よろしくお願い致します。
それと、なんか文字数が多いですが、次回以降からはここまで文字数が増えることはないと思われるのでご安心くださいませ。
(文字数多い方がいいって方にはここで謝罪します。)
(ヒュオオオオーーー!!)
特徴的な風切り音。
そして、前に嫌というほど聞いた音。
(ドカアアァァァァン!)
「な、なに、これ!?」
(タタタタタタッ!!)
驚いてる間にも次々と弾丸が飛んでくる。
何があったらこうなるのか。
「なんで私たちが不良たちと戦わなきゃいけないの!!」
ユウカさん、割とそれ正論。
「サンクトゥムタワーの制御権を取り戻すためには、
あの部室の奪還が必要ですから……。」
誰か知らないけどあまりにも理解が早い。
私も見習いたい。
「それは聞いたけど……!
私これでも、うちの学校では生徒会に所属してて、
それなりの扱いなんだけど!なんで私が……!」
「ん、ユウカさんそんなに顔出すと……」
(パパパパパッ!)
あ、命中した。
「いっ、痛っ!!痛いってば!!
あいつら違法JHP弾を使ってるじゃない!?」
ん!?JHP弾が違法!?
「伏せてください、ユウカ。
それに、ホローポイント弾は違法指定されてはいません。」
なんだ良かった。
「うちの学校ではこれから違法になるの!傷跡が残るでしょ!」
そういうこと。
「先生は大丈夫ですか?」
「ん、一応大丈夫……けど皆ほど丈夫じゃないから……。」
見た感じだけど、この世界の人たちは私のとこの人たちより丈夫みたい。
「分かりました。
では、極力先生に攻撃が当たらないよう気を付けましょう。
先生を守ることが最優先。
あの建物の奪還はその次です。」
「ハスミさんの言う通りです。
部室を奪還しても先生が無事でなければ意味がないですから。」
黒髪の子はハスミさん、覚えた。
「分かってるわ。先生、先生は戦場に出ないでください!
私たちが戦っている間は、この安全な場所にいてくださいね!」
「……それじゃ、指揮と後方支援は任せて。」
「え、えぇっ?支援はともかく、戦術指揮をされるんですか?
まあ……先生ですし……。」
「分かりました。これより先生の指揮に従います。」
「生徒が先生の言葉に従うのは自然なこと、ですね。
よろしくお願いします。
あ、そう言えば名前がまだでしたね。
チナツです。」
「あ、私はスズミです。」
赤タイツの子はチナツさん、白髪の子はスズミさん……。
うん、完璧。
「分かったわ。
なら先生にこれを渡しておくわ。」
そう言ってユウカさんは私に小型の無線機を渡した。
「……よし、じゃあ行ってみましょうか!」
大きく息を吸う。
「作戦、開始!」
◆◆◆◆◆◆
双眼鏡と肉眼を用いて戦闘を観察しながら的確に指示を飛ばしていく。
「ん、スズミさん、前方の敵を閃光弾で無力化お願い。」
「了解、行きます!」
スズミさんが閃光弾を投擲、敵が一斉に倒れる。
反射で目を塞いだ敵はその隙にハスミさんが狙撃で無力化。
ただ、閃光弾の光と音で別の方向からも敵が集まってくる。
———全部、予想通り。
「ユウカさん、シールド展開と同時に突撃、前線で注意を引いて。
その間にハスミさんは狙撃、スズミさんは射撃と閃光弾で牽制、
誰かが怪我した時はチナツさん、お願い。」
「分かったわ!」
「分かりました。」
「了解です!」
「治療はお任せを!」
これで一網打尽……!
◆◆◆◆◆◆
取り敢えず見えていた分の敵は無力化に成功した。
「そういえば。」
スズミさんが思い出したように話し始めた。
「なんだか、戦闘がいつもよりやりやすかった気がします……。」
「……やっぱりそうよね?」
ユウカさんもそれに賛同した。
「先生の指揮のおかげで、普段よりずっと戦いやすかったです。」
「私?」
「なるほど……これが先生の力……
まあ、連邦生徒会長が選んだ方だから当たり前か……。」
そんな話をしていたら、再び多くの敵が現れる。
まだまだ戦闘は続くみたい。
「それでは次の戦闘もよろしくお願いします、先生。」
全員が先頭の準備を完了させる。
「行くよ!」
このまま突っ切る———!
