精霊が切り札の世界で、俺だけ孤独に成り上がる   作:モナカパウマン

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017 Shall We Dance?

「これでトドメだ!!」

 

 銀剣のレイピオルが姫クラゲに向かっていく。

 

 姫クラゲは戦闘で破壊された時、自分と同じ効果と攻撃力を持つトークンを生成するクリーチャーだ。そして今のレイピオルは無限ファイトの効果により、まだ攻撃していないクリーチャーに対してならば何回でも攻撃することができる。つまりトークンが生成されるたびに、そのトークンに対して攻撃権を得ることができるのだ。

 

 さらにレイピオルにはいつもの効果、倒したクリーチャーの攻撃力分のダメージを相手に与えるという効果がある。先程使った無限ループをそっくりそのまま真似される形だな。

 

 しかし舞夏さんがレイピオルを持っていることは知っているはずだ。

 なぜ姫クラゲを召喚したんだ……?

 

 

 

 

 …………なるほどな。

 

「舞夏ちゃんって馬鹿だよね」

 

「っ!?」

 

 姫宮さんがボードにカードを叩きつける。

 やはり速攻呪文を使うつもりだったか……!!

 

「速攻呪文、寄生クラゲを発動。このカードの対象になったクリーチャーは場にクラゲと名のつくクリーチャーがいる限り、一切の行動ができなくなるよ」

 

「ええっ──!?」

 

「加えて、毎ターンのエンドフェイズにその攻撃力分のダメージを喰らう。まぁ、代わりにレイピオルを破壊するか選べるけどね」

 

「僕のライフは2400……!!」

 

「レイピオルを自らの手で破壊しなきゃ負けるね」

 

 せ、性格が悪い……!!

 舞夏さんに精霊か勝利かの二択を迫る気だ、あいつ!!

 まぁでも仕方ないな。ここはレイピオルを破壊するしか方法は────。

 

「僕の負けだ」

 

 潔い顔でそう言った舞夏さんは寄生されたレイピオルによる攻撃によって、敗北した。少しばかり驚いたが、精霊を大事にする舞夏さんにどうしても相棒を破壊することは出来なかったのだろう。

 

 しかし一番驚いた表情をしていたのは、姫宮さんだった。

 

「なんっ、でっ、アンタたちはいつもそうなのッ!!」

 

「あはは……レイピオルを破壊するぐらいなら、負けたほうが良いよ。どのみち、がら空きのままターンを回したら負けるのは明白だったからね……」

 

「………………」

 

 俯く姫宮さんに、舞夏さんが直接バッジを手渡す。

 ぎゅっ……と力を込めた握手だった。

 

「僕が勝つまで負けないでね姫ちゃん」

 

「…………突然馴れ馴れしいね」

 

「ヘヘっ、友達だからね!」

 

 なんともパッとしない結末。だけれども、次の階へ行く勝者は決まった。

 次の瞬間、舞夏さんの体が足元から消えていく。遊季さんを見ても、それは一緒だった。

 

「じゃあ俺は妹を連れて帰還する……負けるなよ」

 

「善処しますよ」

 

 おっと……精霊による転移だったか。びっくりした。

 2人が消えるのに、そう時間はかからなかった。

 

 消えたあとも、ずっと俯いている姫宮さんに声をかける。

 既に俺達の足元にも黒い水が流れ込んできていた。

 

「では行きましょうか」

 

「………………だね、ここでじっとしてても取り込まれる」

 

 魔法陣に二つ星バッジをかざすと、三つ星バッジになる。

 それを装着すると、魔法陣が消え、その先に階段が見えた。

 俺達はその階段を上がり────三階へと向かっていく。

 

 三階はパーティ会場。

 とはいえ今日は机を使う予定はないので、片付けられている。

 赤い絨毯と何もない壇上がそこにはあった。

 

 そして部屋の中心にはさっき見た受付の老人────。

 下にいた時は気づかなかったが、車椅子のようだ。

 

「えっと、貴方が最後の刺客ですか?」

 

「へぇ、そうデスのじゃ。さて、始める前に……」

 

 バッジを1つ、こちらに向けてぶん投げてきた。

 受け取ったのは姫宮さん。見させてもらうと、三つ星バッジだ。

 俺にはくれないのか?

 

「もちろんもう1つもご用意しておりますデスのじゃ。我輩を倒せば、手に入る仕組みデスのじゃ」

 

「アタシに渡すのはどういうわけ?」

 

「貴方にはもっと相応しい相手がいる……上がってくださいデスじゃ」

 

 そう言われて、俺を見る姫宮さん。どうやら俺の心配をしているようだ。

 しかし……申し訳ないが、心配されるいわれはない。

 俺はパチンとウィンクしてみせた。

 

「安心してください。すぐに追いかけますよ」

 

「長引いてもいいよ。多分奥に黒幕がいるだろうし……倒してこの結界を解除してくる」

 

「ええ、無理しない程度に」

 

 コクン、と頷いた姫宮さんはそのまま振り返らずに先にある階段を登っていった。

 さて、それじゃあ俺の役目はこの闇ファイターをとっとと倒すことか。

 

「おまたせしましたね、ご老人」

 

「フォフォフォ、かまいませんデスじゃ。若者の青春は嫌いではありませんからのぅ」

 

 そう言って、ご老人は車椅子と合体した。

 …………あ? なに?

