精霊が切り札の世界で、俺だけ孤独に成り上がる   作:エクシーズ次元

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001 新たな世界

 カードゲームは手段だ。

 

 前世、俺はカードゲームで友達を作っていた。

 何かで強いやつっていうのは自然と尊敬されるもんだ。

 

 カードゲームにも色んな種類がある。

 その中でも一番熱を入れたのは”ファイト・ウィザーズ”というタイトルだ。

 

 漫画原作で、アニメがすごく人気だし。

 ちょっとピーキーなバランスもごっこ遊びとしては面白い。

 

 俺の最終戦績は全国大会に掠った程度。

 そんな俺でも地元のカードゲームショップじゃあ、でかい顔が出来た。

 

 カードゲーム最高!

 全てがアニメみたいにカードゲームで回ればいいのに。

 

 そんな風に思って、日々を過ごし……。

 気がついたら死んでいた。

 

 

 

  ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

「僕は”曲芸獅子(レオタード・レオ)”銀剣のレイピオルを召喚!」

 

「なにっ!? このタイミングで切り札だと!?」

 

「精霊の力さ! 君のクリーチャーを攻撃し、ライフにダメージ!!」

 

「ぐわぁああああああああああああああああああああああ!?」

 

 ……派手に吹き飛ばされる自称キング。

 街角のこじんまりしたカードショップでそう名乗ってもダサいだけだが。

 何はともあれ、ショップの前にある公園で彼らはファイトをしていた。

 

 その右手には最新のモバイル端末であるドライバーが嵌められている。

 そこからボードが空中に展開し、どこでもファイトが出来るという仕様だ。

 

 展開される立体映像は大迫力の一言である。

 

「伊綱くん、そろそろ決勝戦よ」

 

「知ってますよ。見ていましたからね」

 

 話しかけてきた店長にニコリと笑って、俺は自称キングと交代した。

 飛んだ番狂わせだな。俺は自称キングと戦いたかったんだが……。

 

 相手はポニーテルの少女。黒髪だが、インナーカラーは血のように赤い。

 色合いだけ見れば、まさしくカードゲームアニメの登場人物って感じだ。

 

 ま、知らねぇけど。

 少なくとも俺が見てきた千話近いカードアニメにこんな奴はいなかった。

 本当にアニメ世界とかなら、相手のデッキもわかって楽だったんだけどな。

 

「よろしく伊綱くん。僕、佐条舞夏っていうんだ。舞夏って呼んで」

 

 そう言って、相手の少女がこちらに握手を求めてくる。

 年齢は似通ってそうだが、ずいぶんと礼儀正しい少女だ。

 

「よろしくお願いします、舞夏さん。良いファイトにしましょう」

 

「ああ、僕、尊敬してるんだ! 君のことを!」

 

「…………ほう?」

 

「だってどの精霊にも愛されない可(・)哀(・)想(・)な(・)立(・)場(・)なのに、大会上位常連なんでしょ?」

 

「あ?」

 

 ちょっとピキッと来た。誰が可(・)哀(・)想(・)な(・)立(・)場(・)だって?

 まぁ、いい。まだ。コイツとは一度も白黒つけちゃいない。

 

 精霊に愛されている自分こそが最強のファイターだって思っても仕方がない。

 だって、この世は精霊に愛されることこそが全てだからな。

 

 俺は眉間にシワがよるのを無理やり笑顔で隠し、握手を辞める。

 無礼な立ち振舞いというわけではなく、少し離れたプレイヤー位置に立つためだ。

 

「舞夏さん、教えてあげますよ。精霊に愛されることが決定的な差には成り得ないと」

 

「フフン、よろしくね!! わからされるのは君の方だと思うけど!!」

 

 

 

 

「「ファイト!!」」

 

 

 

 …………さて、ファイトは終始優勢だった。

 

 相手はガンガン攻めてくるビートダウン型。

 一方で俺はコントロールに割り振ったミッドレンジ型。多少ライフが削られようとも、手札やフィールドを支配していれば負けることはない。

 