◆◆◆◆◆◆
敵を蹴散らしながら走り続けること数分、建物が見えてきた。
「もうシャーレの部室は目の前よ!」
ユウカさんがそう言った時、連邦生徒会との通信が繋がった。
『今、この騒ぎを巻き起こした生徒の正体が判明しました。
ワカモ。百鬼夜行連合学園で停学になった後、矯正局を脱獄した生徒です。
似たような前科がいくつもある危険人物なので気を付けてください。』
「分かった。
ありがとう、リンさん。」
『……貴方は先生です。
別に呼び捨てでも構わないのですよ?』
「ん……じゃあ、リンちゃん。」
『……まあ、良しとしましょう。』
◆◆◆◆◆◆
街中のとある歩道橋の上に、1人の少女が立っていた。
リンが先生たちに話した危険人物、”ワカモ”だ。
「……あらら。連邦生徒会は来ていないみたいですね。
フフッ、まあ構いません。」
ワカモはシャーレの部室がある建物の方向を見つめていた。
「あの建物に何があるかは存じ上げませんが、
連邦生徒会が大事にしている物と聞いてしまうと……
壊さないと気が済みませんね……。」
ワカモはどこか、嬉しそうな様子だ。
「ああ……久しぶりのお楽しみになりそうです、ウフフフ♡」
◆◆◆◆◆◆
銃撃が飛び交う戦場。
道中に敵が置いたであろう多くのバリケードがあったけど、
むしろ好都合。
「ん……あれは……?」
ふと、奥から誰かやってくることに気づいた。
他の敵とは何か違う。
「騒動の中心人物を発見!対処します!」
「「「!」」」
「ていうことは、あれが……ワカモ。」
「フフ、連邦生徒会の子犬たちが現れましたか。お可愛らしいこと。」
私は持っていた肩にかけていた銃を構える。
灰色のアサルトライフル、”GRAY FANG 465”。
私の、相棒だ。
「ユウカさん、スズミさんと連携してワカモの注意をひいて。」
「任せて!」
「ハスミさんは隙ができたら狙撃。」
「お任せください。」
「チナツさん、怪我した時は、よろしく。」
「了k……先生!?」
鞄のカバーを瞬時に外して展開、防弾盾を構えて駆け出す。
そのままワカモの左に回る。
「!」
ワカモが瞬時に私に発砲。
恐ろしい反射神経と動体視力。
でも……
「っ!」
それを盾で受け止める。
凄い衝撃だが耐え切る。
そのまま盾の後ろから軽く連射。
ワカモが軽くガードする……その時を狙ってた。
(バンッ!!)
「おっと♪」
ハスミさんの狙撃を避けた……?
完全に隙をついたはず……もはや凄い。
すると、ワカモは銃を肩に乗せて、
「私はここまで、後は任せます。」
そう言って走り去っていく。
「逃げられてるじゃない!?追うわよ!」
「いいえ、生半可な行動をしてはなりません。
私たちの目標はあくまでも、シャーレの奪還。
このままシャーレのビルまで前進すべきです。」
「……うん、まあいいわ。
あいつを追うのは私たちの役目じゃないってことね。」
「罠かもしれませんし。」
「はい。
建物の奪還を優先で。このまま引き続き、進むとしましょう。」
「よし、じゃあ指揮を続けるよ。」
「先生はさっきみたいに勝手に出て行かないこと!」
「ん……分かった……。」
私たちは数多くいる敵を蹴散らしながら、再び前進を続けた。
◆◆◆◆◆◆
「よし!建物の入り口まで到着!」
後はこのまま中に……。
(ゴゴゴゴゴゴゴ———)
ん?