 

 いやなんか車椅子と合体して、車椅子が二つに割れて足になっただけだが……。

 なんなら右足にデッキとドライバーがついてるが……。

 

 なに? なんなの?

 ま、まぁいいだろう。ホビーアニメみたいな世界ならこれぐらいよくあることだ。

 

「それに今日が貴方の命日となるのDEATHからねェ―――――!!!」

 

 百歩譲って車椅子と合体するのはいいよ? すげーわかる。

 合体シークエンスもかっこよかったしな。

 

 でも顔つきが凛々しくなって、筋肉質になるのはなに?

 あと地味に口調変わってない?

 

 何が起きてるの? それも闇の力なの?

 

「申し遅れました。我輩は柊と申しますDEATHじゃ」

 

「あ、伊綱です。よろしくお願いします」

 

「それでは──────Shall We Dance?」

 

 あ、俺に質問の権利なし。

 まぁいいよ。ちょっと気になっただけだからさ。

 

 

 

「「ファイト!!」」

 

 

 

 今回は珍しく先攻だった。相手に運がなさそうだな……。

 闇ファイター、俺より普通に運がないやつがいるな。

 まぁ、俺って精霊がいないだけで運はいいほうだけど。

 

 本当だぜ?

 

 柊さんのデッキは案の定合成龍騎(ドラグキマイラ)。

 合成カードがない代わりに手札から、2体の合成龍騎(ドラグキマイラ)と多少のコストを支払うことで、大型クリーチャーを出すことができる。手札消費は激しいが、奇襲性が高いデッキだ。

 

 加えて合成龍騎(ドラグキマイラ)は相手の効果を阻害する効果を多く持つ。

 いわば攻撃可能な置物。まともなデッキなら非常に面倒くさい相手だが……。

 

「……エキドナじゃない?」

 

「やはりエキドナを警戒していましたか」

 

 6ターン目。俺のライフも、相手のライフも半分を切った時期に気づく。

 エキドナ――ネストデッキとしてはあまりにも普(・)通(・)に(・)動(・)き(・)す(・)ぎ(・)て(・)い(・)る(・)。

 

 あれはデッキの容量をほとんど喰らう構築だ。専門のムーブ以外できないはず。

 にしては相手はしっかりと手札を補充し、合成龍騎(ドラグキマイラ)を複数展開し、俺の動きを十分に阻害してきている。これがネストデッキであるはずがない。

 

 もっとも、吉田さんの使っていた合成もしっかり入っていたのだが。

 

「あんなサイトに書き込むなと言ったのDEATHがねぇ……」

 

 しかしあまりにも出来すぎている。

 ネットの知り合いがたまたま闇のファイターで俺達の前に立ちはだかる。

 そんな確率がいったいどれだけあるだろうか。

 

 それよりも、知(・)り(・)合(・)い(・)が(・)あ(・)の(・)サ(・)イ(・)ト(・)を(・)知(・)っ(・)て(・)い(・)た(・)と考えるほうが辻褄が合う。

 ――――であるならば。

 

「エキドナと私は―――――知り合いですか」

 

「………………我輩のターン!!」

 

 思考に耽っていると、柊さんのターンが始まった。

 場には3体の合成龍騎(ドラグキマイラ)。それぞれ1ターンにつき1回の呪文妨害、攻撃妨害、効果無効を持っている。対して俺の場にはバルメオの神官騎士が2体。

 

 かなり厄介な状況だな……。

 

「我輩はそのまま3体の合成龍騎(ドラグキマイラ)で攻撃DEATHじゃ!!」

 

 複合された魔獣が、神官騎士、そして俺に噛みついてくる。

 吉田さんの時と違って、そこまで大きなダメージはないが、痛い!!

 

「ぐわぁあああああああああああああ!?」

 

 ────これで俺の残りライフが1000を切った。

 手札は3枚。場はがら空き。相手は手札2枚だが、おそらくは妨害。

 けっこうキツイ状況だな。

 

「ククク、サレンダーするなら助けてあげますDEATHよ」

 

 くそっ……いつも通りのジリ貧だな。

 とりあえずドローしてから考えるか。

 いいカード来ないかな。この状況を一発逆転できる切り札。

 それこそそれが引けるなら──運命(ディステニードロー)だ。

 

「私のターン、ドロー…………チッ」

 

 おまえかよ。

 仕方ない。黒幕まで取っておきたかったんだが……。

 

「………………………………………………アンタの負けだ」

 

