精霊が切り札の世界で、俺だけ孤独に成り上がる 作:モナカパウマン
「──────────
「ループコンボでやんすか!?」
「不可能! 不可能! 不可能!!」
姫宮さんの発言に懐疑のこもった悲鳴を上げる闇コンビ。
しかし姫宮さんは顔色一つ変えずに、新たなカードをボードへと叩きつけた。
現れたのはふわふわとした巨大なクラゲ。頭には何故か王冠をかぶっている。
「このクリーチャーは戦闘で破壊された時、自分と同じ攻撃力と効果を持つトークンを召喚するよ」
おお、姫クラゲ。姫クラゲじゃないか。
ロックカードの超王道。ただのクリーチャーによる攻撃じゃ無限に増殖するだけで突破できないってカードだ。乗り越えるには呪文か効果によって墓地へと送るしかない。
「それがどうしたんでやんすか!? ロックを破らなきゃいけないのはそっちでやんすよぉ!!」
「正論!! 正論!! 正論!! 正論!!」
「…………あっ!!」
舞夏さんが気づいてしまったようだ。
顔を青くして、ブンブンブンブンと横に振っている。
しかし姫宮さんはニンマリと笑うばかりだった。
「
「「…………は?」」
驚愕する闇コンビ。しかしその意図は理解していないらしい。
……もっとも、したところでもう遅いだろうが。
「無駄!! 無駄!! 無駄!! 無駄!!」
「無駄じゃないよ。姫クラゲは破壊され、レイピオルの効果で姫クラゲの攻撃力分──つまり100ポイントのダメージをそっちに与えるよ」
姫クラゲが爆発して、その爆風が闇コンビへと届く。
たかが100ポイントだが、その動揺は大きい。
「そっちの場のクリーチャーが破壊されたのに、なんでこっちにダメージが……!!」
「レイピオルは自分の場でも相手の場でも問わないからだよ。ああ、界域呪文のロック効果はあくまで相手への攻撃でしょ? 自陣への攻撃は可能なんだ」
「それに自分のクリーチャーに攻撃するなて……!!」
「でもボードの処理的には可能みたいだよ?」
「反則!! 反則!! 反則!!」
「勝手にほざいてなよ」
闇コンビが騒いでいるが、姫クラゲが再生し、再び場に現れた。
──────その段階で、これから何が起きるか理解したようだ。
「「ま、まさか……!!」」
「復活した姫クラゲでもう一度レイピオルを攻撃」
再び巻き起こる爆風。これでまた100ポイントが減った。
……ダメージを1回無効にしたって意味はない。
「なにかある? ……ないよね。じゃあ続けるよ」
「や、やめろぉーッ!!!」
叫んだのは闇コンビではなく、舞夏さん。
しかしそんな事を聞き受けてくれる姫宮さんではない。
「攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活」
「やめろぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「否定!! 否定!! 否定!! 否定!!」
叫ぶ闇コンビ。しかし攻撃は止まらない。
状況はもはや1VS3。姫宮さんの独壇場だった。
「攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活。攻撃。復活…………」
全てが終わったときには闇コンビはカードになっていた。
それを見て、姫宮さんは「あっ」と呟く。
「グッドゲーム。いいファイトだったよ。アタシにとってはね」
そう言ってカードを回収する姫宮さん。
俺は……しゃがみこんで項垂れている舞夏さんの背中を撫でてやることにした。
味方クリーチャーに殴られすぎてショックを受けているのだ。
「舞夏さん、ああしなきゃ負けるところでしたから」
「ううっ……精霊をあんなふうに使うなんて……」
まぁ、俺でもああしてたけど。
あれかな。精霊の感情とかがダイレクトに伝わってくるのかな。
共鳴する力が強いのも考えものだな……。
「それより、今の二人は『海獣』と『ヴェノムミスト』の二人でしょうか?」
「間違いないね~~。残っているデッキもそんな感じ」
と言って、ばらまかれたカードを集めて、調べる姫宮さん。
となると残っているのは『
アニメだと闇ファイターのデッキとして現れて、ほとんど合成で出たカードを纏めたデッキ群なんだよな。前世はリアルで合成がなかったので、肝心の合成カードが入っていないという本末転倒なデッキとなっていた。たしかにエキドナの名を冠するに相応しいデッキだ。
「しかし問題があるよ。アタシたちは結界に取り込まれてる」
「そんなカードゲームっぽくない技術が……」
「いつも闇ファイターがやってるやつだよ」
「どうやって破壊しますか? 闇ファイターは既に倒したのに」
「う~~~ん……」
本来なら上階への階段って下階への階段の隣にあるもんだろ。
しかし、このスペースには下階の階段とエレベーター、そして先への扉しかなかった。
「この体育館は前にも来たことがあるけれど、間取りが変わってないかな?」
そう言ってエレベーターのスイッチを押す舞夏さん。
うんともすんとも言わない。おそらく闇ファイター専用だ。
ま、そういうのも含めて結界内ということなのだろうか。
しかし、二つ星バッジを配っている人もいないし……もうカード化されたのか?