 呪文カードには精霊なんざいねぇからな。

 前世よりはるかに高額だが、手に入れさえすれば誰でも使える。

 

 ま、優秀な精霊はデッキから引くカードすら制御しちまえるっていうが。

 馬鹿じゃねぇの。積み込みじゃんそんなの。イカサマだよ。

 

 もっとも……次の手が読めている相手なんざ、俺の敵にはならねぇけどな。

 

「さて、そろそろサレンダーしたほうがいいのでは?」

 

 相手の手札は0枚。場のクリーチャーは2体。

 対して俺の場にはちょっと強いクリーチャーが1体。

 低コストで弱めのクリーチャーが3体。

 

 このゲームは基本的にクリーチャーがやられても無傷だ。

 つまり俺は4回まで相手の攻撃を防げる。

 

 一応、”貫通”効果とか持ってるやつなら話は違ってくるが……。

 

 …………なんてフラグを立てつつ。

 

「それはどうかな?」

 

 そう言って、舞夏さんがデッキからカードを引く。

 キラキラと輝き、傍目からでもそれが精霊のカードだとわかった。

 運命の(ディスティニー)ドローってやつか。

 

「来たね、僕の切り札」

 

 そう呟き、舞夏さんはカードをドライバーのボードに叩きつけた。

 凛々しい召喚エフェクトとともに、女性的な体型の獣人が飛び出してくる。その手にはレイピア。銀毛の獅子。明らかに精霊がついているその切り札の名は──。

 

「”曲芸獅子(レオタード・レオ)”銀剣のレイピオルを召喚!」

 

「おっと、ココで切り札ですか!! 困りましたねぇ、想定外です……!!」

 

「ふふ、なにごともなければ君の場にいる”自動人形(オートマタ)”メイデンを攻撃するよ!」

 

 ”曲芸獅子(レオタード・レオ)”銀剣のレイピオルの効果。

 それは倒したクリーチャーの攻撃力分のダメージを、相手プレイヤーに与えることだ。貫通効果とは少し違うが、その分決まった時のダメージは大きい。

 

「しかし銀剣のレイピオルの攻撃力は2500ですよ?」

 

「ああ、”自動人形(オートマタ)”メイデンは3000でしょう?」

 

「このままでは打ち負けてしまうでしょう!」

 

「銀剣のレイピオルの効果発動! 自分以外の場にいる”曲芸獅子(レオタード・レオ)”の数だけ、攻撃力を400上げる!!」

 

「何、それじゃあ今のレイピオルの攻撃力は……!!」

 

「3300!! これでトドメだ!!」

 

 舞夏さんがそう叫ぶと、レイピオルが剣を向けて、こちらのクリーチャーに向かってくる。”自動人形(オートマタ)”メイデン。アイアンメイデンのようなその風貌は可愛くも何ともない。効果も弱いし……しかし攻撃力が高いから愛用しているわけだが。

 

「…………」

 

 ここでやられると、その攻撃力が仇となって、俺の残りライフは吹き飛んでしまう。くっ、やはり精霊がいないと、この世界ではやっていけないのか!!

 

 

 

 …………なんてな。

 

「くくっ……、クックック、クカカカカカーッ!!!」

 

「!? 何を笑っているんだい……!?」

 

「そりゃあ笑うでしょう。ファイトが思い通りに進んでるんですから……!」

 

 俺は手札からカードを発動した。

 速攻呪文。これはコストがある限り、いつでも手札から使うことが出来る。

 

 自ターンしか使えない基礎呪文と違って、効果は弱い。

 だがこうした時に使えるのだ。

 

「速攻呪文。”バルメオの処刑台”!!」

 

 俺の隣に大きな絨毯のようなカードが浮かび上がる。

 ギロチンが描かれたけっこう凄惨な見た目のカードだ。

 

「なんだって!?」

 

「この呪文は自分の場にいるクリーチャーの数、対象の攻撃力を100下げます」

 

「君の場にいるクリーチャーは……4体」

 

「ええ、レイピオルの攻撃力は400下がって、2900……」

 