「……うん?この音は……。」
「気を付けてください、巡航戦車です……!」
本当に私たちの目の前に巡航戦車が現れた。
ここまでするんだ……。
「クルセイダー1型……!私の学園の制式戦車と同じ型です。」
「不法に流通された物に違いないわ!
PMCに流れたのを不良たちが買い入れたのかも!
つまりガラクタってことだから、壊しても構わないわ!!
行くわよ!」
そんな中、視界の橋で動く何者かに気づく者はいなかった。
「あちらに気を取られてる間に……ちょっとお邪魔しますね。
フフフフ♡」
◆◆◆◆◆◆
戦車を破壊して中の操縦者を無力化した後……。
「着いた!!」
「はい。」
『”シャーレ”部室の奪還完了。
私も、もうすぐ到着予定です。
建物の地下で会いましょう。』
「ん、先に入ってる。」
私はそう言って、一足先に建物の中へ入った。
—————————
「うーん……これが一体何なのか、全く分かりませんね。
これでは壊そうにも……。」
ワカモに会っちゃった。
「……あら?」
一瞬銃を構えようとも思ったけど、
特に敵意もないみたいだから挨拶してみることにした。
「……どうも?」
「あら、あららら……。」
ん?
「……。」
なんか……。
「あ、ああ……。」
様子が変?
「し、し……。」
「し?」
「失礼いたしましたー!!」
そのままワカモはどこかへ行ってしまった。
「……?」
しばらく私は放心状態だった。
◆◆◆◆◆◆
珍事から数十分後、リンちゃんがやってきた。
「お待たせしました。」
私は中身のなさすぎる頷きで返した。
「……?何かありましたか?」
私はすぐに気持ちを入れ替えた。
「ん、大丈夫。」
「……そうですか。
ここに、連邦生徒会長の残したものが保管されています。」
そのままリンちゃんはスッとそれを持ち上げた。
「……幸い、傷一つなく無事ですね。」
そしてそれをこちらに差し出した。
「……受け取ってください。」
「……これが、例の物……。」
「はい。これが連邦生徒会長が先生に残した物。
“シッテムの箱”です。」
あの時、私が起動したそれに、これはよく似ていた。
「普通のタブレットに見えますが、実は正体の分からない物です。
製造会社も、OSも、システム構造も、動く仕組みの全てが不明。
連邦生徒会長は、この”シッテムの箱”は先生の物で、
先生がこれでタワーの制御権を回復させられるはずだと言っていました。」
私は”シッテムの箱”をリンちゃんから受け取る。
前と違って、傷一つない新品も同然だった。
「私たちでは起動すらできなかった物ですが、
先生ならこれを起動させられるのでしょうか、それとも……。」
私は画面をじっくりと見つめた。
傷だらけの少女は、映っていなかった。
「…………。」
「……では、私はここまでです。
ここから先は、全て先生にかかってます。
邪魔にならないよう、離れています。」
そう言って、リンちゃんは私の後ろに移動した。
私は、”シッテムの箱”を起動した。
◆◆◆◆◆◆
[…
Connecting To Crate of Shittim…
システム接続パスワードをご入力ください。]
確かパスワードは……ん、脳裏に何か浮かんだ……。
……知ってるのとちょっと違うけど、いいや。
“我々は望む、七つの嘆きを。”
“我々は覚えている、ジェリコの古則を。”
[……。
接続パスワード承認。
現在の接続者情報は砂狼シロコ、確認できました。]
『”シッテムの箱”へようこそ、砂狼シロコ先生。
生体認証及び認証書生成のため、
メインオペレートシステムA.R.O.N.Aに変換します。』
画面が暗転する。
◆◆◆◆◆◆
見たこと無い教室。
そこで、ひとりの女の子が机の上にうつ伏せで居眠りしてる。
『くううぅぅ……Zzzz』
……凄い気持ちよさそう。
『くううぅぅ……Zzzz』
ん、寝言言ってる。
『むにゃ、カステラにはぁ……いちごミルクより……バナナミルクの方が……。
くううう……Zzzzzzz』
……私は牛乳派。
『えへっ……まだたくさんありますよぉ……。』
このままだと起きそうにないから、頬を突いてみる。
よく寝てた先輩を起こす時に同じことをしてたし。
「えいっ。」
ツン。
『うにゃ……まだですよぉ……しっかり噛まないと……。』
「まだ食べてる……。」
ツンツン。
『あぅん、でもぉ……。』
「先輩より寝坊助……。」
ツンツンツン。
『うぅぅぅんっ。』
(ガタッ)
「お。」
少女はむくりと起き上がった。
「うにゃ……んもう……ありゃ?」
「ん。」
「ありゃ、ありゃりゃ……?」
「ん?」
「え?あれ?あれれ?」
「???」
「せ、先生!?
