精霊が切り札の世界で、俺だけ孤独に成り上がる 作:モナカパウマン
ネストデッキ。正式名称はネストコンボ。
それは
特徴は2つ。
①ベースがロックデッキであること。さながら蜘蛛のようにじわじわと相手をいたぶるような。
と言ってもこれは原義的なものであり、俺が転生するぐらいの記憶ではほとんど形骸化していた。
②コンボルートを複数持ち合わせ、状況に応じて換装できること。
つまりコンボA→コンボB→コンボA→コンボCという感じに、止めどきが非常にわかりにくい……いや、万が一止められたとしても他コンボのパーツで無理やり拡張・再始動ができるのだ。
そんな────蜘蛛の巣が複雑に絡まりあったようなコンボルートを有するデッキのことだ。
もちろん今相対しているエキドナは、ネストコンボとして不完全もいいところ。
さっきも俺の見知らぬ────おそらくは闇のカードを利用したコンボを用いていた。前世であるならば、精霊が宿るようなSSRパーツの不足を、無理やり闇のカードで再現しているのだろう。
ともあれ、ネストコンボに立ち向かうなら最も有効な戦術は1つ。
コンボが発動する前に叩き潰すこと。
なのだが……。
「どうしたの? まだヴェノムロックしかつかってないわよ」
目の前にいる神官騎士たちが手も足も出ない。
相手の場にはヴァノムミスト・フォンブラウンと呼ばれるクリーチャーが出ていた。
「貴方にはデッキレシピまで教えてあげたのに!!」
その実態はただの霧。しかし手札を捨てさえすれば、攻撃を何回でも無効化できるというクリーチャーだ。さらにエンドフェイズ時、そのターン墓地に送った自分のカードの枚数×200ポイントのダメージを与えることができる。加えて場には死体再生機という設置呪文が。
死体再生機はそのターン、手札から墓地へと直接カードを捨てた時、デッキの上から1枚墓地へ送って、さらに墓地から攻撃力1000以下のクリーチャーを回収できるというカード。
攻撃すればするほど手札と墓地が厳選される厄介極まりないコンボだった。
これぞ──ヴェノムミストの王道コンボ、ヴェノムロック。
「1つ聞いていいですか? なぜ私にデッキレシピを教えたんですか?」
問題はタイミングだ。最近ようやくエキドナが完成したのならともかく、俺が精霊を引いた後に送ってくることはなかった。相談が目的ならば、カードショップで聞けば良かったのだ。
しかし店長は物わかりの悪い子供に教えるように、こう告げた。
「敵になったからよ。エキドナのコンボが決まれば、大体のファイターは即死する。気に入っていた相手を一方的に殺戮するほど虚しいことはないでしょ? それに最終目標は貴方ではないしね。多少なりとも、今後のために意義のある戦いをしておきたかったの」
「俺ならそれができた、と?」
「サイトを見ている分には、ね」
まるで期待外れだと言いたそうな店長。
今はまだ店長のターン、コストも余っている。
「私はティフォンの選別を召喚!!」
ティフォンの選別
設置呪文
デッキからカードがドローされた時、お互いそれを公開し、それがもこもこ、
墓地へ送った場合、あらゆる手札・墓地に存在するクリーチャーは攻撃力を0として扱い、コストも2ダウンさせる。ただし場に出た時は元々の攻撃力を参照する。
──────だそうだ。ご丁寧にドライバーに記載されている。
何なんだよ、この意味☆不明のカードは!!!
吉田さんのように隠蔽しないのは、その力が足りないからか。
はたまた情けなのか。チッ、また生成された闇のカードかよ。
当然ながら こんなイカれたカードは前世になかった。
そもそも使い所もピンポイントすぎるしな。
さらに墓地に送った場合、死体再生機での回収が可能!!
回収されるのは────。
「さらに私は回収した海獣デミウルゴスを召喚」
「くっ……!!」
海獣デミウルゴス
クリーチャー 攻撃力2400
お互いの手札が公開された時、それが自身の攻撃力を下回っていれば墓地へ送る
基本的に手札発動のクリーチャーを刺すだけの現代環境メタとして採用されることがあったが────いわば海獣廃棄というようなコンボになってやがる!!
ええとつまり現在はヴェノムロック、海獣廃棄の2つのコンボにより────。
攻撃無効、クリーチャーを手札に加えるのも無効。
毎ターン最低200ポイントのダメージを受けるってこと?
