精霊が切り札の世界で、俺だけ孤独に成り上がる 作:エクシーズ次元
カードゲームは手段だ。
前世、俺はカードゲームで友達を作っていた。
何かで強いやつっていうのは自然と尊敬されるもんだ。
カードゲームにも色んな種類がある。
その中でも一番熱を入れたのは”ファイト・ウィザーズ”というタイトルだ。
漫画原作で、アニメがすごく人気だし。
ちょっとピーキーなバランスもごっこ遊びとしては面白い。
俺の最終戦績は全国大会に掠った程度。
そんな俺でも地元のカードゲームショップじゃあ、でかい顔が出来た。
カードゲーム最高!
全てがアニメみたいにカードゲームで回ればいいのに。
そんな風に思って、日々を過ごし……。
気がついたら死んでいた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「僕は”
「なにっ!? このタイミングで切り札だと!?」
「精霊の力さ! 君のクリーチャーを攻撃し、ライフにダメージ!!」
「ぐわぁああああああああああああああああああああああ!?」
……派手に吹き飛ばされる自称キング。
街角のこじんまりしたカードショップでそう名乗ってもダサいだけだが。
何はともあれ、ショップの前にある公園で彼らはファイトをしていた。
その右手には最新のモバイル端末であるドライバーが嵌められている。
そこからボードが空中に展開し、どこでもファイトが出来るという仕様だ。
展開される立体映像は大迫力の一言である。
「伊綱くん、そろそろ決勝戦よ」
「知ってますよ。見ていましたからね」
話しかけてきた店長にニコリと笑って、俺は自称キングと交代した。
飛んだ番狂わせだな。俺は自称キングと戦いたかったんだが……。
相手はポニーテルの少女。黒髪だが、インナーカラーは血のように赤い。
色合いだけ見れば、まさしくカードゲームアニメの登場人物って感じだ。
ま、知らねぇけど。
少なくとも俺が見てきた千話近いカードアニメにこんな奴はいなかった。
本当にアニメ世界とかなら、相手のデッキもわかって楽だったんだけどな。
「よろしく伊綱くん。僕、佐条舞夏っていうんだ。舞夏って呼んで」
そう言って、相手の少女がこちらに握手を求めてくる。
年齢は似通ってそうだが、ずいぶんと礼儀正しい少女だ。
「よろしくお願いします、舞夏さん。良いファイトにしましょう」
「ああ、僕、尊敬してるんだ! 君のことを!」
「…………ほう?」
「だってどの精霊にも愛されない
「あ?」
ちょっとピキッと来た。誰が
まぁ、いい。まだ。コイツとは一度も白黒つけちゃいない。
精霊に愛されている自分こそが最強のファイターだって思っても仕方がない。
だって、この世は精霊に愛されることこそが全てだからな。
俺は眉間にシワがよるのを無理やり笑顔で隠し、握手を辞める。
無礼な立ち振舞いというわけではなく、少し離れたプレイヤー位置に立つためだ。
「舞夏さん、教えてあげますよ。精霊に愛されることが決定的な差には成り得ないと」
「フフン、よろしくね!! わからされるのは君の方だと思うけど!!」
「「ファイト!!」」
…………さて、ファイトは終始優勢だった。
相手はガンガン攻めてくるビートダウン型。
一方で俺はコントロールに割り振ったミッドレンジ型。多少ライフが削られようとも、手札やフィールドを支配していれば負けることはない。
呪文カードには精霊なんざいねぇからな。
前世よりはるかに高額だが、手に入れさえすれば誰でも使える。
ま、優秀な精霊はデッキから引くカードすら制御しちまえるっていうが。
馬鹿じゃねぇの。積み込みじゃんそんなの。イカサマだよ。
もっとも……次の手が読めている相手なんざ、俺の敵にはならねぇけどな。
「さて、そろそろサレンダーしたほうがいいのでは?」
相手の手札は0枚。場のクリーチャーは2体。
対して俺の場にはちょっと強いクリーチャーが1体。
低コストで弱めのクリーチャーが3体。
このゲームは基本的にクリーチャーがやられても無傷だ。
つまり俺は4回まで相手の攻撃を防げる。
一応、”貫通”効果とか持ってるやつなら話は違ってくるが……。
…………なんてフラグを立てつつ。
「それはどうかな?」
そう言って、舞夏さんがデッキからカードを引く。
キラキラと輝き、傍目からでもそれが精霊のカードだとわかった。
「来たね、僕の切り札」
そう呟き、舞夏さんはカードをドライバーのボードに叩きつけた。
凛々しい召喚エフェクトとともに、女性的な体型の獣人が飛び出してくる。その手にはレイピア。銀毛の獅子。明らかに精霊がついているその切り札の名は──。
「”
「おっと、ココで切り札ですか!! 困りましたねぇ、想定外です……!!」
「ふふ、なにごともなければ君の場にいる”
”
それは倒したクリーチャーの攻撃力分のダメージを、相手プレイヤーに与えることだ。貫通効果とは少し違うが、その分決まった時のダメージは大きい。
「しかし銀剣のレイピオルの攻撃力は2500ですよ?」
「ああ、”
「このままでは打ち負けてしまうでしょう!」
「銀剣のレイピオルの効果発動! 自分以外の場にいる”
「何、それじゃあ今のレイピオルの攻撃力は……!!」
「3300!! これでトドメだ!!」
舞夏さんがそう叫ぶと、レイピオルが剣を向けて、こちらのクリーチャーに向かってくる。”
「…………」
ここでやられると、その攻撃力が仇となって、俺の残りライフは吹き飛んでしまう。くっ、やはり精霊がいないと、この世界ではやっていけないのか!!