この空間に入ってきたっていうことは、ま、ま、まさかシロコ先生……?!」
「ん、そうだよ。
貴方は……誰?」
『う、うわああ!?そ、そうですね!?もうこんな時間!?
うわ、わああ?落ち着いて、落ち着いて……。』
……大丈夫かな……。
『えっと……その……あっ、そうだ!まず自己紹介から!』
そう言うと、少女は席から立ち上がって喉を少し鳴らした。
『私はアロナ!
この”シッテムの箱”に常駐しているシステム管理者であり、メインOS、
そしてこれから先生をアシストする秘書です!』
そう言ってから、アロナのヘイローがハート型になった。
『やっと会うことができました!
私はここで先生をずっと、ずーっと待っていました!』
「……寝てたわけではなく?」
『あ、あうう……も、もちろんたまに居眠りしたりしたこともあるけど……。』
ん、可愛い。
「よろしく。」
『はい!よろしくお願いします!』
まだ身体のバージョンが低い状態でして、
特に声帯周りの調整が必要なのですが……。
これから先、頑張って色々な面で先生のことをサポートしていきますね!』
すると、アロナは思い出したように、
『あっ、そうだ!ではまず、形式的ではありますが、生体認証を行います♪』
そう言った。
「えっと……指紋?」
アロナは頷くと、急にもじもじし始めた。
『うう……少し恥ずかしいですが、手続きだから仕方ないんです。
こちらの方に来てください。』
「ん、分かった。」
少し近づく。
『もう少しです。』
もうちょっと近づく。
すると、アロナは指を立てた。
『さあ、この私の指に、先生の指を当ててください。』
私は人差し指をアロナの指に当てる。
『うふふ。まるで指切りして約束するみたいでしょう?』
「……なんか、宇宙人の映画で見たことある。」
『はい?宇宙人の映画ですって?』
あ、ちょっと怒ってる。
可愛い。
『実は、これで生体情報の指紋を認証するんです!』
「ん、凄い。」
そう言うと、急に胸を張って話し始めた。
可愛い。
『画面に残った指紋を目視で確認するのですが……すぐ終わります!
こう見えて目は良いので。
どれどれ……。』
ん?
『うう……。』
時間かかってる気がする。
アロナは少し難しい顔をした後、急に落ち着いたような顔になった。
『……はい!確認終わりました♪』
「……真面目にやった?
手抜きしてるみたいだったけど……。」
『え?えっ、えっと……そんなことありません!』
「……最近のタブレットは指紋認証ぐらい自動だよ。」
『えっ。』
「それに1秒くらいで終わる。」
『……わ、私にはそんな最先端の機能はないですが……。
そ、そんな能力なくてもアロナは役に立ちますから!?
目でも十分確認できますから!』
「……ええ……。」
『……全然信じてないって顔ですね……。
……うう……。』
ん?
