クローン兵士の日常 異世界に転生したら危険と美女がいっぱいでした 作:仮名絵蛍蝶
アスラ部隊のエースにして美乳で巨乳、素敵軍人マリカさんの課した入隊テストを無事にクリアしたオレは兵舎棟に向かった。10棟ある兵舎には1000以上の部屋がある。隊員に施設従業員を合わせれば2000人近くの人間がこの基地で暮らしているのだそうだ。6号兵舎の649号室、そこがオレの新しい住まいだ。
与えられた部屋の広さは研究所とさほど変わりない。違うのは窓に鉄格子がないことぐらいだ。最低限の日用品は既に準備してあった。歯ブラシ、石鹸、タオルに下着。もちろん替えの軍服も。下着はブリーフか。オレはトランクス派なんだけどな。
細かいところに文句を言っても仕方がない。気に入らないなら買えばいいだけだ。ローズガーデンには立派な購買区画があるんだから。そしてオレの手には司令にもらったクレジットカードがあるのだ。
気前のいいボスはありがたいもので、司令は階級章だけじゃなくて支度金まで用意してくれた。カードには50万クレジットの預金が入っている。当座の資金としては十分、オレに浪費癖はない。お気に入りのマンガやラノベは大人買い、その程度の贅沢で満たされる小市民だからな。
自由都市同盟に加盟している都市国家の間では、統一通貨としてクレジットが採用されている。元の世界のユーロみたいな感じだな。1クレジットは元の世界の1円に相当する。わかりやすくていい。とりあえず購買区画でも覗きにいこうかと考えていたら、部屋に設置されている通信用モニターから呼び出し音が鳴った。
「はい、来々軒です」
「今度つまんねえ冗談を言ったら、首をへし折って二階級特進させてやンよ」
美乳で巨乳(クドイようだがここは非常に重要だ、オレにとっては)のエースにはウケなかったどころか殺人予告をされてしまった。ここは素直に謝ろう。オレは強い人には徹底服従がモットーだ。
「すいません、オレに何か御用でしょうか?」
「身の回りの品を揃えなきゃいけないンだろ。ついでに基地を案内してやるよ。ランデブーポイントを戦術タブレットに送ったから5分以内に来い。1分遅れるごとに指を1本、切り落とす」
「すぐに行きます!」
慌てて戦術タブレットを確認する。
「指を落とさずに済ンだな」
背後から声をかけられてビクッとした。音もなく忍び寄るのはやめてください。隙だらけのオレが悪いのかもしれないけど。
「あや取りが趣味なんで、指は10本必要なんです」
「なら落とすのは足の指にしてやるよ」
「物騒なジョークがガーデン流みたいですね。オレをからかうのはそんなに愉しいですか」
「ああ、愉しいね。リアクションが面白いから、からかい甲斐がある」
高木さんですか貴女は。ならばオレは西片クン並みのからかわれ上手になってみせよう! そう、マリカさんにからかわれるのは悪くない気分なのだ。元の世界では美人さんとの接点なんか皆無だったからな!
