあのネクタイ男が言っていたイケてるサングラスおじさんで、伝説の撃墜王「シーヴの翼」と呼ばれたジャン・レックス・コープが立っていた。
もちろん彼も美空には気づいており、こちらに視線を向けながら笑みを浮かべると一同心臓に手を当ててから右手を差し出してくる。
「……」
この人が…と一瞬見とれた美空だったが、すぐに我に返ると差し出された右手を握り返しながら自分の名前を名乗った。
ーこの人が…あのシーヴの翼…ってヤバ…見惚れちゃってた…ー
「あっあの…ミソラと…言います…」
するとコープも知ってるとは思うが一応と自己紹介をしていく。
「ミソラか、いい名前だな。こっちのことはコープと呼んでもらっても構わない」
だがその歳に手を当てる行為が気になって首を傾げていると、コープはこれか?と伺いながら癖だから気にしないでくれと告げながら機体の方へと歩み寄る。
「……」
「…これか?ただの癖だ、気にしないでくれ」
その後ヘルメットを被ると、先ほど一緒に運ばれてきた機体に乗り込むためのハシゴに手をかけながら行こうと合図、それを聞いた美空自信もヘルメットを被りながら寄っていく。
「よしっ、行こう…!」
「はっ…はい!」
F/A-18E/Fスーパーホーネット、マクドネル・ダグラス社(現ボーイング社)が開発したF/A-18C/D ホーネットの発展型マルチロール機。
エースコンバットを初めたてはずだった美空でも名前は聞いたことがある機体、まさかこんな形でリアルで乗ることになるとは…と内心思いながらハシゴを登っていく。
ーこれがスーパーホーネット……まさかこんな形で乗り込むことになるとは…ー
その後ナビゲーター用の後席(本来はWSO:兵装システム士官用)に乗り込むと、無意識に座席のベルトを慣れた手つきで締める。
一回も乗ったことない…(転生前は)のにこんなにすんなり出来るもんなんだ…と驚きながら、後は操縦さえ出来れば…とそんなことを呟いた。
「よっと…」
ーうわ…一回も乗ってつけてないのにこんなにすんなりと…、これなら後は操縦が出来れば…ー
ベルトを身につけると前の操縦席に腰掛けていたコープから無線で聞こえるかと尋ねられたため、美空ははいと答える。
『後席、聞こえるか?』
『はい』
『よしっいいぞ』
その後エアボス(飛行甲板や艦周辺の航空機運用を一切指揮・統制する「飛行長(航空長)」)に対して音声に問題ないかとやり取りしながら、キャノピーを降ろす。
『エアボス、こちらジョーカー1。音声に問題はないか?』
『明瞭だ』
それが終わるとレーダーや航法システム、燃料や総重量といった機体確認を細かに行っていき、それを聞きながら美空はバイザーを降ろしていく。
『航法システム及びレーダー良好、燃料フル。総重量23300。パイロット、コープ』
確認作業が終わると発艦許可が降りたため、機体をゆっくりと前進させていきカタパルトへ前輪を乗せながら、コープは美空に対してD.D.。
あのネクタイ男から何を吹き込まれたと尋ねる。
『ジョーカー1、発艦を許可する』
『…ところでどんな情報を入れられた?D.D.に、ほらっ話しかけてた奴がいただろ?アイツさ』
もちろん隠すものではないため、美空はD.D.からコープが伝説の撃墜王のダブルエースであることを告げられたと打ち明けた。
すると彼から返ってきた返答は、残念ながらダブルエースどころかエースですらないという返答。
『えっと…(経緯を説明中)ってなことを…』
『なるほどな…ったくD.D.め。…残念だが、ダブルエースどころかエースですらなくてね』
『え…』
どうやらただの年季を積んだパイロット…というだけらしく、撃墜王「翼」も情報が駆け巡る狭間で作り出された幻に過ぎないとのこと。