アロナの目がウルっとしている気がする。
「えっ。」
『だったらその最先端のナントカさんのところに行ってしまったらどうですか!』
突然、呆れ果てたような顔の先輩が脳裏に浮かんだ。
いや、あの、その、先輩、これは違くて……。
その後数分間ぐらいアロナに謝罪と慰めを行った。
ちなみに後ろのリンちゃんからは変人を見るような目で見られた。
—————————
いっぱい慰めた後、アロナに取り敢えずの事情を大体話した。
『なるほど……先生の事情は大体分かりました。』
アロナは顎に指を当てて考え込むように話し始めた。
可愛い。
『連邦生徒会長が行方不明になって、
そのせいでキヴォトスのタワーを制御する手段がなくなった……。』
ん、そういえば。
「連邦生徒会長、ってアロナは知ってる?」
『私はキヴォトスの情報の多くを知ってはいますが……
連邦生徒会長についてはほとんど知りません。
彼女が何者なのか、どうしていなくなったのかも……。』
「そっか……。」
『お役に立てず、すみません。
……ですが、サンクトゥムタワーの問題は私が何とか解決できそうです。』
「ん、それじゃあお願い、アロナ。」
『はい!分かりました。それでは、サンクトゥムタワーのアクセス権を修復します!
少々お待ちください!』
そう言ってアロナは何かよく分かんない言葉を言い始めた。
◆◆◆◆◆◆
(ウイィィィィィィン———)
「ん。」
部室の電気が付いた。
どうやら修復完了したみたい?
『サンクトゥムタワーのadmin権限を取得完了……。』
「お。」
『先生。サンクトゥムタワーの制御権を無事に回収できました。
今サンクトゥムタワーは、私アロナの統制下にあります。』
「おお。」
『今のキヴォトスは、先生の支配下にあるも同然です!』
「おお!」
『先生が承認さえしてくれれば、
サンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会に移管できます。』
「ん、分かった。」
『でも……大丈夫ですか?連邦生徒会に制御権を渡しても……。』
「……。」
少し考えた。
渡さなかった時のことを……。
……。
止めておく。
「大丈夫、承認するよ。」
『分かりました。
これよりサンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会に移管します!』
「ありがとう。」
◆◆◆◆◆◆
「……はい。分かりました。」
どこかと電話していたリンちゃんは、電話を切った。
「サンクトゥムタワーの制御権の確保が確認できました。
これからは連邦生徒会長がいた頃と同じように、行政管理を進められますね。」
「ん、良かった。」
「お疲れ様でした、先生。
キヴォトスの混乱を防いでくれたことに、
連邦生徒会を代表して深く感謝いたします。」
「そう言えば……。」
私は先程の不良たちやワカモへの対応を聞いてみた。
「ここを攻撃した不良たちと停学中の生徒たちについては、
これから追跡して討伐いたしますので、ご心配なく。」
そう言ってから、リンちゃんは荷物を纏め始めた。
「それでは、”シッテムの箱”は渡しましたし、私の役目は終わったようですね。」
そうして出口の方向に向いて、
「……あ、もう一つありました。」
何かを思い出したのか、こちらを振り返った。
「ついてきてください。
連邦捜査部”シャーレ”をご紹介いたします。」
「あ、ありがとう。」
そういえばまだ中のことをよく知らなかった。
私はリンちゃんの後ろに着いて行った。
◆◆◆◆◆◆
「ここがシャーレのメインロビーです。
長い間空っぽでしたけど、ようやく主人を迎えることになりましたね。」
そう言って、リンちゃんはドアに張ってあった
“空室
近々始業予定”
と書かれた貼り紙を剥がし、ドアを開けた。
「そして、ここがシャーレの部室です。
ここで先生のお仕事を始めると良いでしょう。」
「……私は、これから何をすればいいの?」
大事なことだ。
とにもかくにも、やるべきことはやらなきゃいけない。
そうしないと……。
「……シャーレは、権限だけはありますが目標のない組織なので、
特に何かをやらなきゃいけない……という強制力は存在しません。」
「ん、そうなんだ。」
「はい。
キヴォトスのどんな学園の自治区にも自由に出入りでき、所属に関係なく、
先生が希望する生徒たちを部員として加入させることも可能です……。」
「何というか……面白い部活だね。」
「そうでしょう?