オレとマリカさんは肩を並べて店舗沿いの歩道を散策する。失踪した爺ちゃん、天国の婆ちゃん見てるか? オレ、すっげー美人さんと一緒にウィンドウショッピングしてるぞ!シャワーを浴びた後のマリカさんは石鹸のほのかな香りがして、吸い寄せられそうだった。
「カナタ、誘蛾灯に吸い寄せられる羽虫みたいにアタイの乳に顔を寄せてくるんじゃない」
ホントに吸い寄せられていたようだ。恐るべきはロケットおっぱいの誘引力よ。楽しい時間は過ぎるのが早く、あっという間に買い物は終わってしまった。トランクスを買おうとした時までマリカさんがついてきて参ったけど。
もちろん『ダサい』だの、『そんなトランクスを履いてる男と寝る女はいない』とか、さんざんからかわれた。ふと目をやった先に見慣れない店がある。
「マリカさん、あれってなんの店ですか?」
「アプリショップだよ。覗いてくかい?」
アプリ? スマホみたいなもんかな。こっちの世界じゃスマホじゃなくて、ハンディコムって携帯電話が普及してるみたいけど。
「アプリってインストするもんじゃないんですか?」
「インストするものさ、体にな」
「はいぃ?」
思わず杉下右京さん見たいな返し方をしちゃったよ。なんだよ体にインストって。
「カナタにもいくつか搭載されてンだろ? アドレナリンコントロールとかFCSとか」
「ああ、バイオメタル兵士の機能の話ですか」
「戦術アプリを知らないとか、どんなド田舎で育ったンだか。いいか。作戦行動に最低限必要な基本アプリは入隊時に支給されるが、より高度で兵種に合わせたアプリは自分で購入しなきゃならない。そういったオプショナルアプリを販売するのがあの店さ」
「どんなアプリが人気なんですか?」
「一番人気はアルコール分解アプリだね。アタイも入れてる」
「お酒を飲んでても、そのアプリがあれば一瞬で
「そう、心おきなく酒を呑む為の必需品。他の売れ筋は翻訳アプリや目覚ましアプリだね。便利系アプリは兵種を選ばないからねえ」
目覚ましアプリはオレも重宝してる。時間指定すれば勝手に目が覚めて眠気もない。時計もいらないしな、今何時って思えば瞳に時間が表示されるし。
「そんな便利なアプリならFCSやアドコンみたいに支給すりゃいいのに」
「そこは世知辛い事情があってな。戦争には金が必要だろ? その手のアプリを兵士に売って、その金で新たなアプリを開発するって寸法さ」
「なるほど、うまく考えたもんですね」
戦争は消費のみを行う経済活動だ。世界大戦となれば、その経済規模も天文学的な数字だろうな。
「アルコール分解アプリみたいな便利系アプリは趣味の世界だが、最新の戦術アプリは細かくチェックしておけ。こっちは生死に関わる」
「了解。定期的にアプリショップに顔を出すようにします」
「そうしろ。例えば半年ほど前に対人ミサイルを脳波誘導できる新型アプリが開発されたンが、まだ全軍に行き渡っていない。重砲支援タイプの兵士には垂涎のアプリなんだがな。だが金さえ積めば入手可能って訳だ」
『生き残りたきゃ金を積め』ってか。マジで世知辛えな。
「戦果を上げて報奨金を貰い、その金で最新の戦術アプリをインストしてさらに戦果を上げる。それができなきゃ負の連鎖にハマりかねない。名士の出身でもなく、入隊したばかりのカナタは貧乏だろうけど、小金を掴んでも浪費するな。稼いだら文字通り、自分自身に投資するんだ。それが生き残りにつながるし、仲間の為にもなる」
「そうします。司令がポケットマネーで報奨金を弾んでくれるのは、部隊強化の意味合いもあったんですね」
「ああ、イスカは気前のいい女だが、単なる好待遇じゃないってことさ」
「脳波誘導ミサイルアプリかぁ。金が貯まったら買おうかな?」
マリカさんは首を振って忠告してくれる。
「やめとけ。インスト出来るアプリには限界がある。念真強度の容量一杯までだ。カナタの念真強度は100万nあるようだから、並み兵士の倍以上のアプリをインスト可能だが、脳波誘導ミサイルアプリは容量をバカ食いするからな。インストしたはいいものの、他にもっと有用なアプリが出て泣く泣くアンインストって羽目になりかねない。そうなりゃ金をドブに捨てることになる」
