正直に申し上げますと、隠す気はさらさらありません。
リンさんとエレベーターで移動する。
眼前に広がる広大な景色と高所で目眩がした。
「キヴォトスは数千の学園が集まってできている巨大な学園都市です。
これから先生が働くところでもあります。」
リンさんの話に耳を向けながら、私はその景色を眺めていた。
知っている景色とその多くが違う。
ここは……少なくとも私のいたところよりも幾分か平和に見えた。
「……。」
リンさんはそんな私を少し見つめていたようだったけど、続きを話し始めた。
「きっと先生がいらっしゃったところとは色々な事が違っていて、
最初は慣れるのに苦労するかもしれませんが……。
でも先生なら、それほど心配しなくてもいいでしょう。」
「ん……本当にそう思うの?」
「はい。貴方は、あの連邦生徒会長が、お選びになった方ですからね。」
その発言に、私は何となく、連邦生徒会長という人物が信頼されていることを感じた。
「……それは後でゆっくり説明することにして。」
(チン)
「ん」
どうやら目的の階に着いたようだった。
エレベーターから一歩踏み出したリンさんはこちらを振り返って言った。
「改めまして、キヴォトスへようこそ、先生。」
——————————
レセプションルームは少しざわざわしており、慌ただしい雰囲気があった。
周りを見渡していると、
「ちょっと待って!代行!見つけた、待ってたわよ!連邦生徒会長を呼んできて!」
1人の少女がこちらに近づいてきた。
「……うん?隣の…大人の方は?」
少女の質問と同時に、もう2人の少女がこちらに来た。
「首席行政官。お待ちしておりました。」
「連邦生徒会長に会いに来ました。
風紀委員長が、今の状況について納得のいく回答を要求されています。」
急な質問攻め。
どうすればとリンさんの方を向いたら……。
「あぁ……面倒な人たちに捕まってしまいましたね。」
ん、怖い。
「こんにちは、各学園からわざわざここまで訪問してくださった
生徒会、風紀委員会、その他時間を持て余している皆さん。」
何となくリンさんの態度からここが大変な場所なのではと思い始める。
「こんな暇そ……大事な方々がここを訪ねてきた理由は、よく分かっています。」
ん、帰りたい。
……帰りたい?
あそこに?
あの”空っぽの街”に?
「今、学園都市に起きてる混乱の責任を問うために……でしょう?」
「そこまで分かってるなら何とかしなさいよ!連邦生徒会なんでしょ!」
混乱?
一体何がこの都市で起きているのだろう。
「数千もの学園自治区が混乱に陥っているのよ!
この前なんか、うちの学校の風力発電所がシャットダウンしたんだから!」
「連邦矯正局で停学中の生徒たちについて、一部が脱出したという情報もありました。」
「スケバンのような不良たちが、登校中の生徒たちを襲う頻度も、最近急激に高くなりました。
治安の維持が難しくなっています。」
気付けばもう1人少女が増えていた。
「戦車やヘリコプターなど、出所の分からない武器の不法流通も2000%以上増加しました。
これでは正常な学園生活に支障が生じてしまいます。」
……聞いた感じ、大変なことになってるみたいだけど……。
「……。」
リンさんはそれを聞きながら、何かを待っているようだった。
まるで、それを言うべき最もベストなタイミングを待っているというか……。
「こんな状況で連邦生徒会長は何をしているの?どうして何週間も姿を見せないの?
今すぐ合わせて!」
「……。」
そうだ。
さっきから連邦生徒会長という存在について、聞くばかりで姿が見えない。
というか私を呼んだのがその人ならリンさんと一緒にいてもおかしくn
「連邦生徒会長は今、席におりません。
正直に言いますと、行方不明になりました。」
「……え?」
「……え!?」
「……!!」
耳がピンと立つ。
いないって……?
「やはりあの噂は……。」
「結論から言うと“サンクトゥムタワー”の最終管理者がいなくなったため、
今の連邦生徒会は行政制御権を失った状態です。」
つまり、都市中が無法状態……ってことかな。
「認証を迂回できる方法を探していましたが……
先ほどまで、そのような方法は見つかっていませんでした。」
先ほどまで?
つまり……。
「それでは、今は方法があるということですか、首席行政官。」
「はい。」
だよね。
とかそんなことを思っていたら、衝撃的なことをリンさんは口にした。
「この先生こそが、フィクサーになってくれるはずです。」
ん……ん?
