精霊が切り札の世界で、俺だけ孤独に成り上がる 作:モナカパウマン
四階はいったいどうなっているのか知らないが、一階まで続く吹き抜けの螺旋階段となっていた。
螺旋階段といっても段差はない。スロープであり、そこを今、二台のバイクが走っていた。俺はその最上階からそれを見下ろすことができた。
正確にはファイト・ホイール。移動しながらファイトもできるというイカれたコンセプトの元、制作されたものだが、実際には機動力の高い精霊を追跡するために作られたそうだ。いわば精霊局のアイデアだな。まだ開発中らしいと聞いていたけれど、なんでここに?
いや、それよりバイクに乗ってファイトしているのは誰だ?
ヘルメットをしていて正体がわからない。
一人はおそらくキングさんだろうが────もう一人は?
くそっ、どこ行ったんだよ、姫宮は。
「▓▓よ!! 精霊が大嫌いだと言ったな!! 精霊を崇めるこの世界も嫌いだと!!」
ファイト・ホイールは電気で動いているからか、エンジン音がしない。
バイクを使ってない人間以外とも対戦するために拡声器と集音マイクがヘルメットに搭載されてるとかなんとか前見たホームページに書いてあったな。
「ええ、そうよ」
「嫌いならば仕方ない。だが精霊を排斥しようという貴様の考えは間違っている!! なぜならば────この世界を支配し、弱者を守護るためには大いなる力が必要だからだ!!」
「………………」
キングさんの演説。おそらくは対戦相手である黒幕に向けられたものだろう。
黒幕の声は────口調から女性っぽさがあるが、加工されていてよくわからないな。誰なんだよ、いったい。
「キングたるこの己が精霊を支配し!! あらゆる者を守護ると誓おう!!」
「ふざけた理想論を……!!」
……精霊を排斥したいという考えもわからなくはない。
この世界はもはや精霊に支配されていると言っても過言ではない状況なのだから。
しかしキングさんは続ける。
「世界を作り変えるという貴様らの願いのほうが理想論ではないか!!」
────世界を作り変える? いったいどうする気だ?
まさかカードの力かなにかでするつもりなのか。この世界がアニメにも似た世界だとするのであれば、究極のカードにはそれだけの力が眠っている。実際にはわからないが……。
「だったら私をまず倒して証明することね」
「ならば見せてやろう!! キングのファイトをな!! ────ドロー!!」
灼熱のオーラが手から吹き出しながら、キングさんがバイクに備え付けられたドライバーからドローする。
その甲斐があったのか、引いたカードを見てキングさんがニヤリと笑う。
今の場は────げっ、ヴェノムロックを仕掛けられてる。
クリーチャーは動けず、呪文も使えず、じわじわとバーンダメージを食らうだけ。
そんな嫌な状況だ。よしんば効果を発動したとしても無効にされるだろう。
────しかしキングさんの切り札は、そんな些事を全て焼き尽くす。
「ふははは!! 来たぞ!! 灼熱の彼方より現われろ!! 驚天動地の暴龍よ!!」
キングさんがボードにカードを叩きつける。
最近のスリーブは優秀だから、多少雑に扱っても傷一つつかないんだよな……。
もっともあのカードの精霊の力なら、スリーブなんてなくたって大丈夫そうだが。
「レッドグレイヴ・クリムゾン・ドラゴン!!」
キングさんを追うように異次元から現れたのは、全身を赤く染め上げた、金色の血脈を持つドラゴンだった。アルタイアと同格と表現していいほどの高額SSR。ドラゴンの中のドラゴン。
その効果は──────。
「このクリーチャーが場に出た時、自分以外の場にある全てを焼き尽くす!!」
「ヴァノムミスト・オクトパスの効果!! 相手のクリーチャーの効果を……!!」
「ただの破壊ではない!!
「くっ……!!」
レッドグレイヴ・クリムゾン・ドラゴンの効果には手札・場のあるカードが連鎖することはできない。なぜならば場に出したり、存在する限り、効果を無効化されるからだ。
もちろん召喚時の処理だけだが、その時だけはあらゆる効果を焼き尽くす無敵のカードとなる。
……まぁ対策もないわけじゃないが。
「そのままレッドグレイヴでダイレクトアタック!!」
場の全てが破壊され、そのままダイレクトアタック。
3000のダメージが黒幕を襲う。残りライフは────2000。
あと一発でもまとな攻撃を食らわせれば、キングさんの勝利だ!!