アプリは再利用不可って訳か。購入する時は慎重に考えないといけないな。
「なるほど。オレは刀が武器のアタッカーだし、近接戦強化のアプリを買う方が有用ってことか」
「そう、アプリを買う時は兵種と適性を考えるンだ。カーチスみたいなガンナータイプの兵士はあるのとないのじゃ大違いだろうがな。あの野郎は裏から手を回して、ショップに並ぶ前に入手してたけどね。ま、金さえ積めばそういった裏技も可能ってことさ」
「カーチス?」
「6番隊隊長の『鉄腕』カーチス。いけ好かない助平親父だが重砲支援にかけては奴の右に出る者はいない。今はどこぞの陣地防衛の助っ人に行ってるよ。くたばってなきゃあ、そのうち帰ってくるだろうけどね」
男の隊長もいるのか、ちょっと残念だ。
「へえ、凄い人なんですね。一番凄いのはエースのマリカさんでしょうけど」
「世辞を言ってもなにも出ないよ、と言いたいところだが、カナタの入隊祝いをしてやらなきゃねえ」
「いいですよ、そんなこと」
「だいぶ御執心のようだから、アタイの乳でも拝んで見るか?」
オレの目は着崩した軍服のお胸に釘付けになった。
「マジで!! それは……遠慮しておきます」
マリカさんがケンシロウばりに指を鳴らし始めたので泣く泣く諦めた。ぐすん。ここで死ぬ訳にはいかない。生きてさえいれば、マリカさんのおっぱいを拝めるチャンスが訪れるかもしれない。理想型と言えるロケットおっぱい、生きる為のモチベーションとして乳神に優る存在などない。
「乳の話はさておき、カナタはどのぐらい無酸素で活動可能だ?」
「酸素節減機能はバイオメタル化した時の基本機能に入ってました。じっとしてれば10分、泳ぐなら3~4分は無呼吸でも平気でしょう」
トレーニングルームの小型プールで実証済みだ。
「酸素軽減が基本機能、カナタは五世代型のバイオメタルってことか。だが今は効果を倍に伸ばせるアプリがある。入隊祝いにそいつを買ってやるよ。激しい戦闘でも息が上がりにくくなるし、水中で戦う状況もあり得るからな」
五世代型……バイオメタルもバージョンアップを重ねてるってことだな。そしてオレの腕を掴んでアプリショップに入ったマリカさん酸素節減アプリ『スーパー海女ちゃん』をプレゼントしてくれた。お値段なんと30万クレジットなり。しかし『スーパー海女ちゃん』って、開発部のネーミングセンスは最低だな。
「後でそれを持ってラボの調整用ポッドに入ンな。インストは1時間程度で終わる」
「ありがとうございます。大事に使います」
生まれて初めてもらった女性からのプレゼントが軍用アプリとはね。いや、オレはマリカさんからのプレゼントならトイレットペーパーの芯でも喜べる自信がある!
その後はマリカさんの後をくっついて基地内の施設を案内してもらった。見取り図を見た時にわかってたことだけど、基地にあるべき設備にラウンドワンと歌舞伎町を足したのがローズガーデンという場所だった。
ガーデンツアーの最後は医療区画。マリカさんは研究所っぽい建物の前で足を止めた。
「ここがラボだ、アプリをインストしてもらいな。それからウチの連中が、明日の18:00におまえの歓迎会をやるって言ってるから大食堂に来な」
「……本当に歓迎されますかね?」
アギトの悪行があるからなぁ。スゲー心配だ。
「さあね。ま、バカ騒ぎする口実が欲しいだけだろうよ」
「基地の案内、ありがとうございました」
「ございましたはいらない。堅っ苦しい物言い嫌いだ」
マリカさんも司令を『イスカ』って呼んでたもんな。オレもガーデン流に染まっておくか。
「ありがとう、マリカさん」
「それでいい。じゃあな、カナタ」
歩み去っていく姿もホントに絵になる上官を、オレは黙って見つめていた。主にお尻のあたりをだ。おっぱいに気を取られていたけど、お尻もすごくイイ! キュッと引き締まっていて、それでいて柔らかそう。美貌とナイスバディに目が眩んで死んだ敵兵がマジでいそうだ。
さて、アプリをインストしてもらったら部屋に帰ってもう寝よう。歓迎されてないかもしれない歓迎会に備えて、ね。