精霊が切り札の世界で、俺だけ孤独に成り上がる 作:モナカパウマン
普段より早めに投稿します。
感想で教えてくれた人サンキュー!
『カードゲームと同じだ。また召喚すれば良い。個人が失われたとしても、魂というものは流転し、また現世へと戻ってくるのだから』
アルタイアは続ける。それが自然の摂理とでもいうように。
「ふざけた理屈を────ッ!! 人間には精霊と違って寿命があるの!! 転生するとしても、いつ生まれてくるかなんかわかりゃしない!! それに記憶が失われれば、それは魂が同じでも、まったく違う存在だわ!! ……わからないか。突然湧き出す貴方達には、家族という概念すらないんだから!! たとえ20年以上一緒に過ごした相手がいたって!!」
激昂する店長。彼女の言っていることは、人間の俺からしても同意できる。
俺が転生者だとしても、だ。
「…………アルタイア、ちょっと黙ってろ」
俺はアルタイアを引っ込めさせた。話が拗れそうだ。
それよりも聞きたいことがあった。
「店長は、死んだ家族を生き返らせたいんですか?」
もしもそうであるのならば、俺に勝てる道理はない。勝っちゃいけないとすら思う。
カード化された仲間と違って、店長の家族は永遠に失われたのだから。
いや、それこそカード化された仲間を戻してくれるならアルタイアは引き渡したって良い。
──────しかし彼女の答えは違った。
「いや? 世界を焼き尽くすのよ」
「……………………は?」
俺が唖然とすると、店長はうっとりとした顔で語りだした。
それは何らかの思想に染まりきってしまった信者のようである。
「船にはもちろん、私以外にも助かった人が大勢いたわ。いや、大半は助かったんじゃないかしら。なんなら、夫や娘よりも炎上に近かった人もね…………なんでだと思う?」
「…………運が良かったんじゃないですか?」
「
そういうと店長は焼けただれている顔の片側をかきむしり始めた。
「生きるか死ぬかも精霊に愛されているか。そうでない人間はいつ死んだっておかしくない。そんな世界は間違っているわ。だって運なんて理不尽で不確定な流れが、いつまた私の大事なものを奪うかはわからないじゃない。実際、一度奪ったんだから!!」
俺はようやく気づいた。
精霊が存在し、祝福する世界。
その根底において、運なんてものは欠片も信用されていないことに。
「でも、それでも家族に手を伸ばすべきじゃ……!!」
「また失われるかもしれないのに?」
────しかし、それでも間違っている。
運なんて信じられなくても、もう一度大切なものに
どうして、それをせずに
「精霊だけがすべてを決める。生きるかも、死ぬかも。すべてを与えて、すべてを奪える。ええ、そんな世界は間違っている。だったら──────全部、燃えてしまえばいい」
「それが家族より大事だっていうんですか」
にこり、と店長が笑った。
「今、その精霊が言ったじゃない。魂は流転しているって。この世が無くなったら、死んだらまた会えるってことでしょ。じゃあ、こんな苦しい世界はいらないわよねぇッ!!」
「………………俺はターンエンド」
ああ、わかったよ。俺の心は決まった。
「私のターン、ドローッ!!」
この瞬間、海獣デミウルゴスの効果が発動され、引いたカードが公開される。
店長が引いたのは────ティフォンの儀式門!!
「貴方にふさわしい
店長がそのままティフォンの儀式門をボードに叩きつける。
ティフォンの儀式門
基礎呪文
墓地にもこもこ、
デッキの上から5枚公開して、その中にあるもこもこ、
その後、この効果で墓地へと送られた儀式と名のついた呪文を発動できる。存在しなかった場合、墓地へ送ったカードの枚数分× 1000ポイントのダメージを受ける。
デッキから引かれたのは────。
1枚目。もこもこフワンタル。
2枚目。もこもこブライタル。
3枚目。もこもこメラニオン。
4枚目。もこもこ大進撃。
5枚目。
送られたカードは5×3=15枚!!