くそっ、1枚を封じてもドンドン拡張されるだろうし……。
これがネストコンボの怖さだ。
「これで私はターンエンド。200ポイントのダメージを与え、貴方のターンよ」
「………………ドロー!!」
──────ともあれ、今は動けない。神官騎士たちはまだ3体いる。
手札だって、そこそこ揃っている。ココは耐えるしかない。
「1つ聞いていいですか? なぜこんなことを?」
店長は精霊に嫌われている──なんてことはない。
そんな人間がカードショップなど経営できるわけがないからだ。闇の力があっても、隠してさえいれば精霊に嫌われることがないとも言えるが……まぁ、それもおかしくない。
なにせアニメの話で言ってしまえば────闇のカードそのものは精霊の力だ。
秩序か混沌か、求めるスタンスが違うだけ。
牛乳に牛乳を混ぜたって分離するわけがない。
で、あればなにか店長に深い理由があるのではないか────。
そう考えるのは、極めて自然なことだ。
「私って、未亡人なのよね」
「それは初耳ですね……」
てっきり独身だと思ってた。
まぁ29歳ぐらいと言っていたし、早ければご結婚ぐらいされているか。
「2歳になる娘もいたわ……5年ほど前だけどね」
どこか懐かしむような口ぶりで話す店長。
5年ほど前ならば、俺はまだ中学上がりたて。フリークスには通っていない。
…………いた、ということはつまりいなくなったということか。
「なにが、あったんですか」
「私の実家はいわゆるドライバーなどのファイト・ウィザーズの周辺機器を研究・開発する会社だったの。今でもファイト・ホイールの独占開発を任されるぐらいのね」
…………そういう会社はいくつかある。
精霊局と提携し、カードを製造る企業達の頂点────HAKUOグループ。
ドライバーなどの周辺機器を開発研究する三賢人の研究所。
それらを流通に乗せ、転売ヤーなどへの対策も行う六大企業。
おそらくは店長の会社も三賢人の傘下にあったのだろう。
「順風満帆な人生だったわ。お嬢様なんて言われる金持ちの家に生まれ、勉強もできて、顔もよく、大学でいい男と知り合って、子供も1人──ああ、私はなんて運命、いや精霊たちに好かれているんだろうとそう思っていた。実際に私の切り札は強力な力を持っていたしね」
そう言って、店長は顔の片側を隠す髪を払った。
そこには焼けただれた顔があった。
「企業の人間たちを集めた豪華客船が炎上して、すべてを失うまではね」
「炎上────犯人は精霊たちだったんですか?」
「いや? やったのはたしかにドライバーの販売により職を追われた木っ端の退魔師たちだったけれど、それで精霊を恨むのお門違いよね。私が怒ったのは────」
店長がその豊満な胸元から鎖に繋がれた小瓶を出してきた。
二本の人骨、そして焼けたカードの破片のようなものが入っている。
「私の精霊が、私の夫と娘を助けなかったことよ」
『精霊だって万能ではない。貴様を助けるので精一杯だったのだろう』
すぅ、と俺の背後からアルタイアが表れ出てきた。
半透明のそれを見ると、アニメで守護霊をしていた主人公の相棒を思い出す。
「ええ。でも優先順位ってものがあるでしょ? 夫は仕方ないわ……娘を守るためならば、私と一緒に死ぬ覚悟ぐらいできていたでしょう。問題は娘よ。私より娘が救われるべきだった。そう、精霊に伝えたら、彼女なんて言ったと思う?」
「──────?」
その一言が、店長にここまでの凶行を及ぶようにさせたということか?
いったい、店長の精霊はなんて……。
「貴方は助かったんだから、夫と娘ぐらいまた作ればいいじゃないってさ」
『
店長が笑った。ただただ笑った。
……………………………………………………ああ、なるほど
ヴァノムミスト・フォンブラウン
相手クリーチャーが攻撃した時、手札を捨てていい。
そうした場合、攻撃を無効化できる。
エンドフェイズ時、そのターン墓地に送った自分のカードの枚数×200ポイントのダメージを与えることができる。
死体再生機
設置呪文
手札から墓地へと直接カードを捨てた時、デッキの上から1枚墓地へ送って発動できる。
墓地から攻撃力1000以下のクリーチャーを手札に加える。
海獣デミウルゴス
クリーチャー 攻撃力2400
お互いの手札が公開された時、それが自身の攻撃力を下回っていれば墓地へ送る
ティフォンの選別
設置呪文
デッキからカードがドローされた時、お互いそれを公開し、それがもこもこ、
墓地へ送った場合、あらゆる手札・墓地に存在するクリーチャーは攻撃力を0として扱い、コストも2ダウンさせる。ただし場に出た時は元々の攻撃力を参照する。