これじゃあファイトパーティはおしまいだな。さっさと精霊局に連絡して帰るか……。
……と、俺が戻ろうとすると、階下が黒い水に飲み込まれていた。
たしかに姫宮さんの言う通り、俺達は結界に取り込まれているようだ。
「……戻れないですね」
「先に進む方法は見つけたけどね」
「ほう?」
「まず一つ星バッジを2つ、この魔法陣にかざしてみ」
「魔法陣なんてどこにも……」
ハァ、と姫宮さんが溜息をつき指をパチンと鳴らす。
すると先に進む扉に、魔法陣が現れた。
これにかざせばいいのか。
……おっ、2つが合成されて二つ星バッジになった。
合成──いかにも闇のファイターらしい手口だ。
それを見て、舞夏さんも真似してきた。
これで二つ星バッジが2個ということだ。
姫宮さんも同じように生成し、これで3個となった。
「これが三つ星になれば、つけた人だけ先に進める」
「ファイトしないと出られない部屋ですか、ここは」
「今、性交しないと出られない部屋って言った?」
「言ってねぇよ」
いや、それをもじったけどさ。
女性からそういうネタ振ってこられると、困るんだよね。
前世の記憶もある程度あるから、俺って精神的には成人男性と言っても差し支えないし……。
もちろん全部覚えているわけではないが。死因すら覚えてない。
「しかし今この場にある二つ星バッジは3つ……」
「誰が、進む?」
ここは俺が行くしかない。
2人が先に進んだところで、エキドナのネストデッキにやられるだけだ。
しかしどっちから奪い取ればいいか……。
悩んでいると、舞夏さんが首を傾げつつ喋り始めた。
「犯人、誰なのかなぁ、誰だと思う? 姫宮ちゃん」
「キングさんじゃない? あの人が開催したイベントでしょ」
「まさかキングさんに限って……!! ありえませんよ!!」
普段のキングさんを見ていたらわかる。非常に紳士的で、精霊のあるなしにかかわらず誰にでも分け隔てなく接するファイターの鏡だ。多少、好みのテーマを優遇する傾向があるが、それだって自分で設立した研究会の話に過ぎない。何より彼は──。
────精霊に愛されているのだから。
こんな事件を起こす動機がそもそもとしてない。
「じゃあキングさんがイベント企画を依頼した相手が黒幕かもね」
「それならキングさんに聞けばわかるじゃんか。コレで解決したも同然だね!! ひゃっほう!!」
「問題は誰を上に送り込むかってことだけど……」
ガチャリと、ドライバーを右腕にセットし直す姫宮さん。
どうやら譲るつもりはないらしい。俺もだけどな。
でもできれば最近一度戦った舞夏さんと戦いたいな。
ロック相手はちょっと疲れるんだよな。話題逸らすか。
「しかしなぜ黒幕はこんな事を……?」
「そりゃまぁ……アタシじゃない? アタシってほら、巫女だし」
俺が訝しげな顔をすると、姫宮さんはいつになく真面目な表情になった。
こころなしか眉が少し上がっている。自分のせいだと思っているのか。
「答えになってませんよ」
「企業秘密もあるからね。だからアタシがケリをつけるよ」
ほれほれと言わんばかりにドライバーをガチャガチャ弄り始める姫宮さん。
ガチャパチやめろ。パチパチして気持ちいいけどさ、ドライバーのボタン。
「う~~ん、もう1人誰か上がってきてくれるといいんだけどなぁ」
……なんて舞夏さんが言い出すと、突如として窓ガラスが割れた。
飛び込んできたのは舞夏さんの兄────遊季さんだった。
「舞夏ぁああああああああああああああああああ!!!」
「う、うるさい……」
姫クラゲ
クリーチャー 攻撃力100
戦闘で破壊された時、自分と同じ攻撃力と効果を持つトークンを召喚する
【挿絵表示】
挿絵はモナカパウマンさんからいただきました!!
ありがとうモナカパウマンさん!!
姫宮さんです