「!?」
「!」
「この方が?」
「……私が?」
私がフィクサー?
でもどうやって?何をすれば?そもそも何ができるの?
「ちょっと待って。そういえばこの先生はどなた?どうしてここにいるの?」
ここでようやく来るべき質問が来た。
「ここではないところから来た方のようですが……先生だったのですね。」
「はい。彼女は、これからキヴォトスの先生として働く方であり、
連邦生徒会長が特別に指名した人物です。」
「行方不明になった連邦生徒会長が指名……?ますますこんがらがってきたじゃないの……。」
それはそう。
何で行方不明になった人が、そもそもどうやって私を指名したんだろう。
取り敢えず、流れ的にも丁度良さそうなので、挨拶することにした。
「えっと……
「こ、こんにちは、先生。私はミレニアムサイエンススクールの……
い、いや、挨拶なんて今はどうでもよくて……!」
「そのうるさい方は気にしなくていいです。続けますと……」
怖い。(2度目)
「誰がうるさいって!?わ、私は早瀬ユウカ!覚えておいてください!先生!」
「ん、よろしくね。」
ユウカさんの自己紹介が終わったところで、リンさんは話を再開した。
「……先生は元々、連邦生徒会長が立ち上げた、
ある部活の担当顧問としてこちらに来ることになりました。」
リンさんは少し息を吸ってから、その名を告げた。
「連邦捜査部“シャーレ“。
単なる部活ではなく、一種の超法規的機関。
連邦組織のため、キヴォトスに存在する全ての学園の生徒たちを
制限なく加入させることすらも可能で、
各学園の自治区で、制約無しに戦闘活動を行うことも可能です。」
リンさんが話すその部活はあまりにも強力で、
部活に疎い私でも異常な部活であるということは理解できた。
「なぜこれだけの権限を持つ機関を、連邦生徒会長が作ったのかは分かりませんが……。」
リンさんはそう言いながら、窓の外に目線を向けた。
「シャーレの部室はここから約30km離れた外郭地区にあります。
今はほとんど何もない建物ですが、連邦生徒会長の命令で、
そこの地下に“とある物“を持ち込んでいます。
先生をそこにお連れしなければなりません。」
リンさんはそう言うと、通信機器を起動した。
「モモカ、シャーレの部室に直行するヘリが必要なんだけど……。」
『シャーレの部室?……ああ、外郭地区の?そこ、今大騒ぎだけど?』
「大騒ぎ……?」
『矯正局を脱出した停学中の生徒が騒ぎを起こしたの。そこは今戦場になってるよ。』
「……うん?」
なんか今良くなさそうな事が聞こえた気がする。
『連邦生徒会に恨みを抱いて、地域の不良たちを先頭に、周りを焼け野原にしてるみたいなの。
巡航戦車までどっかから手に入れてきたみたいだよ?』
「……焼け野原…。」
……うっ。
『それで、どうやら連邦生徒会所有のシャーレの建物を占拠しようとしてるらしいの。
まるでそこに何か大事なものでもあるみたいな動きだけど?』
「……。」
『まあでも、もうとっくにめちゃくちゃな場所なんだから、別に大した事な……
あっ、先輩、お昼ご飯のデリバリーが来たから、また連絡するね!』
(ブツッ)
「……。(プルプル)……。」
あっ、キレてる……。
「ん、大丈夫……?」
「……だ、大丈夫です。……少々問題が発生しましたが、大したことではありません。」
そういった後、リンさんは急に何か妙案でも思いついたようにユウカさん達を見つめ始めた。
「……?」
「な、何?どうして私たちを見つめてるの?」
……あ、まさか。
「丁度ここに各学園を代表する暇そうな方々がいるので、私は心強いです。」
「……えっ?」
……ああ……(納得)
「キヴォトスの正常化のために、暇を持て余した皆さんの力が今、切実に必要です。
行きましょう。」
そう言ってリンさんは足早に歩いて行った。
「ちょ、ちょっと待って!?ど、どこに行くのよ!?」
私とユウカさん達も、リンさんを追いかけた。
今後の投稿についてなのですが、現在もう一つの小説と並行してこれを書いており、
どちらかと言えばもう片方が優先となっています……が、そのもう片方がもうそろ終わるので、
そちらが終わり次第こちらがメインになります。
なので、少なくとも今は更新を気長にお待ちください。