「ほぉ、1回の呪文妨害、攻撃妨害、効果無効────これらの妨害を超えられると?」

 

「ああ、一応聞いておくが、アンタのさっき使った合成ってカード」

 

 合成。基礎呪文。

 2体のクリーチャーを合成し、新たなクリーチャーを生み出す。

 

「敵(・)味(・)方(・)問(・)わ(・)な(・)い(・)よ(・)な(・)?」

 

「だ、だからどうしたのDEATH!! 合成は我輩の墓地に眠って────!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「幻月のアルタイアを召喚」

 

 

 

 俺の呼び声によって現れたのは、普段散々文句を言われている白銀の魔女。

 幻月のアルタイア。

 

 クリーチャー 攻撃力2400。

 召(・)喚(・)時(・)、(・)墓(・)地(・)に(・)あ(・)る(・)呪(・)文(・)を(・)コ(・)ス(・)ト(・)を(・)無(・)視(・)し(・)て(・)発(・)動(・)す(・)る(・)。

 そ(・)れ(・)は(・)相(・)手(・)の(・)墓(・)地(・)で(・)も(・)構(・)わ(・)な(・)い(・)

 

 フレーバーテキストはたしか──────。

 

 ────────────幻の月には、何者も触れがたい。

 

 だったかな。

 

『なんだ、せっかく出てやったのだからもっと喜べ』

 

「デッキもだいぶドローした。通常の確率の範囲内だろ」

 

『ふん……』

 

 ファイト中でも会話してくんのか、コイツ。

 まったく面倒なやつだ……が、それに見合った効果がある。

 

「出ましたね……ッ、ですが、効果を無効にし────」

 

「こ(・)の(・)効(・)果(・)は(・)無(・)効(・)化(・)さ(・)れ(・)な(・)い(・)」

 

 それはこの効果で発動される呪文に対しても同じこと。

 俺が合成するのは、呪文無効、効果無効の合成龍騎(ドラグキマイラ)!!

 

「現れいでよ!!」

 

 俺の体から闇のオーラ的なものが広がる。

 おいおい、合成って完全に闇のカードなのかよ。

 だが、気分は悪くない。むしろ心地良いぐらいだ。

 

「ZIGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAッ!!」

 

 それは様々なクリーチャーの首を持ったヒドラのような怪物であった。

 

「超合成龍騎(シン・ドラグキマイラ)ケイマロス!!」

 

 攻撃力4200。呪文無効、効果無効のバケモンクリーチャー。

 その分コストも非常に大きく、手札を四枚捨てなきゃ召喚できない、らしい。

 闇の力って素晴らしいなぁ!?

 

「俺はアルタイアで残った合成龍騎(ドラグキマイラ)を攻撃」

 

「くっ、合成龍騎(ドラグキマイラ)アルキメデスの効果でッ!!」

 

「ケイマロスの効果で、それを無効」

 

「ならば手札から速攻呪文────」

 

「ケイマロスの効果で、それを無効」

 

「ふふふふふッ、ふざけるなよッ!?」

 

 

 

 

 

「だから言ったろ? アンタの負けだ」

 

「グッ────申し訳ありません、お嬢様──────」

 

 

 

 

 

 

 超合成龍騎(シン・ドラグキマイラ)ケイマロスが相手をクリーチャーごと噛み潰し、ファイトは終了した。最後に残ったのは柊さんの封印カードと……天井から落ちてきた最後のバッジ。

 

 ともあれ、なんとかファイトに勝利できたわけだ。

 

「グッドゲームは言わないよ。流石に今回は運が良かった」

 

 いつも良い気がするけどな。

 特に……今日は。

 

 まぁいいか。運であれ、何であれ。

 精霊であっても使えるなら使う。それが俺の主義だ。

 

 …………さて、急いで上に登ろう。

 キングさんと姫宮さんが心配だ。

 

 俺は感じている悪い予感に無理やり蓋をしつつ、最上階へと登った。




寄生クラゲ
速攻呪文
このカードの対象になったクリーチャーは場にクラゲと名のつくクリーチャーがいる限り、一切の行動ができなくなる。加えて、毎ターンのエンドフェイズにその攻撃力分のダメージを喰らう。代わりに対象となったクリーチャーを破壊しても良い。

合成龍騎(ドラグキマイラ)アルキメデス
クリーチャー 2100
手札から合成龍騎(ドラグキマイラ)を2体捨てなければ召喚できない。
1ターンに1度、攻撃を宣言された時、それを無効にする。

超合成龍騎(シン・ドラグキマイラ)ケイマロス
クリーチャー 4200
手札から合成龍騎(ドラグキマイラ)を4体捨てなければ召喚できない。
1ターンに1度、クリーチャーの効果を宣言された時、それを無効にする。
1ターンに1度、呪文を宣言された時、それを無効にする。

幻月のアルタイア。
クリーチャー 攻撃力2400
召喚時、墓地にある呪文をコストを無視して発動する。
この効果は無効化されない。
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