「それじゃあ……!!」

 

「レイピオルの負けです」

 

 ”自動人形(オートマタ)”メイデン。の腹が開き、そこにレイピオルを収納する。

 中は醜悪な肉塊の蠢く地獄。これでレイピオルは破壊された。

 

「レイピオルーッ!!」

 

「おっと、それだけではありませんよ」

 

「なにっ……!?」

 

「”バルメオの処刑台”の対象になったクリーチャーが破壊された時、その攻撃力分のダメージを、相手プレイヤーに与える……つまり貴方ですね」

 

「なんだって!?」

 

 舞夏さんがたじろぐ。

 絶望に気づいた時の表情だ。ああ、そうだ。絶望しろ。

 相手ファイターのそういう表情がもっともこのゲームで美しいのだから。

 

「安心してください。受けるダメージは下がった分だけ。つまり2900ですが」

 

「僕のライフは残り1500……ッ」

 

「そういうことです。グッドゲーム。素晴らしいファイトでしたよ」

 

「うわぁあああああああああああああーッ!?」

 

 どこからともなく突風が巻き起こり、立体映像が消えていく。

 ドライバーの画面には俺が勝利者であることだけが記されていた。

 

 突風で尻餅をついた舞夏さんに近づき、手を貸す。

 そのままファイト後の握手を終えた。

 

「あの状況では攻撃力の低いクリーチャーから処理するべきでしたね」

 

「そうすれば”バルメオの処刑台”でレイピオルが死ぬこともなかったのか……」

 

「そういうことです」

 

 そうされたらそうされたなりの備えはしてあったわけだが。

 わざわざそこまで開示することもねぇからな。

 

 俺はそのまま大会を優勝した商品の10パックと、小さなトロフィーを貰った。

 それを見ていた参加ファイターたちがぼそぼそと呟く。

 

「嘘だろ、精霊なしがあそこまで……」

 

「悔しいが奴のプレイテクは凄まじいものがある」

 

「逆に言えば、精霊憑きの俺達がそれを取り込めば……!!」

 

「ああ、負ける相手じゃねぇ」

 

 馬鹿みたいなこと言ってやがる。

 精霊におんぶに抱っこじゃあ、強くなれるわけがないだろ。

 第一、切り札である精霊を活かすデッキ構成しかしてねぇし。

 

 その分、俺は前世で見聞したデッキレシピを思う存分活かせるわけだが──。

 まぁ、所持カードとの兼ね合いもあるので、あくまでデッキは自分で作ってる。

 

 多少記憶から参考にしたりはするがね。

 それよりパック剥きだ。このために参加したと言っても過言じゃないんだから。

 

 しかし思った通り、なかなかSSRは出てこない。

 呪文ならばともかくクリーチャーのSSRにはほぼ必ず精霊がついているからな。

 でも、そこそこ良い呪文カードが出てきたし……おおっと?

 

 SSRクリーチャー、”幻月のアルタイア”。

 魔女を描いた超美しいビジュアルデザインで、前世でも高額商品だったカード。

 召喚時、墓地の呪文を無条件で発動できるという効果も強いんだが。

 

『触れるな。おまえの息は臭い』

 

 頭の中に声が響く。ああ、うん。やっぱり俺は……。

 

 

 

 

 

 精霊に嫌われている。

 




今日の最強カード

”曲芸獅子(レオタード・レオ)”銀剣のレイピオル
クリーチャー 攻撃力2500
破壊したクリーチャーの攻撃力分のダメージを相手プレイヤーに与える。
自分以外の場にいる”曲芸獅子(レオタード・レオ)”の数だけ、攻撃力を400上げる

”バルメオの処刑台”
速攻呪文
自分の場にいるクリーチャーの数、対象の攻撃力を100下げる。
対象が破壊された時、現在の攻撃力分のダメージを相手プレイヤーに与える。

”幻月のアルタイア”
クリーチャー 攻撃力2400
召喚時、墓地にある呪文をコストを無視して発動する。
この効果は無効化されない。
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