『ただの年季を積んだパイロットってだけさ、…撃墜王「翼」。そんなのは情報が駆け巡る狭間で作り出された幻に過ぎない』
デマ、ガセ、噂話。どうやらこの戦争の全貌が見えない部分ではそういったもので出来ているらしく、撃墜王「翼」もそうらしい。
『デマ、ガセ、噂話。そう、この全貌の見えない戦争のかなりの部分はそういうもんで出来ている』
『……』
『撃墜王「翼」もそうだ』
ちなみにコープ曰くネクタイ男D.D.こそがそんな情報とやらの元締めの一人らしく、それを聞いた美空は詐欺師じゃん…と思わずそんなことを愚痴ってしまう。
『ネクタイの男D.D.こそ、そんな情報とやらの元締めの1人なのさ』
『はぁ…何よそれ…、ただの詐欺師じゃん…』
そんな美空をまあまあと宥めながら、どうも我々とは違う民族であることを話していく。
『まあそう言ってやるな、どうも我々とは違う民族みたいだしな』
隣のカタパルトで恐らく僚機らしき戦闘機が射出されるのを確認しつつ、撃墜数はゼロだが発着艦ぐらいは年齢相応にしっかり出来るから安心してくれ、とコープはそんなことを口にする。
『撃墜数はゼロだが、発着艦ぐらいは安心してくれ』
まあそれは出来て貰わないと困るんだけどね…と内心そんなことを思っていると、発艦合図を受けた2人の乗る戦闘機がカタパルトで射出される形で急発進。
当然話に夢中で身構えてなかった美空は思わず声にもならない悲鳴を上げながらシートに叩きつけられていく。
ーまあそれは出来て貰わないと困るんだけど…ね…じゃないと帰ってこれn…ー
ゴッ!
「…!!??」
まあそりゃこんな経験をしたことがないためそうなるのも無理はない、がそれでも身体は慣れているのか気を失うことはなかったらしく、無線の声を聞きながらびっくりした…とそう思う。
『ジョーカー1の発艦を確認』
ーはぁ…びっくりした…、でもそれだけ…なんだよね…身体が慣れてるっていうか…ー
その後2人の乗る戦闘機は空母の周辺を旋回しつつ、操縦するコープは先ほどとは違った話題を振り始めていく。
『俺たちはちっぽけだ、広大に広がる海は孤独とは何なのか教えてくれる…。そういうの、あんた分かるか?』
一瞬想定外のことを聞かれた美空は、困惑しかけたもののなんとなくここははいっといったほうがいいというか言いたいことはなんとなく分かっていたため、はいと答えた。
『えっあっ…まあ…はい』
『なるほど…、ならお仲間だな』
その間きも機体は艦隊周囲を旋回、するとコープが右側をみてみろと告げてきたため、美空はそちらに視線を向けていく。
『右側を見てみろ』
そこには先ほど発艦してきた空母エンデュランスの姿があり、コープは今日からあれがお前のお袋さんになるから挨拶をしておくといいと告げる。
お袋さんかどうかはさておき、これからしばらくお世話になることは間違いなく、美空は瞳を閉じながら挨拶代わりに頭を下げる。
『あっ…エンデュランス』
『挨拶するといい、今日からあれがお前のおふくろさんだ』
『…』
その間にも機体は上昇、先行したジョーカー隊4番機と合流。今回のお供はこの機体のパイロット、名前はコスターらしく、相変わらずな急接近に彼も思わず笑みを浮かべてしまう。
『今日のお供は4番機だ、見ろよぴったりついてくる。コスターめ』
ーこの人がコスターっていうんだ…ー
するとXOであり空母エンデュランス航空隊の指揮を実質的にとるジェシカ・パイクから、無線で目標の詳細情報が飛び込んできて、コープも返答を返していく。
『CDCよりジョーカー1、ジョーカー4。目標右10度9.7マイル』
『ジョーカー1了解』
その後2機は編隊を組みながら目標に向けて飛行を続けていくのであった。