捜査部とは呼んでいますが、その部分に関しては、
連邦生徒会長も特に触れていませんでした。」
「連邦生徒会長も……。」
「つまり、何でも先生がやりたいことをやって良い……ということですね。」
すると、リンちゃんは困ったような顔になった。
「……本人に聞いてみたくても、連邦生徒会長は相変わらず行方不明のまま。
私たちは彼女を探すのに全力を尽くしているため、
キヴォトスのあちこちで起きる問題に対応できるほどの余力がありません。」
途中でため息が1つ挟まる。
「今も連邦生徒会に寄せられてくるあらゆる苦情……
支援物資の要請、環境改善、落第生への特別授業、部の支援要請などなど……。」
再びため息。
しかし、今度は顔が明るくなった。
「……もしかしたら、時間が有り余っている”シャーレ”なら、
この面倒な苦情の数々を解決できるかもしれませんね。」
「その辺りに関する書類は、先生の机の上にたくさん置いておきました。
気が向いたらお読みください。
全ては、先生の自由ですので。」
……自由……か。
「それではごゆっくり。
必要な時には、またご連絡いたします。」
そう言って、リンちゃんは部屋から出て行った。
◆◆◆◆◆◆
「ええ。
サンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会が取り戻したことを確認したわ。」
リンちゃんが戻った後、私は外でさっきのメンバーと話していた。
因みに呼び捨てでも良いって言われた。
嬉しい。
「ワカモは自治区に逃げてしまったのですけど……すぐ捕まるでしょう。
私たちはここまで。
あとは、担当者に任せます。」
「お疲れ様でした、先生。
先生の活躍はキヴォトス全域に広がるでしょう。
すぐにSNSで話題になってしまうかもしれませんね?」
「ん……私なんかを話題にしても面白いことない、よ。
それよりみんなも、お疲れ様。」
「ありがとうございます。
これでお別れですが、近いうちにぜひ、
トリニティ総合学園に立ち寄ってください。先生。」
スズミもぺこりと頭を下げた。
そうしてトリニティから来た2人は共に帰って行った。
「私も、風紀委員長に今日のことを報告しに戻ります。
ゲヘナ学園にいらっしゃった時は、ぜひ訪ねてください。」
続いてチナツも、ゲヘナ学園へ戻っていった。
「ミレニアムサイエンススクールに来てくだされば、またお会いできるかも?
先生、ではまた!」
最後に、ユウカもミレニアムへ足早に戻っていった。
静かになったシャーレの建物前で、私はポケットからシガレットを出した。
それを口に咥える。
いつもなら誰も見ていないし煙草のはずだった。
でも今は……こっちの方が良い。
「……戻ろう。」
入る直前に、私は晴れた空を見上げた。
「……先輩、私、頑張る。」
シャーレの建物は、ようやく主を迎えた。
◆◆◆◆◆◆
どこかの都市の中、ワカモが1人立っていた。
「……ああ……これは困りましたね……。」
そういう割にはどこか、嬉しそうだ。
「フフ……フフフ。
……ウフフフフフフ♡」
◆◆◆◆◆◆
落ち着いたシャーレの部室で、私は”シッテムの箱”を起動した。
『あはは……なんだか慌ただしい感じでしたが……
ある程度、落ち着いたみたいですね。
お疲れ様でした。』
「アロナも、お疲れ様。」
『はい!でも、本当に大変なのは、これからですよ?』
……ん?え?
『これから先生と一緒に、
キヴォトスの生徒たちが直面している問題を解決していくのです……!』
「問題……。」
『単純に見えても決して簡単ではない……とっても重要なことです。』
「……そうだよね。」
『それではキヴォトスを、シャーレをよろしくお願いします、先生。』
「ん、こちらこそ。
よろしくね、アロナ。」
『それではこれより、連邦捜査部”シャーレ”として、
最初の公式任務を始めましょう!』
「……えへへ。」
『?どうかされましたか?先生。』
「ん、何でもない。」
先輩、みんな。
あなた達の分まで、私が青春を謳歌するね。
そして……また会えた時、いっぱい話してあげる。
だから、楽しみにしてて。
<アビドス高等学校>
生徒:
3年 小鳥遊ホシノ
2年 十六夜ノノミ
砂狼シロコ
1年 奥空アヤネ
黒見セリカ
そこは、先生の過去が永久に眠る場所。
そして、今は5人の生徒が守る、