一方、キングさんにはまだ5000ほどのライフがある。
この勝負、勝ったな……。
「ターンエンド前に速攻呪文、報復の代償を発動するわ。これによりこのターン墓地へ送られた自分のカード3枚につき、1枚ずつデッキからドローできる」
おお、2枚ドローした。使い所は難しいが、なかなかいいカードなんだよな、アレ。
「くっ、これで己のターンはエンドだ」
「では私のターン、ドロー…………ふふふ」
引いたカードを見て、くすくすと笑う黒幕。
どうやら引いたようだ。逆転の一手を……!!
「貴方にふさわしい
──────やはり、あの黒幕。
エキドナデッキの使い手か……!!
「気をつけろ、キングさん!! 奴は────」
くそっ、今更言ったところで、キングさんにはもうコストが残っていない!! レッドグレイヴ・クリムゾン・ドラゴンは場をリセットするには強いけれど、コストが重すぎるんだ。
「ティフォンの儀式門を発動!! デッキの上から5枚引き、その中にあるもこもこ、
「墓地肥やしか……!?」
黒幕がカードを1枚ずつ引いていく。
1枚目。
2枚目。もこもこフワンタル
3枚目。ヴェノムミスト・スクウィッドナーガ
4枚目。海獣クロコドロス。
5枚目。
合計、15枚+5枚のカードが墓地へと送られる。
「さらにティフォンの儀式門はこの効果で墓地へと送られた儀式と名のついた呪文を発動できる!!
そうして現れたのは──かつて見たクリーチャー。三ツ首の大狼
「ケルベウロンの効果発動!! 墓地のカードを除外し、その枚数分相手プレイヤーに500ポイントのダメージを与える。私は10枚のカードを除外する!!」
「合計5000のバーンダメージだと!?」
ケウベウロンから放たれた炎によって、バイクが爆発し、キングさんのライフが減っていく。
当然それを防ぐすべもなく────。
「キングさぁあああああああああああああああああああん!!!」
キングさんはバイクごと、螺旋階段の下へと落ちていった。
その途中で消滅、いやカード化したように見えたが……わからない。
俺をそれをただただ見つめていることしかできなかった。
…………やがて、螺旋階段の頂上に、黒幕が戻ってきた。
「最後は貴方ね。アルタイアを渡せば、見逃してあげるわ」
「………………おまえは」
ヘルメットを脱ぎ、黒幕がその正体をあらわにする。
何故、気づかなかったのだろう。
俺がアルタイアを引いてすぐ、闇のファイターがやってきた理由を。
一部の人間にしか教えていないようなサイトに、黒幕からの相談が来た理由を。
そもそも煩雑なコンボデッキであるエキドナを────黒幕が組めた理由を。
普段お店を利用しているキングさんが、このような大規模なイベントを黒幕に相談した理由を。
ヘルメットが捨て去られ、普段よく見る銀髪が、俺の視界に映った。
その顔にはもう、数時間前に演じていたであろう酔いの雰囲気など微塵も感じられなかった。
「ふふ、姫宮さんだと思った?」
そう言って、彼女が俺に一枚のカードを投げ渡す。
そのカードには姫宮さんのイラストが映し出されていた。
無数に浮かぶ、数多の疑問。
その理由はただ一つ、黒幕の正体が────。
「彼女はネットなんてできなかったでしょ?」
「店長ォッ────ッ!!」
ドライバーを右腕に装着し、店長もそれに応じる。
あとに残った言葉は一つだった。
「「────────ファイト!!」」
レッドグレイヴ・クリムゾン・ドラゴン
クリーチャー 攻撃力3000
召喚時、自分以外の場にある全てのカードを墓地へ送る。
この効果処理が終わるまで、場のカードの効果は全て無効化される。
ヴァノムミスト・オクトパス
クリーチャー
①②の効果はそれぞれ1ターンに1度発動できる。
①相手のクリーチャーの効果が発動した時、それを無効にする。
②相手の手札の枚数×200のダメージを与える。
報復の代償
速攻呪文
このターン墓地へ送られた自分のカード3枚につき、1枚ずつデッキからドローできる。
ティフォンの儀式門
基礎呪文
デッキの上から5枚引き、その中にあるもこもこ、