ヴァノムミスト・フォンブラウンの効果で、エンドフェイズに3000のダメージを受けることが確定した。さらに────奴が出てくる。
「ティフォンの儀式門の効果により、墓地へ送られた
基礎呪文
墓地のクリーチャーをコスト分除外することで、”
攻撃力3200
1ターンに1回発動できる。墓地のカードを除外し、その枚数分相手プレイヤーに500ポイントのダメージを与える
三つ首の腐った犬。地獄の門番──ケウベウロン。
初めて戦った闇のファイターの切り札。
「私が墓地から除外するのは10枚!! よって5000のダメージよ!!」
────今の俺のライフは4000。つまり、これが通れば負ける。
しかし、そのためにコストを温存していた。
「俺は速攻呪文リフレクション・ミラーを発動!! その攻撃を反射する!!」
「なんですって──!?」
与えられた極大の火炎が反射され、店長へと跳ね返る。
これで6000だった店長のライフは残り1000だ。
「チィ──!! ……まぁいいわ。次のターンでケリをつけてあげる。場にいるクリーチャーで貴方の神官騎士たちを破壊。これでターンエンド。エンドフェイズに3000のダメージを受けなさい」
俺の頭上に雨が振り、体を冷やす。
おそらくは毒液──だが、その効果までは感じられない。
正真正銘これが最後のターンだ。
「俺のターン……ドロー」
俺が引いたのは、バルメオの龍儀式。
バルメオの龍儀式
基礎呪文
手札が5枚以上の時、この呪文をノーコストで発動できる。
場にバルバロイ・メテオ・ドラゴンと名のつくトークンを召喚
トークンの攻撃力は相手の場にいる全てのクリーチャーの攻撃力を合計した数値になる
「貴方に逆転の手はない。仮に
海獣デミウルゴス
クリーチャー 攻撃力2400
お互いの手札のクリーチャーが公開された時、それが自身の攻撃力を下回っていれば効果を無効にして墓地へ送る
ティフォンの選別
設置呪文
①あらゆる手札・墓地に存在するクリーチャーは攻撃力を0として扱う。ただし場に出た時は元々の攻撃力を参照する。
②ドローフェイズ中にドローされた時、お互いそれを公開し、それがもこもこ、
墓地へ送った場合、手札にあるクリーチャーのコストを2ダウンさせる。
「
……………………使う必要もない。
「何勘違いしてるんですか?」
「────────え?」
「勝利のピースは既に揃っている」
俺はボードにカードを叩きつけた。
「幻月の召集を発動!! デッキからクリーチャーが出るまでドローし続け、最初に出たクリーチャーを無条件で召喚することができる!!」
「はっ!! この期に及んで運任せ!? たしかにそれなら手札に加えなくても召喚できるけど、狙ったクリーチャーを召喚できる確率なんて……!!」
「ないんですよ」
「は?」
「
ドライバーが暴走したかのようにデッキからカードを墓地へと送り続ける。
当然だ。99%のカードは呪文。ただただ墓地へと送り続けるしかない。
これが俺の、オール・フォー・ワンデッキ。
エキドナを倒すために生み出した──対策!!
ファイト・ウィザーズはドローできなかった時、敗北する。
逆に言えば、ドローさえしなければ、デッキが0枚でも問題ない、ということだ。
最後の1枚が引かれて────俺の場に白銀の魔女が顕現する。
幻月のアルタイア
クリーチャー 攻撃力2400
召喚時、墓地にある呪文をコストを無視して発動する。
この効果は無効化されない。
「アルタイアの効果発動。俺が使うのは──幻月の封魔鏡!!」
今しがた、デッキをすべて墓地を送った時に捨てられたカードだ。
幻月の封魔鏡
速攻呪文
このカードは1ターンに1度だけ発動できる。
相手の場にあるカードの効果をコピーし、発動する。
このカードを発動するターン、呪文が合計で
3回以上使われてない場合、この効果を無効化する
「馬鹿な!! まだ呪文は1回しか使われてな────」
「
つまり、幻月の封魔鏡による自身の無効化も無効にできる。
もちろん意図的なコンボ。なんせアルタイアと幻月の封魔鏡は同じテーマ。
要するにデザイナーズコンボなのだ。
「けれど────それは呪文をコピーするものじゃ……!!」
そう、店長の場にこの状況を打開できる呪文なんてない。
しかしコピーできる効果はある。
「幻月の封魔鏡は相手クリーチャーの効果もコピーできる」
「──────なん、ですって」
「俺がコピーするのは、
俺は墓地にあるすべてのカードを除外した。
前ターン、リフレクション・ミラーを通した以上、コレを防ぐすべはないはずだし……。
そもそも防がれてたら、俺の敗北は決したも同然だからだ。
「────あなた────カナタ────」
業火が店長を包む。
呼んだ名前は娘のものだろうか。
「今──────そちらに──────────」
その答えを知ることはもう、ない。
クリーチャーたちが消え去り、ドライバーには勝利を告げる表記だけが残っていた。
降ってきたカードには、どこか安らかな表情をした店長が。
…………内心では止めてもらいたかったのだろうか。
そんなことも、もうわからない。
『自業自得とはいえ、魂の流転に戻ることもない以上────家族には会えぬだろうな』
感情なんて、それほど籠もってない声でそう言うアルタイア。
それは嘲りでも同情でもなく、ただの事実確認に過ぎない。
俺は店長のカードをデッキケースに入れながら、ただただ思ったことを口にした。
「アルタイア、
『………………私も同意見だ』
半透明となったアルタイアが俯きながら、そう返す。
実際、どうすればいいかはわからない。けれど、アルタイアはその次を呟いた。
『このまま私を所有し続け、すべての火の粉を振り払え。そうすれば最後におまえは世界を作り変える権利を得る。人と精霊を分かつことだって────できる。ただし……』
アルタイアが俺を指さした。
無慈悲な刑罰を告げるように。
『その力は、おまえを孤独な王にする』
「…………いいだろう。なってやるよ」
この精霊が切り札の世界で────。
俺は孤独に成り上がる。
幻月の召集
基礎呪文
デッキからクリーチャーが出るまでドローし続け、
最初に出たクリーチャーを無条件で召喚する。