…………なんてな。
「くくっ……、クックック、クカカカカカーッ!!!」
「!? 何を笑っているんだい……!?」
「そりゃあ笑うでしょう。ファイトが思い通りに進んでるんですから……!」
俺は手札からカードを発動した。
速攻呪文。これはコストがある限り、いつでも手札から使うことが出来る。
自ターンしか使えない基礎呪文と違って、効果は弱い。
だがこうした時に使えるのだ。
「速攻呪文。”バルメオの処刑台”!!」
俺の隣に大きな絨毯のようなカードが浮かび上がる。
ギロチンが描かれたけっこう凄惨な見た目のカードだ。
「なんだって!?」
「この呪文は自分の場にいるクリーチャーの数、対象の攻撃力を100下げます」
「君の場にいるクリーチャーは……4体」
「ええ、レイピオルの攻撃力は400下がって、2900……」
「それじゃあ……!!」
「レイピオルの負けです」
”
中は醜悪な肉塊の蠢く地獄。これでレイピオルは破壊された。
「レイピオルーッ!!」
「おっと、それだけではありませんよ」
「なにっ……!?」
「”バルメオの処刑台”の対象になったクリーチャーが破壊された時、その攻撃力分のダメージを、相手プレイヤーに与える……つまり貴方ですね」
「なんだって!?」
舞夏さんがたじろぐ。
絶望に気づいた時の表情だ。ああ、そうだ。絶望しろ。
相手ファイターのそういう表情がもっともこのゲームで美しいのだから。
「安心してください。受けるダメージは下がった分だけ。つまり2900ですが」
「僕のライフは残り1500……ッ」
「そういうことです。グッドゲーム。素晴らしいファイトでしたよ」
「うわぁあああああああああああああーッ!?」
どこからともなく突風が巻き起こり、立体映像が消えていく。
ドライバーの画面には俺が勝利者であることだけが記されていた。
突風で尻餅をついた舞夏さんに近づき、手を貸す。
そのままファイト後の握手を終えた。
「あの状況では攻撃力の低いクリーチャーから処理するべきでしたね」
「そうすれば”バルメオの処刑台”でレイピオルが死ぬこともなかったのか……」
「そういうことです」
そうされたらそうされたなりの備えはしてあったわけだが。
わざわざそこまで開示することもねぇからな。
俺はそのまま大会を優勝した商品の10パックと、小さなトロフィーを貰った。
それを見ていた参加ファイターたちがぼそぼそと呟く。
「嘘だろ、精霊なしがあそこまで……」
「悔しいが奴のプレイテクは凄まじいものがある」
「逆に言えば、精霊憑きの俺達がそれを取り込めば……!!」
「ああ、負ける相手じゃねぇ」
馬鹿みたいなこと言ってやがる。
精霊におんぶに抱っこじゃあ、強くなれるわけがないだろ。
第一、切り札である精霊を活かすデッキ構成しかしてねぇし。
その分、俺は前世で見聞したデッキレシピを思う存分活かせるわけだが──。
まぁ、所持カードとの兼ね合いもあるので、あくまでデッキは自分で作ってる。
多少記憶から参考にしたりはするがね。
それよりパック剥きだ。このために参加したと言っても過言じゃないんだから。
しかし思った通り、なかなかSSRは出てこない。
呪文ならばともかくクリーチャーのSSRにはほぼ必ず精霊がついているからな。
でも、そこそこ良い呪文カードが出てきたし……おおっと?
SSRクリーチャー、”幻月のアルタイア”。
魔女を描いた超美しいビジュアルデザインで、前世でも高額商品だったカード。
召喚時、墓地の呪文を無条件で発動できるという効果も強いんだが。
『触れるな。おまえの息は臭い』
頭の中に声が響く。ああ、うん。やっぱり俺は……。
精霊に嫌われている。
今日の最強カード
”
クリーチャー 攻撃力2500
破壊したクリーチャーの攻撃力分のダメージを相手プレイヤーに与える。
自分以外の場にいる”
”バルメオの処刑台”
速攻呪文
自分の場にいるクリーチャーの数、対象の攻撃力を100下げる。
対象が破壊された時、現在の攻撃力分のダメージを相手プレイヤーに与える。
”幻月のアルタイア”
クリーチャー 攻撃力2400
召喚時、墓地にある呪文をコストを無視して発動する。
この効果は無効化されない。